内閣総理大臣の異議
ないかくそうりだいじんのいぎ
ひとことで言うと
行政事件訴訟で執行停止が申し立てられた際、内閣総理大臣が「公共の福祉に重大な影響がある」と主張し、執行停止を阻止できる制度のこと。
くわしく解説
なぜこんな制度があるの?
行政事件訴訟法には「執行停止」という制度があります。これは、処分を受けた人が裁判で争っている間、その処分の効力を一時的にストップさせるものです。
しかし、もし何でも簡単に執行停止が認められてしまうと、国の重要な政策が止まってしまう可能性があります。そこで、内閣総理大臣が「ちょっと待ってください!」と意見を述べることができる仕組みが設けられています。これが「内閣総理大臣の異議」です。
どんな効果があるの?
この異議が述べられると、裁判所は執行停止の決定ができなくなります。すでに執行停止の決定がされていた場合は、その決定を取り消さなければなりません。
ポイントは、「行政権のトップである内閣総理大臣が、司法の判断に一定の影響を与えることができる」という点にあります。
条件と手続きは?
①理由の疎明が必要です。内閣総理大臣は、異議を述べるにあたり、その理由を明らかにしなければなりません。
②公共の福祉に重大な影響があることが前提です。単なる行政の都合ではなく、社会全体に関わる重大な問題がある場合に限られます。
③内閣の閣議決定が必要です。総理大臣が勝手に異議を述べるのではなく、内閣として正式に決定する必要があります。
三権分立との関係は?
「行政が司法に口を出すのは問題では?」と思いますよね。確かに、この制度は三権分立に対する重大な例外です。
そのため、行政事件訴訟法は、内閣総理大臣の異議について「やむを得ない場合でなければ述べてはならない」と規定し、濫用を防いでいます。
試験で問われるポイント
試験では、「異議が述べられた場合の効果」や「閣議決定が必要」という手続き面がよく出題されます。また、この制度が仮の義務付け・仮の差止めには適用されない点も押さえておきましょう。
具体例で考えよう
ケース①:空港建設に対する執行停止
国が進める空港建設計画について、近隣住民が建設許可の取消訴訟を提起し、同時に執行停止を申し立てたとします。裁判所が執行停止を認めようとした際、内閣総理大臣が「空港建設の遅延は公共の福祉に重大な影響がある」として異議を述べました。これにより、裁判所は執行停止の決定ができなくなります。
ケース②:すでに出された執行停止決定の取消し
ある企業への営業停止処分について、裁判所がすでに執行停止を決定していたとします。その後、内閣総理大臣が「この処分の停止は公共の福祉に重大な影響がある」と異議を述べた場合、裁判所は先に出した執行停止決定を取り消さなければなりません。
試験対策ポイント
「内閣総理大臣の異議」は行政法の頻出ワードです。 用語の定義と、それがどの場面で問題になるかをセットで覚えましょう。
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