「月刊ペン」事件
私人の私生活でも社会的影響力があれば「公共の利害に関する事実」になる!
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事案の概要
争点
判旨
【判旨】
最高裁は、一審・二審が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたらないと判断したことを職権で見直しました。たとえ私人の私生活上の行状であっても、その人が関わる社会的活動の性質と、それを通じて社会に及ぼす影響力の程度によっては、社会的活動への批判・評価の資料として「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合があると判示しました。本件の宗教団体会長は、多数の信徒を持つ有数の宗教団体において教義を身をもって実践すべき信仰上のほぼ絶対的な指導者であり、その言動が信徒の精神生活等に重大な影響を与える立場にあったため、その私生活上の行状も「公共ノ利害ニ関スル事実」に該当すると認めました。また、この判断は摘示された事実の内容・性質から客観的に行うべきであり、表現方法や取材の程度は公益目的の有無の判断において考慮すべきものであって、「公共ノ利害ニ関スル事実」への該当性判断を左右するものではないとしました。つまり、「どう書いたか」ではなく「何を書いたか」の内容・性質で判断されるということです。
【原文】
たとえ私人の私生活上の行状であっても、その関与する社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度等の如何によっては、その社会的活動への批判ないし評価の一つの資料として、刑法230条の2第1項の「公共ノ利害ニ関スル事実」に該当する場合がある。
刑法230条の2第1項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」に該当するかの判断においては、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断がなされるべきであって、事実を摘示する際の表現方法や事実調査の程度等は、同条のいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべき事象であり、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」に該当するか否かの判断を左右するものではない。
判決
関連法令の解説
この条文は、公共の利害に関する事実について、もっぱら公益を目的として摘示し、かつそれが真実であることを証明した場合には名誉毀損罪は成立しないと定めています。表現の自由と名誉権の調整を図った規定です。本判例では「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるかどうかの判断基準が正面から問われ、私人の私生活であっても社会的活動の性質や影響力によっては該当しうるという基準が示されました。
憲法21条1項
この条文は表現の自由を保障しています。名誉毀損罪による刑事規制は表現の自由を制約するものであるため、どの範囲まで免責を認めるかは表現の自由の保障範囲に直結します。刑法230条の2はこの憲法上の要請を受けた規定です。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
私人の私生活に関する事実であっても、その者の社会的活動の性質と影響力の程度によっては「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合がある
注意:「公共ノ利害ニ関スル事実」への該当性判断において、表現方法や取材・調査の程度は考慮されない。これらは公益目的の有無の判断で考慮されるものである
注意:本判例は最高裁が職権で原判決を破棄した点も重要。上告理由が認められたわけではない
名誉毀損の免責には「公共の利害に関する事実」+「公益目的」+「真実性の証明」の3要件が必要(差し戻し審では真実性が認められず有罪となった)
関連法令
関連判例
サンケイ新聞事件
憲法21条は私人間に直接適用されない。国家対個人のルールであり、私人どうしの関係への直接適用・類推適用は否定されている。 反論権(アクセス権)は、具体的な成文法がない限り認められない。「たやすく認めることはできない」という表現はそのまま出題される。 反論権を認めることで生じる「萎縮効果」が表現の自由を間接的に侵すおそれがあるとした点も重要。単純に否定するのではなく、理由の構造を理解すること。 注意:不法行為(名誉毀損など)が成立する場合は、民法723条の名誉回復処分として反論文掲載が認められる余地は残されている。「一切認められない」と覚えると誤答になる。 本件では意見広告による名誉毀損の成立も否定された。広告内容が政党批判であっても、それだけで不法行為にはならないとされた点も確認すること。
猿払事件
合憲性の判断基準は合理的関連性の基準:①目的の正当性、②目的と手段の合理的関連性、③利益の均衡 勤務時間外・職務と無関係・私人的立場での行為であっても禁止は合憲とされた点が重要 注意:堀越事件(最判平24.12.7)では同じ行為類型でも有罪とならない場合があるとして猿払事件と事実上の射程が限定された 公務員の政治活動制限の根拠は憲法15条2項(全体の奉仕者) 人事院規則への委任は白紙委任にあたらない(最判平24.12.7)
立川反戦ビラ配布事件
憲法21条1項の表現の自由は絶対無制限ではなく、公共の福祉による合理的な制限を受ける 問われているのは「表現の処罰」ではなく**「表現手段としての立入り行為の処罰」**の合憲性 宿舎の共用部分・敷地は刑法130条の**「人の看守する邸宅」およびその囲繞地**にあたる 「侵入」の意味:管理権者の意思に反して立ち入ること(管理権説) 処罰が合憲とされた実質的根拠:私的生活を営む居住者の私生活の平穏を侵害するから 対比:葛飾政党ビラ配布事件(最判平21.11.30)では民間分譲マンションの事案で同様に合憲と判断
教科書検定事件
教科書検定は憲法21条2項の検閲にあたらない(理由:一般図書として出版可能であり、発表禁止目的・発表前審査の特質がないため) 教科書は学術研究発表の場ではないため、検定は憲法23条の学問の自由(研究発表の自由)を直接侵害しない 国は子どもに適切な教育を保障するために必要かつ相当な範囲で教育内容を決定できる(憲法26条合憲の根拠) 個別の検定処分が国賠法上違法になる基準:「審議会の判断過程に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠した場合」 注意:制度全体は合憲だが、個別処分は専門家の見解を無視するなど著しく不合理な場合は裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法になりうる 本件は第一次家永教科書訴訟(家永全面敗訴)であり、第三次訴訟(最判平9.8.29)では4件について裁量権逸脱が認められた点と混同しないこと
税関検査事件
検閲とは「行政権が主体」「発表前」「網羅的・一般的な審査」「発表禁止を目的」の4要素をすべて満たすものをいう 検閲は絶対的禁止であり、公共の福祉による制限も一切認められない 税関検査は検閲にあたらない。輸入禁制品の確認にすぎず、国内での発表自体を禁じるものではないため 注意:検閲にあたらなくても、表現の自由(21条1項)への制約として別途違憲性が問われる場合がある 裁判所による事前差止め(北方ジャーナル事件など)は行政権による検閲ではないため、21条2項の「検閲」には該当しないとされている
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