第2節 相続法
第4章 家族法
相続法は、人が亡くなったときに財産や権利義務が誰にどのように引き継がれるかを定める分野です。遺産分割、遺言、遺留分など実務上も頻出で、行政書士試験でも毎年必ず出題される最重要分野の一つです。家族関係と財産権が交錯する複雑な領域ですが、体系的に理解すれば得点源にできます。
相続の開始と相続人
第882、887、889、890条相続とは、人の死亡により、その財産上の権利義務が相続人に包括的に承継されることです。法定相続人は民法で定められた順位により決まり、配偶者は常に相続人となり、第一順位は子、第二順位は直系尊属、第三順位は兄弟姉妹です。
具体例
Aさんが死亡し、妻Bと子C、Dがいる場合、BとC、Dが相続人となります。もしAに子がなく両親Eが生存していれば、BとEが相続人です。配偶者も子も親もいなければ、兄弟姉妹が相続人になります。
要件
- ・被相続人の死亡
- ・相続人が民法の定める範囲内にあること
- ・相続欠格・廃除事由がないこと
効果・結論
- ・相続開始と同時に被相続人の権利義務が相続人に承継される
- ・相続財産は相続人全員の共有となる(遺産共有)
条文(第882、887、889、890条)
第882条 相続は、死亡によって開始する。 第887条 被相続人の子は、相続人となる。
試験のポイント
- ・配偶者は常に相続人だが、順位ではなく常に他の相続人と並存する点に注意
- ・代襲相続は子と兄弟姉妹で異なる(兄弟姉妹の代襲は一代限り)
- ・相続欠格・廃除との区別を正確に
法定相続分と遺産分割
第900、906、907条法定相続分とは、各相続人が相続財産に対して有する割合的持分です。実際の財産分配は遺産分割により行われ、相続人全員の協議(遺産分割協議)または家庭裁判所の調停・審判で決定されます。遺産分割までは相続財産は共有状態です。
具体例
Aが死亡し妻Bと子C、Dが相続人の場合、法定相続分はB1/2、C1/4、D1/4です。実際には3人で協議し、例えば自宅はBが、預金はCとDが分けるなど、具体的な財産の帰属を決めます。
要件
- ・相続開始後、相続人全員の協議または調停・審判
- ・遺産分割協議では全員の合意が必要
- ・遺産分割は相続開始時に遡って効力を生じる
効果・結論
- ・各相続人が具体的な財産を単独所有する
- ・遺産分割は遡及効を有し、相続開始時から分割された状態とみなされる
条文(第900、906、907条)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
試験のポイント
- ・法定相続分はあくまで目安で、遺産分割協議で自由に変更可能
- ・遺産分割前の相続財産処分は他の共同相続人の同意が必要(無断処分は不当利得・不法行為)
- ・特別受益・寄与分により具体的相続分が修正される点を押さえる
遺言と遺留分
第960、967、1042条遺言は被相続人が生前に財産の処分方法を定める意思表示で、法定の方式(自筆証書、公正証書、秘密証書)を要する要式行為です。遺留分は一定の相続人に保障される最低限の相続分で、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められます。遺留分を侵害された者は遺留分侵害額請求権を行使できます。
具体例
Aが全財産を長男Bに相続させる遺言を残して死亡。妻Cと次男Dは本来相続できるはずでしたが、遺言により何も得られません。しかしCとDは遺留分権利者として、Bに対し遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
要件
- ・遺言は15歳以上で作成可能
- ・法定の方式を遵守(自筆証書は全文・日付・氏名を自書し押印)
- ・遺留分侵害額請求権は相続開始と侵害を知った時から1年、知らなくても10年で消滅
効果・結論
- ・遺言により法定相続分と異なる財産配分が可能
- ・遺留分侵害額請求により金銭債権が発生(物権的効果はない)
- ・遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分ができない
条文(第960、967、1042条)
第1042条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。 一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一 二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
試験のポイント
- ・遺留分権利者は配偶者・子・直系尊属のみ(兄弟姉妹は対象外)
- ・遺留分侵害額請求は形成権で、請求により金銭債権が発生(旧法の遺留分減殺請求との相違)
- ・自筆証書遺言の加除訂正方式、検認手続の要否を正確に
相続の承認と放棄
第915、920、921条相続人は単純承認(無限に権利義務を承継)、限定承認(相続財産の範囲内で債務を負う)、相続放棄(初めから相続人でなかったとみなされる)のいずれかを選択できます。熟慮期間は相続開始を知った時から3か月で、この期間内に家庭裁判所に申述する必要があります。
具体例
Aが死亡し、子Bが相続人となりましたが、Aには多額の借金がありました。Bは相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすれば、借金を承継せずに済みます。放棄しないまま3か月経過すると単純承認とみなされます。
要件
- ・相続放棄・限定承認は家庭裁判所への申述が必要
- ・熟慮期間は自己のために相続開始を知った時から3か月
- ・法定単純承認事由(財産処分、隠匿等)があれば単純承認したものとみなされる
効果・結論
- ・相続放棄すると初めから相続人でなかったものとみなされる(代襲相続は発生しない)
- ・限定承認は相続人全員で共同して行う必要がある
- ・単純承認後は撤回不可
条文(第915、920、921条)
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
試験のポイント
- ・相続放棄は各相続人が単独でできるが、限定承認は全員共同が必要
- ・法定単純承認事由(財産処分、隠匿等)に該当すると放棄不可
- ・熟慮期間の起算点は客観的な相続開始時ではなく、主観的に知った時
まとめ
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