【合格者リレー②】通勤電車の往復80分だけ。28歳会社員が10ヶ月で一発合格した記録
建設会社の総務で働く大輝さん(28歳)が、通勤電車の往復80分だけを勉強時間にして10ヶ月で一発合格するまでの記録。机に向かわない学習法、行政法から始めた理由、本番の時間配分と択一の切り方、資格を仕事にどう活かしているかを語ります。
合格者リレーブログ 今回の語り手
大輝
28歳・建設会社勤務・資格を社内の許認可業務に活用
建設会社の総務部で働く28歳。会社の建設業許可・経営事項審査の手続きを外注していることに疑問を持ち、自分で理解するために受験を決意。通勤電車の往復だけを勉強時間にして一発合格。現在は社内の許認可まわりを一手に担う。
大輝です。28歳、建設会社の総務部で働いています。行政書士試験には10ヶ月の学習で一発合格しました。ただ、机に向かって勉強した時間はほとんどありません。使ったのは、通勤電車の往復80分だけです。今回はその具体的なやり方と、本番でどう戦ったか、そして資格を取ったあと会社でどう変わったかを書きます。
「この書類、何のためにお金を払ってるんですか」と聞けなかった日
きっかけは、会社の建設業許可の更新でした。総務に配属されて2年目、外部の行政書士さんに数十万円を支払って手続きをお願いしている書類が回ってきたのですが、私はその中身をまったく理解できませんでした。
上司に「これって何の書類ですか」と聞いたら、「毎年やってるやつ」という答えが返ってきました。誰も中身を知らないまま、毎年お金を払っている。それが妙に気持ち悪かったんです。外注が悪いという話ではなく、発注している側が中身を理解していない状態が危ういと感じました。
その週末に「建設業許可 仕組み」で検索して、行政書士という資格に行き着きました。会社を辞めて独立するつもりはまったくなくて、単純に「自分の仕事を理解したい」というのが動機でした。
机に向かう時間はゼロと決めた
当時の私の生活はこうでした。7時半に家を出て、20時前後に帰宅。残業がある日は22時を回ります。帰宅後に勉強する未来が、どうしても想像できませんでした。
そこで最初に決めたのが「机に向かう前提の計画を立てない」ということです。帰宅後に1時間確保する計画を立てて、それが3日続かずに挫折するくらいなら、確実にある時間だけで組み立てた方がいい。私にとって確実にあるのは、通勤の電車だけでした。
| 時間帯 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 行き(40分・座れない) | 40分 | スマホで一問一答・判例解説を読む |
| 帰り(40分・座れる日が多い) | 40分 | 過去問演習・間違えた肢の見直し |
| 土曜の午前(月2〜3回) | 2時間 | 記述式の答案を実際に書く |
平日80分×週5日で週400分。10ヶ月で約290時間です。土曜の記述式練習を足しても350時間程度でした。独学の目安と言われる800〜1000時間には全然届いていません。それでも受かったのは、行き先を絞ったからだと思っています。
行政法から始めたのが最大の判断だった
普通は憲法や基礎法学から始める人が多いようですが、私は最初から行政法に全振りしました。理由は2つあります。
1つは配点です。行政法は112点で、試験全体300点の37%を占めます。択一だけでも40問中19問が行政法です。時間がない人間が最初に手をつけるべきはここだと、数字を見て判断しました。
もう1つは、仕事に直結していたからです。建設業許可は行政庁の許認可そのもので、行政手続法や行政不服審査法の話が、そのまま会社の実務とつながっていました。テキストに「申請に対する処分」と出てくると、頭の中に自社の申請書類が浮かぶ。この「知っている話」として読める感覚が、記憶への定着を圧倒的に速くしてくれました。
結果的に、行政法は本番で択一19問中17問正解できました。ここで稼げたことが、合格の土台になっています。
立ったままでもできる勉強を選ぶ
朝の通勤は座れません。片手でつり革、片手でスマホという状態です。この環境でできることは限られています。
私が朝にやっていたのは、一問一答形式の演習と判例解説を読むことだけでした。ノートは開けないし、書くこともできない。だから「読む・選ぶ」だけで完結する学習に振り切りました。逆に帰りは座れる日が多かったので、過去問を通しで解いて、間違えた肢に印をつける作業に充てていました。
印のつけ方は単純です。確実に正解できた肢に◎、迷ったけれど当たった肢に△、間違えた肢に×。次に解くときは△と×だけを回します。◎が3回続いたらもう見ません。この方法にしてから、同じ問題集を回す速度がどんどん上がっていきました。
ここで重要なのは、環境に学習内容を合わせることだと思います。「電車でテキストを開いて書き込む」みたいな理想を追いかけると、結局できなくて何もやらない日が増えます。立ってできることだけをやる、と割り切った方が続きます。
音声解説を使い始めてから、勉強時間が実質2倍になった
4ヶ月目くらいから、音声解説を聴くようになりました。これが自分にとっては大きな転換点でした。
電車の中だけでなく、駅までの徒歩15分、昼休みに社食へ向かう道、休日のランニング中まで学習時間になりました。特に判例は、文字で読むと頭に入らないのに、耳で3回聴くと不思議と流れを覚えていました。倍速で聴けるので、1回15分の解説が7〜8分で終わるのも効率的でした。
正直に言うと、聴きながら他のことを考えている時間もかなりあります。それでも「まったくやらない」よりは遥かにマシで、繰り返し聴いているうちに、キーワードだけは自然と引っかかるようになりました。
択一の切り方は、技術として身につくと思う
過去問を回しているうちに、解き方そのものにコツがあることに気づきました。知識とは別に、点になる技術があります。
最初に「正しいものを選ぶのか、誤っているものを選ぶのか」を問題用紙に印をつける。これが一番大事でした。私は模試で、完璧に理解している問題を設問の読み違いで落としたことが3回あります。知識で落とすより悔しい失点です。以来、問題文を読んだ瞬間に「正」か「誤」かを丸で囲む癖をつけました。
2つの肢で迷ったら、肢を見比べない。設問文に戻る。これは後から気づいたことですが、2つが同じくらい正しく見えるときは、たいてい設問を読み違えています。肢を何度見比べても答えは出ません。設問に戻ると「あ、聞かれているのはこっちか」となることが本当に多い。
組み合わせ問題は得点源。「ア・イが正しい」「イ・ウが正しい」といった形式は、1つの肢を確実に判定できれば選択肢を一気に消せます。全部わからなくても正解できる問題なので、逃さないようにしていました。
個数問題と長文問題は飛ばす。「正しいものはいくつあるか」という個数問題は、全部の肢を正確に判定しないと答えが出ません。見開き2ページにわたる長文問題も同じで、時間あたりの得点効率が最悪です。この2つは見た瞬間に飛ばして、最後に余った時間で戻ることにしていました。
記述式だけは、書かないと絶対にできない
唯一、通勤時間だけでは対応できなかったのが記述式でした。頭の中では答えがわかっているのに、40字にまとめようとすると1文字も出てこない。この事実に気づいたのが、学習開始から6ヶ月目でした。
そこから土曜の午前中を記述式に充てるようにしました。月に2〜3回、2時間だけです。過去問と予想問題を3〜4問書いて、AI添削で採点してもらうというサイクルを回しました。
最初は20点満点で4点とか6点でした。何が足りないのかもわからなかったのですが、フィードバックを見ると「請求の根拠条文が書けていない」「効果の記述がない」など、落としているポイントが毎回似ていることに気づきました。要件と効果をセットで書く、という型を体に入れてからは、安定して12〜16点が取れるようになりました。
本番の記述式は3問で38点でした。もし記述式を捨てていたら、確実に不合格でした。
基礎知識で危うく足切りになりかけた
ここは正直に書きます。基礎知識をなめていました。行政法と民法に時間を全部使い、基礎知識は「常識でなんとかなるだろう」と後回しにしていたのです。
9月に模試を受けたとき、基礎知識が20点でした。足切りラインは24点、つまり14問中6問です。落ちるとしたらここだ、と血の気が引きました。
そこから残り2ヶ月は、通勤時間の3割を基礎知識に回しました。狙いを絞ったのは、個人情報保護法と文章理解、それに行政書士法の3つだけです。政治や経済まで手を広げると終わらないので、法律科目として対策できるものと、読解力で確実に取れる文章理解に集中しました。
特に文章理解は3問出て、しかも法律知識がゼロでも解けます。ここを落とすのはもったいない。過去問を解いてみて、自分は空欄補充が苦手で並べ替えは得意だとわかったので、苦手な方だけを重点的にやりました。本番は32点で、なんとか足切りを回避しています。
本番の3時間をどう配分したか
当日は、時間配分を紙に書いて持っていきました。3時間で60問、単純計算で1問3分です。ただし記述式に30分は残さないといけないので、実際の択一は1問2分半のペースになります。
| 時刻 | やること |
|---|---|
| 13:00〜13:50 | 行政法(択一19問)を先に片付ける |
| 13:50〜14:25 | 民法(択一9問) |
| 14:25〜14:50 | 憲法・基礎法学・商法 |
| 14:50〜15:05 | 多肢選択式(3問) |
| 15:05〜15:35 | 記述式(3問) |
| 15:35〜16:00 | 基礎知識・マークの最終確認 |
行政法から始めたのは、自分がいちばん自信のある科目で勢いをつけたかったからです。問1の基礎法学から解き始めて、いきなり難問に当たって焦るパターンを模試で経験していたので、それを避けました。
一つ、事前に知っておいてよかったことがあります。試験室には時計がありません。これは公式に書かれています。腕時計を持っていって、身につけたままではなく机の上に置く必要があります。私は普段スマートウォッチしか使っていなかったので、直前に安いアナログ時計を買いました。使えないので気をつけてください。
マークミス対策もしていました。選んだ番号を問題用紙の余白に大きく書いておき、それを見ながら解答用紙に転記する。そして5問ごとに問題番号とマークの行がずれていないかを確認する。この手順を模試で2回練習しておきました。マークがずれていることに気づかないまま提出するのが、いちばん怖い失敗です。
結果と、資格を取ったあとに変わったこと
本番の得点は198点でした。内訳はこうです。
| 区分 | 得点 |
|---|---|
| 法令等・択一(40問中27問正解) | 108点 |
| 多肢選択式 | 20点 |
| 記述式 | 38点 |
| 基礎知識(14問中8問正解) | 32点 |
| 合計 | 198点 |
行政法で稼ぎ、民法は9問中4問しか合いませんでした。バランスは悪いですが、合格は合格です。
会社では、それまで外注していた建設業許可の更新と経営事項審査を、私が担当するようになりました。外注費が浮いたことより、社内で完結できるようになったことの方が評価されています。申請書類の意味がわかるので、営業から「この工事、うちの許可で受けられますか」と聞かれてもその場で答えられます。資格手当も月2万円つきました。
独立は、いまのところ考えていません。ただ「いつでも独立できる」という選択肢を持っていることが、日々の仕事の気楽さにつながっている実感はあります。
働きながら受ける方へ
- 確実にある時間だけで計画を立ててください。帰宅後の1時間は、あなたが思っているほど確実ではありません。
- 行政法から始めるのは、時間がない人ほど合理的です。112点、択一だけでも19問という配点は、それだけで戦略になります。
- 仕事と接点のある分野があれば、そこから攻めてください。「知っている話」として読める分野は、覚える速度がまったく違います。
- 設問が「正しいもの」か「誤っているもの」かを最初に丸で囲んでください。知識で落とすより悔しい失点が確実に減ります。
- 記述式は、書かないとできるようになりません。月2〜3回でいいので、実際に書いて添削を受ける時間を確保してください。
- 基礎知識を後回しにしすぎないこと。足切り24点は、実力がある人でも普通に踏みます。個人情報保護法・文章理解・行政書士法だけでも早めに。
通勤時間は、多くの社会人にとって唯一「絶対に発生する空白時間」です。ここを学習に変えられるかどうかで、1年後がかなり変わると思います。明日の朝、電車でスマホを開いたら、SNSではなく問題を1問解いてみてください。
次回のリレーは、地方銀行を早期退職された修さんです。52歳から始めて、1年目は8点差で落ちたところから立て直された方です。
この記事の執筆
行政書士になる子ちゃん編集部
行政書士試験の学習コンテンツを制作する編集チーム。判例解説・テキスト・過去問解説を、判例原文・条文などの一次資料に基づいて執筆しています。
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