私人間効力
しじんかんこうryょく
ひとことで言うと
憲法の人権規定が、国と国民の関係だけでなく、私人と私人の間の関係にも適用されるかという問題のこと。
くわしく解説
なぜこの問題が出てきたの?
憲法は、もともと国家権力を制限して国民の人権を守るためのルールです。つまり、「国vs国民」という関係を想定しています。
でも現実には、私人同士の間でも人権侵害は起こります。たとえば、会社が「女性は採用しない」と決めたり、大企業が個人のプライバシーを侵害したり。こうした場合に、憲法の人権規定を直接使えるのかという問題が「私人間効力」です。
学説の対立:3つの考え方
①無効力説は、憲法の人権規定は国に対してのみ適用され、私人間には一切適用されないという立場です。私人間のトラブルは民法などの私法で解決すべきだと考えます。
②直接適用説は、憲法の人権規定が私人間にも直接適用されるという立場です。人権侵害は国だけでなく、私人もするのだから、憲法で直接規制すべきだという考え方です。
③間接適用説(判例・通説)は、憲法の人権規定を民法の一般条項(公序良俗など)を通じて間接的に適用する立場です。「憲法は国家権力を縛るもの。でも、私人間でも人権は尊重されるべき」という両方の要請を調整した考え方です。
判例はどう考えている?
最高裁は間接適用説を採用しています。三菱樹脂事件では、企業の採用の自由と労働者の思想・良心の自由の対立について、「憲法の趣旨は私法関係を規律する一般条項の解釈を通じて間接的に適用される」と判断しました。
具体例で考えよう
ケース①:企業の採用差別
大手企業A社が、面接で応募者の政治思想を理由に不採用にしたとします。憲法19条は思想・良心の自由を保障していますが、A社は私企業なので、憲法が直接適用されるわけではありません。しかし、民法90条(公序良俗)の解釈を通じて、憲法の趣旨が間接的に反映され、不当な差別として無効とされる可能性があります。これが私人間効力の間接適用の典型例です。
ケース②:マンション住民による表現活動の制限
マンション管理組合が、住民に対して「政治的なビラ配りは一切禁止」というルールを作ったとします。表現の自由は憲法21条で保障されていますが、管理組合は私人の集まりです。この場合も、憲法が直接適用されるのではなく、管理規約の合理性や公序良俗の観点から、憲法の趣旨を踏まえて判断されることになります。
試験対策ポイント
「私人間効力」は憲法の頻出ワードです。 用語の定義と、それがどの場面で問題になるかをセットで覚えましょう。
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