第1節 経済用語
第2章 経済
行政書士試験の一般知識では、経済の基本用語が毎年出題されます。この節では、GDP・インフレ・デフレなどの頻出経済用語を学び、新聞記事レベルの経済ニュースを正確に理解できる力を養います。暗記だけでなく、用語同士のつながりを意識して学習しましょう。
インフレーションとは
簡単にいうと
簡単にいうと、インフレとは物価がじわじわ上がって、お金の価値が下がっていく状態のことです。需要型と費用型の2種類の原因と、程度による3分類がポイントです。
■ インフレーションとは
インフレーション(インフレ)とは、物価が持続的に上昇していく状態をいいます。物価が上昇するということは、同じ金額で買えるモノの量が減るということであり、相対的に通貨の価値は下落します。たとえばリンゴ1個が50円から100円に値上がりすれば、手元の1,000円で買えるリンゴの数は20個から10個に半減します。これがインフレーションの本質的な意味です。
■ 原因による分類
インフレは、その原因によって2種類に分類されます。第一に「ディマンドプル・インフレ(需要インフレ)」は、生産的な供給量よりも需要量のほうが多い状態から生じるインフレであり、好景気時に起こりやすいです。第二に「コストプッシュ・インフレ(費用インフレ)」は、人件費や原材料費の高騰によって企業のコストが上昇し、その分が価格に転嫁されることで物価が上昇するインフレです。
■ 程度による分類
インフレは、その程度によっても3種類に分類されます。「ハイパーインフレ」は物価が短期間で急激に上昇するもので、戦時中などの経済混乱期に見られます。「ギャロッピングインフレ」は年率10%を超えるほど急速に進むインフレを指します。「クリーピングインフレ」は年率数%程度で緩やかに物価が上昇していくもので、経済成長に伴う通常のインフレがこれに当たります。一般的に、企業の収益が増大し、賃金上昇につながることから、好景気の局面で起こりやすいとされます。
具体例
リンゴ1個50円→100円に値上がりする(インフレ)。コロナ禍後の資源高・円安による物価上昇もコストプッシュ・インフレの例。
ポイント整理
- ・物価が持続的に上昇していること
- ・通貨の価値が相対的に下落していること
効果
- ・同じ金額で購入できる財・サービスの量が減少する
- ・企業収益の増大・賃金上昇につながりやすい(好景気と連動)
- ・債務者が有利になる(借金の実質的負担が軽くなる)
重要メモ
- ・「インフレ=物価が継続的に上昇・通貨価値下落・需要超過型(ディマンドプル)と費用上昇型(コストプッシュ)に分類」
- ・インフレーション:物価が持続的に上昇する状態——通貨の価値が下がる(同じ金額で買えるものが減る)
- ・ディマンドプル・インフレ(需要インフレ):需要が供給を上回ることで物価が上昇
- ・コストプッシュ・インフレ(費用インフレ):原材料費・賃金の上昇が生産コストを押し上げ物価上昇
- ・程度による分類:ハイパーインフレ(急激な物価上昇)・ギャロッピングインフレ(年10%超)・クリーピングインフレ(年数%程度)
- ・スタグフレーション:景気後退(不況)と物価上昇が同時に起こる特殊な状態——1970年代オイルショック時に顕在化
デフレーションとデフレスパイラル
簡単にいうと
簡単にいうと、デフレとは物価がどんどん下がっていく状態ですが、それが悪循環(デフレスパイラル)につながるから問題なのです。物価下落→企業収益減→所得減→需要減の連鎖がポイントです。
■ デフレーションとは
デフレーション(デフレ)とは、物価が持続的に下落していく状態をいいます。物価が下落するということは、同じ金額でより多くのモノが買えるようになるため、相対的に通貨の価値は上昇します。たとえばリンゴ1個100円が50円に値下がりすれば、1,000円で買えるリンゴの数は2倍になります。一見すると消費者に有利に見えますが、実際には経済全体に深刻な悪影響を及ぼします。
■ デフレスパイラル
デフレが問題とされる最大の理由は「デフレスパイラル」と呼ばれる悪循環に陥るリスクがあるからです。デフレスパイラルとは、物価下落→企業収益の悪化→生産縮小・賃金削減→消費者の購買力低下→さらなる需要の減少→さらなる物価下落、という負の連鎖が止まらなくなる状態をいいます。日本では1990年代のバブル崩壊後から長期にわたってデフレが続いた経緯があり、「失われた20年」とも呼ばれます。
■ デフレへの対処
デフレへの対処として、政府・中央銀行は通貨量を増加させることで物価を押し上げ、インフレを誘発させる手法をとります。世の中に流通する通貨量が増えれば通貨の相対的価値が下がり、物価が上昇するからです。これがいわゆる金融緩和政策の理論的根拠であり、デフレスパイラルからの脱却を図る主要な手段とされています。
具体例
日本の1990年代バブル崩壊後の継続的な物価下落。企業が値下げ→利益減少→賃金カット→消費減退→さらに値下げ、の悪循環。
ポイント整理
- ・物価が持続的に下落していること
- ・通貨の価値が相対的に上昇していること
効果
- ・企業の収益が悪化し、生産縮小・人員削減につながる
- ・消費者の購買力が低下し需要がさらに減少する
- ・デフレスパイラル(物価下落の悪循環)に陥るリスクがある
- ・債権者が有利になる(貸したお金の実質的価値が上がる)
重要メモ
- ・「デフレ=物価が継続的に下落・通貨価値上昇・デフレスパイラル=物価下落→企業収益減→所得減→需要減の悪循環」
- ・デフレーション:物価が持続的に下落する状態——通貨の価値が上がる(同じ金額でより多く買える)
- ・デフレの弊害:①企業の売上・利益が減少②実質的な借金負担が増大③投資・消費が抑制される
- ・デフレスパイラル:物価下落→企業収益減少→賃金切り下げ・リストラ→所得減少→消費需要低下→さらなる物価下落という悪循環
- ・日本の「失われた20年」(1990年代〜2000年代):バブル崩壊後の長期デフレに苦しんだ典型例
- ・デフレ対策:金融緩和(金利引き下げ・量的緩和)・財政出動による需要喚起
GDP(国内総生産)
簡単にいうと
簡単にいうと、GDPとはニュースでよく出てくる「国の経済規模」を示す代表的な指標です。「国内」基準であることと、名目GDPと実質GDPの違いがポイントです。
■ GDPとは
GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)とは、国の豊かさを示す経済指標の代表的なものであり、ある国の国内において、一定期間(通常1年間)に生産されたすべての財・サービスの付加価値を合計したものをいいます。ここで重要なのは「国内」という地理的基準であり、その財・サービスを生産したのが日本国民であるか外国人であるかを問わず、日本国内で生産されたものであればGDPに含まれます。
■ GDPとGNPの違い
GDPとよく混同される概念としてGNP(Gross National Product:国民総生産)があります。GNPは「国民」が生産した付加価値の合計であり、国籍を基準とする点でGDPと異なります。たとえば日本企業の海外工場が生産した製品は、GNPには含まれますがGDPには含まれません。逆に、日本国内の外資系企業が生産した製品は、GDPには含まれますがGNPには含まれません。
■ 名目GDPと実質GDP
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の区別があります。名目GDPは、物価変動分をそのまま含んだ数値であり、実質GDPは物価変動分を除いて算出した数値です。経済の実態を正確に把握するためには、インフレ・デフレの影響を取り除いた実質GDPが参照されます。2021年度における日本の名目GDPは約550兆円とされ、世界第3位規模の経済規模を有します。
具体例
日本国内のトヨタ工場が生産した自動車→日本のGDPに含まれる。日本国内の外資系工場が生産した製品→日本のGDPに含まれる(GNPには含まれない)。

寡占と独占の規制構造
ポイント整理
- ・国内で生産されたものであること(地理的基準)
- ・一定期間(1年間)に生産された財・サービスであること
- ・付加価値ベースで計算されること(二重計算を避けるため)
効果
- ・経済規模の大小を国際比較する指標として機能する
- ・名目GDPは物価変動を含み、実質GDPは物価変動を除く
重要メモ
- ・「GDP=国内で1年間に生産された付加価値の総計・国籍問わず国内生産が対象・名目GDPと実質GDPの区別に注意」
- ・GDP(Gross Domestic Product):一定期間(1年間)に国内で生産されたすべての財・サービスの付加価値の合計
- ・国籍・国民ではなく国内基準——外国人が日本国内で生産したものもGDPに含まれる
- ・名目GDP:物価上昇分を含む(価格水準を考慮しない)・実質GDP:物価変動を差し引いた実質的な生産額
- ・GNP(国民総生産)との違い:GNPは国籍(国民)基準——海外在住の自国民の生産も含む
- ・経済成長率:実質GDPの前年比変化率——物価変動を除いた実質的な経済成長を示す指標
寡占・独占と独占禁止法
簡単にいうと
簡単にいうと、市場が少数企業に支配されると消費者に不利益が生じるため、独占禁止法で規制されています。カルテル・トラスト・コンツェルンの3形態と、コンツェルン(持株会社)が1997年に解禁された点がポイントです。
■ 寡占・独占とは
市場が少数の企業によって構成される状態を「寡占」といい、1社のみによって構成される状態を「独占」といいます。寡占や独占の状態が生じると、支配的な企業が価格を自由に設定できるようになるため、消費者が本来の競争市場よりも高い価格でモノを買わされたり、品質向上のための努力が不要になったりする弊害が生じます。このため、日本では独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)が制定されており、独占・寡占的状態を防止・規制しています。
■ 独占の主な形態(3つ)
第一に「カルテル(企業連合)」は、同一産業部門の複数の企業が、高い利潤を確保するために価格・生産量・販路などについて協定を結ぶことをいいます。市場を支配する目的で行われるため、独占禁止法により禁止されています。現在も禁止が継続されており、違反した場合には課徴金が課されます。
第二に「トラスト(企業合同)」は、同一産業部門の複数の企業が合併して1つの企業となり、市場を支配することをいいます。合併は原則として自由に行えますが、独占的な支配を実質的に確立する場合は独占禁止法で禁止されています。
第三に「コンツェルン(企業連鎖)」は、親会社(持株会社・親会社)が複数の子会社・孫会社の株式を保有することによって傘下に収め、グループ全体として市場を支配する形態をいいます。第二次世界大戦後に持株会社の設立は禁止されていましたが、国際競争力の強化を理由として1997年の独占禁止法改正により解禁されました。三井・三菱・住友などの財閥がコンツェルンの典型例とされます。
具体例
カルテル:石油会社が価格協定を結ぶ(禁止)。トラスト:A社とB社が合併してシェア90%を占める巨大企業になる(禁止)。コンツェルン:トヨタグループ(持株会社→子会社・関連会社群)。
ポイント整理
- ・【カルテル】同一産業部門の複数企業が価格・生産量などについて協定を結ぶこと
- ・【トラスト】同一産業部門の複数企業が合併して市場を支配すること
- ・【コンツェルン】持株会社が子会社等の株式を保有して傘下に収めること
効果
- ・【カルテル】独占禁止法により禁止(現在も継続)
- ・【トラスト】独占的支配を実質的に確立する場合は独占禁止法で禁止
- ・【コンツェルン(持株会社)】戦後は禁止されていたが1997年の法改正で解禁
重要メモ
- ・「独占=1社が市場支配・寡占=少数企業が市場支配・カルテル・トラスト・コンツェルンが独占形態・独占禁止法で規制」
- ・独占:1社のみが市場を支配する状態——競争がなく価格を自由に設定できる
- ・寡占:少数の企業が市場を支配する状態——価格カルテルなど競争制限行為が起きやすい
- ・カルテル(企業連合):複数企業が価格・生産量・販路について協定を結ぶ——独占禁止法で禁止
- ・トラスト(企業合同):複数企業が合併して1社化——独占を実質的に制限する場合は独占禁止法で規制
- ・コンツェルン(企業連携):親会社(持株会社)が株式保有を通じて多様な産業分野の子会社を傘下に置く——戦前の財閥に類似
- ・独占禁止法:公正取引委員会が執行——持株会社は当初禁止されていたが、その後の法改正で解禁
まとめ
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