ロゴ行政書士になる子ちゃん
A行政法国家賠償・損失補償

予防接種と国家賠償責任

最高裁判所1991-04-19最判平3.4.19
予防接種禁忌者国家賠償推定後遺障害予診義務

予防接種で重い後遺障害が出たら禁忌者への接種だったと推定される!国側が特別事情を立証しなければ賠償責任を免れない

図解でわかる

判例図解

タップで拡大

なる子ちゃん

事案の概要

生後6か月の男児が、予防接種を受ける数日前から発熱していたにもかかわらず天然痘の予防接種を受けました。接種の9日後に脊髄炎様の高熱を発症し、両下肢麻痺・知能発達障害という重篤な後遺障害が残りました。保護者側が「接種前に禁忌者かどうかの確認が不十分だった」として国家賠償を求めて提訴しました。後遺障害と予防接種の因果関係、および禁忌者への接種があったかどうかの立証責任の所在が争われた事件です。
争点

争点

予防接種後に重篤な後遺障害が発生した場合、被接種者が法令上の禁忌者に該当していたかどうかはどのように判断されるか、また禁忌者への接種という過失を誰がどのように立証しなければならないか、というのがこの事件の争点です。
判旨

判旨

予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたか、または特別な個人的素因を有していたかのいずれかが考えられます。しかし、禁忌者に該当する可能性は個人的素因を有する可能性よりもはるかに高いため、後遺障害が発生した場合には禁忌者への接種が原因だった高度の蓋然性があります。したがって、禁忌者識別のための予診が尽くされたにもかかわらず禁忌事由が発見できなかったこと、または被接種者が個人的素因を有していたことなどの特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当です。後遺障害が発生した事実をもって禁忌者への接種があったと推定され、国側がこの推定を覆す特別事情を立証しなければ賠償責任を免れないということです。
判決

判決

認容(禁忌者への接種があったと推定され、国家賠償責任が認められる)。被接種者が禁忌者に該当していたと推定され、国側が特段の事情を立証できない限り国家賠償責任が肯定されることが確定しました。
関連法令の解説

関連法令の解説

国家賠償法1条1項:公務員が職務を行うについて故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国または公共団体が賠償責任を負うと定めています。本件では予防接種を担当した医師の過失(問診義務違反)が国の賠償責任の根拠となりました。
予防接種実施規則4条(当時):予防接種の禁忌者として、発熱中の者・急性疾患にある者・アレルギー体質を有する者などが列挙されていました。本件ではこの禁忌者を識別するための問診(予診)義務が問われました。
身近な例え

身近な例え

食品アレルギーで重篤な症状が出たら、本来その食品を食べてはいけない体質だったと考えるのが自然、というのと似た発想です。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

予防接種で重篤な後遺障害が出たとき、「禁忌者への接種が原因だったのか、それとも本人の特殊な体質のせいなのか」を被害者側が証明するのはものすごく難しいよね。そこで最高裁は、禁忌者に当てはまる人のほうが特殊体質の人より圧倒的に多いんだから、後遺障害が出たイコール禁忌者だったと推定しよう、という判断をした。つまり国側が「ちゃんと問診したけど禁忌事由は見つからなかった」と証明しないと責任を免れない、という立証責任の転換がポイント!被害者救済のために推定という手法を使った点が試験でよく問われるよ。

試験対策ポイント

後遺障害の発生をもって禁忌者への接種が推定される。被害者側が「禁忌者だった」と直接証明しなくても、後遺障害という事実から推定が働く。
推定を覆すのは国(加害者)側の責任。「問診を尽くしたが発見できなかった」「個人的素因による」などの特段の事情を国側が立証しなければならない。この立証責任の転換が本判例の核心。

禁忌者とは「接種が禁止されている状態にある者」。発熱中・急性疾患・アレルギー体質等が該当し、これらを識別するための問診(予診)が医師の義務となる。

注意:推定が認められるのは後遺障害が実際に発生した場合に限られる。問診が不十分だったというだけでは推定は働かず、重篤な後遺障害の発生という結果が前提となる。

最判昭51.9.30とセットで理解する。昭和51年判決は問診義務の具体的内容と過失の推定を示しており、本判例の「禁忌者推定」と組み合わせることで予防接種国家賠償の全体像が把握できる。
法令

関連法令

関連判例

関連判例

行政法最高裁判所

パトカーによる追跡行為の違法性

パトカーによる追跡行為自体は正当な職務行為であり、ただちに違法とはならない。追跡=違法という短絡的な理解は誤り。 違法となる要件は2つ:①追跡が職務目的遂行上「不必要」である場合、②追跡の開始・継続・方法が「不相当」である場合。この2要件をそのまま覚えること。 「不相当」の判断には道路状況・逃走態様から予測される被害発生の具体的危険性が考慮される。抽象的な危険ではなく具体的危険性がポイント。 注意:直接事故を起こしたのは逃走車両の運転者であっても、追跡行為の違法性が問われうる。因果関係の問題と違法性の問題を混同しないこと。 警察法2条・警察官職務執行法2条1項が追跡行為の職務上の根拠として示されている点も確認すること。

行政法最高裁判所

宣野座村工場誘致事件

行政計画の変更は原則自由だが、個別・具体的な勧誘があった場合は例外的に不法行為責任が生じる 責任が認められる3要件:①個別・具体的な勧誘、②長期継続を前提とした活動への投入、③社会観念上看過できない程度の積極的損害 免責事由:やむを得ない客観的事情がある場合は責任を負わない 注意:賠償の対象は積極的損害(実際に投入した資金・労力の損失)であり、得られたはずの利益(消極的損害)は必ずしも含まれない 信義則(民法1条2項)が行政法の領域でも適用される典型判例として位置づけられる

憲法最高裁判所

教科書検定事件

教科書検定は憲法21条2項の検閲にあたらない(理由:一般図書として出版可能であり、発表禁止目的・発表前審査の特質がないため) 教科書は学術研究発表の場ではないため、検定は憲法23条の学問の自由(研究発表の自由)を直接侵害しない 国は子どもに適切な教育を保障するために必要かつ相当な範囲で教育内容を決定できる(憲法26条合憲の根拠) 個別の検定処分が国賠法上違法になる基準:「審議会の判断過程に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠した場合」 注意:制度全体は合憲だが、個別処分は専門家の見解を無視するなど著しく不合理な場合は裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法になりうる 本件は第一次家永教科書訴訟(家永全面敗訴)であり、第三次訴訟(最判平9.8.29)では4件について裁量権逸脱が認められた点と混同しないこと

憲法最高裁判所大法廷

在外邦人国民審査権確認等事件

国民審査権は選挙権と同様の性質を有する主権者の重要な権利であり、やむを得ない事由がない限り制限は許されない(厳格審査基準) 在外国民に国民審査への参加を認めない国民審査法の規定は憲法15条1項・79条2項・3項に違反する(法令違憲) 立法不作為が国家賠償法1条1項の違法にあたると判断されるのは例外的であり、「憲法上保障された権利行使の機会確保のための立法が必要不可欠かつ明白であるのに、国会が正当な理由なく長期間怠った場合」に限られる 本判決は裁判官全員一致の意見であり、きわめて画期的な判決であること 注意:判決日は令和4年(2022年)5月25日であり、「令和5年」「2023年」は誤り 行政事件訴訟法4条(公法上の当事者訴訟)も関連条文として重要——在外国民の違法確認の訴えがこれにより適法とされた点も押さえること

憲法最高裁判所

臨時会召集遅延事件

📱 アプリのご紹介

行政書士になる子ちゃん

スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。

行政書士試験学習には必須の判例のわかりやすい解説から科目別テキスト、過去問演習、択一演習をスマホでまとめて持ち歩ける学習アプリです。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。

App Storeで無料ダウンロード