旭川学力テスト事件
普通教育で教師に完全な教授の自由はない!教育内容決定権は国と親・教師が分担
図解でわかる

タップで拡大
事案の概要
争点
判旨
【原文】
①普通教育の場においても、例えば教師が公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において、また、子どもの教育が教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行われなければならないという本質的要請に照らし、教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては、一定の範囲における教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではない。
・しかし、普通教育においては、子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等に思いをいたすときは、普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されない。
・憲法26条の背後には、国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。
・子どもの教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの学習をする権利に対応し、その充足をはかりうる立場にある者の責務に属するものとしてとらえられているのである。
・しかしながら、憲法26条が、子どもに与えるべき教育の内容は、国の一般的な政治的意思決定手続によって決定されるべきか、それともこのような政治的意思の支配、介入から全く自由な社会的、文化的領域内の問題として決定、処理されるべきかを、直接一義的に決定していると解すべき根拠は、どこにもみあたらない。
②親は、子どもに対する自然的関係により、子どもの将来に対して最も深い関心をもち、かつ、配慮をすべき立場にある者として、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められる。
・私学教育における自由や教師の教授の自由も、それぞれ限られた一定の範囲においてこれを肯定するのが相当である。
・それ以外の領域においては、一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定、実現すべき立場にある国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、あるいは子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有するものと解さざるをえず、これを否定すべき理由ないし根拠は、どこにもみいだせないのである。
③よって、学テは適法である。
判決
関連法令の解説
この条文は学問の自由を保障しており、本判例では教授の自由がその一内容として認められることが確認されました。ただし大学教育と普通教育では保障の程度が異なり、普通教育の教師には完全な教授の自由は認められないと判示されました。憲法26条(教育を受ける権利)
この条文は国民が教育を受ける権利を保障しています。本判例では、子どもが教育を受ける権利の実質的保障という観点から、全国的な教育水準の確保が求められ、それが国の教育内容への関与を正当化する根拠のひとつとなっています。
身近な例え
ざっくりまとめ
大学生は教授内容を批判する能力を持っているけど、小中学生はそうじゃない。しかも普通教育では学校や先生を自由に選べないし、全国的な教育水準を確保する必要もある。
だから普通教育の教師に完全な教授の自由は認められないんだ。
教育内容をどう決めるかについては、親の教育の自由・私学の自由・教師の教授の自由・国の教育政策、それぞれが一定の範囲で役割分担をしていて、国は必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能を持つ。ただし国家の教育への介入はできるだけ抑制的であるべきとも示されたんだよ。
試験対策ポイント
理由:①生徒の批判能力の欠如と教師の強い影響力、②学校・教師を選択する余地の乏しさと教育水準確保の要請
国は必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定できるが、できるだけ抑制的であるべき
親の教育の自由は主に家庭教育・学校選択の場面に現れる
注意:大学教育と普通教育で教授の自由の保障程度が異なる点が試験でよく問われる
関連法令
関連判例
東大ポポロ事件
憲法23条の学問の自由はすべての国民に保障される(大学の研究者に限定されない) 大学の自治が認められる範囲:①教授ら研究者の人事、②施設の管理、③学生の管理(ある程度) 学生はあくまで教授らの学問の自由と自治の効果として施設利用・学問の自由を認められるにすぎない 学生集会への保護:真に学問的な研究・発表のためのものに限られ、政治的・社会的活動は保護外 注意:大学公認団体・大学許可の集会であっても、目的・性質が政治的であれば大学の自治の保護は及ばない
教科書検定事件
教科書検定は憲法21条2項の検閲にあたらない(理由:一般図書として出版可能であり、発表禁止目的・発表前審査の特質がないため) 教科書は学術研究発表の場ではないため、検定は憲法23条の学問の自由(研究発表の自由)を直接侵害しない 国は子どもに適切な教育を保障するために必要かつ相当な範囲で教育内容を決定できる(憲法26条合憲の根拠) 個別の検定処分が国賠法上違法になる基準:「審議会の判断過程に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠した場合」 注意:制度全体は合憲だが、個別処分は専門家の見解を無視するなど著しく不合理な場合は裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法上違法になりうる 本件は第一次家永教科書訴訟(家永全面敗訴)であり、第三次訴訟(最判平9.8.29)では4件について裁量権逸脱が認められた点と混同しないこと
📱 アプリのご紹介
スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。
行政書士試験学習には必須の判例のわかりやすい解説から科目別テキスト、過去問演習、択一演習をスマホでまとめて持ち歩ける学習アプリです。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。