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テキスト/基礎法学/第1節 紛争解決

第1節 紛争解決

第2章 紛争解決の方法

社会生活において紛争は避けられません。この節では、紛争を解決するための様々な方法を学びます。裁判だけでなく、裁判外の紛争処理(ADR)など多様な解決手段があることを理解し、試験頻出の三審制裁判員制度などの司法制度の基本構造を押さえましょう。

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裁判所の種類(三審制と裁判所の体系)

簡単にいうと

簡単にいうと、日本では一つの事件について3回まで審理を受けられる三審制をとっています。どの裁判所がどの段階で登場するか、図で頭に叩き込みましょう。裁判所の種類と審級の対応がポイントです。

■ 裁判所の種類

日本の裁判所は、最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の5種類です(裁判所法2条)。

■ 三審制

同一事件について3回まで審理を受けられる制度です。

■ 民事訴訟の審級

第一審が簡易裁判所の場合:簡易裁判所 →(控訴)地方裁判所 →(上告)高等裁判所 第一審が地方裁判所・家庭裁判所の場合:地方/家庭裁判所 →(控訴)高等裁判所 →(上告)最高裁判所

■ 刑事訴訟の審級

第一審が簡易裁判所の場合:簡易裁判所 →(控訴)高等裁判所 →(上告)最高裁判所 第一審が地方裁判所・家庭裁判所の場合:地方/家庭裁判所 →(控訴)高等裁判所 →(上告)最高裁判所

■ 重要ポイント

民事訴訟において第一審が簡易裁判所の場合、控訴裁判所は地方裁判所となります。刑事訴訟において第一審が簡易裁判所の場合、控訴裁判所は高等裁判所となります(民事と刑事で異なります)。 行政事件訴訟については、基本的に民事訴訟と同じですが、第一審が地方裁判所となります(簡易裁判所には提起できません)のが原則です。

裁判所の種類(三審制と裁判所の体系)

裁判所の種類(三審制と裁判所の体系)

重要メモ

  • 「日本の裁判所:最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所の5種類——三審制が原則」
  • 裁判所の種類(裁判所法):①最高裁判所②高等裁判所③地方裁判所④簡易裁判所⑤家庭裁判所
  • 三審制:同一事件について3つの段階で審理を受けられる制度——第一審→控訴審→上告審
  • 民事訴訟の審級:簡易裁判所(第一審)→地方裁判所(控訴)→高等裁判所(上告)→最高裁(上告)
  • 刑事訴訟の特則:第一審が簡易裁判所でも控訴裁判所は高等裁判所(民事と異なる)
2

最高裁判所

簡単にいうと

簡単にいうと、日本の裁判所のトップが最高裁判所です。上告に対して最終判断を下す終審裁判所で、憲法の番人とも呼ばれます。構成人数と大法廷・小法廷の違いがポイントです。

最高裁判所は上告に対して判断を下す終審裁判所であり、最高裁判所長官1名と最高裁判所判事14名の合計15名で構成されます(憲法79条1項、裁判所法5条)。

■ 小法廷と大法廷

・小法廷:5名で構成されます。通常の上告事件を審理します。 ・大法廷:15名全員で構成されます。

大法廷が開かれる主な場合: ①法令の憲法適合性が問題となる場合 ②判例変更の場合

最高裁判所は日本の最高裁判所として、違憲立法審査権を持つ終審裁判所として機能します。

重要メモ

  • 「最高裁判所は長官1名+判事14名の計15名構成(79条1項)・終審裁判所・大法廷(15名全員)と小法廷(5名)がある」
  • 最高裁判所の構成(裁判所法5条):最高裁長官1名+最高裁判事14名=計15名
  • 終審裁判所(81条):上告事件の最終判断機関・憲法の最終解釈権者
  • 大法廷(15名):重要な憲法判断・従来の判例変更等——全裁判官で審理
  • 小法廷(5名):通常の上告事件——3つの小法廷で処理
  • 最高裁長官の任命(6条2項):内閣が指名・天皇が任命
3

判決・決定・命令

簡単にいうと

簡単にいうと、裁判官の判断には「判決」「決定」「命令」の3種類があります。どれも裁判官の判断ですが、手続きや口頭弁論の要否、誰がするかが違います。この3つの区別がポイントです。

■ 裁判の種類

【判決】裁判所が重要な事項についての裁判であり、口頭弁論を行う必要があります。 【決定】法が解決を必要とする事項・付随的事項等について裁判所が行う裁判であり、口頭弁論を行う必要はありません。 【命令】法が解決を必要とする事項・付随的事項等について裁判官(単独)が行う裁判であり、口頭弁論を行う必要はありません。

■ 決定と命令の違い

・決定は「裁判所」が行います。 ・命令は「裁判官(単独)」が行います。

「命令」は「決定」と同じく「判決」より簡易な方式で行われる裁判ですが、裁判所でなく単独の裁判官が関与した場合の裁判であり、口頭弁論を経ることを要しません。

「過去問チャレンジ」より:「命令は、決定と同じく判決よりも簡易な方式で行われる裁判であるが、裁判所でなく少数の裁判官が関与している裁判である」(15-2-2)→ 誤りです(少数ではなく「単独の」裁判官)。

重要メモ

  • 「裁判の種類:判決(裁判所・口頭弁論必要)・決定(裁判所・口頭弁論不要)・命令(裁判官・口頭弁論不要)」
  • 判決:裁判所が行う重大事項の判断——必ず口頭弁論を行う必要がある
  • 決定:法律の解釈・付随的事項について裁判所が行う判断——口頭弁論は不要
  • 命令:法律の解釈等について「裁判官」が行う判断——裁判所ではなく個々の裁判官が行う・口頭弁論不要
  • 判決と決定・命令の違い:判決のみ口頭弁論が必須・決定と命令は簡易迅速な処理のため口頭弁論不要
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❶裁判員制度とは

簡単にいうと

簡単にいうと、2009年から始まった裁判員制度は、普通の市民が裁判に参加して、被告人が有罪かどうか、どんな刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。対象事件と構成人数がポイントです。

裁判員制度とは、司法制度改革の一環として、一定の刑事事件の第一審において国民から選ばれた裁判員と職業裁判官が協力して、 ①被告人が有罪かどうか ②有罪の場合どのような刑を科すか を決める制度です(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)。2009年(平成21年)から施行されています。

■ 対象事件(裁判員裁判の対象)

・法定刑に死刑または無期懲役・無期禁錮がある罪の刑事事件の第一審です。 ・故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件(死刑または無期懲役・無期禁錮がある罪)です。 例:殺人罪・強盗致死罪・放火罪など。

■ 合議体の構成(原則)

裁判官3名+裁判員6名で構成される合議体で審理します。

重要メモ

  • 「裁判員制度(2009年導入):一定の刑事事件の第一審で国民6名の裁判員と裁判官3名が協力して有罪・量刑を判断する制度」
  • 裁判員制度の導入:2009年(平成21年)から実施——司法制度改革の一環
  • 対象事件:法定刑に死刑または無期懲役・無期禁錮がある罪に係る刑事事件の第一審
  • 構成:裁判官3名+裁判員6名(合計9名)——原則
  • 裁判員の役割:①被告人が有罪か無罪か②有罪の場合の刑の量定
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❷裁判員制度の概要(選任の流れ)

簡単にいうと

簡単にいうと、裁判員はくじ引きや面接のような手続きを経て最終的に決まります。4段階の選任の流れを図で押さえましょう。選任手続きの流れがポイントです。

■ 国民が裁判員に選ばれるまでの流れ(4段階)

Ⅰ 候補者名簿の作成 選挙権を持つ者の中から、毎年、裁判所ごとに候補者名簿を作成します。

Ⅱ 裁判員候補者の選定 事件ごとに、名簿の中からその事件の候補者を抽選で選びます。

Ⅲ 裁判所での選任手続 候補者を裁判所に呼びます。辞退希望がある場合はその理由を裁判長が審査します。また、検察官・弁護人は候補者を尋問でき、不選任を申し立てることができます。

Ⅳ 裁判員の選任 不選任指名されなかった候補者から、抽選等により裁判員を選任します。

「過去問チャレンジ」より:わが国においては、2009年から国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与する裁判員制度が導入されています(14-1-オ改題)→ その通りです。

❷裁判員制度の概要(選任の流れ)

裁判員制度の選任の流れ

重要メモ

  • 「裁判員の選任:選挙権者名簿から毎年裁判所ごとに候補者を抽選→事件ごとに候補者を抽選→裁判所での選任手続→裁判員決定」
  • 候補者名簿作成:選挙権者名簿から毎年裁判所ごとに裁判員候補者を抽選
  • 事件ごとの抽選:候補者名簿から当該事件の候補者を抽選で選定
  • 選任手続:候補者への質問・辞退申出への対応・検察官・弁護人による不選任請求
  • 裁判員の決定:不選任指名されなかった候補者から抽選等で選任
  • 裁判員の義務:正当な理由なく辞退は不可——ただし一定の辞退事由(70歳以上・病気等)あり
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❶和解

簡単にいうと

簡単にいうと、裁判は時間もお金もかかります。そこで活躍するのがADR(裁判外紛争解決手続)です。その中で一番シンプルなのが「和解」——当事者が互いに歩み寄ることです。裁判上の和解と裁判外の和解の違いがポイントです。

裁判外の紛争解決(ADR: Alternative Dispute Resolution)とは、裁判よりも簡易迅速・低コストで紛争解決を目指す「裁判外紛争解決制度」です。裁判外の紛争解決の手段には主に①和解、②調停、③仲裁があります。

■ 和解

争っている当事者が互いに譲歩してその間に存在する争いをやめることをいいます。

■ 和解の種類

①裁判外の和解(訴訟外和解):裁判所外で当事者間またはその代理人が話し合い、争いをやめることについて合意することです(一般私法上の和解契約)。 ②裁判上の和解(訴訟上の和解):裁判に対して和解の申し立てをし、当事者が争いをやめることに合意すること→ 確定判決と同一の効力を有します。

「過去問チャレンジ」より:訴えの提起前に、簡易裁判所に和解の申し立てを行い、記された内容が調書に記載されると、その調書は確定判決と同一の効力が生じます(03-2-3)→ その通りです。

重要メモ

  • 「和解=当事者が互いに譲歩して紛争を終了させる合意——裁判外の和解(示談)と裁判上の和解(訴訟和解)の2種類・和解調書は確定判決と同一の効力」
  • 裁判外の和解(示談):裁判所を介さず当事者が話し合いで合意——示談書を作成
  • 裁判上の和解(訴訟和解・民事訴訟法267条):裁判所に和解を申し立て、調書に記載——確定判決と同一の効力
  • 和解成立の効果:当事者双方が譲歩して紛争を終了——訴訟は終了
  • 即決和解(民事訴訟法275条):訴訟提起前に簡易裁判所に和解申立て——成立すれば強制執行可
7

❷調停

簡単にいうと

簡単にいうと、当事者だけで解決できないなら、第三者に入ってもらって話し合いの場を作ってもらいましょう。それが「調停」です。裁判みたいに一方的に決めるのではなく、合意を目指す点がポイントです。

■ 調停

裁判所に当事者が出頭し、お互いの主張を折り合わせて紛争を解決する方法をいいます。

■ 調停の仕組み

民間の調停委員2人が裁判官と組んで(合計3名)、当事者の主張を聞き、合意の締結に向けた解決策を提示・仲介します。調停は非公開で行われます。

■ 調停成立の効力

調停が成立すると調停調書が作成され、その内容は確定判決と同一の効力(執行力)を持ちます。

■ 種類

・民事調停(民事調停法):金銭・不動産など民事上の紛争。 ・家事調停(家事事件手続法):離婚・相続など家事事件。 ・労働審判(労働審判法):労働紛争。

重要メモ

  • 「調停=裁判所に当事者が出頭し調停委員会(裁判官1名+調停委員複数名)が仲介する非公開の手続——当事者が合意しなければ成立しない(強制力なし)」
  • 調停の意義:裁判所が仲介し当事者の合意による紛争解決を目指す手続
  • 調停委員会の構成:裁判官1名+調停委員(複数名)——非公開の場で審理
  • 調停の強制力:当事者が合意しなければ成立しない——仲裁と異なり第三者が決定しない
  • 民事調停(民事調停法)と家事調停(家事事件手続法)の2種類——離婚・相続等は家事調停
  • 調停調書:調停が成立し調書に記載されると確定判決と同一の効力
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❸仲裁

簡単にいうと

簡単にいうと、仲裁は当事者が紛争の解決を第三者(仲裁人)に委ねて、その判断に従う方法です。和解や調停と違って、仲裁人の判断には必ず従わなければならない点が大きな特徴です。強制力の有無がポイントです。

■ 仲裁

当事者が紛争の解決を第三者(仲裁人)に委ね、仲裁人の判断によって示された事項に従い紛争の解決を図る方法をいいます。

仲裁人の判断(仲裁判断)に当事者は拘束されます(仲裁法39条・45条)。仲裁は私的な紛争解決手段であり、原則として当事者の合意(仲裁合意)が必要です。仲裁判断は確定判決と同一の効力を持ち、強制執行も可能です(仲裁法45条)。

■ 和解・調停・仲裁の比較

・和解:当事者が互いに譲歩して合意します(第三者の介入なし)。 ・調停:第三者(調停委員)が仲介し、合意を促します(合意が前提)。 ・仲裁:第三者(仲裁人)が判断を下し、当事者はその判断に拘束されます(合意不要)。

重要メモ

  • 「仲裁=当事者が紛争解決を第三者(仲裁人)に委ねる合意——仲裁判断に当事者は拘束される(強制力あり)・和解・調停と異なり当事者の同意不要で解決」
  • 仲裁の意義(仲裁法):当事者の合意により仲裁人が紛争を解決する手続
  • 仲裁の特徴:仲裁人の判断(仲裁判断)に当事者は拘束される——解決の強制力あり
  • 調停との違い:調停は当事者の合意が必要・仲裁は仲裁人の判断に服する義務あり
  • 仲裁合意:紛争を仲裁に付する旨の当事者間の合意——書面で行う必要あり(仲裁法13条)
  • 仲裁判断の効力:確定判決と同一の効力——強制執行も可能
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❶日本司法支援センター(法テラス)の設置

簡単にいうと

簡単にいうと、法律の問題はどこに相談すればいいか分からないことがありますね。そんな人のために作られたのが「法テラス」です。2006年に設立された総合的な法律支援機関で、5つの業務内容がポイントです。

司法制度改革の一環として、国民が利用しやすい司法制度にすることを目的として、1999年に司法制度改革審議会が設置され、提出された意見書に基づき様々な制度改革が実現されました。

日本司法支援センター(法テラス)は、法による紛争解決に必要な情報やサービスが受けられる社会の実現を基本理念とした「総合法律支援法」に基づき、2006年に設立された機関です。

■ 法テラスの業務(5つ)

①情報提供業務:弁護士・法律相談窓口の案内等。 ②民事法律扶助業務:無料法律相談、弁護士費用の立替等。 ③司法過疎対策業務:司法過疎地域の解消のための取組み。 ④犯罪被害者支援業務:被害者に対して損害・苦痛の回復のための法的情報提供等。 ⑤国選弁護等関連業務:国選弁護人等との契約締結等。

「過去問チャレンジ」より:日本司法支援センター(法テラス)が設立され、情報提供活動、民事法律扶助、国選弁護の態勢確保、いわゆる司法過疎地での法律サービスの提供および犯罪被害者支援等の業務を行うこととなりました(13-2-オ)→ その通りです。

重要メモ

  • 「法テラス(日本司法支援センター):総合法律支援法に基づき2006年設立——情報提供・民事法律扶助・司法過疎対策・犯罪被害者支援・国選弁護等の5業務」
  • 設立根拠:総合法律支援法に基づき2006年(平成18年)設立
  • 業務①情報提供業務:法律相談窓口・弁護士会等の案内
  • 業務②民事法律扶助業務:無料法律相談・弁護士費用の立替(資力のない人向け)
  • 業務③司法過疎対策業務:弁護士等が少ない地域での法律サービス提供
  • 業務④犯罪被害者支援業務:被害者への法制度に関する情報提供
  • 業務⑤国選弁護等関連業務:国選弁護人等との契約締結

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
紛争解決の手段
私的自治・ADR・裁判の3つ
ADRと裁判の違いを混同しない
ADR
裁判外紛争処理、仲裁判断は確定判決同様の効力
調停と仲裁の拘束力の違い
三審制
3回まで裁判を受ける権利、憲法保障
上告は原則法令違反のみ
裁判員制度
刑事第一審、裁判員6・裁判官3
民事事件や控訴審は対象外
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