第1節 行政書士法
第4章 諸法令
行政書士法は、行政書士制度の根幹を定める法律であり、試験科目として最も重要です。業務の範囲、欠格事由、守秘義務、義務規定など、実務に直結する論点が毎年必ず出題されます。この節では行政書士としての「できること」と「してはならないこと」を明確に理解します。
行政書士法の目的(1条)
第1条条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士法の目的条文(1条)は「何のための法律か」を定めたものです。文言の正確な理解がポイントです。
■ 目的条文の概要
行政書士法は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを目的としています(1条)。この目的規定は、1997年(平成9年)の法改正によって新設されたものです。それ以前は行政書士法に目的条文が存在しませんでしたが、行政分野の複雑化・高度化に伴い行政書士業務の重要性が高まったことを背景に、制度の意義を明確化するために設けられました。なお、目的条文は1条に位置しており、行政書士法の中で最初に確認すべき最重要規定です。
■ 目的の段階的構造
目的の構造は「業務の適正を図る → 行政に関する手続の円滑な実施に寄与する → 国民の利便に資する → 国民の権利利益の実現に資する」という段階的な流れになっています。行政書士法は最終的には「国民の権利利益の実現」という公益的な目標を掲げており、単に書類作成の専門家を規定する法律にとどまらない趣旨が読み取れます。行政書士は「行政に関する手続の専門家」として、行政と国民の橋渡し役を担うことが期待されています。
■ 試験での頻出誤りに注意
試験での頻出誤りとして「行政の適正化を図る」という表現がありますが、正しくは「業務の適正を図る」です。また「行政の円滑化に寄与する」ではなく「行政に関する手続の円滑な実施に寄与する」が正確な文言です。さらに「国民の便宜に資する」ではなく「国民の利便に資する」が正しい表現です。目的条文の各キーワードを一字一句正確に把握しておくことが試験対策上不可欠です。
具体例
「行政書士法1条の目的として誤っているのはどれか」という問題で『行政の適正化を図る』という選択肢は誤り。正しくは『業務の適正を図る』。
条文(第1条条)
(目的)第1条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを目的とする。
重要メモ
- ・「行政書士法の目的(1条):業務の適正を図り→行政手続の円滑な実施に寄与+国民の利便→国民の権利利益の実現」
- ・行政書士法1条:行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを目的とする
- ・目的の3段階構造:①業務の適正→②行政手続の円滑化+国民の利便→③国民の権利利益の実現
- ・「行政書士の利益のため」ではなく「国民の権利利益の実現」が最終目的——公益的性格を強調
- ・「行政に関する手続の円滑な実施」:行政書士が行政手続のエキスパートとして機能することを示す
- ・「国民の利便に資する」:複雑な行政手続を代行・支援することで国民の手間を省く
行政書士の独占業務(1条の2)
第1条の2条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士しかできない「独占業務」を定めたのが1条の2です。書類の3分類と、逆にできない書類の例がポイントです。
■ 独占業務の定義
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業とします(1条の2第1項)。これが行政書士の「独占業務」であり、無資格者がこれを業として行うことは禁止されています。
■ 書類の3分類
書類の作成業務は大きく3つに分類されます。第一は「官公署に提出する書類」であり、国・地方公共団体の諸機関に提出する各種の申請書・届出書などがこれにあたります。第二は「権利義務に関する書類」であり、私法上の権利義務関係の発生・変更・消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類、たとえば売買契約書・賃貸借契約書・遺産分割協議書などが該当します。第三は「事実証明に関する書類」であり、社会生活上の出来事や事柄を証明するための書類で、実地調査に基づく図面類を含み、履歴書・身分証明書などが該当します。
■ 業務範囲の除外
ただし、他の法律で制限されているものについては業務を行うことができません(1条の2第2項)。弁護士のみが作成できる書類(訴訟事件・非訟事件・審査請求等の法律事件に関する書類)、司法書士のみが作成できる書類(法務局等に提出する書類・不動産登記申請書等)、税理士のみが作成できる書類(税務署への税務書類・税理士業務に属する税目の申告書等)、社会保険労務士のみが作成できる書類(労働社会保険関連書類)、弁理士のみが作成できる書類(特許庁への出願書類等)、建築士のみが作成できる書類(一定の建設設計図)、土地家屋調査士のみが作成できる書類(不動産表示登記申請書)などは、行政書士には作成できません。なお、1980年(昭和55年)8月31日以前から行政書士として業を行っていた者は、税務書類の作成について現在も行うことができます(経過措置)。
具体例
遺産分割協議書の作成→権利義務に関する書類として行政書士の独占業務。一方、不動産登記申請書の作成→司法書士の業務であり行政書士は作成不可。
ポイント整理
- ・他人の依頼を受けること
- ・報酬を得ること(有償性)
- ・業として継続的・反復的に行うこと
効果
- ・独占業務として行政書士以外は同業務を行えない
- ・他の法律で制限されている書類は業務範囲外
条文(第1条の2条)
(業務)第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
重要メモ
- ・「独占業務(1条の2):報酬を得て①官公署提出書類②権利義務書類③事実証明書類を作成——他士業の独占書類は除外」
- ・独占業務の対象(1条の2第1項):他人の依頼を受け報酬を得て、次の書類を作成することを業とする
- ・①官公署に提出する書類:国・地方公共団体等の機関に提出する申請書・届出書等
- ・②権利義務に関する書類:権利義務の発生・変更・消滅を目的とする書類——売買契約書・遺産分割協議書等
- ・③事実証明に関する書類:社会的に事実を証明する書類——履歴書・実地調査に基づく図面類等
- ・除外(作成できない書類):弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士・弁理士・建築士・土地家屋調査士等の独占書類
- ・電磁的記録の作成も業務に含まれる(2002年改正)——オンライン申請への対応
行政書士の非独占法定業務(1条の3)
第1条の3条簡単にいうと
簡単にいうと、独占業務以外にも行政書士ができる仕事が1条の3に4つ定められています。このうち審査請求の代理は「特定行政書士」だけができる点がポイントです。
■ 非独占法定業務の概要
行政書士は1条の2に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次の4つの事務を業とすることができます(1条の3第1項本文)。これらは独占業務ではなく、行政書士以外の者も行えますが、行政書士が報酬を得て業として行える旨を明示的に定めたものです。
■ 4つの業務の内容
第一の業務は、官公署への提出書類に関する「許認可等の申請・届出等の手続について、当該官公署に対してする行為を代理すること」です。ただし、弁護士法72条に規定する法律事件に関する法律事務については除外されます。このうち「聴聞」や「弁明の機会の付与」の手続については、行政書士が代理できる対象として明記されています。
第二の業務は、「行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること」です。契約の相手方との交渉・作成を依頼者の代理人として行う場合が想定されます。
第三の業務は、「行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること」です。書類を実際に作成するまでには至らなくとも、相談業務として報酬を得て行うことができます。
■ 特定行政書士のみできる業務
第四の業務は、「審査請求・再調査の請求・再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、その手続について官公署に提出する書類を作成すること」です。この業務は、日本行政書士会連合会が会則で定めるところにより研修を修了した「特定行政書士」のみが行うことができます(1条の3第2項)。通常の行政書士は行えないことに注意が必要です。なお、行政書士の業務拡大の歴史として、2002年(平成14年)改正で電磁的記録の作成が業務に追加され、2008年(平成20年)改正では聴聞・弁明の機会の付与等の手続代理が追加されました。2014年(平成26年)改正では審査請求等の不服申立て代理(特定行政書士制度)が設けられました。
具体例
A社が許認可の取消しに不服があり審査請求をしたい。通常の行政書士は代理できないが、特定行政書士であれば審査請求の手続代理ができる。
ポイント整理
- ・①〜③:行政書士の資格があれば可能
- ・④:特定行政書士(日本行政書士会連合会定める研修の課程を修了した者)のみ可能
効果
- ・①聴聞等の手続について官公署に対する行為を代理できる(弁護士法72条の法律事件を除く)
- ・②書類を代理人として作成できる
- ・③書類作成に関する相談に応ずることができる
- ・④審査請求・再調査請求・再審査請求等の不服申立ての手続代理と書類作成ができる(特定行政書士のみ)
条文(第1条の3条)
(業務)第1条の3 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。 一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。 二 (略) 2 前項第一号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
重要メモ
- ・「非独占業務(1条の3):報酬を得て①聴聞・弁明代理②不服申立て代理(特定行政書士)③契約書の代理作成④書類作成相談」
- ・非独占法定業務(1条の3第1項):行政書士が行えるが、他の資格者も行える業務(独占ではない)
- ・①聴聞・弁明の機会の付与の手続における代理(2008年改正で追加):官公署に対して行う聴聞等の手続の代理
- ・②審査請求等の代理(特定行政書士・2014年改正で追加):行政書士が作成した書類に係る許認可等についての行政不服申立て手続の代理——日本行政書士会連合会の研修修了者(特定行政書士)のみが可能
- ・③契約書等の代理作成:行政書士が作成できる契約書等を代理人として作成すること
- ・④書類作成に関する相談:行政書士が作成できる書類の作成についての相談業務
- ・報酬額の掲示義務(1条の3第2項):事務所の見やすい場所に報酬額を掲示しなければならない(10条の3第1項)
行政書士となる資格(2条)
第2条条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士になれるのは試験合格者だけではありません。3つのルートがあり、社会保険労務士との違いもポイントです。
■ 資格取得の3つのルート
行政書士となる資格を有する者については、2条に定められており、大きく3つのルートに分類できます。第一は「行政書士試験に合格した者」(2条1号)です。試験に合格することが最も一般的な資格取得ルートです。
■ 他士業による資格取得
第二は「一定の他士業の資格を有する者」であり、弁護士となる資格を有する者(2条2号)、弁理士となる資格を有する者(2条3号)、公認会計士となる資格を有する者(2条4号)、税理士となる資格を有する者(2条5号)がこれにあたります。これら4士業の資格者は、行政書士試験を受験しなくても行政書士となる資格が与えられます。なお、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士は行政書士となる資格を有しますが、社会保険労務士となる資格を有する者は含まれていない点が試験頻出の落とし穴です。
■ 公務員としての行政事務経験
第三は「公務員としての行政事務経験」(2条6号)であり、国・地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間(行政執行法人・特定地方独立行政法人の役員・職員として行政事務に相当する事務を担当した期間を含む)が通算20年以上になる者がこれにあたります。ただし、学校教育法90条に規定する高等学校を卒業した者その他同条に規定するもの(高卒者等)については、17年以上で足ります。なお、2条の規定に該当する者であっても、欠格事由(7条1項)に該当する場合には行政書士となる資格は失われます(2条の2)。
具体例
大学卒業後、市役所に就職して行政事務を担当した者が17年以上勤続した場合、行政書士試験を受けなくても行政書士となる資格を有する(高卒以上=17年以上の要件を満たす)。
ポイント整理
- ・①行政書士試験に合格した者(2条1号)
- ・②弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格を有する者(2条2〜5号)
- ・③国・地公体公務員として行政事務を担当した期間が通算20年以上(高卒以上の者は17年以上)の者(2条6号)
効果
- ・行政書士登録の申請資格を取得する
- ・欠格事由(7条1項)に該当する場合は資格を有しない(2条の2)
条文(第2条条)
(資格)第2条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。 一 行政書士試験に合格した者 二 弁護士となる資格を有する者 三 弁理士となる資格を有する者 四 公認会計士となる資格を有する者 五 税理士となる資格を有する者 六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(略)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年(学校教育法(略)第九十条第一項の規定による高等学校を卒業した者その他同条に規定するものにあっては、十七年)以上になる者
重要メモ
- ・「行政書士の資格取得:①試験合格②弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格者③行政事務20年(高卒17年)以上の公務員等」
- ・試験合格(2条1号):行政書士試験に合格した者
- ・試験免除者(2条2〜5号):弁護士(2号)・弁理士(3号)・公認会計士(4号)・税理士(5号)となる資格を有する者——社会保険労務士は含まない
- ・行政事務経験者(2条6号):国・地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間が通算20年以上の者(高等学校卒業者は17年以上)
- ・行政執行法人・特定地方独立行政法人の役職員も算入可能
- ・よく出る引っかけ:社会保険労務士となる資格を有する者は行政書士となる資格を有さない(2条各号に規定なし)
行政書士の欠格事由(7条1項・2条の2)
第7条1項・2条の2条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士になる資格があっても、一定の事情のある人はなれません。令和元年改正で「成年被後見人」が欠格事由から外されたことがポイントです。
■ 欠格事由の概要
行政書士となる資格を有する者であっても、次の欠格事由のいずれかに該当する者は行政書士となる資格を有しません(2条の2・7条1項)。欠格事由は登録拒否事由(6条の2第2項)や必要的抹消事由(7条1項)とも連動しており、一体的に理解することが重要です。
■ 欠格事由の各号
欠格事由の内容は次のとおりです。①未成年者(7条1項1号)。②破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(同2号)。③禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者(同3号)。④公務員(行政執行法人・特定地方独立行政法人の役員または従業員を含む)が、懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者(同4号)。⑤6条の5第1項(登録取消処分)の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない者(同5号)。⑥6条の規定(業務停止処分)を受け、当該処分の日から3年を経過しない者(同6号)。⑦懲戒により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁護士・弁理士・税理士・司法書士もしくは土地家屋調査士の業務を禁止された者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しない者(同7号)。⑧税理士法48条1項により「税理士業務の禁止」の処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、当該決定の日から3年を経過しないもの(同8号・2022年改正)。
■ 令和元年改正による変更
令和元年(2019年)の改正により、それまで欠格事由とされていた「成年被後見人または被保佐人」(旧7条1項1号)の規定が廃止されました。これはいわゆる「成年後見制度利用を促進する観点」から、障害等により後見が開始されたことを理由に資格を剥奪しないとする法整備の一環です。試験ではこの令和元年改正が頻出されるため注意が必要です。
具体例
市役所の職員が懲戒免職処分を受けた場合、その処分の日から3年を経過するまでは行政書士となる資格を有しない(7条1項4号)。
効果
- ・欠格事由に該当する者は行政書士登録を受けることができない
- ・既に登録を受けている者が欠格事由に該当した場合は必要的抹消の対象となる(7条1項)
条文(第7条1項・2条の2条)
(欠格事由)第7条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有しない。 一 未成年者 二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 三 禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから三年を経過しないもの 四 (略)懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者 五 第六条の五第一項の規定による登録の取消しの処分を受けた日から三年を経過しない者 六 (略)業務の停止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者 七 (略)除名、登録の抹消、業務の禁止の処分を受けた者(略)これらの処分を受けた日から三年を経過しない者 八 (略)税理士業務の禁止の処分を受けるべきであったことについて(略)決定を受けた者で当該決定の日から三年を経過しないもの
重要メモ
- ・「欠格事由(2条の2):①未成年者②破産者③禁錮以上の刑3年未経過④懲戒免職3年未経過⑤登録取消3年未経過等」
- ・欠格事由(2条の2各号)に該当する者は行政書士となる資格を有しない
- ・①未成年者(1号)
- ・②破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(2号)
- ・③禁錮以上の刑に処せられ、執行終了または執行免除から3年を経過しない者(3号)
- ・④公務員として懲戒免職処分を受け、その日から3年を経過しない者(4号)
- ・⑤6条の5第1項により登録取消処分を受け、その日から3年を経過しない者(5号)
- ・⑥6条規定による登録取消処分を受け3年未経過の者(6号)・他士業の業務禁止処分から3年未経過の者(7号)・税理士業務禁止決定から3年未経過(8号・2022年追加)
行政書士の義務(12条〜13条の2・施行規則)
第11条〜13条の2・規則3条・4条・5条条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士として仕事をする上で守らなければならない義務が法律と施行規則に定められています。各義務の内容と違反時の罰則がポイントです。
■ 義務規定の目的
行政書士法および行政書士法施行規則には、行政書士が業務を適正に行うために守るべき様々な義務が規定されています。その目的は、行政書士の資質を向上させ、業務が適正に行われるよう担保することにあります。
■ 行政書士法が定める主な義務
行政書士法が定める主な義務は以下のとおりです。第一に「報酬額の掲示等義務」(行政書士法10条の2)であり、使用人である行政書士等を除く行政書士は、その事務所の見やすい場所に業務に関して受ける報酬の額を掲示しなければなりません。第二に「依頼に応ずる義務」(11条)であり、使用人である行政書士等を除く行政書士は、正当な事由がある場合を除き、依頼を拒むことができません。第三に「秘密を守る義務」(12条)であり、行政書士は正当な理由がなく、業務上取り扱った事項についての秘密を漏らしてはなりません。この義務は行政書士でなくなった後も同様に適用されます(12条後段)。第四に「会則の遵守義務」(13条)であり、行政書士は所属する行政書士会および日本行政書士会連合会の会則を守らなければなりません。第五に「研修」(13条の2)であり、行政書士はその所属する行政書士会および日本行政書士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るよう努めなければなりません。
■ 行政書士法施行規則が定める主な義務
行政書士法施行規則が定める主な義務は以下のとおりです。第一に「帳簿の記載・保存義務」(規則9条)であり、行政書士は業務受任の際に帳簿を作成し保存しなければなりません(5年間保存)。第二に「業務の他者委託の制限」(規則4条)であり、行政書士はその業務を他人に行わせてはなりません(業務委託禁止)。ただし、使用人その他の従業者(従業者である行政書士)に行わせる場合または本人の同意がある場合は、他の行政書士(従業者である行政書士を除く)に委託することができます。第三に「補助者の届出義務」(規則5条2項前段)であり、行政書士は補助者を置いたとき、または補助者に異動があったときは、遅滞なくその者の住所および氏名を行政書士会に届け出なければなりません。
具体例
行政書士が業務上知り得た依頼人の秘密について、退職後に第三者に漏らした場合→退職後も秘密保持義務は継続するため、12条違反となり罰則(22条1項:1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が適用される。
効果
- ・報酬額を事務所の見やすい場所に掲示しなければならない
- ・正当な事由なく依頼を拒むことはできない
- ・秘密保持義務は廃業後も継続する
- ・補助者を置いたときは遅滞なく行政書士会に届け出る
条文(第11条〜13条の2・規則3条・4条・5条条)
(秘密を守る義務)第12条 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。 (会則の遵守義務)第13条 行政書士は、その所属する行政書士会及び日本行政書士会連合会の会則を守らなければならない。
重要メモ
- ・「義務:①依頼に応ずる義務(正当な事由があれば拒否可)②秘密保持義務(退職後も継続)③会則遵守義務④研修努力義務」
- ・依頼に応ずる義務(11条):正当な事由がある場合を除いて、依頼を拒むことができない——違反は100万円以下の罰金
- ・秘密を守る義務(12条):正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはならない——行政書士でなくなった後も同様
- ・会則の遵守義務(13条):所属する行政書士会および日本行政書士会連合会の会則を守らなければならない
- ・研修を受ける努力義務(13条の2):行政書士会および日本行政書士会連合会が実施する研修を受け、資質向上を図るよう努めなければならない(義務ではなく努力義務)
- ・補助者の規定(施行規則5条):補助者を置くことができる——置いたときは遅滞なく行政書士会に届け出る義務
- ・他人への業務委託の禁止(施行規則4条):業務を他に行わせてはならない——ただし使用人行政書士等に行わせる場合や依頼人の同意ある場合は除く
行政書士の登録(6条・6条の2・6条の3)
第6条・6条の2・6条の3条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士の資格があっても登録しないと仕事はできません。誰に・どこを経由して登録申請するか、また拒否されたらどうするかがポイントです。
■ 登録の必要性
行政書士となる資格を有する者が行政書士となるには、行政書士名簿に住所・氏名・生年月日・事務所の名称および所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければなりません(6条1項)。登録は行政書士として業務を行うための前提条件であり、資格を有するだけでは行政書士として活動することはできません。
■ 登録の申請手続
登録の申請手続については6条の2に定められています。登録を受けようとする者は、行政書士となる資格を有することを証する書類を添えて、日本行政書士会連合会に対し、その事務所の所在地の属する都道府県に設立されている行政書士会を経由して、登録の申請をしなければなりません(6条の2第1項)。申請先はあくまで日本行政書士会連合会ですが、各都道府県の行政書士会を「経由」して行う点が重要です。
■ 登録の可否と不服申立て
登録の可否の決定については、日本行政書士会連合会は、申請者が行政書士となる資格を有すると認めたときは行政書士名簿に登録しなければなりません(6条の2第2項前段)。一方、登録を拒否しようとするときは、資格審査会の議決に基づいてしなければなりません(6条の2第2項後段)。登録を拒否する事由は①心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者、②行政書士の信用または品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者の2つです(6条の2第2項各号)。
登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは総務大臣に対して審査請求をすることができます(6条の3第1項)。不服申立先が「日本行政書士会連合会」ではなく「総務大臣」である点が試験でよく問われます。
具体例
行政書士試験に合格したAさんが東京都内に事務所を設ける場合、東京都行政書士会を経由して日本行政書士会連合会に登録申請を行う。
ポイント整理
- ・行政書士となる資格を有すること
- ・欠格事由(7条1項)に該当しないこと
- ・事務所の所在地の属する都道府県の行政書士会を経由して申請すること
効果
- ・行政書士名簿への登録により行政書士として業務を行える
- ・登録拒否には資格審査会の議決が必要
- ・登録拒否への不服申立ては総務大臣への審査請求
条文(第6条・6条の2・6条の3条)
(登録)第6条 行政書士となる資格を有する者が行政書士となるには、行政書士名簿に、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければならない。 (登録の申請)第6条の2第1項 登録を受けようとする者は、行政書士となる資格を有することを証する書類を添えて、日本行政書士会連合会に対し、その事務所の所在地の属する都道府県に設立されている行政書士会を経由して、登録の申請をしなければならない。 (審査請求)第6条の3第1項 (略)登録の申請を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、総務大臣に対して審査請求をすることができる。
重要メモ
- ・「登録は日本行政書士会連合会が管理・申請は事務所所在地の都道府県行政書士会を経由・登録拒否には総務大臣への審査請求可」
- ・登録の必要性(6条):行政書士となる資格を有する者が行政書士になるには、行政書士名簿への登録が必要
- ・登録申請(6条の2第1項):日本行政書士会連合会に対し、事務所所在地の都道府県行政書士会を経由して申請
- ・登録義務(6条の2第2項前段):要件を満たす者と認めた場合は、日本行政書士会連合会は登録しなければならない
- ・登録の拒否(6条の2第2項):①心身の故障により業務を行えない者②信用または品位を害するおそれがある者等は登録を拒否しなければならない
- ・登録拒否への不服申立て(6条の3):登録を拒否された者は総務大臣に対して審査請求ができる——日本行政書士会連合会ではない
登録の抹消(7条)
第7条条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士の登録が消えるのはどんな場面かを整理します。必ず消える「必要的抹消」と、場合によって消える「任意的抹消」の2種類がポイントです。
■ 抹消の2種類
行政書士の登録は一定の事由が生じたときに抹消されます。抹消には「必要的抹消」と「任意的抹消」の2種類があります。
■ 必要的抹消(7条1項)
必要的抹消(7条1項)は、日本行政書士会連合会が登録を受けた者について次のいずれかの事由が生じた場合に、当然に(義務として)登録を抹消しなければならないものです。その事由は以下の4つです。①欠格事由(7条1項の2号・3号・4号・6号・7号・8号のいずれか)に該当するに至ったとき。②業を廃止しようとする旨の届出があったとき。③死亡したとき。④6条の5第1項の規定による登録の取消しの処分を受けたとき。これらの事由に該当した場合、日本行政書士会連合会は登録を抹消しなければならず、裁量の余地はありません。
■ 任意的抹消(7条2項)
任意的抹消(7条2項)は、日本行政書士会連合会が登録を受けた者について次の事由があると認めた場合に、登録を抹消することができるものです。その事由は①引き続き2年以上行政書士の業務を行わないとき、②心身の故障により行政書士の業務を行うことができないときの2つです。任意的抹消をしようとするときは、資格審査会の議決に基づいてしなければなりません(7条3項前段・6条の2第2項後段)。任意的抹消の処分に対して不服がある者は、総務大臣に対して審査請求をすることができます(7条3項前段・6条の3第1項)。
具体例
行政書士Aが禁錮以上の刑に処せられた場合(欠格事由3号)→必要的抹消として日本行政書士会連合会は登録を抹消しなければならない。一方、行政書士Bが2年以上業務を行っていない場合→任意的抹消として、資格審査会の議決に基づき登録を抹消することができる(義務ではない)。
効果
- ・必要的抹消:連合会は登録を抹消しなければならない(義務)
- ・任意的抹消:資格審査会の議決に基づき連合会が抹消できる(裁量)
- ・任意的抹消への不服は総務大臣への審査請求
条文(第7条条)
(登録の抹消)第7条 日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を抹消しなければならない。 一〜四(略:欠格事由該当・廃業届・死亡・登録取消処分) 2 日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、その登録を抹消することができる。 一 引き続き二年以上業務を行わないとき 二 心身の故障により業務を行うことができないとき
重要メモ
- ・「必要的抹消(7条1項):欠格事由該当・業廃止届・死亡・登録取消処分の場合は抹消しなければならない・任意的抹消(7条2項):2年以上業務不行使・心身故障の場合は抹消できる」
- ・必要的抹消(7条1項・しなければならない):①欠格事由該当②業廃止の届出③死亡④登録取消処分を受けた場合——義務的に抹消
- ・任意的抹消(7条2項・することができる):①引き続き2年以上業務を行わないとき②心身の故障により業務を行えないとき——裁量的に抹消可能
- ・「できる」と「しなければならない」の区別が重要——必要的か任意的かの判別が頻出論点
- ・登録取消処分(6条の5):日本行政書士会連合会は、登録後に欠格事由が生じた場合や不正登録が判明した場合等に登録を取り消せる
行政書士の罰則(22条・23条・23条の2)
第22条・23条・23条の2条簡単にいうと
簡単にいうと、行政書士の義務違反にはどんな罰則があるかを整理します。罰則の種類・金額・刑期の違いがポイントです。
■ 罰則規定の概要
行政書士の業務が公正に行われるかどうかは国民の利害に関わるため、行政書士法は重要な義務違反に対して行政処分に加え刑罰を科しています(22条、23条、23条の2第2号)。罰則規定は重要度Bランクですが、各違反行為と罰則の対応関係を正確に把握することが求められます。
■ 最も重い罰則:秘密保持義務違反
最も重い罰則が科されるのは「秘密を守る義務」(12条・19条の3)の違反であり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(22条1項)。秘密保持は行政書士への信頼の根幹に関わるため、他の義務違反よりも重い刑事罰が設けられている点が特徴的です。
■ 100万円以下の罰金
「帳簿の備付け・保存義務」(9条)の違反および「依頼に応ずる義務」(11条)の違反は、いずれも100万円以下の罰金が科されます(23条1項2項)。これらは事業の透明性・依頼者保護の観点から設けられた義務の違反であり、同額の罰金が定められています。
■ 30万円以下の罰金
「立入検査の忌避・妨害」(13条の22第1項)については30万円以下の罰金が科されます(23条の2第2号)。立入検査は行政書士会による監督の手段であり、これを妨害することへの制裁として罰則が設けられています。行政書士は、本人の義務違反だけでなく、法人の業務についても両罰規定が適用される場合がある点も認識しておく必要があります。
具体例
行政書士が業務上知り得た依頼人の秘密を正当な理由なく漏らした場合→22条1項により1年以下の懲役または100万円以下の罰金。廃業後でも同様の罰則が適用される。
効果
- ・秘密守義務違反:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(22条1項)
- ・帳簿備付・保存違反:100万円以下の罰金(23条1項2項)
- ・依頼に応ずる義務違反:100万円以下の罰金(23条1項2項)
- ・立入検査妨害・忌避:30万円以下の罰金(23条の2第2号)
条文(第22条・23条・23条の2条)
(罰則)第22条第1項 第12条若しくは第19条の3(略)秘密を守る義務に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 第23条第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する(帳簿備付・依頼応ずる義務違反等)。 第23条の2第2号 立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
重要メモ
- ・「重い罰則:秘密漏洩=1年以下懲役または100万円以下罰金・帳簿違反・依頼拒否=100万円以下罰金・立入検査妨害=30万円以下罰金」
- ・秘密保持義務違反(12条違反)→1年以下の懲役または100万円以下の罰金(22条1項)
- ・帳簿の備付・保存義務違反(9条)→100万円以下の罰金(23条1項)
- ・依頼に応ずる義務違反(11条)→100万円以下の罰金(23条1項)
- ・立入検査の妨害・忌避(13条の22第1項違反)→30万円以下の罰金(23条の2第2号)
- ・無資格者の業務執行→1年以下の懲役または100万円以下の罰金(19条の3・21条違反)
- ・罰則の強弱:秘密漏洩と無資格業務が最も重く懲役刑あり・帳簿違反・依頼拒否は罰金のみ
まとめ
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