故障車の放置と道路管理の瑕疵
87時間もの故障車放置で安全措置ゼロ!「知らなかった」では免責されない。道路管理の瑕疵あり=無過失責任
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
幅員7.5メートルの国道の中央線近くに故障した大型貨物自動車が約87時間駐車したままになつていたにもかかわらず、道路管理者がこれを知らず、道路の安全保持のために必要な措置を全く講じなかつた判示の事実関係のもとにおいては、道路の管理に瑕疵があるというべきである。
・・・
当時その管理事務を担当するI土木出張所は、道路を常時巡視して応急の事態に対処しうる看視体制をとつていなかつたために、本件事故が発生するまで右故障車が道路上に長時間放置されていることすら知らず、まして故障車のあることを知らせるためバリケードを設けるとか、道路の片側部分を一時通行止めにするなど、道路の安全性を保持するために必要とされる措置を全く講じていなかつたことは明らかであるから、このような状況のもとにおいては、本件事故発生当時、同出張所の道路管理に瑕疵があつたというのほかなく・・・
判決
関連法令の解説
道路・河川その他の公の営造物の設置・管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国または公共団体がこれを賠償する責任を負うと定めています。「瑕疵」とは「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいい(最判昭45.8.20)、この責任は管理者の過失の有無を問わない無過失責任です。本件では、道路上に87時間にわたって故障車が放置されて交通の安全性が著しく欠如した状態が、客観的な瑕疵にあたると判断されました。
国家賠償法3条1項(費用負担者の賠償責任)
道路等の管理費用を負担する者も賠償責任を負うと定めています。本件では国道の管理費用を国が負担していたため、管理行為は和歌山県が担当していたとしても、費用負担者である国も賠償義務を負うとされました。
道路法42条(道路管理者の維持・修繕義務)
道路管理者は道路を常時良好な状態に保つように維持・修繕し、一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負うと定めています。本判決はこの維持管理義務の懈怠が国家賠償法2条1項の瑕疵にあたるとしました。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
道路管理者が故障車の存在を「知らなかった」としても、常時巡視体制をとっていなかったこと自体が管理体制の不備として瑕疵を構成する
国家賠償法2条1項の責任は無過失責任(管理者の過失の有無は問わない)
注意:「知らなかったから責任なし」とはならない。いつ知ったかではなく客観的に安全性を欠いていたかが判断基準
対比判例:「工事標識板が直前に別車両により倒されて即座に事故が起きた場合は瑕疵なし」(最判昭50.7.25とは別の判例)→時間的に原状回復が不可能な場合は免責される
本件の87時間という長期放置が瑕疵を肯定する重要なファクターであり、放置時間の長短が瑕疵判断の鍵
関連法令
関連判例
大東水害訴訟
国賠法2条1項の営造物責任は無過失責任であり、管理者の故意・過失は不要 未改修河川の安全性として求められるのは、同種・同規模の河川の管理の一般水準および社会通念に照らして是認しうる安全性(過渡的安全性)で足りる 注意:道路等の人工公物(当初から完全な安全性が求められる)と河川等の自然公物(過渡的安全性で足りる)では瑕疵の判断基準が異なる 改修計画中の河川は、計画が格別不合理でなく、水害危険性が特に顕著となる特段の事由がない限り、未改修のままであっても直ちに管理の瑕疵とはならない 財政的・技術的制約について:道路管理では予算抗弁は認められないが、河川管理の瑕疵判断では財政的・技術的・社会的制約が考慮される 本判決(未改修河川)と**多摩川水害訴訟(最判平2.12.13・改修済河川)**はセットで理解することが重要
多摩川水害訴訟
国賠法2条1項の営造物の瑕疵責任は無過失責任であり、管理者の故意・過失は不要 河川の安全性は工事実施基本計画が想定する規模の洪水に耐えられる水準で足りる(段階的安全性) 注意:道路など人工公物と河川など自然公物では求められる安全性の水準が異なる。人工公物への予算抗弁(財政事情)は原則認められないが、河川管理の瑕疵判断では財政的・技術的・社会的制約が考慮される 改修整備がされた段階において想定された規模の洪水から予測不能な水害が生じた場合、直ちに河川管理の瑕疵とはならない 改修整備後に水害発生の危険の予測が可能となった場合には、その時点から水害発生までの間に対策を講じなかったことが瑕疵にあたるかを諸事情を総合して判断する(本件とは別の判断枠組み)
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