S行政法国家賠償・損失補償
水俣病の拡大と規制権限の不行使
最高裁判所2004-10-15
規制権限の不行使著しく合理性を欠く裁量の逸脱・濫用水俣病国家賠償
規制権限の不行使も違法になる
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事案の概要
熊本県水俣市で、工場排水に含まれる有機水銀によって深刻な健康被害(水俣病)が発生しました。国と県は法律に基づいて工場の操業を規制する権限を持っていましたが、長年にわたってその権限を行使せず、被害が拡大しました。被害者たちは、国と県が規制権限を使わなかったことが違法だとして、損害賠償を求めて訴えを起こしました。
争点
水俣病の被害拡大を防ぐために、国と県が規制権限を使わなかったことが、国家賠償法上の違法行為にあたるかどうか。
判旨
規制権限の行使は広い裁量(行政機関の判断の余地)が認められるため、権限を使わなかったことが違法となるのは「著しく合理性を欠く」場合だけである。昭和43年9月以前は科学的知見が不十分だったため違法とならないが、それ以降は十分な知見があったにもかかわらず放置したため、違法と判断された。
関連法令の解説
国家賠償法1条1項は、公務員が職務上の義務に違反して他人に損害を与えた場合、国や地方公共団体が賠償責任を負うと定めています。この判例では、規制権限を行使しなかったことが違法な「職務上の義務違反」にあたるかが問題となりました。
身近な例え
子供が危険な遊びをしているのを見た親が、止める権限と義務があるのに放置して怪我をさせたら、親の責任が問われるのと似ています。
ざっくりまとめ
要するに、行政が規制権限を持っているのに使わないで放置したら、それも違法になることがあるってこと!ただし、科学的知見が十分になった後に限られます。
試験対策ポイント
【試験で押さえるポイント】 ①規制権限の不行使が違法となる基準:「著しく合理性を欠く」場合に限定される(裁量論) ②時期的な区分:昭和43年9月が分岐点。それ以前は科学的知見が不十分で違法性なし、それ以降は知見が十分なのに放置したため違法 ③権限不行使の違法:積極的な行為だけでなく、権限を行使しないという不作為も国家賠償法上の違法となりうる ④判断要素:科学的知見の有無、被害の重大性、規制の必要性などを総合考慮
関連法令
国家賠償法1条1項
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