第1節 法の分類・効力
第1章 法学
法には様々な種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。また、法が実際に効力を持つためには一定のルールがあり、複数の法が衝突する場合の優先順位も定められています。この節では、法の基本的な分類と効力に関するルールを学び、法がどのように適用されるのかを理解します。
法の分類
簡単にいうと
簡単にいうと、「法」にはいろんな切り口での分類があります。成文か不文か、国際か国内か、公か私かという大きな地図を頭に入れておくことがポイントです。
法は様々な観点から分類することができます。
■ 形式による分類
・成文法:文書に書き表され、一定の手続と形式によって制定された法です。例として日本国憲法・民法・政令・条例などが挙げられます。
・不文法:一定の制定手続によらず、社会生活の中で現実に使用されている法です。例として判例法・慣習法などが挙げられます。
日本は成文法主義をとりますが、不文法(慣習法・判例法)も法源として認められています。
■ 適用範囲による分類
・国際法:条約など、国家間の関係を規律する法です。
・国内法:憲法・行政法・民法・商法など、国内の法律関係を規律する法です。
■ 規律する関係による分類
・公法:国家・公共団体と私人の関係、または国家・公共団体相互の関係を規律する法です。例として憲法・行政法が挙げられます。
・私法:私人と私人の間の権利義務を定めた法です。例として民法・商法が挙げられます。
■ 判例法について
同種の事件について裁判所が同様の判断を繰り返すことによって、法と同じような拘束力を持つに至った規範を判例法といいます。
判決のうち、結論を導くうえで必要な部分を「判決理由(レイシオ・デシデンダイ)」といい、判例法の拘束力が認められます。それ以外の部分を「傍論(オビタ・ディクタム)」といい、判決の拘束力は認められません(英米法系)。

法の分類
重要メモ
- ・「法の分類:成文法(憲法・法律・命令・条例・条約)と不文法(慣習法・判例法)・国内法と国際法・公法(憲法・行政法)と私法(民法・商法)」
- ・成文法:一定の手続・形式によって文書化された法——例:憲法・民法・政令・条例・条約
- ・不文法:文書化されていないが社会で効力を持つ法——例:慣習法(民法1条2項)・判例法
- ・公法と私法:公法は国家と個人の関係(憲法・行政法・刑法等)・私法は個人間の関係(民法・商法等)
- ・国内法と国際法:国内法は国内でのみ効力・国際法(条約等)は国家間の関係を規律
❶日本の法秩序(上位法優先の原則)
簡単にいうと
簡単にいうと、法律がたくさんあっても上位の法が下位の法に勝ちます。ピラミッドを頭にイメージして、上にあるものほど強いというのがポイントです。
■ 上位法優先の原則
法令相互の内容が矛盾・抵触する場合、憲法を頂点として上位の法が下位の法に優先して適用されます(上位法優先の原則)。
■ 日本の法秩序のピラミッド
日本の法秩序のピラミッドは上から次のようになっています。
憲法 > 法律 > 命令(政令等) > 条例
法律が憲法に違反していれば違憲・無効となります。条例は法律の範囲内で制定しなければなりません(地方自治法14条1項)。
なお、「条例」は地方議会が制定する自治立法であり、「命令」(政令・省令・規則等)より下位に位置します。

日本の法秩序(上位法優先の原則)
重要メモ
- ・「法の効力序列:憲法>条約>法律>政令(命令)>省令・規則>条例——上位法が下位法に優先」
- ・上位法優先の原則:法令が矛盾・衝突する場合、上位の法令が優先して適用される
- ・法の序列(上から):憲法→条約→法律→命令(政令・省令等)→条例
- ・憲法の最高法規性(98条1項):憲法に反する法律・命令等は効力を有しない
- ・条例と法律:条例は「法律の範囲内」で制定可能(94条)——法律に反する条例は無効
❷新法優先の原則
簡単にいうと
簡単にいうと、同じレベルの法律どうしがぶつかったときは新しい方が勝ちます。これが新法優先の原則(後法優先の原則)で、ただし特別法との関係には注意が必要というのがポイントです。
■ 新法優先の原則とは
2つの法令の規定が相互に矛盾する内容である場合、新しく制定された法令の規定が旧法の規定に優先して適用されます(新法優先の原則・後法優先の原則)。
適用場面は、同位の法令(例:法律と法律)が矛盾・抵触するときです。
■ 特別法との関係における注意点
ただし、同一の事項について特別法が先に制定され、一般法が後に制定された場合は、原則として旧法の特別法が新法の一般法に優先します(特別法優先の原則が新法優先に優先する場合があります)。
例として、商法(特別法・旧法)と新しく改正された民法(一般法・新法)が矛盾する場合には、旧法でも商法(特別法)が優先する場合があります。

新法優先の原則
重要メモ
- ・「同位の法令間で内容が矛盾する場合→後から制定された新法が旧法に優先して適用される」
- ・新法優先の原則(後法優先の原則):同じ効力の法令間では新しく制定されたものが古いものに優先
- ・適用場面:旧法と新法の規定が矛盾・衝突する場合——同位の法令間のルール
- ・注意:旧法の特別法と新法の一般法が矛盾する場合→特別法優先(新法でも一般法なら旧法の特別法が優先)
❸特別法優先の原則
簡単にいうと
簡単にいうと、ピンポイントで決めた特別ルールとざっくり決めた一般ルールがあったら、特別ルールが勝ちます。民法(一般法)と商法(特別法)の関係がその典型例というのがポイントです。
■ 特別法優先の原則とは
同じ事項について、一般的に規定したルールを一般法、特例を規定したルールを特別法といいます。2つの内容に矛盾が見られる場合は特別法が優先します(特別法優先の原則)。
■ 具体例
例として、民法(一般法)と商法(特別法)が矛盾する場合には商法が優先します。
・「民法ではお金を貸しても原則利息は取らないというルール」 ・「商法ではお金を貸したら利息を取るというルール」 → この場合、商人であれば商法のルールが優先します。
■ 新法との関係
旧法の特別法(商法)と新法の一般法(改正民法)が矛盾する場合は、旧法の特別法が優先します(特別法優先>新法優先が原則)。

❸特別法優先の原則
重要メモ
- ・「一般法と特別法が矛盾する場合→特別法が優先(特別法は一般法に優先する)・例:民法(一般法)と商法(特別法)」
- ・特別法優先の原則:同じ事項について一般的に規定した一般法より特例を規定した特別法が優先
- ・例:民法の無利息原則(一般法)<商法の法定利息規定(特別法)——商人間の取引では商法が優先
- ・新法と特別法の関係:旧法の特別法と新法の一般法が衝突した場合は旧法の特別法が優先
法の解釈
簡単にいうと
簡単にいうと、法律の言葉は曖昧なことが多く、どう読むかを決めるのが法の解釈です。4種類の解釈方法と、刑法では類推解釈が禁止される点がポイントです。
■ 法の解釈とは
法の解釈とは、法文の意味内容を明らかにする作業をいいます。主要な解釈方法は以下の4種類です。
■ 拡張解釈
法文の意味を普通より広く解釈します。
例:「車」に自動車と輪車(自転車)を含めます。
■ 縮小解釈
法文の意味を普通より狭く解釈します。
例:「車」は四輪自動車のみと解釈し、自転車は含めません。
■ 類推解釈
ある事項に規定がない場合、類似する事項の規定を当てはめます。
例:ホバークラフトは車に類似するとして「車」の規定を適用します。
※刑法では類推解釈は罪刑法定主義に反し、原則として禁止されています。
■ 反対解釈
ある事項の規定を、それ以外の事項については逆に解釈します。
例:「車」しかダメと書いているので、車以外はすべて通行できると考えます。
■ 準用
「準用」は、類推解釈を法律が明文で認めたものです(条文上「〜を準用する」と明記されます)。
重要メモ
- ・「法の解釈4種類:①拡張解釈(広く)②縮小解釈(狭く)③類推解釈(類似事項に適用)④反対解釈(規定にない事項は逆に解釈)——刑法では類推解釈は罪刑法定主義に反するため禁止」
- ・拡張解釈:法文の意味を通常より広く解釈する——例:「車」に自転車も含める
- ・縮小解釈:法文の意味を通常より狭く解釈する——例:「車」は四輪車のみ
- ・類推解釈:ある事項の規定を類似する別の事項にあてはめる——例:ホバークラフトも「車」として扱う
- ・反対解釈:規定している事項以外は逆の結論が妥当とする——例:「車」のみ禁止なら車以外は通行可
- ・刑法における類推解釈:罪刑法定主義(何が犯罪かは法律で明確に規定されなければならない)に反するため禁止
❶場所に対する効力
簡単にいうと
簡単にいうと、日本の法律は原則として日本の領域内でのみ効力を持ちます。ただし日本の船舶・航空機内には外国にいても日本の法律が及ぶことがあるというのがポイントです。
■ 属地主義(原則)
日本で制定した法律の効力は、原則として日本の領域(領土・領海・領空)内でのみ有効です(属地主義)。地方公共団体の条例はその地方公共団体の区域内でのみ効力を有します。
■ 例外:日本の船舶・航空機内
日本に属する船舶・航空機内では、外国の領域や公海においても日本の法が適用される場合があります。
「過去問チャレンジ」より:わが国の法令は、原則としてわが国の領域内でのみ効力を有するが、わが国に属する船舶および航空機内では、外国の領域内や公海においても効力を有することがある(08-1-1)→ その通りです(正しい)。
重要メモ
- ・「日本の法律の効力は原則として日本の領域(領土・領海・領空)内に及ぶ・日本の船舶・航空機内では外国領域・公海でも日本の法律が及ぶことがある」
- ・法律の場所的効力:日本で制定された法律は日本の領域内(領土・領海・領空)でのみ効力を持つのが原則
- ・例外:日本の船舶・航空機内では外国の領域内・公海においても日本の法律が効力を持つことがある
- ・条例の場所的効力:その地方公共団体の区域内のみで効力を持つ
❷人に対する効力(属地主義と属人主義)
簡単にいうと
簡単にいうと、日本の法律は原則として日本の国内にいる人に適用されます。ただし日本人が海外で重大犯罪を犯した場合には属人主義で対応するというのがポイントです。
■ 人に対する法の効力:2つの考え方
人に対する法の効力については、2つの考え方があります。
■ 属地主義(居地主義):原則
法律の適用範囲を国内に限定し、国内でのみ適用する考え方です。
例:日本の刑法は日本国内でのみ適用されます(刑法1条)。
■ 属人主義:補完的
自国民には国外でも自国の法律を適用するという考え方です。
例:国外でも日本人が放火・殺人・傷害等の重大犯罪を犯せば日本の刑法が適用されます(刑法3条)。
日本の刑法は属地主義を原則とし(刑法1条)、属人主義を補完的に採用しています(刑法3条)。
「過去問チャレンジ」より:わが国の法律は基本的には属地主義をとっており、法律によって日本国民以外の者に権利を付与することができない→ 誤りです(日本の法律は原則として属地主義をとる、は正しいですが、日本国民以外の者に権利付与できないは誤りです)(11-1-1)。
重要メモ
- ・「属地主義(原則):国内にいる人に適用・属人主義(例外):自国民には国外でも適用——日本の刑法は原則属地主義・重大犯罪は属人主義も採用(刑法3条)」
- ・属地主義(原則・刑法1条1項):法律の適用範囲を国内に限定——国内にいる者(外国人も含む)に適用
- ・属人主義(例外・刑法3条等):自国民には国外でも日本の法律を適用——放火・殺人等の重大犯罪
- ・属人主義の拡大(刑法3条の2):外国で日本人を殺した外国人にも日本の刑法が適用される
- ・日本の法律は原則として属地主義——属人主義は例外として限定的に採用
❸時に関する効力(公布と施行)
簡単にいうと
簡単にいうと、法律は作ったらすぐ使えるわけではなく、「公布」して「施行」されて初めて効力が生まれます。施行期日の定めがなければ公布から20日後に施行されるというのがポイントです。
■ 公布と施行の違い
法律は、国会で制定された後、国民に知らせるために公布(官報による告知)され、施行期日が到来したときにはじめて効力を生じます(施行)。
・公布:法律の内容を国民に知らせることです(官報による公示)。 ・施行:法律の効力を発生させることです。
■ 施行期日の定めがない場合
施行期日の定めがない場合は、公布の日から20日を経過した日に施行されます(法の適用に関する通則法2条)。
例:令和5年6月1日国会で制定 → 令和5年6月5日官報により公布 → 令和5年6月25日施行(20日経過)。
「過去問チャレンジ」より:法律は、その法律または他の法令に定められた日から施行されるが、施行期日の定めのない場合には公布の日から20日を経過した日から施行される(08-1-3)→ その通りです(正しい)。

時に関する効力(公布と施行)
重要メモ
- ・「公布=法律の内容を国民に知らせること(官報)・施行=法律の効力を発生させること——施行期日の定めがなければ公布日から20日経過した日に施行」
- ・公布:法律の内容を一般に知らせること——官報(国の機関紙)によって行われる
- ・施行:法律の効力を発生させること——公布≠施行(効力発生は施行時)
- ・施行期日(法の適用に関する通則法2条):法律に施行期日の定めがなければ公布日から20日経過した日に施行
- ・遡及効の禁止:法律は原則として過去に遡って効力を生じない(刑法については39条で不遡及の原則)
まとめ
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