第1節 法の分類・効力
第1章 法学
法には様々な種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。また、法が実際に効力を持つためには一定のルールがあり、複数の法が衝突する場合の優先順位も定められています。この節では、法の基本的な分類と効力に関するルールを学び、法がどのように適用されるのかを理解します。
法の分類
簡単にいうと
「法」はいくつもの切り口で分けられます。成文か不文か、国際か国内か、公か私か。この3つの地図を先に頭に入れておくと、あとの科目がつながります。
法は様々な観点から分類することができます。
形式による分類
・成文法:文書に書き表され、一定の手続と形式によって制定された法です。例として日本国憲法・民法・政令・条例などが挙げられます。
・不文法:一定の制定手続によらず、社会生活の中で現実に使用されている法です。例として判例法・慣習法などが挙げられます。
日本は成文法主義をとりますが、不文法(慣習法・判例法)も法源として認められています。
適用範囲による分類
・国際法:条約など、国家間の関係を規律する法です。
・国内法:憲法・行政法・民法・商法など、国内の法律関係を規律する法です。
規律する関係による分類
・公法:国家・公共団体と私人の関係、または国家・公共団体相互の関係を規律する法です。例として憲法・行政法が挙げられます。
・私法:私人と私人の間の権利義務を定めた法です。例として民法・商法が挙げられます。
判例法について
同種の事件について裁判所が同様の判断を繰り返すことによって、法と同じような拘束力を持つに至った規範を判例法といいます。
判決のうち、結論を導くうえで必要な部分を「判決理由(レイシオ・デシデンダイ)」といい、判例法の拘束力が認められます。それ以外の部分を「傍論(オビタ・ディクタム)」といい、判決の拘束力は認められません(英米法系)。
具体例
六法のうち、憲法・行政法は「国と私人の関係」を決めているので公法です。民法・商法は「私人どうしの関係」を決めているので私法です。刑法は犯罪と刑罰という国の刑罰権を定めるので公法に入ります。労働基準法のように、私人間の契約(雇用)に国が介入する法律は、公法と私法の両方の性格を持つため「社会法」と呼ばれることがあります。

法の分類
重要メモ
- ・3つの分類軸(形式・適用範囲・規律する関係)を区別できるかがポイント
- ・形式:成文法(憲法・法律・命令・条例・条約)/不文法(慣習法・判例法)
- ・適用範囲:国内法(憲法・民法など)/国際法(条約など)
- ・規律する関係:公法(憲法・行政法)/私法(民法・商法)
- ・判決理由(レイシオ・デシデンダイ)に拘束力あり。傍論(オビタ・ディクタム)に拘束力なし
日本の法秩序(上位法優先の原則)
簡単にいうと
法律がたくさんあっても、上位の法が下位の法に勝ちます。ピラミッドを思い浮かべて、上にあるものほど強い、と覚えてください。
上位法優先の原則
法令どうしの内容が矛盾・抵触する場合、憲法を頂点として、上位の法が下位の法に優先して適用されます。これを上位法優先の原則といいます。
日本の法秩序のピラミッド
上から順に次のようになります。
憲法 > 条約 > 法律 > 命令(政令・省令・規則) > 条例
憲法と条約の上下関係には学説上の争いがありますが、試験では憲法が優位に立つという立場(憲法優位説)を前提に考えてください。
なぜこの順番になるのか
憲法は国民が定めた最高法規で、これに反する法律・命令等は効力を持ちません(98条1項)。法律は国民の代表である国会がつくり、命令は法律の委任を受けて行政機関がつくります。つくり手が国民から遠くなるほど下位に置かれる、と考えると順番を思い出しやすくなります。
条例は地方議会が制定する自治立法です。「法律の範囲内」でしか制定できず(94条)、法律に反する条例は無効になります。
間違えやすいところ
条例を命令より上に置いてしまう誤りが目立ちます。条例は地方議会がつくる立派な立法ですが、国の命令(政令・省令)より下位です。
具体例
ある県が「県内では酒類の販売を一切禁止する」という条例をつくったとします。酒類の販売免許は酒税法という法律が定めており、その法律が一定の要件で販売を認めている以上、それを全面的に禁じる条例は「法律の範囲内」を超えます。この条例は無効です。逆に、法律が規制していない事柄について上乗せで規制する条例は、法律の趣旨に反しない限り有効とされます。

日本の法秩序(上位法優先の原則)
重要メモ
- ・上にあるものが下に勝つ、という一点がポイント
- ・法の序列:憲法>条約>法律>命令(政令・省令)>条例
- ・憲法の最高法規性(98条1項):憲法に反する法律・命令等は効力を有しない
- ・条例は「法律の範囲内」でのみ制定可能(94条)。法律に反する条例は無効
- ・条例は地方議会の立法だが、国の命令(政令・省令)より下位に注意
新法優先の原則
簡単にいうと
同じレベルの法律どうしがぶつかったときは、新しい方が勝ちます。ただし相手が特別法だと結論がひっくり返ります。
新法優先の原則とは
2つの法令の規定が相互に矛盾する内容である場合、新しく制定された法令の規定が旧法の規定に優先して適用されます(新法優先の原則・後法優先の原則)。
適用場面は、同位の法令(例:法律と法律)が矛盾・抵触するときです。
特別法との関係における注意点
ただし、同一の事項について特別法が先に制定され、一般法が後に制定された場合は、原則として旧法の特別法が新法の一般法に優先します(特別法優先の原則が新法優先に優先する場合があります)。
例として、商法(特別法・旧法)と新しく改正された民法(一般法・新法)が矛盾する場合には、旧法でも商法(特別法)が優先する場合があります。
具体例
同じ「法律」という段階にある2つの法律で、片方が「届出は書面で行う」、もう片方が後からできて「届出は電子データでもよい」と定めたとします。両者は矛盾しますから、後にできた法律が優先し、電子データでの届出が認められます。ところが、先にできた方が特定の業種だけを対象にした特別法だった場合は話が別です。あとからできた一般法より、先にできた特別法が優先します。

新法優先の原則
重要メモ
- ・同じ段階の法令どうしなら新しい方が勝つ、というのがポイント
- ・新法優先の原則(後法優先の原則):同位の法令間で矛盾すれば後に制定された方が優先
- ・適用場面は同位の法令間(法律と法律など)に限られる
- ・旧法の特別法と新法の一般法が矛盾する場合は、旧法でも特別法が優先する
特別法優先の原則
簡単にいうと
ピンポイントで決めた特別ルールと、ざっくり決めた一般ルールがあれば、特別ルールが勝ちます。民法と商法の関係がその代表例です。
特別法優先の原則とは
同じ事項について、一般的に規定したルールを一般法、特例を規定したルールを特別法といいます。2つの内容に矛盾が見られる場合は特別法が優先します(特別法優先の原則)。
具体例
例として、民法(一般法)と商法(特別法)が矛盾する場合には商法が優先します。
・「民法ではお金を貸しても原則利息は取らないというルール」 ・「商法ではお金を貸したら利息を取るというルール」 → この場合、商人であれば商法のルールが優先します。
新法との関係
旧法の特別法(商法)と新法の一般法(改正民法)が矛盾する場合は、旧法の特別法が優先します(特別法優先>新法優先が原則)。
具体例
AがBにお金を貸したとします。二人とも商人でない場合は民法が適用され、特約がなければ利息を請求できません。ところが二人が商人で、その貸付が商行為にあたる場合は、商法が民法の特別法として優先し、特約がなくても法定利息を請求できます。同じ「お金を貸した」という行為でも、当事者が商人かどうかで適用される法律が変わります。

❸特別法優先の原則
重要メモ
- ・特別ルールが一般ルールを押しのける、というのがポイント
- ・特別法優先の原則:同じ事項について、特例を定めた特別法が一般法に優先する
- ・代表例:民法(一般法)と商法(特別法)。商人間の取引では商法が優先
- ・旧法の特別法と新法の一般法が衝突した場合も、特別法が優先する
法の解釈
簡単にいうと
法律の言葉は幅を持って書かれているため、どう読むかを決める作業が必要になります。それが法の解釈です。
法の解釈とは
法の解釈とは、法文の意味内容を明らかにする作業をいいます。主要な解釈方法は以下の4種類です。
拡張解釈
法文の意味を普通より広く解釈します。
例:「車」に自動車と輪車(自転車)を含めます。
縮小解釈
法文の意味を普通より狭く解釈します。
例:「車」は四輪自動車のみと解釈し、自転車は含めません。
類推解釈
ある事項に規定がない場合、類似する事項の規定を当てはめます。
例:ホバークラフトは車に類似するとして「車」の規定を適用します。
※刑法では類推解釈は罪刑法定主義に反し、原則として禁止されています。
反対解釈
ある事項の規定を、それ以外の事項については逆に解釈します。
例:「車」しかダメと書いているので、車以外はすべて通行できると考えます。
準用
「準用」は、類推解釈を法律が明文で認めたものです(条文上「〜を準用する」と明記されます)。
具体例
「この公園に車を乗り入れてはならない」という規則があったとします。自転車も禁止だと読むのが拡張解釈、四輪車だけが禁止で自転車はよいと読むのが縮小解釈です。規則に書かれていないホバークラフトについて、車に似ているから同じく禁止だと読むのが類推解釈、車としか書いていないのだから車以外は乗り入れてよいと読むのが反対解釈です。同じ一文でも、どの解釈をとるかで結論が正反対になります。
重要メモ
- ・4種類の解釈を具体例で区別できるかがポイント
- ・拡張解釈:意味を通常より広く読む(「車」に自転車を含める)
- ・縮小解釈:意味を通常より狭く読む(「車」は四輪車のみ)
- ・類推解釈:規定のない事項に類似の規定をあてはめる。刑法では罪刑法定主義に反するため禁止
- ・反対解釈:規定にない事項は逆の結論とする。準用は法律が明文で認めた類推解釈
場所に対する効力
簡単にいうと
日本の法律が及ぶ範囲は、原則として日本の領域の中だけです。ただし日本の船や飛行機の中は例外になります。
属地主義(原則)
日本で制定した法律の効力は、原則として日本の領域内でのみ及びます。これを属地主義といいます。ここでいう領域とは、領土・領海・領空の3つです。
地方公共団体の条例も同じ考え方で、その地方公共団体の区域内でのみ効力を持ちます。東京都の条例が大阪府で適用されることはありません。
例外:日本の船舶・航空機の中
日本に属する船舶・航空機の中では、そこが外国の領域内や公海であっても、日本の法が適用される場合があります。
公海上には、そもそもどの国の主権も及びません。船内を無法地帯にしないために、船籍のある国の法を及ぼす必要があるからです。これを旗国主義と呼ぶこともあります。
間違えやすいところ
領域内であれば、相手が外国人であっても日本の法律が適用されます。「日本の法律は日本人だけに適用される」というのは誤りです。人を基準にするか場所を基準にするかは、次のテーマ(人に対する効力)とあわせて整理してください。
「過去問チャレンジ」より:わが国の法令は、原則としてわが国の領域内でのみ効力を有するが、わが国に属する船舶および航空機内では、外国の領域内や公海においても効力を有することがある(08-1-1)→ その通りです(正しい)。
具体例
日本の航空会社の旅客機が太平洋の上空を飛行中に、乗客どうしの傷害事件が起きたとします。そこは公海の上空でどの国の領空でもありませんが、機体は日本に属するため、日本の刑法が適用されます。
重要メモ
- ・場所を基準に効力範囲を決めるのが属地主義、というのがポイント
- ・原則:日本の法律は日本の領域(領土・領海・領空)内でのみ効力を持つ
- ・例外:日本の船舶・航空機内では外国領域内や公海でも日本の法律が及ぶことがある
- ・条例の効力は、その地方公共団体の区域内に限られる
- ・領域内であれば外国人にも日本の法律が適用される
人に対する効力(属地主義と属人主義)
簡単にいうと
誰に法律が及ぶかには、場所で決める考え方と、国籍で決める考え方の2つがあります。日本は前者を原則としています。
人に対する法の効力:2つの考え方
人に対する法の効力については、2つの考え方があります。
属地主義(居地主義):原則
法律の適用範囲を国内に限定し、国内でのみ適用する考え方です。
例:日本の刑法は日本国内でのみ適用されます(刑法1条)。
属人主義:補完的
自国民には国外でも自国の法律を適用するという考え方です。
例:国外でも日本人が放火・殺人・傷害等の重大犯罪を犯せば日本の刑法が適用されます(刑法3条)。
日本の刑法は属地主義を原則とし(刑法1条)、属人主義を補完的に採用しています(刑法3条)。
「過去問チャレンジ」より:わが国の法律は基本的には属地主義をとっており、法律によって日本国民以外の者に権利を付与することができない→ 誤りです(日本の法律は原則として属地主義をとる、は正しいですが、日本国民以外の者に権利付与できないは誤りです)(11-1-1)。
具体例
日本人Aがフランスで日本人Bを殺害したとします。犯行地はフランスなので属地主義では日本の刑法は及びませんが、刑法3条が国外犯を定めているため、Aには日本の刑法が適用されます。逆に、フランス人Cが日本国内で窃盗をした場合は、Cが外国人であっても犯行地が日本ですから、属地主義により日本の刑法が適用されます。
重要メモ
- ・原則は場所(属地主義)、例外として国籍(属人主義)で補う、という組み立てがポイント
- ・属地主義(原則・刑法1条):国内にいる者には外国人であっても日本の法律が適用される
- ・属人主義(例外・刑法3条):日本国民には国外でも日本の法律が適用される(殺人・放火など重大犯罪)
- ・刑法3条の2:国外で日本人を被害者とする一定の犯罪は、外国人にも日本の刑法が適用される
- ・「日本国民以外の者には権利を付与できない」は誤り
時に関する効力(公布と施行)
簡単にいうと
法律は成立してすぐ使えるわけではありません。公布され、施行日が来て、はじめて効力が生まれます。
公布と施行の違い
法律は、国会で制定された後、国民に知らせるために公布(官報による告知)され、施行期日が到来したときにはじめて効力を生じます(施行)。
・公布:法律の内容を国民に知らせることです(官報による公示)。 ・施行:法律の効力を発生させることです。
施行期日の定めがない場合
施行期日の定めがない場合は、公布の日から20日を経過した日に施行されます(法の適用に関する通則法2条)。
例:令和5年6月1日国会で制定 → 令和5年6月5日官報により公布 → 令和5年6月25日施行(20日経過)。
「過去問チャレンジ」より:法律は、その法律または他の法令に定められた日から施行されるが、施行期日の定めのない場合には公布の日から20日を経過した日から施行される(08-1-3)→ その通りです(正しい)。
具体例
ある法律が令和5年6月1日に国会で成立し、6月5日に官報で公布されたとします。この法律に施行期日の定めがなければ、公布の日から20日を経過した6月25日に施行されます。6月10日に起きた出来事には、まだこの法律は適用されません。成立日でも公布日でもなく、施行日が基準になる点に注意してください。

時に関する効力(公布と施行)
重要メモ
- ・公布と施行は別物、というのがポイント
- ・公布:法律の内容を国民に知らせること。官報によって行われる
- ・施行:法律の効力を発生させること。効力が生じるのは公布時ではなく施行時
- ・施行期日の定めがなければ、公布の日から20日を経過した日に施行される(法の適用に関する通則法2条)
- ・遡及処罰の禁止(憲法39条):実行時に適法だった行為を後の法律で処罰することはできない
まとめ
独学でも合格をつかみ取れる!
判例解説・テキスト・解説動画・演習まですべて網羅!
予備校代の1/30で、独学の不安をまるごと解決できます
無料登録後、アカウントページからかんたんにプレミアムへ切り替えられるよ。音声解説・解説動画・過去問・AI記述採点まで全機能が使えるようになるの!
- 行政書士試験に出る判例のわかりやすく丁寧な解説を、動画と音声で無制限に見放題・聞き放題!プレミアム限定

- テキスト各テーマの解説動画が見放題!連続再生・科目別・ブックマーク再生でスキマ時間に効率よく学べます。プレミアム限定

- 過去問の年度別・肢別演習無制限!何度も解きなおせます。マイページで苦手管理もばっちり。プレミアム限定

- 科目別テキストPDFダウンロード可能!ダウンロード後は半永久的に利用可能で、印刷したりご自身の好きな使い方で合格に近づけます。プレミアム限定

- テキストのブックマーク管理で苦手分野・何度も確認したい部分を徹底管理可能!プレミアム限定

- 記述式問題をAIで添削採点可能!最適なフィードバックで自分だけの強み・弱みを把握できる。プレミアム限定

プレミアムプラン
¥7,800〜 / 対象年度の本試験まで(税抜)
自動更新なし
決済は Stripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。全世界で利用されているStripeの厳格な審査をクリアした決済サービスなので安心です。カード情報は当サービスに保存されません。
スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。
判例解説の音声再生・過去問演習・AI記述採点をスマホ1台に。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。
✓ Webでプレミアム登録済みの方は、アプリでも全機能をそのままご利用いただけます。
- 判例の動画・音声解説をながら学習

- テキストPDFダウンロードで、紙でもオフラインでも

- 過去問・記述式演習がいつでも

- 苦手ブックマーク管理で弱点を集中復習

無料ダウンロード・iOS対応
