苫米地事件
衆議院の解散は「統治行為」で、裁判所は口出しできない
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
①わが憲法の三権分立の制度の下においても、司法権の行使についてのすからある限度の制約は免れないのであって、あらゆる国家行為が無制限に司法審査の対象となるものと即断すべきでない。
②直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断にまかされ、最終的には国民の政治的判断に委ねられているものと解すべきである。
・この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきものである。
・衆議院の解散は、衆議院議員をしてその意に反して資格を喪失せしめ、国家最高機関たる国会の主要な一翼をなす衆議院の機能を一時的とは言え閉止するものであり、さらにこれにつづく総選挙を通じて、新たな衆議院、さらに新たな内閣成立の機縁を為すものであって、その国法上の意義は重大であるのみならず、解散は、多くは内閣がその重要な政策、ひいては自己の存続に関して国民の総意を問わんとする場合に行われるものであってその政治上の意義もまた極めて重大である。
③すなわち衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことはあきらかである。
・そして、この理は、本件のごとく、当該衆議院の解散が訴訟の前提問題として主張されている場合においても同様であって、ひとしく裁判所の審査権の外にありといわなければならない。
判決
関連法令の解説
この条文は「すべて司法権は最高裁判所および法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と定めています。原則としてあらゆる法律上の紛争は裁判所が審査できますが、本判決はこの司法権にも限界があることを明らかにしました。統治行為はこの限界の代表例です。憲法7条(天皇の国事行為)
この条文は内閣の助言と承認のもとで天皇が行う国事行為を列挙しており、衆議院の解散もここに含まれています。苫米地側は69条によらない7条解散は違憲と主張しましたが、最高裁はこの点の判断自体を統治行為論によって回避しました。憲法69条(内閣不信任と解散)
この条文は衆議院が内閣不信任決議を可決した場合に解散できると定めています。苫米地は「解散は69条の場合に限られるべきだ」と主張しましたが、最高裁はこの実体的判断には立ち入りませんでした。裁判所法3条(裁判所の権限)
裁判所は一切の法律上の争訟を裁判する権限を持つと定めていますが、本判決はこの権限にも統治行為という内在的限界があることを示しました。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
統治行為の根拠は「最終的に国民の政治判断に委ねるべき」という民主主義的考え方にある
注意:砂川事件では「一見して明白に違憲無効な場合」には審査が及びうるという余地を残しており、苫米地事件とは説明がやや異なる
憲法7条のみによる衆議院解散の合憲性については、最高裁は統治行為論によって判断を回避しており、実体的な結論は示していない
統治行為論は砂川事件(最大判昭34.12.16)でも採用されており、あわせて整理すること
関連法令
出題年度
関連判例
警察法改正無効事件
裁判所の法令審査権(憲法81条)は、国会の両院における法律制定の議事手続の適否には及ばない この理由は、議院が自らの内部事項を自主的に決める**「自律権」**を裁判所は尊重すべきだから 注意:議事手続は審査対象外だが、法律の内容(実体)については通常通り違憲審査の対象となる 市町村警察を廃止して都道府県警察に移すことは憲法92条(地方自治の本旨)に違反しない 本判例は司法権の限界の典型例として、統治行為論・自律権・部分社会の法理とセットで整理しておく
警察予備隊違憲訴訟
日本の違憲審査制は付随的違憲審査制であり、具体的な争訟事件に付随してのみ違憲審査を行うことができる 具体的事件なしに法令の合憲性を抽象的に審査する抽象的違憲審査権は認められていない 注意:本件の結論は棄却ではなく却下。そもそも訴えが不適法として審理に入らなかった 下級裁判所も違憲立法審査権を行使できる。違憲審査権は最高裁判所だけの権限ではない 対比:ドイツ型の抽象的違憲審査制では具体的事件なしに審査できるが、日本はこれを採用していない
板まんだら事件
法律上の争訟の2要件:①当事者間の具体的な権利義務・法律関係に関する紛争、②法律の適用によって終局的に解決できるもの 表面上が財産紛争の形をとっていても、宗教的教義の正否が訴訟の核心となる場合は法律上の争訟にあたらない 前提問題にすぎない場合と紛争の核心となっている場合の区別が重要:後者は却下される 注意:宗教に関する紛争がすべて法律上の争訟にあたらないわけではない。教義判断が不可欠かどうかで判断する 宝塚市パチンコ条例事件(最判平14.7.9)の「法律上の争訟」論と対比して整理すること
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