原告の死亡と免職処分の取消訴訟
「本人が死んでも裁判は終わらない!― お金の権利は相続できる」
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事案の概要
このとき、「もう本人がいないんだから裁判を続ける意味はないのでは?」「遺族が代わりに裁判を引き継げるの?」という問題が生じました。
争点
判旨
【原文】
一、教育委員会法のもとにおいて、教育委員会が秘密会で免職処分の議決をした場合に、右秘密会で審議する旨の議決に公開違反の瑕疵があつたとしても、同委員会においては、従来から人事案件はすべて秘密会で審議しており、各委員がこれを了知したうえ全員一致で秘密会で審議する旨を議決したものであつて、その議決を公開の会議で行うことが議決の公正確保のために実質的にさして重要な意義を有せず、また、その議決は、一部関係者だけが傍聴できない状況のもとで行われた点において公開違反があるにとどまり、全く秘密裡にされたものであるとはいえないなど判示のような事情があるときは、右公開違反の瑕疵は、実質的に公開制度の趣旨目的に反するというに値しないほど軽微なものとして、免職処分の議決を取り消すべき事由にはあたらないものと解するのが相当である。
判決
関連法令の解説
この条文は、取消訴訟は「当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」に限り提起できると定めており、処分の効果がなくなった後も「取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者」を含むと明記しています。本判例では、原告の死亡後も「処分取消しで回復される給料請求権等の財産的利益」が残っている以上、訴えの利益は消滅しないと解釈されました。相続人が「回復すべき法律上の利益を有する者」として訴訟を承継できる根拠となる条文です。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
訴えの利益が消滅しない理由は「財産的利益の回復可能性が残っているから」という論理。「地位が相続できないから訴えの利益も消滅する」という引っかけに注意
注意:財産的利益の回復が一切見込めない場合(例:既に時効が完成しているなど)は、訴えの利益が消滅する可能性がある点も押さえること
本判例は公開違反の瑕疵が軽微として処分の取消事由に当たらないと判断した点も重要。「瑕疵があっても軽微なら取り消せない」という行政法上の基本原則の適用例
行政事件訴訟法9条1項の「処分の効果がなくなった後においてもなお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者」という条文の括弧書きと本判例の関係を整理しておくこと
関連判例
選挙の立候補と免職処分の取消訴訟
訴えの利益(狭義)は、処分の取消しによって「回復すべき法律上の利益」が現時点でも存在するか否かで判断される(行訴法9条1項) 立候補・当選によって公務員への復職が不可能となっても、給与請求権などの経済的利益が残る限り訴えの利益は消滅しない 注意:「訴えの利益」と「原告適格」はいずれも行訴法9条1項の問題だが、原告適格は「最初から提起できる資格があるか」、訴えの利益(狭義)は「訴訟係属中にその利益が失われていないか」という別の問いであることを区別すること 建築確認の取消訴訟では、工事完了後は訴えの利益が失われる(最判昭59.10.26)という対比判例とあわせて整理すること 令和6年度行政書士試験(問題17・選択肢1)で出題実績あり
先行処分の加重事由がある場合の訴えの利益(平成27年)
処分期間の終了=訴えの利益の消滅ではない。処分基準に加重規定がある場合は、加重される期間中は訴えの利益が存続する。 訴えの利益が残る要件は2つ:①公にされた処分基準に加重規定があること、②将来後行処分の対象となり得る状況にあること。この2要件をセットで押さえる。 処分基準は行政庁の裁量を拘束する。公にされた処分基準と異なる取扱いをすることは、特段の事情がない限り裁量権の逸脱・濫用にあたる。 注意:訴えの利益が存続するのは「処分基準による加重を受けるべき期間内」に限られる。その期間を過ぎれば訴えの利益は消滅する点を混同しないこと。 行政手続法12条1項の「公にされた処分基準」であることが要件。内部的な基準にとどまる場合とは区別して理解すること。
運転免許停止処分取消請求事件
運転免許停止処分は、停止期間の満了と処分日から1年間の無違反・無処分の両方が経過すると、訴えの利益が消滅する 「違反記録が警察に残る」「名誉・感情への影響」は事実上の効果にすぎず、法律上の利益ではない 注意:停止期間が満了しただけでは足りず、1年間無違反・無処分という要件も必要な点がひっかけになりやすい 行政事件訴訟法9条の「法律上の利益」は、法令上根拠のある具体的な不利益の回復を意味し、感情的・事実的な不利益は含まれない 本判例は訴えの利益の消滅の典型例として、取消訴訟の原告適格・訴えの利益の問題とセットで整理しておく
建築確認取消請求事件
建築確認の法的効果は「確認なしでは工事できない」という一点のみ 工事が完了すると建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われる 注意:保安林指定解除処分の取消訴訟(最判昭57.9.9)は代替施設設置後に訴えの利益が消滅した判例であり、本件と対比して押さえること 開発許可の取消訴訟は工事完了・検査済証交付後も訴えの利益が失われない(最判平27.12.14)との対比も重要 訴えの利益(狭義の訴えの利益)は口頭弁論終結時まで存続している必要がある
相続の対象(慰謝料請求権)
慰謝料請求権は一身専属権ではない→被害者が生前に請求の意思表示をしていなくても相続の対象となる 根拠:慰謝料請求権は単純な金銭債権であり、相続を禁じる法的根拠がない 民法711条の固有の慰謝料請求権と、被害者本人の慰謝料請求権は別個に併存する(711条があることは相続否定の理由にならない) 本判決以前の「残念判決」:被害者が「残念残念」と口にした程度でも意思表示とみなして相続を認めていた→本判決でその必要なしと変更 大法廷判決(9名中4名が反対意見)であり、それまでの大審院判例を変更した重要判例 姉妹は711条の固有慰謝料の対象外であるため、相続によってのみ慰謝料請求できる→本判決の実益が大きかった
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