第2節 国内政治
第1章 政治
国内政治では、選挙制度、政党政治、国会・内閣・裁判所の三権のしくみなど、日本の政治体制の基本を学びます。行政書士試験では、選挙制度の詳細や予算・財政に関する出題が頻出です。憲法や行政法の理解を深めるための土台となる重要分野です。
衆議院議員総選挙(小選挙区比例代表並立制)
簡単にいうと
簡単にいうと、衆議院の選挙は1994年に今の制度に変わり、「小選挙区」と「比例代表」の2種類の投票を同時に行う選挙になっています。二つの選挙区制の仕組みと重複立候補がポイントです。
■ 小選挙区比例代表並立制
衆議院議員選挙は、1994年の公職選挙法改正によって現行の小選挙区比例代表並立制が導入されました。定数465議席のうち289議席を小選挙区で、176議席を比例代表で選出する構造となっています。
■ 小選挙区制
全国を289の選挙区に分け、各選挙区で1人だけが当選する制度です。有権者は候補者個人の名前を投票用紙に書き、最多得票者が1人当選します。小党は議席を獲得しにくく、政権が安定しやすいという特徴があります。被選挙権(立候補できる年齢)は25歳以上で、任期は4年ですが、内閣の判断で衆議院の解散が行われる場合があります。
■ 比例代表制
全国を北海道・東北・北関東・南関東・東京・北陸信越・東海・近畿・中国・四国・九州の11ブロックに分け、各ブロックごとに政党の得票に応じて議席を配分します。有権者は政党名を書いて投票し、各政党はあらかじめ提出した名簿の上位から順に当選者が決まる「拘束名簿式」が採用されています。議席配分にはドント式が用いられ、各政党の得票数を1・2・3と整数で順番に割り、商の大きい順に議席を割り当てます。
■ 重複立候補制度
同一候補者が小選挙区と比例代表の両方に立候補することが認められています(重複立候補)。小選挙区で落選した候補者でも、比例区での惜敗率(小選挙区での得票数を当選者の得票数で割った割合)に応じて比例代表で復活当選できる仕組みとなっています。ただし、小選挙区の候補者が有効投票数の10分の1未満の場合、比例代表での復活当選はできません。
具体例
A選挙区(定員1)で候補者が3人立候補した場合、最多得票の1人だけが当選する。同じ候補者が比例代表にも重複立候補していれば、小選挙区で落選しても惜敗率が高ければ比例で復活当選できる。

衆議院議員総選挙(小選挙区比例代表並立制)
ポイント整理
- ・被選挙権:25歳以上
- ・選挙権:18歳以上(2015年改正)
- ・小選挙区:289議席、各選挙区1人当選、候補者名で投票
- ・比例代表:176議席、全国11ブロック、政党名で投票
- ・比例代表の名簿方式:拘束名簿式
- ・議席配分:ドント式
- ・重複立候補:可(惜敗率で復活当選あり)
効果
- ・定数465(小選挙区289+比例代表176)
- ・任期4年(解散あり)
- ・重複立候補により比例での復活当選が可能
- ・小選挙区で有効投票数の1/10未満の得票者は比例での復活当選不可
重要メモ
- ・「衆議院=小選挙区(289)+比例代表(176)の並立制・1994年改正で導入・比例は拘束名簿式・重複立候補可」
- ・選挙制度:小選挙区比例代表並立制——1994年(平成6年)公職選挙法改正で中選挙区制から変更
- ・小選挙区制(289議席):1選挙区1名を選出——多数党に有利、死票が多い
- ・比例代表制(176議席):全国11ブロック——拘束名簿式(政党が候補者の当選順位を決める)
- ・重複立候補:小選挙区と比例代表の両方に立候補できる——惜敗率により復活当選あり
- ・任期4年・解散あり・被選挙権は満25歳以上
参議院議員通常選挙(選挙区比例代表並立制)
簡単にいうと
簡単にいうと、参議院の選挙は衆議院と異なり任期が6年と長く、3年ごとに半分だけ選挙する半数改選制が最大の特徴です。解散がないため「良識の府」と呼ばれます。比例の非拘束名簿式と重複立候補不可がポイントです。
■ 選挙区比例代表並立制
参議院議員通常選挙は、衆議院と異なり選挙区比例代表並立制が採用されています。定数248議席のうち148議席を選挙区で、100議席を比例代表で選出します。
■ 選挙区制
原則として都道府県を単位とする選挙区で行われます。ただし、人口の少ない「合区」が存在し、鳥取・島根を合わせて1選挙区、徳島・高知を合わせて1選挙区とする2つの合区が2015年の改正で設けられました。有権者は候補者個人の名前を書いて投票し、各選挙区の定数に応じて得票数の多い順に当選者が決まります(個人名での投票)。重複立候補は認められていません。
■ 比例代表制
全国を1つのブロックとし、全国単位で行われます。衆議院の拘束名簿式とは異なり、非拘束名簿式(個人名または政党名を書いて投票する方式)が採用されています。各政党はあらかじめ候補者名簿を提出しますが、各候補者が個人として獲得した得票数の多い順に当選者が決まります。政党名での票は各政党の得票として扱われ、その合計で政党全体の議席数が決まります(ドント式)。2018年の公職選挙法改正により、比例代表選挙で優先的に当選できる「特定枠」制度が導入されました。特定枠に記載された候補者は個人の得票数に関わらず優先的に当選できます。
■ 任期・改選
任期は6年で、3年ごとに全議席の半数(124議席)を選出する半数改選制をとっています。衆議院とは異なり解散制度はなく、定期的に改選が行われます。被選挙権は30歳以上です。
具体例
参院比例で政党Aが3議席獲得した場合、特定枠に記載された候補者から先に当選が確定し、残りの議席は個人得票数の多い順に決まる(2018年改正後)。

参議院議員通常選挙(選挙区比例代表並立制)
ポイント整理
- ・被選挙権:30歳以上
- ・選挙権:18歳以上
- ・選挙区:148議席、都道府県単位(合区あり)
- ・比例代表:100議席、全国1ブロック、非拘束名簿式
- ・重複立候補:不可
- ・任期:6年、3年ごとに半数改選
- ・解散:なし
効果
- ・定数248(選挙区148+比例代表100)
- ・任期6年(解散なし)、半数改選制
- ・比例は非拘束名簿式(個人名または政党名で投票)
- ・特定枠制度(2018年導入):個人得票に関わらず優先当選
- ・合区(鳥取・島根、徳島・高知)は2015年改正で導入
重要メモ
- ・「参議院=選挙区(148)+比例代表(100)の並立制・非拘束名簿式・3年ごとに半数改選・解散なし」
- ・選挙制度:選挙区比例代表並立制——都道府県単位の選挙区と全国1区の比例代表
- ・比例代表(100議席):全国1区・非拘束名簿式——個人名投票も可、得票数順に当選
- ・選挙区(148議席):都道府県単位——原則1人区から最大12人区(東京)まで
- ・任期6年・解散なし・3年ごとに半数改選——被選挙権は満30歳以上
- ・一票の格差問題:都道府県選挙区制のため衆議院より大きな格差が生じやすい
公職選挙法の主な改正
簡単にいうと
簡単にいうと、選挙のルールは時代とともに変わってきており、インターネット解禁や18歳投票権など、近年の改正が試験でよく問われます。各年代と改正内容のセットで覚えることがポイントです。
■ 公職選挙法の制定と主な改正
選挙に関するすべての事項は公職選挙法に定められており、社会の変化に合わせて幾度となく改正が重ねられてきました。試験では年代と改正内容のセットで問われることが多く、特に近年の重要改正を正確に押さえておく必要があります。
1950年に公職選挙法が制定・施行されました。1998年には衆議院・参議院の比例代表選挙において、海外に居住する日本人が投票できる在外投票制度が導入されました。2003年には期日前投票制度が導入され、投票日前日までに一定の事由(仕事・旅行・病気等)がある有権者が、指定された期日前投票所で事前に投票できるようになりました。
2006年には選挙区においても在外投票の範囲が拡大され、国外不在者投票制度が創設されました。2013年にはインターネット選挙運動が解禁されました。候補者・政党はウェブサイトやSNS・動画サイトを利用した選挙運動が可能となり、候補者・政党は電子メールを使った選挙運動も認められました。ただし、有権者が電子メールを使って特定の候補者への投票を促すことは禁止されています。同年、成年被後見人への選挙権が回復されました。
2015年には選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられました。また、参議院の合区として鳥取・島根を1選挙区、徳島・高知を1選挙区とすることが定められました。2016年には衆議院の定数配分にアダムズ方式が導入されました。アダムズ方式とは、人口に比例して各都道府県への議席数を算出する方式です。また参議院の定数が242から248議席に増員されました。2018年には参議院比例代表選挙に特定枠制度が導入されました(後述)。
具体例
2013年改正後は、候補者が公式TwitterアカウントでPRするのはOKだが、一般有権者がメールで「○○候補に投票して」と知人に送るのはNG。
ポイント整理
- ・1950年:公職選挙法制定・施行
- ・1998年:衆参比例代表での在外投票制度導入
- ・2003年:期日前投票制度導入
- ・2006年:選挙区での在外投票拡大、国外不在者投票制度創設
- ・2013年:インターネット選挙運動解禁、成年被後見人の選挙権回復
- ・2015年:選挙権年齢18歳以上に引き下げ、参院合区設置
- ・2016年:衆院定数配分にアダムズ方式導入、参院定数増(248議席)
- ・2018年:参院比例代表に特定枠制度導入
効果
- ・インターネット選挙運動:候補者・政党のSNS・ウェブ利用可、有権者のメールによる投票依頼は不可
- ・期日前投票:投票日前でも一定事由があれば事前投票可能
- ・選挙権:18歳以上(2015年)
- ・アダムズ方式:人口比例による議席配分(2016年)
- ・特定枠:参院比例で優先当選(2018年)
重要メモ
- ・「主な改正:選挙権年齢18歳引き下げ(2016年)・インターネット選挙運動解禁(2013年)・在外選挙制度整備など」
- ・2013年改正:インターネットを使った選挙運動を解禁——ウェブサイト・SNSでの選挙活動が可能に(メール配信は一部制限)
- ・2015年改正:選挙権年齢を満20歳以上から満18歳以上に引き下げ(2016年参院選から適用)
- ・在外選挙制度:海外に住む日本国民も国政選挙に投票できる——最高裁が在外日本人の選挙権制限を違憲と判断(2005年)
- ・期日前投票制度:投票日前でも投票できる制度——2003年導入、不在者投票よりも手続きが簡便
- ・連座制:候補者の親族・秘書等が買収などで有罪となった場合、候補者の当選を無効とし、同選挙区への立候補を禁止する制度
政党と政治資金(政治資金規正法・政党助成法)
簡単にいうと
簡単にいうと、政党へのお金の流れには厳格なルールがあり、企業や個人からの献金には制限があります。また、国からも「政党交付金」という補助金が出る仕組みになっています。政党交付金の交付要件と金額の計算式がポイントです。
■ 政治資金規正法
民主政治において欠かせないのが政党の存在です。政党が公明・公正な政治活動をしているかどうかをチェックするため、1948年に政治資金規正法が制定されました。
政治資金規正法は、政党・政治団体の収支を公開させ透明性を確保するための法律です。主な改正の流れとしては、1975年に企業献金の上限を定める総量規制が導入されました。1994年には企業から政治家個人への寄付が禁止されました(資金管理団体への寄付は当時まだ認められていました)。1999年には企業から資金管理団体への寄付も禁止されました。2005年には各々の政治団体(政党・政治資金団体)間の寄付に制限が設けられました。2007年には国会議員関係政治団体のすべての支出について領収書の公開が義務付けられました。
■ 政党助成法
政党助成法は1994年に制定されました。国会議員5人以上、または直近の国政選挙(衆議院・参議院を問わず)で得票率2%以上を獲得した政党に対して、国庫から政党交付金が支給されます。政党交付金の総額は、直近の国勢調査人口1人につき250円を乗じた額を基準として予算で定めます。交付額は議員数と得票率に応じて各政党へ配分されます。なお、政治家個人への企業・団体からの寄付は禁止されていますが、政党・政治資金団体への寄付については一定の範囲で認められています。
具体例
政党Aが国会議員10人を持ち、直近の選挙で得票率5%を獲得していれば政党交付金の交付対象となる。人口1億2千万人なら総額約300億円が各政党に議員数・得票率で配分される。

政党と政治資金
ポイント整理
- ・政治資金規正法(1948年制定)
- ・政党助成法(1994年制定)
- ・政党交付金の交付条件:国会議員5人以上 または 直近国政選挙の得票率2%以上
- ・企業・団体から政治家個人への寄付:禁止(1994年改正)
- ・企業・団体から資金管理団体への寄付:禁止(1999年改正)
- ・領収書公開義務:国会議員関係政治団体の全支出(2007年改正)
効果
- ・政党交付金の総額:人口1人あたり250円×直近国勢調査人口
- ・配分基準:議員数と得票率に応じて配分
- ・企業から政党・政治資金団体への寄付は一定範囲で認められる
- ・収支報告書・領収書の公開によって政治資金の透明性を確保
重要メモ
- ・「政治資金規正法=政治資金の透明化・収支報告義務・企業の個人献金禁止(1994年)・政党助成法=政党交付金は人口×250円」
- ・政治資金規正法(1948年制定):政治団体の収支報告を義務化——政治資金の公明正大化が目的
- ・企業献金規制の変遷:1975年に総規制額導入→1994年に企業から政治家個人への寄付を禁止→1999年に企業から資金管理団体への寄付も禁止
- ・政党助成法(1994年制定):①国会議員5人以上の政党、または②議員1人以上かつ直近の国政選挙で得票率2%以上の政党に政党交付金を支給
- ・政党交付金の総額:人口×250円を基準として予算で定める
- ・政治資金規正法の対象:政治団体の収支報告・資産等の公開——違反には刑事罰あり
省庁再編と中央省庁の組織
簡単にいうと
簡単にいうと、今の省庁の数や名前は2001年の大きな省庁再編で決まりました。22省庁から12省庁になり、その後も新しい庁が次々と設置されています。どの省庁が統合されたかと近年の新設庁がポイントです。
■ 省庁再編(2001年)
戦後の日本では行政の役割が多様化し、様々な省庁が増え続けました。各省庁間の連携不足(縦割り行政)や業務の非効率化などの問題を抱える中、2001年に森喜朗内閣のもとで中央省庁の再編が実施されました。
2001年の再編によって、それまでの1府22省庁体制から1府12省庁体制へと大幅に統合・整理されました。主な変更点は次の通りです。大蔵省は財務省に改称されました。文部省と科学技術庁が統合されて文部科学省となりました。労働省と厚生省が統合されて厚生労働省となりました。通商産業省は経済産業省となりました。建設省・運輸省・北海道開発庁・国土庁の4省庁が統合されて国土交通省が発足しました。また、総務省・経済産業省・外務省・法務省は概ね従来の省が再編・改称されたものです。内閣府が新設され、総合調整機能が強化されました。
■ 近年の新設庁
再編後も新たな行政課題に対応するため、次々と新しい行政機関が設置されています。2015年には文部科学省の外局としてスポーツ庁が設置されました。2019年4月には法務省の外局として出入国在留管理庁が設置されました。2020年1月には内閣府のもとにカジノ管理委員会が設置されました。2021年9月にはデジタル社会形成のための司令塔として、内閣府のもとにデジタル庁が設置されました。2023年4月には子どもに関する政策を一元的に担う機関として、内閣府のもとにこども家庭庁が設置されました。
■ 三公社の民営化と郵政民営化
三公社(日本電信電話公社・日本専売公社・日本国有鉄道)は中曽根内閣のもとで1985年から1987年にかけて民営化され(NTT・JT・JR)、郵政民営化は小泉内閣のもとで実施され、2007年に日本郵政となりました。
具体例
「旧・文部省+科学技術庁→文部科学省」「旧・労働省+厚生省→厚生労働省」「旧・建設省+運輸省など→国土交通省」の3つの統合が特に出題されやすい。

省庁再編(2001年:1府22省庁→1府12省庁)
ポイント整理
- ・2001年(森喜朗内閣):1府22省庁→1府12省庁に再編
- ・再編:大蔵省→財務省
- ・再編:文部省+科学技術庁→文部科学省
- ・再編:労働省+厚生省→厚生労働省
- ・再編:通商産業省→経済産業省
- ・再編:建設省+運輸省+北海道開発庁+国土庁→国土交通省
- ・2015年:スポーツ庁設置(文部科学省外局)
- ・2019年4月:出入国在留管理庁設置(法務省外局)
- ・2020年1月:カジノ管理委員会設置(内閣府)
- ・2021年9月:デジタル庁設置(内閣府)
- ・2023年4月:こども家庭庁設置(内閣府)
効果
- ・1府12省庁体制の確立(2001年)
- ・三公社の民営化:NTT(1985年)・JT(1985年)・JR(1987年)中曽根内閣
- ・郵政民営化:日本郵政設立(2007年)小泉内閣
- ・デジタル庁・こども家庭庁・カジノ管理委員会の設置(近年の新設庁)
重要メモ
- ・「2001年に中央省庁再編:1府22省庁→1府12省庁・森嘉朗内閣時代・三公社民営化(中曽根内閣)・郵政民営化(小泉内閣)」
- ・2001年省庁再編:森嘉朗内閣時代に実施——縦割り行政の弊害解消・効率化が目的
- ・主な統合:総理府+経済企画庁等→内閣府、自治省+郵政省+自治省→総務省、大蔵省→財務省、文部省+科学技術庁→文部科学省、厚生省+労働省→厚生労働省
- ・1府12省庁制:内閣府+総務省・法務省・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省・防衛省
- ・三公社民営化(中曽根内閣・1985〜1987年):日本電信電話公社→NTT、日本専売公社→JT、日本国有鉄道→JR
- ・郵政民営化(小泉内閣・2007年):郵政公社→日本郵政
- ・近年の新設庁:デジタル庁(2021年)・こども家庭庁(2023年)・出入国在留管理庁(2019年)
まとめ
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