A憲法人権総論
南九州税理士会政治献金事件
最高裁判所2001-03-13最判平8.3.19
強制加入団体政治献金思想・信条の自由目的の範囲外税理士会
強制加入団体が政治献金?会員の思想・信条に踏み込みすぎ、目的の範囲外!
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事案の概要
南九州税理士会(Y)は、税理士法改正運動の資金として、各会員から特別会費5,000円を徴収し、政治団体「南九州各県税理士政治連盟」に寄付する旨の総会決議を行いました。会員の税理士X は納入を拒否したところ、Yは役員選挙の選挙権・被選挙権の欠格事由に該当するとして、Xを選挙人名簿に登載しないまま選挙を実施しました。Xは「この決議は自分の思想・信条の自由を侵害する無効なものだ」として、会費納入義務が存在しないことの確認と損害賠償を求めて訴訟を提起しました。
争点
強制加入団体である税理士会が、税理士法の改正運動を目的として、政治団体に政治献金を行う旨の総会決議を行い会員に特別会費の納入を義務付けることが、税理士会の目的の範囲内の行為として有効か、それとも会員の思想・信条の自由を侵害する目的の範囲外の無効な行為かというのがこの事件の争点です。
判旨
会社は任意加入であり定款の目的の範囲が広く解されるため、政党への政治献金も目的の範囲内とされています。しかし税理士会は、税理士として業務を行う限り必ず加入しなければならない強制加入団体であり、会員には実質的な脱退の自由がありません。この性質の違いから、税理士会の目的の範囲は会社のように広範に解することはできません。政治団体に対して金員を寄付するかどうかは、選挙における投票の自由と表裏一体をなすものとして、各会員が市民としての個人的な政治的思想・判断に基づいて自主的に決定すべき事柄です。そのため、たとえ税理士に関わる法令の改廃を実現するためであっても、税理士会が政治団体に政治資金を寄付することを多数決で決定し会員に協力を義務付けることは、法の全く予定しないところであり、税理士会の目的の範囲外の行為であって、当該総会決議は無効です。
判決
税理士会による政治団体への政治献金は目的の範囲外の行為であり、会員から特別会費を徴収してこれを寄付する旨の総会決議は無効であると判断されました。Xの会費納入義務が存在しないことが認められました。
関連法令の解説
憲法19条(思想・良心の自由)
この条文は思想・良心の自由を絶対的に保障しています。政治団体への献金は、どの政党・候補者を支持するかという政治的思想・信条と不可分に結びつく行為です。本判例では、強制加入団体が多数決によって会員に政治献金への協力を義務付けることは、この思想・良心の自由への深刻な侵害につながると判断されました。
民法43条(現:一般法人法11条等・目的の範囲)
法人は定款等で定められた目的の範囲内においてのみ権利を有し義務を負うとされています。会社の場合は目的の範囲が広く解されますが(八幡製鉄事件)、税理士会のような強制加入の法人については、会員の思想・信条の自由を考慮して目的の範囲をより厳格に解釈しなければならないとされています。
この条文は思想・良心の自由を絶対的に保障しています。政治団体への献金は、どの政党・候補者を支持するかという政治的思想・信条と不可分に結びつく行為です。本判例では、強制加入団体が多数決によって会員に政治献金への協力を義務付けることは、この思想・良心の自由への深刻な侵害につながると判断されました。
民法43条(現:一般法人法11条等・目的の範囲)
法人は定款等で定められた目的の範囲内においてのみ権利を有し義務を負うとされています。会社の場合は目的の範囲が広く解されますが(八幡製鉄事件)、税理士会のような強制加入の法人については、会員の思想・信条の自由を考慮して目的の範囲をより厳格に解釈しなければならないとされています。
身近な例え
マンション管理組合(強制加入)が、特定の政党への寄付を多数決で決めて各住民に負担させようとするようなもの。政治的信条は個人の自由なので許されません。
ざっくりまとめ
「法律を変えてもらうために政治団体に献金しよう」って税理士会が多数決で決めたわけ。でも税理士は仕事を続ける限り絶対に税理士会に入らなきゃいけない、つまり脱退の自由がない「強制加入団体」なんだよね。「気に入らなければ脱退すればいい」って言えない以上、政党支持みたいな個人の思想・信条に深く関わることを多数決で強制するのには限界がある。目的が業務に関連していても「手段が政治献金である」という点でアウト!会社の政治献金(八幡製鉄事件)とは扱いが違うって対比もめちゃ重要だよ。
試験対策ポイント
判断の決め手は「強制加入団体」という性質。脱退の自由がない以上、個人の思想・信条に関わる事柄を多数決で強制することには自ずと限界がある
会社との対比を必ず押さえること:会社の政治献金→目的の範囲内・有効(最判昭45・八幡製鉄事件)、税理士会の政治献金→目的の範囲外・無効(本判例)
注意:目的の正当性(税理士法改正という業務関連の目的)ではなく、手段の性質(政治献金という思想・信条に深く関わる手段)が判断のポイント
関連判例として群馬司法書士会事件(最判平14)も重要。司法書士会が阪神大震災の復興支援として日本司法書士会連合会に復興支援拠出金を寄付することは目的の範囲内・有効とされており、「政治性のない公益的活動」との区別が試験で問われやすい
関連法令
関連判例
⚖›⚖›
憲法最高裁判所大法廷
三菱樹脂事件
憲法の人権規定は私人間に直接適用されない(直接適用説は採用されていない) 私人間の問題は**民法90条(公序良俗)・民法1条(信義則)**などの一般条項を通じて憲法の趣旨を間接的に実現する(間接適用説) 企業には雇用契約締結の自由(憲法22条)があり、思想・信条を理由とした採用拒否は原則として違法ではない 採用時に思想・信条に関する事項を申告させることも違法ではない 注意:「直接適用不可」と「間接適用可(一般条項経由)」の2点はセットで理解すること 本判例は試用期間中の本採用拒否が問題になった事案であり、「解雇」とは区別して押さえること
憲法最高裁判所大法廷
八幡製鉄事件
法人への人権保障は「性質上可能な限り」及ぶ(性質上法人に適用できないものは及ばない) 会社も政治的行為の自由を有し、政治献金もその一環として憲法上保護される 会社による政治献金と個人による寄附を別異に扱うべき憲法上の要請はない 注意:「憲法上は違法ではない」という判断であり、政治資金規正法などによる法律上の規制は別問題 政党は憲法上その存在を当然に予定されているという点も試験で問われる
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