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A民法親族・相続

相続の対象(慰謝料請求権)

最高裁判所1967-11-01最大判昭42.11.1
慰謝料請求権相続金銭債権一身専属性不法行為

慰謝料請求権は被害者が死亡しても相続される!生前に請求の意思表示がなくても当然に相続人に引き継がれるんだ

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なる子ちゃん

事案の概要

自転車に乗っていた被相続人Aが貨物自動車と衝突し、負傷した12日後に死亡しました。Aの相続人である姉妹2名が「被相続人が有していた慰謝料請求権を相続した」と主張し、貨物自動車の運転手を雇用していた会社に慰謝料の賠償を求めました。1審・原審はいずれも「慰謝料請求権は一身専属権であり、被害者が生前に請求の意思を表明しなければ相続の対象にならない」として請求を棄却しました。相続人が上告し、大法廷で判断されました。
争点

争点

不法行為によって精神的損害を受けた被害者が死亡した場合、生前に慰謝料請求の意思表示をしていなくても、相続人が慰謝料請求権を相続できるかどうかが争点です。
判旨

判旨

不法行為による慰謝料請求権は、財産上の損害賠償請求権と同じく金銭債権であり、また民法711条により同条所定の者が固有の慰謝料請求権を取得しうるとしても、それは被害者の取得する慰謝料請求権と併存しうるものであるから、被害者の慰謝料請求権が相続の対象とならないものではありません。当該被害者が死亡した場合は、相続人が当然に慰謝料請求権を相続します。被害者が生前に慰謝料を請求する意思を表明していなくても同様です。
【原文】

不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。

・・・

慰藉料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく・・・
関連法令の解説

関連法令の解説

民法896条
相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めていますが、「被相続人の一身に専属したもの」は除外されます。本判決は慰謝料請求権が一身専属権に当たらないと判示し、相続の対象となることを認めました。

民法711条

生命を害された被害者の父母・配偶者・子は、固有の慰謝料請求権を取得できると定めています。本判決は711条の固有の慰謝料請求権と被害者本人の慰謝料請求権は被害法益を異にし併存しうるものだと整理した上で、711条の存在は被害者の慰謝料請求権の相続を否定する理由にならないと判示しました。また姉妹は711条の対象外であるため、相続による取得を認める実益が大きかった点も背景にあります。
身近な例え

身近な例え

借金を返してもらう権利と同じで、慰謝料も「お金を請求する権利」だから、亡くなった人の財産として相続人が受け継げるということです。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

「交通事故で死んだ被害者の慰謝料請求権、家族は相続できるの?でも慰謝料って精神的苦痛に対するものだから、その人個人にしか認められない一身専属権なんじゃないの?」という話。
まず4つの理由で理解しよう。①慰謝料請求権は損害が生じた瞬間に発生する単純な金銭債権であり、一身専属的な権利とはいえない。②金銭債権である以上、財産上の損害賠償請求権と同じく、相続を禁じる法的根拠がない。③民法711条で近親者固有の慰謝料請求権が認められるが、それは被害者の慰謝料請求権とは別個に併存するものであり、被害者の慰謝料請求権の相続を否定する理由にならない。④被害者の親族が必ずしも711条による固有の請求権を取得できるとは限らない(被害者の姉妹は711条の対象外)。

結論:被害者が生前に請求の意思表示をしたかどうかにかかわらず、相続人は当然に慰謝料請求権を相続するんだ。従来の「残念判決」的な運用を大法廷がひっくり返した。

試験対策ポイント

慰謝料請求権は一身専属権ではない→被害者が生前に請求の意思表示をしていなくても相続の対象となる
根拠:慰謝料請求権は単純な金銭債権であり、相続を禁じる法的根拠がない

民法711条の固有の慰謝料請求権と、被害者本人の慰謝料請求権は別個に併存する(711条があることは相続否定の理由にならない)

本判決以前の「残念判決」:被害者が「残念残念」と口にした程度でも意思表示とみなして相続を認めていた→本判決でその必要なしと変更

大法廷判決(9名中4名が反対意見)であり、それまでの大審院判例を変更した重要判例

姉妹は711条の固有慰謝料の対象外であるため、相続によってのみ慰謝料請求できる→本判決の実益が大きかった
法令

関連法令

関連判例

関連判例

民法最高裁判所

医師の過失により医療水準にかなった医療行為が行われなかった場合

不法行為の因果関係の証明は原則として**「高度の蓋然性」**(通常人が疑いを差し挟まない程度の確信)が必要だが、本判例はその例外を認めた 証明が必要なのは**「相当程度の可能性」**であり、「高度の蓋然性」は不要。この2つの概念の違いを明確に押さえること 本判例の理論的な核心は、「生存できた可能性」自体を民法709条の「法律上保護される利益」として新たに認定した点にある 注意:認められる損害は慰謝料が中心であり、逸失利益など財産的損害の全額賠償が認められるわけではない点に注意 注意:「必ず助かった」(高度の蓋然性あり)→死亡との因果関係あり→全損害の賠償、「助かっていた可能性がある」(相当程度の可能性あり)→可能性侵害→慰謝料等の限定的賠償という2段階の構造を整理しておくこと

民法最高裁判所

無権代理人を相続した者が後に本人を相続

各相続パターンの結論を一覧で整理すること: 本人が無権代理人を相続:追認拒絶できる(最判昭37.4.20) 無権代理人が本人を相続:当然有効、拒絶できない(最判昭40.6.18) 無権代理人を先に相続し、後に本人も相続:当然有効、拒絶できない(本判決) 本人と無権代理人を共同相続:他の相続人全員の追認がない限り有効にならない(最判平5.1.21) 「誰が先に死んで、誰が何を相続したか」を図で時系列に整理することが理解の近道。本件のCは①無権代理人B→②本人Aの順で相続しているため、「無権代理人が本人を相続した」のと同視されて拒絶できない。

民法最高裁判所

不法行為に基づく損害賠償請求権の相殺

民法509条は「不法行為による損害賠償債務を受働債権(相殺される側)とする相殺」を禁止する規定であり、加害者側の相殺を制限するものである 被害者が損害賠償請求権を自動債権(相殺する側)として相殺することは禁止されない 注意:「不法行為が絡んだ相殺はすべて禁止」という誤解が典型的なひっかけ。禁止されるのは加害者が受働債権として使う場合に限られる 相殺の用語として、相殺を主張する側が持つ債権が自動債権、相手方の債権が受働債権であることをしっかり整理しておくこと 2020年改正民法509条では、①故意による不法行為と②人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償債務を受働債権とする相殺を禁止と明確化されており、改正前との違いも確認すること

民法最高裁判所

本人が無権代理人を相続

本人が無権代理人を相続した場合:追認拒絶できる・当然有効にならない(本判決) 無権代理人が本人を相続した場合:追認拒絶できない・当然有効になる(最判昭40.6.18) この2パターンの対比が試験の最頻出ひっかけ。「誰が誰を相続したか」を図で整理すること 注意:本人が追認を拒絶できても、無権代理人の損害賠償責任(民法117条)は相続して引き継ぐため、相手方Xからの損害賠償請求は拒絶できない(最判昭48.7.3) 本判決は「建物引渡所有権移転登記手続等請求」事件であり、参照法条は民法117条

民法最高裁判所

民法711条の固有の慰謝料請求

民法711条の固有慰謝料請求権者は原則「父母・配偶者・子」の3種類 列挙外の者でも①実質的に同視しうべき身分関係+②甚大な精神的苦痛の2要件を満たせば類推適用により請求可能(本判決) 類推適用の決め手は血縁・親族の近さではなく、長年の同居・庇護・依存という生活実態 注意:類推適用の主張・立証責任は請求者側が負う。関係があれば自動的に認められるわけではない 対比:711条の固有慰謝料と、被害者本人の慰謝料請求権(相続によるもの)は別個の権利として併存する(最大判昭42.11.1) 類推適用が認められうる者の例:内縁の配偶者・祖父母・孫・兄弟姉妹・事実上の養子など(ただし実態による個別判断が必要)

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