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S民法総則(意思表示・代理・時効等)

宇奈月温泉事件

大審院1935-10-05大判昭10.10.5
権利濫用民法1条3項所有権妨害排除請求利益のなさと損害の均衡態様の悪質さ大審院宇奈月温泉

26銭で買った土地を7円で売りつけようとするのは権利濫用!所有権も濫用は許されない

図解でわかる

判例図解

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なる子ちゃん

事案の概要

宇奈月温泉(富山県)では黒薙温泉から7.5km先の引湯管によってお湯を引いており、この管は黒部鉄道が管理していた。ところが引湯管はXが後に取得した土地のごく一部(2坪分)を無断で通過していた。Xはこの2坪を含む112坪の急傾斜地を1坪26銭という低価格で購入した後、黒部鉄道に対して引湯管の撤去か、周辺も含む約3000坪を1坪7円(購入価格の約27倍)で買い取ることを要求した。黒部鉄道がこれを拒否したため、XはOの妨害排除請求として引湯管の撤去を求め提訴した。
争点

争点

わずかな土地の侵害を利用して不当な利益を得ることを目的とした所有権に基づく妨害排除請求(引湯管の撤去要求)が、権利の濫用にあたり許されないかどうかが争点です。
判旨

判旨

Xが買い取った土地は急傾斜地でほとんど利用価値がなく、引湯管が通過しているのもそのうち2坪にすぎません。しかし引湯管を撤去すれば宇奈月温泉と周辺住民に致命的な損害が生じます。Xは最初からこの不均衡を利用して法外な値段で買い取らせようとして土地を購入しており、権利行使の態様も著しく悪質です。このような場合に所有権に基づく引湯管の撤去を求めることは、所有権の目的に反するものであり、権利の濫用にあたるため認められません。
判決

判決

上告棄却。Xの妨害排除請求は権利の濫用として認められない。
関連法令の解説

関連法令の解説

民法1条3項(権利濫用の禁止)
この条文は「権利の濫用は、これを許さない」と定めています。本判例は民法1条3項が明文化される前の大審院判決ですが、権利濫用の法理を日本で初めて明確に判示した先駆的な判例として位置づけられます。現在の民法1条3項の解釈においても、権利行使が認められない基準として本判例の考え方が生きています。

民法206条(所有権の内容)

所有権者は法令の範囲内で自由に物を使用・収益・処分できます。しかし本判例では、所有権に基づく請求であっても、権利者にほとんど利益をもたらさず、相手方に甚大な損害を与え、かつ不当な利益獲得を目的としている場合には、所有権の行使も権利濫用として認められないと判示されました。
身近な例え

身近な例え

隣の家の木の枝がほんの少しだけ境界線を越えているのに、嫌がらせ目的で高額な賠償金を要求するようなものです。正当な理由がなければ権利濫用になります。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

Xの土地を侵害しているのはほんのわずか(2坪)であって、しかもその土地は急傾斜地で利用価値がほとんどないんだ。
一方で引湯管を撤去すると宇奈月温泉全体が機能しなくなって、温泉と住民に致命的な損害が生じる。

しかもXはこの不均衡を最初から見越して意図的にその土地を買い、法外な値段で買い取らせようとした、いわば嫌がらせ目的の権利行使なんだよ。

所有権は大切な権利だけど、自分にほとんど利益をもたらさない権利行使で相手に甚大な損害を与えるのは「権利の濫用」にあたるって、日本の判例で初めてはっきり示されたんだ。

試験対策ポイント

権利濫用の判断においては、①権利者の利益と②相手方・社会への損害のバランス、および③権利行使の目的・態様の悪質さが総合的に考慮される
本判例は日本で初めて「権利ノ濫用」という文言を判決文中で用いた大審院の先例であり、民法1条3項の解釈の基礎となっている

所有権のような強い権利であっても、権利濫用として行使が制限される場合があることを示した

権利濫用の3要素として押さえる:①権利者に対するほとんど利益がない、②相手方・第三者への甚大な損害、③不当な利益獲得目的という態様の悪質さ

注意:民法1条3項が直接適用された判例ではなく、同条が明文化される前の判例であることも押さえておくこと
法令

関連法令

試験

出題年度

20072016
関連判例

関連判例

民法最高裁判所

占有権原を有する者による抵当権侵害

妨害排除請求(明渡し)が認められる要件は3つの同時充足:①抵当権設定登記後に占有権原が設定されたこと、②占有権原の設定に競売妨害目的があること、③その占有によって交換価値の実現が妨げられ優先弁済権の行使が困難な状態にあること 直接自己への明渡しが認められる追加要件:所有者において適切な維持管理が期待できないこと 賃料相当損害金は認められない。理由は「抵当権者はもともと不動産を使用・収益する権限を持たない」から。「使う権利がない者が使えなかった損害を請求できない」という論理を押さえること 関連判例との対比:不法占有者への対応は最判平11.11.24(所有者の妨害排除請求権を代位行使する形で対処)。本判例は占有権原を持つ者への抵当権者自身による直接請求を認めた点が新しい 注意:抵当権設定登記より前に設定された正当な賃借権は競売妨害目的とはいえず、この法理は適用されない

民法最高裁判所

時効と登記・時効完成前の第三者

時効完成前に登記を備えた第三者→時効取得者は登記なしで対抗できる(本判決) 時効完成後に登記を備えた第三者→時効取得者は登記がないと対抗できない(別判例) 判断の分岐点は「第三者が登記を備えたのが時効完成の前か後か」の一点 時効完成前の第三者が民法177条の「第三者」に該当しない理由:A→B(譲渡)→(Cが時効取得)は単線的な権利移転関係であり、BとCが二重譲渡的な対抗関係に立つわけではないため 注意:「時効が完成した=必ず登記が必要」という思い込みは危険。相手方の登記時期によって結論が逆転する

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