【合格者リレー⑤】資格を取って社内でやっていること。建設業許可と経営事項審査の実務
建設会社の総務で働く大輝さん(28歳)が、行政書士資格を取ったあと社内で担当している建設業許可の更新・決算変更届・経営事項審査の実務を解説。独立せず会社で資格を活かす働き方と、試験の知識がどこで役立つかを語ります。
合格者リレーブログ 今回の語り手
大輝
28歳・建設会社勤務・資格を社内の許認可業務に活用
建設会社の総務部で働く28歳。会社の建設業許可・経営事項審査の手続きを外注していることに疑問を持ち、自分で理解するために受験を決意。通勤電車の往復だけを勉強時間にして一発合格。現在は社内の許認可まわりを一手に担う。
大輝です。前回は通勤電車だけで合格した話を書きました。今回は「資格を取ったあと、会社で実際に何をしているのか」を書きます。独立せずに資格を使う道もある、ということが伝わればと思っています。
なお私は勤務先の業務として手続を行っているだけで、他社から報酬を得て申請を代行しているわけではありません。その前提で読んでください。
そもそも建設業許可とは何か
受験生のときは条文の話としてしか知らなかったものが、いまは毎年の実務になっています。まず全体像を整理します。
建設業を営むには、原則として建設業許可が必要です。ただし1件500万円未満の工事(建築一式は1,500万円未満)は「軽微な工事」として許可不要とされています。逆にいえば、500万円以上の工事を受けたい会社は許可が必須です。
許可には2つの区分があり、ここを混同している人がとても多いです。私も最初は混ざっていました。
| 区分 | 分かれ方 |
|---|---|
| 知事許可 / 大臣許可 | 営業所がどこにあるか。1つの都道府県内だけなら知事許可、2つ以上の都道府県にまたがるなら大臣許可 |
| 一般 / 特定 | 元請として下請に出す金額。下請契約の総額が4,500万円(建築一式は7,000万円)以上になるなら特定建設業許可が必要 |
「大きい会社だから大臣許可」ではありませんし、「大臣許可だから特定」でもありません。営業所の場所と、下請に出す金額。まったく別の軸です。業種は全部で29あり、うちの会社は複数の業種で許可を取っています。
いちばん大事なのは、実は毎年の「決算変更届」です
担当してみていちばん驚いたのが、この書類の重さでした。受験勉強では出てこない話です。
建設業許可を持っている会社は、毎事業年度が終わってから4ヶ月以内に「決算変更届(事業年度終了届)」を提出する義務があります。3月決算なら7月末が期限です。これは許可の更新とは別に、毎年必ず発生します。
そして、ここが落とし穴です。許可の更新を申請するとき、過去5期分の決算変更届がすべて提出済みでないと、更新申請そのものが受理されません。
つまり、毎年の届出をサボっていると、5年後の更新のときに5期分をまとめて作る羽目になります。しかも過去の決算資料を引っ張り出しながらです。実際、同業他社で更新に間に合わず許可を失効させた話を聞きました。許可が失効すると、500万円以上の工事が受注できなくなります。会社にとっては事業停止に近い打撃です。
作業としても軽くありません。税務申告に使った決算書をそのまま出せるわけではなく、建設業法で定められた様式に組み替える必要があります。完成工事高と兼業事業売上を分け、完成工事原価報告書を作り、という作業です。私が引き継いだ初年度は、これだけで3日かかりました。
更新は「期限の30日前まで」。カレンダーに入れています
許可の有効期間は5年です。更新の受付は期限の30日前までに完了している必要があり、1日でも過ぎたら失効します。更新ではなく新規申請をやり直すことになります。
5年に1回の手続なので、担当者が交代すると簡単に忘れられます。私は許可証の期限から逆算して、6ヶ月前・3ヶ月前・2ヶ月前の3回、社内カレンダーにアラートを入れました。前任者から引き継いだときには何の管理もなく、これが一番怖いと感じたところです。
もう一つ、日常的に気をつけているのが人の要件です。経営業務の管理責任者と専任技術者は、1日でも欠けると許可の要件を満たさなくなります。該当者が退職・病気・異動でいなくなると、その業種で新たに500万円以上の契約を結べなくなります。総務としては、対象者の退職の意向を人事より早く知っておく必要がある、という妙な緊張感があります。
なお、この経営業務の管理責任者の要件は数年前の改正で緩和されています。以前は許可業種ごとの経営経験が求められましたが、いまは建設業全体での経験で足り、さらに常勤役員等と直接補佐する者を組み合わせるチーム型の要件も認められるようになりました。「経営者個人の資格」から「会社としての経営管理体制」を見る方向に変わったのだと理解しています。
経営事項審査(経審)は、公共工事を受けるための通行手形
もう一つの大仕事が経営事項審査、通称「経審」です。公共工事を発注者から直接請け負うには、必ずこれを受けていなければなりません。建設業法27条の23が根拠です。
厄介なのは有効期間です。審査基準日(直前の決算日)から1年7ヶ月しか有効ではありません。3月決算で3月31日を基準日にすると、翌々年の10月末で切れます。切れ目なく公共工事を受注し続けるには、事実上毎年受け続けるしかない、という設計になっています。
流れはこうです。
- 決算変更届を提出する(これが済んでいないと先に進めない)
- 登録経営状況分析機関に「経営状況分析(Y点)」を申請する
- 許可行政庁に「経営規模等評価申請」と「総合評定値請求」を出す
- 結果通知が届く(2週間〜1ヶ月)
- それを持って入札参加資格審査を申請する
最終的に出るのが総合評定値、いわゆるP点です。計算式は決まっていて、完成工事高(X1)、自己資本と利益(X2)、経営状況(Y)、技術力(Z)、社会性等(W)の5つに、それぞれ0.25・0.15・0.20・0.25・0.15の係数がかかります。
この構造がわかると、経営判断とつながります。技術者の資格取得を会社が支援するのはZ点のためですし、社会保険の加入状況などがW点に効きます。「なぜうちはこれをやっているのか」が数式で説明できるようになったのは、担当してからの一番の収穫でした。
試験の知識は、どこで役に立ったか
正直に言うと、試験で覚えた条文がそのまま使える場面は多くありません。建設業法は試験範囲ではないので、実務の知識は入ってからの独学です。
それでも、行政法をやった意味は確実にありました。
許認可の全体構造がわかること。申請に対する処分、標準処理期間、審査基準、理由の提示。行政手続法で習った枠組みが、そのまま目の前の手続に当てはまります。窓口で補正を求められたときも、それが何に基づく話なのかがわかるので、慌てません。
不利益処分の意味がわかること。もし許可の取消しや営業停止の話になったとき、聴聞や弁明の機会があるという知識は、会社にとって重要です。実際に使う場面が来ないことを願っていますが、知らないのとは違います。
行政庁とのやり取りに萎縮しなくなったこと。これが一番大きいかもしれません。以前は役所からの連絡を「上から言われたこと」として受け取っていましたが、いまは根拠を確認したうえで質問できます。
独立しない、という選択について
資格を取ると「いつ独立するの」とよく聞かれます。いまのところ、その予定はありません。
会社の中で使う道にも、それなりの価値があると思っています。外注していた手続を社内で回せるようになったこと、営業からの「この工事はうちの許可で受けられますか」という質問にその場で答えられること、経審のP点を上げるために何をすべきか経営に提案できること。どれも、資格がなければできませんでした。資格手当も月2万円ついています。
それに、実務を先に覚えられるという利点もあります。もし将来独立するとしても、建設業許可の実務を数年やってからの方が、確実に強い。いまは修行期間だと思っています。
受験生の方の中には「独立する気がないのに取る意味があるのか」と迷っている方もいると思います。少なくとも私の場合は、自分の仕事の意味がわかるようになったことだけで、勉強した時間の元は取れました。
次回は修さんが、相続業務で行政書士ができること・できないことについて書かれるそうです。私も相続の相談を受けたときに線引きがあいまいだったので、勉強させてもらうつもりです。
この記事の執筆
行政書士になる子ちゃん編集部
行政書士試験の学習コンテンツを制作する編集チーム。判例解説・テキスト・過去問解説を、判例原文・条文などの一次資料に基づいて執筆しています。
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