奈良県ため池条例事件
ため池の堤とう耕作は財産権の範囲外!条例で禁止・処罰しても合憲、補償も不要
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事案の概要
争点
判旨
判決
関連法令の解説
財産権はこれを侵してはならないと定めています。本件でYらが根拠として主張した条文ですが、ため池の堤とうを破損・決壊させる原因となる使用行為はそもそも適法な財産権の行使として保障されていないと判断されました。
憲法29条2項(財産権の内容の法定)
財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律でこれを定めると規定しています。本判決はこれに関し、地域の特殊事情によって法律で一律に定めることが困難・不適当な場合は条例で定めることも許され、本件条例は憲法29条2項に違反しないと判断しました。
憲法29条3項(損失補償)
私有財産は正当な補償のもとに公共のために用いることができると定めています。本判決は、ため池の堤とうの使用制限は社会生活上やむを得ない必要から来るものであり、財産権者が公共の福祉のために当然受忍しなければならない責務の範囲内にあるため、損失補償は不要と判断しました。
憲法31条(適正手続・罪刑法定主義)
何人も法律の定める手続によらなければ刑罰を科せられないと定めています。本判決は、条例による罰則規定の設置が憲法31条に違反しないことは、大阪市売春取締条例事件(最大判昭37.5.30)の趣旨から明らかとしました。
憲法94条(条例制定権)
地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定できると定めています。本判決は、ため池の保全のような地域固有の事情については国の法律より条例で定めることが適切であり、本件条例は憲法94条の範囲内にあると判断しました。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
条例による財産権の制限も、地域の特殊事情がある場合は許容される(法律に限らない)
ため池の堤とうを破損・決壊させる使用行為は「財産権の行使のらちがい(埒外)」にあり、そもそも保障されていない
財産権の制限が受忍限度内であれば、憲法29条3項の損失補償は不要
注意:「財産権を制限すれば必ず補償が必要」ではなく、受忍限度を超えるか否かが補償の分かれ目
条例による罰則規定(憲法31条との関係)も合憲とされた点も押さえること(大阪市売春取締条例事件を引用)
関連法令
関連判例
森林法共有林事件
本件は大法廷判決(最大判)であり財産権分野で重要な違憲判決 財産権規制の合憲性判断基準:①立法目的が公共の福祉に合致しないことが明らか、または②規制手段の必要性・合理性が明らかに欠ける場合に限り違憲 注意:立法目的(森林経営の安定)は合憲と認められた。違憲とされたのは規制手段の部分のみ 「持分2分の1以下の共有者の分割のみを禁止することに強い社会的必要性は見いだせない」が違憲の核心 本判決は規制目的2分論(積極目的・消極目的)を明示的には採用しない異色の判決として有名(積極目的規制的な事案でありながら、明白性の原則より厳しい基準を事実上適用した) 判決後、森林法186条は1987年5月に国会で削除されている
河川附近地制限令事件
「補償規定なし=違憲」は誤り。補償規定が欠けていても直ちに違憲にはならない(本判決) 「特別の犠牲」にあたる場合は、補償規定がなくても直接憲法29条3項を根拠として補償請求できる(直接請求の法理) ただし補償請求には「損失を具体的に主張・立証」することが必要 一般的制限(受忍義務の範囲内)→損失補償不要 vs 特別の犠牲(特定人への特別な犠牲)→補償必要、という対比が試験頻出 本件は**大法廷判決(最大判)**であることに注意(「最判」と誤記しないこと) 罰則規定も、補償規定がないことを理由に違憲無効とはならない
立川反戦ビラ配布事件
憲法21条1項の表現の自由は絶対無制限ではなく、公共の福祉による合理的な制限を受ける 問われているのは「表現の処罰」ではなく**「表現手段としての立入り行為の処罰」**の合憲性 宿舎の共用部分・敷地は刑法130条の**「人の看守する邸宅」およびその囲繞地**にあたる 「侵入」の意味:管理権者の意思に反して立ち入ること(管理権説) 処罰が合憲とされた実質的根拠:私的生活を営む居住者の私生活の平穏を侵害するから 対比:葛飾政党ビラ配布事件(最判平21.11.30)では民間分譲マンションの事案で同様に合憲と判断
宗教法人解散命令事件
宗教法人の解散命令は、法人の**世俗的側面(財産管理・法律上の能力)**を対象とするものであり、信仰の自由そのものを直接制限するものではない 解散命令によって宗教活動の場所・財産を失う等の支障は、間接的・事実上のものにとどまる 信教の自由は最大限尊重されるべきであるが、絶対無制限ではない(著しく公共の福祉を害する場合は規制可能) 解散命令は裁判所の司法審査によって発せられるものであり、手続の適正も担保されている点も合憲性の根拠 注意:本件は「判決」ではなく「決定(最決)」であり、特別抗告審である 宗教法人格の喪失≠信仰の自由の制限という論理構造を確実に押さえること
石井記者事件
憲法21条の表現の自由(報道の自由を含む)は、公共の福祉による制限を受けるため絶対無制限ではない 刑事裁判において、取材源秘匿を理由とする証言拒絶権は憲法上保障されない 注意:民事訴訟では職業上の秘密を理由とした証言拒絶が認められる場合があり(現行民事訴訟法197条1項3号)、刑事と民事で結論が異なる点に注意 報道の自由・取材の自由は憲法21条で保障されるが(博多駅事件・最大決昭44.11.26参照)、取材源秘匿の証言拒絶権は別問題として区別すること 本判決は大法廷判決であり、表現の自由と公共の福祉の関係を示した初期の重要判例として位置づけられる
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