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A行政法国家賠償・損失補償

クロロキン網膜症訴訟

最高裁判所1995-06-23最判平7.06.23
規制権限の不行使裁量権の逸脱・濫用医薬品副作用被害厚生大臣薬事法

薬の副作用被害でも、当時の知識で危険性が不明なら国の責任は問えない

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なる子ちゃん

事案の概要

慢性腎炎の治療にクロロキン製剤を処方された患者たちが、重篤な視力障害(クロロキン網膜症)を発症しました。患者ら(原告)は、厚生大臣が薬事法上の権限(製造承認の取消しなど)を行使せず被害を放置したことが国家賠償法上の違法行為にあたるとして、国に対して損害賠償を求めました。製薬会社とは和解が成立しましたが、国の責任についてのみ最高裁で争われた事件です。
争点

争点

厚生大臣がクロロキン製剤の製造承認取消しなど薬事法上の規制権限を行使しなかった不作為が、国家賠償法1条1項の「違法」にあたるか、というのがこの事件の争点です。
判旨

判旨

裁判所はまず、厚生大臣が有する薬事法上の権限(製造承認の取消し等)の行使・不行使は大臣の裁量に委ねられていると確認しました。そのうえで、規制権限の不行使が国家賠償法上の違法となるのは、その不行使が「著しく不合理」と認められる場合に限られると判示しました。また薬事法の安全性確保規制は副作用を含めた安全性を目的とするものですが、当時の医学・薬学的知見のもとで当該医薬品の有用性が肯定できる状況であれば、権限を行使しなかったことは違法の評価を受けないとしました。本件では、クロロキン製剤の危険性が当時の知見水準において明確に認識されていたとはいえないため、厚生大臣の権限不行使は著しく不合理とはいえず、国家賠償法上の違法にはあたらないと判断しました。つまり、結果的に被害が生じても、当時の知識レベルで危険性が明らかでなければ国の規制権限不行使は違法とならない、ということです。
判決

判決

厚生大臣の規制権限不行使は著しく不合理とはいえず国家賠償法上の違法にあたらないとして、国に対する損害賠償請求は棄却された。
関連法令の解説

関連法令の解説

国家賠償法1条1項
この条文は「国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えたとき、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負う」と定めています。本判例では、厚生大臣が薬事法上の権限を行使しなかった「不作為」がこの「違法」にあたるかどうかが問われました。規制権限の不行使が国賠上の違法となるには、単に被害が発生しただけでは足りず、権限の不行使が著しく不合理であることが必要とされます。

薬事法(当時)

薬事法は医薬品の品質・有効性・安全性を確保するための規制を定めた法律です。副作用を含めた安全性確保を目的とする規定を含みますが、製造承認の取消しなどの権限行使については厚生大臣の裁量に委ねられています。裁判所は、当時の医学・薬学的知見のもとで有用性が肯定できる場合には、権限不行使は違法の評価を受けないと判断しました。
身近な例え

身近な例え

学校の先生が生徒のケンカを止める権限を持っていても、ケンカがエスカレートすると明らかにわかる状況でない限り、介入しなかったことだけで責任を問われないのと似ています。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

薬の副作用で大勢が被害を受けたのに、国は何もしなかった。これって違法じゃないの?って事件なんだよね。最高裁は「厚生大臣の権限行使は裁量に委ねられているから、著しく不合理な場合だけ違法になる」って判断したんだ。しかも「当時の医学・薬学の知見レベルで危険性が明らかでなかった」から、不行使は違法にならないってなったんだよ。規制権限の不行使が違法になる条件として「著しく不合理」が必要ってのが試験超重要ポイント!

試験対策ポイント

規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の「違法」にあたるのは、その不行使が「著しく不合理」な場合に限られる
権限行使・不行使の判断は行政庁の裁量に委ねられており、単に被害が生じたことだけでは違法とならない

違法性の判断基準は「当時の医学・薬学的知見」に照らして行われる。結果論で判断されるわけではない

注意:薬事法上の製造承認取消権限は、当時の明文規定にはなかったが解釈上導かれるとされた点も重要

注意:製薬会社とは和解が成立しており、最高裁で争われたのは国の責任のみである点を混同しないこと
法令

関連法令

関連判例

関連判例

行政法最高裁判所

水俣病の拡大と規制権限の不行使

規制権限の不行使(何もしないこと)も、一定の場合に国家賠償法1条1項の違法にあたる 違法となる基準:権限不行使が著しく合理性を欠く場合(裁量の逸脱・濫用) 違法性判断の3要素:①被害の深刻さ、②原因と排出源の認識可能性、③規制措置の実行可能性 注意:科学的知見が不十分な時点での不行使は違法とならないが、十分な知見が揃った後の放置は違法 規制権限不行使の違法性が争われる判例として、宅建業法の監督処分権限不行使(最判平元.11.24)とも対比して整理すること

行政法最高裁判所

厚木基地訴訟

自衛隊機の差止め訴訟は訴訟要件(重大な損害)を満たし適法だが、本案で裁量権の逸脱・濫用なしとして棄却 米軍機の差止め訴訟は、防衛大臣に米軍機の飛行を規制する権限がないため訴え自体が不適法として却下 「重大な損害を生ずるおそれ」(行訴法37条の4第1項)の判断:取消訴訟・執行停止では救済できない反復継続的な睡眠妨害・精神的苦痛の蓄積がこれにあたる 差止めの本案要件(行訴法37条の4第5項)における裁量権の逸脱・濫用は、防衛・外交分野では認定ハードルが極めて高く、**「著しく不合理」**でなければ認められない 注意:一・二審は差止めを認容していたが最高裁で逆転棄却。下級審と最高裁の結論が異なるひっかけに注意

行政法最高裁判所

個室付浴場事件

行政処分には公定力があるが、行政権の濫用に相当する違法性がある場合はその処分を根拠とした規制効力は認められない 児童遊園設置認可の本来の目的は児童の健全育成であり、特定営業の規制を目的とした認可は目的外の権限行使として違法 注意:本判例は刑事事件であり、行政処分の公定力が及ばないことを前提として被告を無罪とした点が重要 関連する民事事件(最判昭53.5.26)では同じ認可処分について国家賠償法上も違法と判断されている 裁量権の逸脱・濫用の典型例として、行政裁量の限界を示した判例として位置づけられる

行政法最高裁判所

神戸税関事件

懲戒処分をするか否か・どの処分を選ぶかは、懲戒権者の広い裁量に委ねられている 裁判所の審査基準は「社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を逸脱・濫用したか否か」に限定される 注意:裁判所は懲戒権者と同一の立場に立って「もっと軽い処分を選ぶべきだったか」を判断するわけではない 裁量が広い=何でも許される、ではない。著しく不当な処分は違法となる **「社会観念上著しく妥当を欠く」**という文言は判旨そのままの形で問われることが多く、正確に押さえること

憲法最高裁判所大法廷

マクリーン事件

外国人の人権保障について最高裁は性質説を採用:権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き在留外国人にも保障が及ぶ 政治活動の自由は外国人にも原則保障されるが、日本の政治的意思決定に影響を与えるものなど外国人に認めることが相当でない活動は制限される 外国人には憲法上在留権・入国の自由は保障されない:在留許否は国家の広い裁量に委ねられる 行政庁が裁量権行使の準則(内部基準)を設けても、それに違反しても原則として当不当の問題にとどまり、当然に違法にはならない(行訴法30条) 注意:「政治活動が合法でも、それを考慮して在留更新を拒否することは適法」という結論を、政治活動の自由の否定と混同しないこと

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