民法711条の固有の慰謝料請求
民法711条の列挙外でも「実質的に同視しうべき身分関係」+「甚大な精神的苦痛」の2要件を満たせば類推適用で固有の慰謝料を請求できる!
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事案の概要
争点
判旨
判決
関連法令の解説
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母・配偶者・子に対して、その損害を賠償しなければならないと定めています。本判決は同条が定める列挙を限定的に解すべきものではなく、文言上は該当しない者であっても2要件を満たせば類推適用により固有の慰謝料を請求できると判示しました。
民法709条・710条(不法行為の一般規定)
本判決が類推適用の根拠とする711条は、これらの一般規定を補完するものとして機能しています。なお、被害者が死亡しなくとも「死亡に比肩しうべき精神的苦痛」を受けた場合には、民法709条・710条に基づいて近親者が慰謝料を請求できます(最判昭33.8.5)。
身近な例え
ざっくりまとめ
裁判所の答えは「請求できる!」。ただし自動的にではなく、①被害者との間に711条所定の者と「実質的に同視しうべき身分関係」があること、②被害者の死亡により「甚大な精神的苦痛」を受けたこと、の2要件を満たせば類推適用が認められる。本件では20年の同居・庇護・依存という実態があり、両要件を満たすとして認容。「書いてないから請求できない」とはならない、実態で判断するという重要な判例。
試験対策ポイント
列挙外の者でも①実質的に同視しうべき身分関係+②甚大な精神的苦痛の2要件を満たせば類推適用により請求可能(本判決)
類推適用の決め手は血縁・親族の近さではなく、長年の同居・庇護・依存という生活実態
注意:類推適用の主張・立証責任は請求者側が負う。関係があれば自動的に認められるわけではない
対比:711条の固有慰謝料と、被害者本人の慰謝料請求権(相続によるもの)は別個の権利として併存する(最大判昭42.11.1)
類推適用が認められうる者の例:内縁の配偶者・祖父母・孫・兄弟姉妹・事実上の養子など(ただし実態による個別判断が必要)
関連法令
関連判例
相続の対象(慰謝料請求権)
慰謝料請求権は一身専属権ではない→被害者が生前に請求の意思表示をしていなくても相続の対象となる 根拠:慰謝料請求権は単純な金銭債権であり、相続を禁じる法的根拠がない 民法711条の固有の慰謝料請求権と、被害者本人の慰謝料請求権は別個に併存する(711条があることは相続否定の理由にならない) 本判決以前の「残念判決」:被害者が「残念残念」と口にした程度でも意思表示とみなして相続を認めていた→本判決でその必要なしと変更 大法廷判決(9名中4名が反対意見)であり、それまでの大審院判例を変更した重要判例 姉妹は711条の固有慰謝料の対象外であるため、相続によってのみ慰謝料請求できる→本判決の実益が大きかった
医師の過失により医療水準にかなった医療行為が行われなかった場合
不法行為の因果関係の証明は原則として**「高度の蓋然性」**(通常人が疑いを差し挟まない程度の確信)が必要だが、本判例はその例外を認めた 証明が必要なのは**「相当程度の可能性」**であり、「高度の蓋然性」は不要。この2つの概念の違いを明確に押さえること 本判例の理論的な核心は、「生存できた可能性」自体を民法709条の「法律上保護される利益」として新たに認定した点にある 注意:認められる損害は慰謝料が中心であり、逸失利益など財産的損害の全額賠償が認められるわけではない点に注意 注意:「必ず助かった」(高度の蓋然性あり)→死亡との因果関係あり→全損害の賠償、「助かっていた可能性がある」(相当程度の可能性あり)→可能性侵害→慰謝料等の限定的賠償という2段階の構造を整理しておくこと
不法行為に基づく損害賠償請求権の相殺
民法509条は「不法行為による損害賠償債務を受働債権(相殺される側)とする相殺」を禁止する規定であり、加害者側の相殺を制限するものである 被害者が損害賠償請求権を自動債権(相殺する側)として相殺することは禁止されない 注意:「不法行為が絡んだ相殺はすべて禁止」という誤解が典型的なひっかけ。禁止されるのは加害者が受働債権として使う場合に限られる 相殺の用語として、相殺を主張する側が持つ債権が自動債権、相手方の債権が受働債権であることをしっかり整理しておくこと 2020年改正民法509条では、①故意による不法行為と②人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償債務を受働債権とする相殺を禁止と明確化されており、改正前との違いも確認すること
同時履行の抗弁権が認められる場合(詐欺取消後の返還義務)
詐欺取消し後の原状回復義務には、民法533条が類推適用される(直接適用ではない) 売主の仮登記抹消義務と買主の売買代金返還義務は同時履行の関係にある 民法533条は有効な双務契約だけでなく、取消し後の返還義務にも類推適用できるという点が重要 類推適用の根拠は公平の原則であり、一方だけに先履行を強いることの不公平を是正する趣旨である 注意:関連法令として提示される「民法121条の2」は2020年改正で新設された条文であり、本判決(昭和47年)当時は存在しなかった。現行法では121条の2第1項が原状回復義務の根拠条文となる(第2項は無償行為の特則なので本件とは直接関係しない)
故意の条件成就
民法130条1項「故意の妨害→成就したとみなす」と、2項「不正な成就→成就しなかったとみなす」は対になる規定 本判例は改正前に「類推適用」で結論を出した判例であり、平成29年改正で民法130条2項として明文化された 改正後の2項では判決時の「故意に」が「不正に」と変更されている点に注意(試験でのひっかけポイント) 条件成就を「妨害」した場合も「故意に成就」させた場合も、どちらも信義則違反として相手方を保護する効果がある 「みなす」は反証を許さない強い効果(「推定する」とは区別すること) 本件の事案:アデランス(X)がアートネイチャー(Y)を罠にはめた「かつら事件」として覚えるとよい
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