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S民法物権

背信的悪意者

最高裁判所1968-08-02最判昭43.8.2
背信的悪意者民法177条第三者登記の欠缺信義則民法1条2項対抗要件二重譲渡

登記がないのを利用して高値で売りつけようとした悪質な第三者は保護しない!

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なる子ちゃん

事案の概要

甲は乙から山林を買い受け、登記をしないまま23年以上占有し続けていた。これを知っていた丙は、甲がまだ登記をしていないことに目をつけ、甲に高値で売りつけて利益を得る目的で、同じ山林を乙から買い取って自分名義の登記を備えた。甲は「丙は背信的悪意者であり、民法177条の第三者に該当しない」と主張して争った。不動産の二重譲渡において、こうした悪質な目的を持つ者が登記を備えた場合に保護されるかどうかが問われた。
争点

争点

不動産の二重譲渡において、先の買主に登記がないことを知りながら、不当な利益を得る目的で登記を取得した者(背信的悪意者)は、民法177条の「第三者」として保護されるか、が本件の争点です。
判旨

判旨

甲が乙から山林を買い受け23年以上占有していた事実を知っていた丙が、甲の登記がないことに乗じて高値で売りつけて利益を得る目的で同じ山林を乙から買い取り登記を備えました。こうした行為は、登記制度の趣旨を悪用して不当な利益を得ようとするものであり、信義則に著しく反します。最高裁は、このような特別な事情がある場合には丙は背信的悪意者にあたり、甲の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者には該当しないと判断しました。つまり、登記を備えていても背信的悪意者は177条の第三者から除外され、未登記の甲が丙に対して所有権を主張できるということです。
【原文】

 甲が乙から山林を買い受けて23年余の間これを占有している事実を知つている丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲に高値で売りつけて利益を得る目的をもつて、右山林を乙から買い受けてその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらない。
判決

判決

丙は背信的悪意者として民法177条の「第三者」に該当しないと判断され、登記を備えた丙よりも未登記の甲が保護された。
関連法令の解説

関連法令の解説

民法177条(不動産物権変動の対抗要件)
この条文は、不動産の物権変動(所有権の移転など)は登記をしなければ第三者に対抗できないと定めています。ただし、ここでいう「第三者」は正当な利益を有する者に限られ、背信的悪意者のように信義則に反する形で登記を取得した者は含まれないと解釈されています。本判例はこの「第三者」の外延を明確にした重要な判例です。

民法1条2項(信義誠実の原則)

この条文は、権利の行使および義務の履行は信義に従い誠実に行わなければならないと定めています。背信的悪意者の概念はこの信義則から導かれるものであり、登記がないことを主張することが信義則に反すると判断される場合には、177条の第三者としての保護が否定されます。
身近な例え

身近な例え

行列に並んでいる人を知りながら、「まだ席を確保してないよね」と言って横入りする人は、ルール上は許されても道義的に認められないのと同じです。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

民法177条では「登記をした方が勝つ」のが原則なんだけど、登記がないのをわざと利用して不当な利益を得ようとするような悪質な人まで保護するのはおかしいよね。
そこで判例は、そういう信義則に反するような特別な事情がある人を「背信的悪意者」と呼んで、177条の第三者から外したんだよ。

ただし注意!単に「登記がないことを知っていた(悪意)」というだけでは背信的悪意者にはならないんだ。不当な利益を得る目的など、信義則に反する特別な事情が必要なんだね。

「知ってた=背信的悪意者」じゃないってのが試験でひっかけに使われるポイントだよ!

試験対策ポイント

背信的悪意者は民法177条の「第三者」に該当しないため、登記がなくても対抗できる
注意:単なる悪意(事実を知っていること)だけでは背信的悪意者にならない。信義則に反する特別な事情が必要

背信的悪意者の典型例は「登記がないことに乗じて不当な利益を得る目的」で取引した者

背信的悪意者から譲り受けた転得者については、転得者自身が背信的悪意者でなければ177条の第三者として保護される(転得者は独立して判断する)

民法177条の「第三者」から除外されるのは、背信的悪意者のほか不法占拠者・不法行為者なども同様
法令

関連法令

試験

出題年度

2010
関連判例

関連判例

民法最高裁判所

錯誤による和解契約

合意解除と転得者の関係は対抗関係として処理され、転得者が保護されるには登記が必要(善意であっても不可) 債権者代位による登記請求も、代位する丙自身が登記を備えていなければ認められない 注意:合意解除前の第三者保護は民法545条1項ただし書が根拠だが、保護のためには対抗要件(登記)の具備が必要 信義則に反する特段の事情がある場合は例外的に登記なしでも保護される余地がある(最判昭45.3.26と対比して押さえること) 解除前の第三者は登記が必要、解除後の第三者も登記で対抗関係を処理する点をセットで整理すること

民法最高裁判所

被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人

相続人自身は被相続人の包括承継人であり民法177条の「第三者」にはあたらない しかし、相続人からの譲受人(第三者)は民法177条の「第三者」にあたる 被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人は対抗関係に立ち、先に登記を備えた方が勝つ この結論は被相続人と相続人の間が贈与・売買・遺贈・死因贈与のいずれの場合にも同様に妥当する 注意:「相続人は第三者にならない=登記不要」という誤解が典型的なひっかけ問題になりやすい

民法最高裁判所

詐術の場合の取消権の否定

相続人自身は被相続人の包括承継人であり民法177条の「第三者」にはあたらない しかし、相続人からの譲受人(第三者)は民法177条の「第三者」にあたる 被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人は対抗関係に立ち、先に登記を備えた方が勝つ この結論は被相続人と相続人の間が贈与・売買・遺贈・死因贈与のいずれの場合にも同様に妥当する 注意:「相続人は第三者にならない=登記不要」という誤解が典型的なひっかけ問題になりやすい

民法最高裁判所

債権の二重譲渡

優劣の基準は「確定日付の日時」ではなく「確定日付ある通知の到達日時」。確定日付自体が早くても、通知の到達が遅ければ負ける点に注意。 債務者対抗要件と第三者対抗要件は必要なものが異なる。債務者には確定日付なしの通知・承諾でも対抗できるが、第三者(他の譲受人)には確定日付が必須。 確定日付ある通知が同時到達した場合は両者が同順位。各譲受人は債務者に全額弁済を請求でき、債務者は同順位者の存在を理由に弁済を拒めない(最判昭55.1.11)。 注意:通知は譲渡人から債務者にしなければならない。譲受人が自ら通知することは原則できないが、譲渡人の代理として通知することは可能(最判昭46.3.25)。 到達の先後が不明な場合は同時到達として扱われる(最判平5.3.30)。各譲受人は互いに優先的地位を主張できない。

民法最高裁判所

通行地役権の対抗要件

通行地役権も物権であり、原則として登記なしでは第三者に対抗できない(民法177条) ただし、次の両要件を満たす場合、譲受人は「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者」にあたらず、登記なしで対抗可能 ①譲渡時に承役地が継続的に通路として使用されていることが物理的状況から客観的に明らか ②譲受人が認識していたか又は認識可能であった 注意:譲受人が通行地役権の存在を知らなかったことは関係なく、通路の物理的な存在を認識できたか否かが判断基準 この判例は背信的悪意者排除論とは異なる論理(「正当な利益を有する第三者ではない」)による対抗力の認定

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