宅建業者に対する権限不行使
宅建業者への監督権限を行使しなかった知事の不作為は、著しく不合理でない限り国賠法上の違法にはあたらない
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事案の概要
争点
判旨
判決
関連法令の解説
公権力の行使にあたる公務員が職務を行うについて故意または過失によって違法に他人に損害を加えたとき、国または公共団体がこれを賠償する責任を負うと定めています。本件では「権限を行使しなかった不作為」が「違法」にあたるかどうかが争われました。
宅地建物取引業法65条2項(業務停止処分)
知事は宅建業者が業務に関し取引関係者に損害を与えるなど一定の事由に該当する場合、1年以内の期間の業務停止を命ずることができると定めています。本判決は、この権限行使は「知事等の専門的判断に基づく合理的裁量」に委ねられており、行使しなかっただけでは直ちに違法とはならないと判断しました。
宅地建物取引業法66条9号(免許取消処分)
業務停止事由に該当し情状が特に重いときに免許を取り消すことができると定めています。本判決は、この要件の認定にも裁量の余地があるとして、権限不行使が直ちに違法とはならないとしました。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
監督権限の不行使は、原則として国家賠償法1条1項の違法にはあたらない
権限不行使が違法となるのは、「具体的事情のもとで権限の趣旨・目的に照らして著しく不合理と認められるとき」という例外的な場合に限られる
注意:「行政が動かなかった=違法・国賠成立」ではなく、裁量の幅と著しい不合理の有無が判断の分かれ目
不作為による国家賠償は成立し得るが、その要件は積極的違法行為よりも厳しく限定される
本件は「裁量権の消極的濫用」論の重要判例として、薬事法権限不行使事件(最判平7.6.23)とセットで理解すること
関連法令
関連判例
水俣病の拡大と規制権限の不行使
規制権限の不行使(何もしないこと)も、一定の場合に国家賠償法1条1項の違法にあたる 違法となる基準:権限不行使が著しく合理性を欠く場合(裁量の逸脱・濫用) 違法性判断の3要素:①被害の深刻さ、②原因と排出源の認識可能性、③規制措置の実行可能性 注意:科学的知見が不十分な時点での不行使は違法とならないが、十分な知見が揃った後の放置は違法 規制権限不行使の違法性が争われる判例として、宅建業法の監督処分権限不行使(最判平元.11.24)とも対比して整理すること
武蔵野マンション事件
行政指導として寄付を求めること自体は任意性が確保されている限り適法 制裁措置を背景に事実上の強制となっている場合は行政指導の限度を超えた違法な公権力の行使 判断のポイント:①制裁措置の存在、②従わなければ事実上断念せざるを得ない状況、③実際に制裁が実行されていた事実 注意:目的が正当(市民の生活環境保護)で住民の支持があっても、手段が強制的であれば違法 行政手続法32条(行政指導の一般原則・不利益取扱いの禁止)と本判例の法理をセットで理解すること
スナック事件
不作為も国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に含まれる。積極的な加害行為がなくても賠償責任が生じうる。 違法な不作為が認められるには、法令上の作為義務が存在することが前提。義務の根拠として銃砲刀剣類所持等取締法24条の2第2項が示された点を押さえる。 「危害を及ぼすおそれが著しい状況」という事実認定が義務発生のカギ。どんな状況でも保管義務が生じるわけではなく、具体的な危険性の認識可能性が必要。 注意:「不作為は一切国賠の対象にならない」は誤り。本判例はその反対を示しており、ひっかけとして頻出。 調査義務の懈怠も違法性の根拠となる点も重要。状況を調査すれば危険性を認識できたのに調査しなかった点も義務違反として評価されている。
児童養護施設事件
運営主体が民間であっても公務の委託を受けていれば「公権力の行使」にあたる。民間法人の職員による行為も国賠法の適用対象となりうる。 国賠責任が成立する場面では民法の使用者責任は排除される。国賠法が民法の特別法として優先されるため、両責任を並行して問うことはできない。 職員個人の民法709条責任も否定される。国賠責任が成立する場合、被用者個人の不法行為責任も問えない点とあわせて整理すること。 注意:「民間だから民法で訴える」という発想は通用しない。委託の実態が公務かどうかによって適用法が決まる点は頻出のひっかけ。 被害者の救済窓口は国または都道府県。国賠法が適用される場合、被害者は社会福祉法人ではなく都道府県等に対して賠償請求することになる点も確認しておくこと。
税務署長による所得税更正処分
更正処分が結果的に過大認定であったとしても、そのことだけで直ちに国家賠償法1条1項の違法にはならない 違法と評価されるのは、税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を怠り、漫然と更正をしたと認められる場合に限られる 注意:「結果が間違っていた=違法」ではなく、**職務遂行プロセス(注意義務の履行)**が問われる 納税者が調査に非協力で必要経費の過少申告を訂正しなかった事情も、違法性を否定する理由のひとつとされた **「漫然と」**という言葉は判旨のキーワードであり、試験でそのまま問われることがある
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