A民法債権各論(契約・不法行為等)
転用物訴権
最高裁判所1995-09-19
転用物訴権不当利得対価関係無資力賃貸借契約
転用物訴権は賃貸借全体で判断
図解でわかる

事案の概要
請負人甲が賃貸人乙の依頼で建物の修繕工事を行いましたが、乙が無資力で代金を支払えませんでした。そこで甲は、工事によって建物の価値が上がり利益を得た建物所有者丙に対して、不当利得返還請求をしました。しかし裁判所は、丙が賃貸借契約で家賃減額などの負担をしていれば、丙の利得には法律上の原因があるとして、甲の請求を認めませんでした。
争点
建物の修繕工事を行った請負人(甲)が、賃貸人(乙)の無資力により代金を回収できない場合に、建物所有者(丙)に対して不当利得返還請求(法律上の原因なく利益を得た者に返還を求める請求)ができるのはどのような場合か。
判旨
建物所有者(丙)が不当利得として修繕工事の利益を返還しなければならないのは、丙と賃貸人(乙)との賃貸借契約全体を見たときに、丙が何の対価も負担せずに利益を受けていた場合に限られる。丙が賃貸借契約の中で修繕費用に相当する出費や負担(家賃の減額など)をしていれば、その利益には法律上の原因があるとして、請負人(甲)からの不当利得返還請求は認められない。
関連法令の解説
民法703条の不当利得返還請求に関する判例です。法律上の原因なく他人の財産や労務によって利益を受けた者は、その利益を返還しなければなりませんが、どのような場合に「法律上の原因」があると言えるかが争点となりました。
身近な例え
友人に頼まれて他人の車を修理したけど友人が払えない場合、車の持ち主が友人に修理代相当の何かをあげていたら、持ち主にタダで利益を与えたことにはならないという感じです。
ざっくりまとめ
要するに、建物所有者が賃貸借契約の中で修繕費相当の負担をしていれば、タダで利益を得たわけじゃないから、請負人は建物所有者に不当利得返還請求できないってこと!
試験対策ポイント
■転用物訴権とは:請負人が注文者以外の第三者(最終的な利益享受者)に不当利得返還請求する権利 ■判断基準:建物所有者への請求が認められるのは、賃貸借契約全体を見て所有者が「無償で」利益を得た場合のみ ■認められない場合:所有者が賃貸借契約の中で修繕費用相当の対価(家賃減額など)を負担していれば、法律上の原因ありとして請求は棄却される ■ポイント:契約関係全体における対価関係を総合的に判断する
関連法令
民法703条
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