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出席停止処分取消等請求事件

最高裁判所大法廷2020-11-25最大判令2.11.25
出席停止懲罰司法審査議会自律権住民自治中核的活動判例変更地方自治法135条憲法76条

議員への出席停止は議会内の話じゃない!裁判所が常に適否を判断できる

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判例図解

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なる子ちゃん

事案の概要

地方議会の議員Xが、市議会から23日間の出席停止という懲罰を科された。Xはこの懲罰が違憲・違法であるとして取消しを求めて提訴した。地方議会の自律権の範囲内として従来は司法審査が及ばないとされていた議会の懲罰について、裁判所が審査できるかどうかが争われた。なお本判決は、除名処分以外の懲罰は司法審査の対象外とした従来の判例(昭和35年判決)を変更した。
争点

争点

地方議会が議員に対して科した出席停止の懲罰について、裁判所が司法審査を行えるかどうかが争点です。
判旨

判旨

地方議会が議員を懲罰する権能は、議会の自律的な権能の一内容を構成します。しかし、議員は住民自治の原則を具現化するため、議事への参加・議決などを通じて住民の意思を地方公共団体の意思決定に反映させる責務を負っています。出席停止の懲罰が科されると、議員は議員としての中核的な活動ができなくなり、住民の負託に応えられなくなります。出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らせば、その適否がもっぱら議会の自主的・自律的な解決に委ねられるべきであるとはいえません。したがって、出席停止の懲罰は議会に一定の裁量が認められるものの、裁判所は常にその適否を判断することができます。
【原文】

思うに、司法裁判権が、憲法又は他の法律によつてその権限に属するものとされているものの外、一切の法律上の争訟に及ぶことは、裁判所法3条の明定するところであるが、ここに一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。一口に法律上の係争といつても、その範囲は広汎であり、その中には事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするものがあるのである。けだし、自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがあるからである。本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当するものと解するを相当とする。
判決

判決

出席停止の懲罰は司法審査の対象となる。従来の判例(最大判昭35.10.19)を変更。
関連法令の解説

関連法令の解説

憲法76条1項(司法権の独立)
この条文はすべて司法権は裁判所に属すると定めており、法律上の争訟は原則として裁判所が審理します。本判例では、出席停止の懲罰が議員の中核的活動を制約するものとして「法律上の争訟」にあたり、裁判所の司法審査が及ぶと判断されました。

地方自治法134条・135条(懲罰)

地方議会は、議員が法令や会議規則等に違反した場合に懲罰を科すことができ、その種類として戒告・陳謝・出席停止・除名が定められています。本判例では、出席停止はこれらの中でも議員の職務遂行を直接妨げる性質を持つとして、司法審査の対象となることが認められました。
身近な例え

身近な例え

学校の生徒会で役員が「1ヶ月間会議に出るな」と処分されたら、それが正しいか先生(裁判所)に相談できる、というイメージです。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

議会には自律権があって、内部のことは自分たちで決めるのが原則なんだ。
でも出席停止って、住民が選んだ議員を議会や委員会に出席させなくするわけだから、単なる「議会内部の話」じゃないんだよ。

議員は住民の代表として住民の意思を行政に反映させる責務を負っているのに、それができなくなるのは、住民自治の原則にも関わる重大な制約なんだ。

だから出席停止には議会に一定の裁量は認められるとしつつも、裁判所は常にその適否を判断できるって結論になったんだよ。

試験対策ポイント

地方議会議員への出席停止の懲罰は司法審査の対象となる(常に適否を判断できる)
根拠は、出席停止が議員の中核的活動を制約し、住民の負託に応える責務を果たせなくさせるため

注意:議会に一定の裁量は認められるが、司法審査は排除されない

本判決は判例変更であり、除名以外の懲罰は司法審査の対象外とした最大判昭35.10.19を変更した点が重要

除名処分は従来から司法審査の対象とされており、本判決により出席停止もその対象となった
法令

関連法令

関連判例

関連判例

憲法最高裁判所大法廷

警察法改正無効事件

裁判所の法令審査権(憲法81条)は、国会の両院における法律制定の議事手続の適否には及ばない この理由は、議院が自らの内部事項を自主的に決める**「自律権」**を裁判所は尊重すべきだから 注意:議事手続は審査対象外だが、法律の内容(実体)については通常通り違憲審査の対象となる 市町村警察を廃止して都道府県警察に移すことは憲法92条(地方自治の本旨)に違反しない 本判例は司法権の限界の典型例として、統治行為論・自律権・部分社会の法理とセットで整理しておく

憲法最高裁判所

富山大学単位不認定事件

部分社会の法理:大学・政党・地方議会などの内部問題は、一般市民法秩序と直接関係しない限り司法審査の対象とならない 単位不認定→大学内部の純然たる教育上の問題→司法審査の対象外(原則) 専攻科修了不認定→国公立大学は「公の施設」→学生の一般市民としての利用権侵害→司法審査の対象となる 分岐の判断基準は「一般市民法秩序と直接の関係を有するかどうか」 注意:単位不認定でも「特段の事情」(その単位取得自体が一般市民法上の資格要件とされる場合など)があれば司法審査の対象になり得る 関連判例として、地方議会議員懲罰事件(最大判昭35.10.19)・共産党袴田事件(最判昭63.12.20)とあわせて部分社会の法理全体を整理すること

憲法最高裁判所大法廷

朝日訴訟

憲法25条1項はプログラム規定:国の責務を宣言するものにすぎず、直接具体的権利を付与しない 生活保護基準の設定は厚生大臣の裁量に委ねられ、裁量権の逸脱・濫用がある場合のみ違法・司法審査の対象となる 生活保護受給権は法的権利であるが一身専属権であり、譲渡・相続の対象にならない 被保護者が死亡すると取消訴訟は当然終了し相続人には承継されない 注意:生活保護受給権を「反射的利益にすぎない」と誤解しないこと。法的権利ではあるが一身専属という点が核心

憲法最高裁判所大法廷

全農林警職法事件

公務員にも憲法28条の労働基本権は保障されるが、公務員の地位の特殊性・職務の公共性から必要やむを得ない限度での制限は合憲 限定解釈の否定:あおり行為等を争議行為に「通常随伴するもの」として刑事制裁対象から外す解釈は認められない 政治目的のストは経済的地位向上と直接関係がなく、憲法28条の保護の範囲外 制限の代償措置として人事院制度・行政措置要求制度・不利益処分審査請求制度が設けられている点が合憲性の根拠の一つ 注意:本判決は全逓東京中郵事件(最大判昭41.10.26)の限定解釈路線を転換した判例変更であり、その位置づけを理解しておくこと

民法最高裁判所

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者からの離婚請求が例外的に認められる3要件:①相当長期間の別居、②未成熟の子がいない、③著しく社会正義に反する特段の事情がない 注意:3要件はすべて満たす必要があり、一つでも欠けると原則に戻り認められない 未成熟の子とは経済的に独立していない子であり、成人した子は含まれない 相手方の経済的不利益は財産分与・慰謝料で解決すべきものとされ、離婚否定の根拠にならない 本判決は従来の判例を変更した大法廷判決であり、判例変更として位置づけられている

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