クロロキン網膜症訴訟
薬害防止の権限不行使と国賠
図解でわかる

事案の概要
争点
薬の副作用で多くの人が被害を受けているにもかかわらず、厚生大臣が薬事法上の権限(販売停止や回収命令など)を使わなかった「何もしなかった行為(不作為)」は、国家賠償法上の違法行為にあたるのか、というのがこの事件の争点です。
判旨
厚生大臣が薬事法上の権限をいつ・どのように使うかは、大臣の広い裁量(判断の自由)に委ねられています。そのため、権限を使わなかったことが「違法」になるのは、その判断が著しく不合理で、裁量権の逸脱・濫用にあたる場合に限られます。この事件では、当時の医学・薬学の水準においてクロロキン製剤の危険性が明確にわかっていたとはいえないため、権限を行使しなかったことは違法とはならないと判断されました。つまり、「結果的に被害が出たとしても、当時の知識レベルで危険性が明らかでなければ、国の責任は問えない」ということです。
関連法令の解説
国家賠償法1条1項(公務員の違法行為による損害賠償責任)に関わります。特に行政庁が法律上持っている権限を使わなかった「不作為」が違法といえるかが問題となった事例です。
身近な例え
学校の先生が生徒のケンカを止める権限を持っていても、ケンカがエスカレートすると明らかにわかる状況でない限り、介入しなかったことだけで責任を問われないのと似ています。
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
①規制権限の不行使が違法となる基準:行政の裁量権の逸脱・濫用があった場合のみ ②判断基準:権限不行使がその許された裁量の範囲を逸脱し、「著しく合理性を欠く」といえるかどうか ③本件での当てはめ:当時の医学・薬学の知見では副作用の危険性が明確に認識されていなかったため、権限不行使は違法とならない ④薬害訴訟における国の責任追及の難しさを示す判例として重要
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