職権証拠調べ
しょっけんしょうこしらべ
ひとことで言うと
裁判所が当事者の申立てを待たずに、自らの判断で証拠を調べることができる権限のこと。
くわしく解説
なぜ裁判所が自ら証拠を調べるの?
通常の民事訴訟では、当事者主義といって、証拠を出すのは原告や被告の役割です。裁判所は「どちらの言い分が正しいか」を判断するだけで、自分から証拠を集めることはしません。
しかし、行政事件訴訟では事情が異なります。国民が国や自治体を相手に争う場面では、情報や専門知識の格差が大きいのです。行政側は膨大な資料を持っていますが、原告である国民はそれを入手するのが難しい。この不公平を放置したままでは、正しい判決ができません。
そこで行政事件訴訟法24条は、裁判所が自らの判断で証拠を調べる権限を認めています。これが職権証拠調べです。
民事訴訟との違いは?
民事訴訟では、当事者が出さなかった証拠を裁判所が勝手に調べることは原則としてできません。弁論主義のルールがあるからです。
一方、行政事件訴訟では、裁判所は当事者の申立てがなくても、職権で証拠調べをすることができます。ポイントは、「行政事件では公益が関わるから、真実を明らかにすることが重要だ」という考え方にあります。
職権証拠調べの2つの特徴
①裁判所の裁量であること。職権証拠調べは「できる」規定であり、必ずしなければならないわけではありません。
②結果は当事者に開示されること。裁判所が職権で調べた証拠は、当事者に示して意見を述べる機会を与えなければなりません。秘密裏に使うことは許されないのです。
試験で押さえておくべきポイント
行政事件訴訟法の審理手続に関する問題では、**「職権証拠調べ」と「釈明処分の特則」**がセットで出題されることがあります。どちらも当事者主義を修正して、裁判所に積極的な役割を与えている点で共通しています。条文番号(24条)も覚えておくと安心です。
具体例で考えよう
ケース①:建築確認取消訴訟
住民のAさんが、隣に建設予定のマンションの建築確認を取り消すよう訴えたとします。しかしAさんは建築の専門家ではなく、設計図面の問題点を十分に立証できません。このとき裁判所は、職権で建築士に鑑定を依頼するなど、自ら証拠を調べることができます。
ケース②:情報公開訴訟
市民のBさんが、行政機関に情報公開を求めたのに拒否されたため、取消訴訟を起こしたとします。行政側は「国の安全に関わる」と主張しますが、具体的な理由を明かしません。裁判所は職権で当該文書を取り寄せ、本当に非公開の理由があるか確認することができます。これが職権証拠調べの活用場面です。
試験対策ポイント
「職権証拠調べ」は行政法の頻出ワードです。 用語の定義と、それがどの場面で問題になるかをセットで覚えましょう。
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