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A民法債権総論

不法行為に基づく損害賠償請求権の相殺

最高裁判所1967-11-30最判昭42.11.30
民法509条相殺禁止自動債権受働債権不法行為損害賠償請求権加害者の相殺被害者の相殺

被害者が損害賠償債権を自動債権にして相殺するのはOK!509条は加害者側を縛る規定

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なる子ちゃん

事案の概要

不法行為によって損害を受けたXが、加害者Yに対して損害賠償請求権を持っていた。一方でXはYに対して別の債務も負っていた。Xは自分が持つ損害賠償請求権(自動債権)を使って、Yへの別の債務(受働債権)と相殺しようとした。民法509条は「不法行為による損害賠償債務を受働債権とする相殺は禁止」と定めているが、本件のようにXが損害賠償請求権を自動債権とする相殺まで禁止されるかが争われた。
争点

争点

不法行為の被害者が、加害者に対する損害賠償請求権を自動債権として、別の債務(受働債権)と相殺することは民法509条によって禁止されるか、が争点です。
判旨

判旨

民法509条は、不法行為の加害者が被害者への損害賠償義務(受働債権)を相殺によって消滅させ、被害者に現実の賠償金を受け取らせないことを防ぐ趣旨の規定です。被害者が自ら不法行為による損害賠償請求権を自動債権として相殺を主張する場合は、相殺によって被害者の損害回復が妨げられるわけではなく、むしろ被害者が自らの意思で債務を簡便に消滅させるものです。これは民法509条が禁止する趣旨には含まれません。つまり、509条の禁止は「不法行為の損害賠償債務を受働債権とする相殺」を対象とするものであり、被害者が損害賠償請求権を自動債権として用いる相殺は許されるということです。
【原文】

 民法第509条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするものであり、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも禁止するものではないと解するのが相当である。
判決

判決

被害者Xが損害賠償請求権を自動債権として行う相殺は民法509条に違反せず有効と判断された。
関連法令の解説

関連法令の解説

民法509条
この条文は「不法行為による損害賠償の債務を受働債権(相殺される側の債権)として、相殺することができない」と定めています。趣旨は、①被害者に現実の賠償金を受け取れるようにすること、②相殺によって不法行為を誘発しないことの二点です。この禁止は「加害者が損害賠償義務を相殺によって免れること」を防ぐためのものであり、被害者が損害賠償請求権を使って相殺することとは趣旨が異なります。
身近な例え

身近な例え

レストランで食事中に店員のミスで服を汚された客が、食事代と賠償金を差し引き清算するのはOKということ。店側から「賠償金と食事代を相殺して払わない」はダメだけど。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

民法509条って「不法行為の損害賠償債務との相殺は禁止」という規定なんだけど、これって「誰の相殺を禁止してるのか」がポイントだよ。最高裁は「加害者が被害者への賠償義務を相殺で免れること(受働債権にすること)を禁止してるんだ」と判断したんだよね。だから被害者が損害賠償請求権を自動債権にして相殺することは禁止されていないってことだよ。要するに、誰が相殺を主張するかによって結論が変わる、ってのが試験でよく狙われるポイント!

試験対策ポイント

民法509条は「不法行為による損害賠償債務を受働債権(相殺される側)とする相殺」を禁止する規定であり、加害者側の相殺を制限するものである
被害者が損害賠償請求権を自動債権(相殺する側)として相殺することは禁止されない

注意:「不法行為が絡んだ相殺はすべて禁止」という誤解が典型的なひっかけ。禁止されるのは加害者が受働債権として使う場合に限られる

相殺の用語として、相殺を主張する側が持つ債権が自動債権、相手方の債権が受働債権であることをしっかり整理しておくこと

2020年改正民法509条では、①故意による不法行為と②人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償債務を受働債権とする相殺を禁止と明確化されており、改正前との違いも確認すること
法令

関連法令

関連判例

関連判例

民法最高裁判所

相続の対象(慰謝料請求権)

慰謝料請求権は一身専属権ではない→被害者が生前に請求の意思表示をしていなくても相続の対象となる 根拠:慰謝料請求権は単純な金銭債権であり、相続を禁じる法的根拠がない 民法711条の固有の慰謝料請求権と、被害者本人の慰謝料請求権は別個に併存する(711条があることは相続否定の理由にならない) 本判決以前の「残念判決」:被害者が「残念残念」と口にした程度でも意思表示とみなして相続を認めていた→本判決でその必要なしと変更 大法廷判決(9名中4名が反対意見)であり、それまでの大審院判例を変更した重要判例 姉妹は711条の固有慰謝料の対象外であるため、相続によってのみ慰謝料請求できる→本判決の実益が大きかった

民法最高裁判所

医師の過失により医療水準にかなった医療行為が行われなかった場合

不法行為の因果関係の証明は原則として**「高度の蓋然性」**(通常人が疑いを差し挟まない程度の確信)が必要だが、本判例はその例外を認めた 証明が必要なのは**「相当程度の可能性」**であり、「高度の蓋然性」は不要。この2つの概念の違いを明確に押さえること 本判例の理論的な核心は、「生存できた可能性」自体を民法709条の「法律上保護される利益」として新たに認定した点にある 注意:認められる損害は慰謝料が中心であり、逸失利益など財産的損害の全額賠償が認められるわけではない点に注意 注意:「必ず助かった」(高度の蓋然性あり)→死亡との因果関係あり→全損害の賠償、「助かっていた可能性がある」(相当程度の可能性あり)→可能性侵害→慰謝料等の限定的賠償という2段階の構造を整理しておくこと

民法最高裁判所

民法711条の固有の慰謝料請求

民法711条の固有慰謝料請求権者は原則「父母・配偶者・子」の3種類 列挙外の者でも①実質的に同視しうべき身分関係+②甚大な精神的苦痛の2要件を満たせば類推適用により請求可能(本判決) 類推適用の決め手は血縁・親族の近さではなく、長年の同居・庇護・依存という生活実態 注意:類推適用の主張・立証責任は請求者側が負う。関係があれば自動的に認められるわけではない 対比:711条の固有慰謝料と、被害者本人の慰謝料請求権(相続によるもの)は別個の権利として併存する(最大判昭42.11.1) 類推適用が認められうる者の例:内縁の配偶者・祖父母・孫・兄弟姉妹・事実上の養子など(ただし実態による個別判断が必要)

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