第1節 親族法
第4章 家族法
親族法は、婚姻・離婚・親子関係など、家族に関する法律関係を規律する分野です。相続法と並んで家族法を構成し、日常生活に密接に関わる重要な領域です。婚姻・離婚・親権といった基本概念を正確に理解することが、行政書士試験でも実務でも不可欠です。
親族法とは
第725条〜881条条簡単にいうと
簡単にいうと、家族に関するあらゆるルールを定めたのが親族法です。夫婦・親子・兄弟などの関係がどのように生まれ、変わり、終わるのかを規律しており、強行規定が多く当事者が自由に変更できないルールが多い点がポイントです。
親族法とは、民法第4編(725条から881条)に置かれ、親族・婚姻・親子・後見・扶養などについてのルールを定める法律領域の総称です。私たちが「家族」と呼ぶ人間関係のうち、法的に意味をもつものがどの範囲か、またその関係から生じる権利義務はどのようなものかを規定しています。
親族法は財産法とは性質が大きく異なります。財産法においては当事者の意思自治が広く認められますが、親族法はその性質上、身分関係の安定と公益保護の観点から強行規定が多く、当事者の合意で自由に変更できない規定が数多く存在します。たとえば婚姻の成立や離婚に届出を要求する届出婚主義・届出離婚主義はその典型であり、当事者間の合意があっても届出なしには法的な身分変動が生じません。
親族法の体系は「第4編 親族」として整理されており、第1章「総則」(親族の範囲等)、第2章「婚姻」、第3章「親子」、第4章「親権」、第5章「後見」、第6章「保佐及び補助」、第7章「扶養」と続きます。行政書士試験では婚姻・離婚・親子・親権を中心に出題されます。なお相続に関するルールは第5編(882条以下)として別に定められており、親族法とは区別して学習するとよいでしょう。
具体例
Aが亡くなったとき、誰が相続人になるかは民法第5編の問題だが、その前提となる「AとBは夫婦か」「AとCは親子か」という身分関係は親族法のルールで判断される。
ポイント整理
- ・民法第4編(725条〜881条)が根拠
- ・強行規定が多く当事者の意思による変更が制限される
- ・届出主義により公証的機能を果たす
効果
- ・身分関係(夫婦・親子等)の発生・変更・消滅のルールが定まる
- ・扶養・相続の前提となる身分関係が確定する
条文(第725条〜881条条)
(民法)第4編 親族(725条〜881条)
重要メモ
- ・「家族関係の法的ルールブック」が親族法。民法第4編(725条〜881条)に規定
- ・財産法は意思自治が広く認められるが、親族法は強行規定が多く当事者が自由に変更できない
- ・届出主義が徹底されており、婚姻届・離婚届がなければ法律上の身分変動は生じない
- ・行政書士試験では婚姻・離婚・親子・親権を中心に出題される。相続(第5編)は別章
- ・公益保護の観点から身分関係の安定が重視されている点が財産法と決定的に異なる
親族の範囲
第725条・726条・727条・728条条簡単にいうと
簡単にいうと、民法上の「親族」は6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族の3種類です。この範囲外は法律上は他人になる点がポイントです!
民法725条は、法律上の「親族」の範囲を①6親等内の血族、②配偶者、③3親等内の姻族の3種類と定めています。これらに該当しない者は民法上の親族ではなく、扶養義務や相続などの親族法上の権利義務は発生しません。
血族とは血縁関係にある者をいい、直系血族(親・祖父母・子・孫等)と傍系血族(兄弟姉妹・叔父叔母・いとこ等)に分かれます。親等の数え方は世代数で計算し、直系の場合はそのまま世代を遡り・降りながら数えます。傍系の場合は共同の祖先まで遡って数えた世代数と、そこから数えた世代数の合計が親等となります(726条)。具体的に、親子は1親等、祖父母・孫は2親等、兄弟姉妹は2親等、叔父叔母・甥姪は3親等、いとこは4親等です。
姻族とは婚姻によって生じた親族関係であり、自分の配偶者の血族または自分の血族の配偶者が姻族にあたります(727条)。姻族関係は離婚により当然終了します(728条1項)。一方で配偶者の死亡では姻族関係は当然には終了せず、生存配偶者が姻族関係終了の意思を表示することで初めて終了します(728条2項)。この点は試験で問われやすいです。配偶者は1種の親族として位置づけられますが、親等では表されません。
具体例
Aの妻Bの父(義父)はAの1親等の姻族。Aとの離婚後は姻族関係は当然終了するが、Bが死亡した場合はAが意思表示をしない限り姻族関係は続く。

親族の範囲(民法725条)
ポイント整理
- ・6親等内の血族(726条)
- ・配偶者(婚姻届出が必要)
- ・3親等内の姻族(727条)
効果
- ・扶養義務(877条)の基礎となる
- ・相続権(890条等)の基礎となる
- ・近親婚禁止規定の適用範囲が定まる
条文(第725条・726条・727条・728条条)
第725条 次に掲げる者は、親族とする。一 六親等内の血族 二 配偶者 三 三親等内の姻族
重要メモ
- ・「725条の3種類の丸暗記+728条の姻族終了タイミング」が頻出
- ・民法上の親族は①6親等内の血族②配偶者③3親等内の姻族の3種類(725条)
- ・親等の数え方:直系はそのまま世代を数え、傍系は共通の祖先を経由して合算(726条)
- ・兄弟姉妹は2親等・叔父叔母・甥姪は3親等・いとこは4親等(傍系計算)
- ・姻族関係の終了:離婚→当然終了(728条1項)、配偶者の死亡→意思表示が必要(728条2項)
- ・配偶者は親等で表されない独立した一類型として位置づけられる
婚姻の成立
第731条〜741条条簡単にいうと
簡単にいうと、法律上の夫婦になるには「婚姻の意思」と「婚姻届の提出」の2つが必要です。どちらが欠けても法律上の婚姻とはならない点がポイントです!
婚姻の成立には、①婚姻意思の合致と②婚姻届の提出(739条)という2つの要件が必要です。これを届出婚主義といいます。事実上の夫婦生活があっても、婚姻届を提出しなければ法律上の婚姻は成立せず、いわゆる内縁関係にとどまります。
婚姻意思については、判例(最判昭44.10.31)において「実質的意思説」が採用されており、真に夫婦としての生活共同体を結成する意思(実質的意思)が必要とされています。単に一時的・目的的な法律効果のためだけに婚姻届を提出する場合(いわゆる偽装婚姻)は、実質的意思が欠けているとして婚姻の無効原因となりえます。一方、離婚意思は形式的意思(届出を出すという意思)で足りるとされており、この点で婚姻意思と対比して理解する必要があります。
婚姻の届出は当事者双方と成年の証人2名の署名が必要です(739条2項)。婚姻意思のない婚姻届が誤って受理されても婚姻は無効であり(742条1号)、逆に婚姻意思があっても届出が受理されなければ婚姻は成立しません。なお婚姻の取消しと無効の区別も重要で、無効は誰でも・いつでも・主張できますが、取消しは取消権者が一定期間内に行使しなければなりません。
具体例
AとBが真剣に夫婦になるつもりで婚姻届を提出した→婚姻成立。AがBを税制上の扶養に入れる目的のみで婚姻届を提出した→婚姻無効(婚姻意思なし)。

婚姻の成立
ポイント整理
- ・婚姻意思の合致(実質的意思説・最判昭44.10.31)
- ・婚姻届の提出(739条)
- ・証人2名の署名(739条2項)
- ・婚姻障害事由がないこと
効果
- ・夫婦同氏(750条)
- ・同居・協力・扶助義務(752条)
- ・日常家事連帯債務(761条)
- ・婚姻費用分担義務(760条)
条文(第731条〜741条条)
第739条 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
重要メモ
- ・「婚姻意思=実質的意思説(最判昭44.10.31)・離婚意思=形式的意思説(最判昭57.3.26)」の対比が頻出
- ・婚姻成立には①婚姻意思の合致と②婚姻届の提出が必要(届出婚主義・739条)
- ・婚姻意思は「真に夫婦としての生活共同体を結成する実質的意思」が必要(最判昭44.10.31)
- ・税制・国籍取得など目的的・一時的な婚姻届提出は実質的意思を欠き婚姻無効(742条1号)
- ・婚姻届受理なしでは婚姻不成立。意思があっても届出なければ内縁にとどまる
- ・婚姻届には当事者双方と成年の証人2名の署名が必要(739条2項)
- ・死後に届出された婚姻届は原則として有効(最判昭44.4.3)
婚姻障害
第731条〜736条条簡単にいうと
簡単にいうと、「この組み合わせはNG」という婚姻障害があります。障害があっても一度受理されると取消事由になるだけで無効にはならない点がポイントです!
婚姻意思の合致と届出があっても、一定の要件を満たさない場合は婚姻の取消事由(婚姻障害)となります。婚姻障害がある場合は婚姻届を受理すべきではありませんが、誤って受理された場合でも婚姻は成立してしまい(取消原因にはなりますが無効にはなりません)、取消権者が取消しを請求することで初めて効力を失います。
主な婚姻障害は以下の通りです。①婚姻適齢(731条):2022年成年年齢引き下げ改正により、男女ともに18歳以上でなければ婚姻できません。②重婚の禁止(732条):配偶者のある者は重ねて婚姻できません。③近親婚の禁止(734条):直系血族間および兄弟姉妹間の婚姻は禁止されています。3親等内の傍系血族(叔父と姪など)も同様です(734条2項)。④直系姻族間の婚姻禁止(735条):直系姻族(元義父母と元嫁・婿)間は姻族関係終了後も婚姻できません。⑤養親子関係のある者同士の婚姻禁止(736条):養親子・養兄弟姉妹関係にある者は縁組終了後も婚姻できません。
婚姻障害の中でも重婚禁止・近親婚禁止は一般的に広く知られていますが、試験では「取消原因であって無効原因ではない」という点、および「取消前は婚姻としての効力がある」という点の把握が重要です。
具体例
17歳のAが婚姻届を提出した場合、受理されれば婚姻は成立するが、婚姻適齢違反(731条)として取消しの対象となる。ただし取消権者が取消しの請求をするまでは婚姻としての効力がある。
ポイント整理
- ・婚姻適齢:男女ともに18歳以上(731条・2022年改正)
- ・重婚禁止:配偶者のない者であること(732条)
- ・近親婚禁止:直系血族・兄弟姉妹間でないこと(734条)
- ・直系姻族間でないこと(735条)
- ・養親子・養兄弟姉妹関係にないこと(736条)
効果
- ・婚姻障害のある婚姻届は受理すべきでない
- ・誤って受理された場合は取消事由(無効ではない)
- ・取消しの請求は一定の者に限られる(744条等)
条文(第731条〜736条条)
第731条 婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。 第732条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
重要メモ
- ・「婚姻障害は取消原因(無効でない)」という点が最重要
- ・婚姻障害があっても誤って受理されれば婚姻は成立し、取消権者が取消しを請求するまで効力が続く
- ・婚姻適齢:2022年改正で男女ともに18歳以上(731条)。女性の再婚禁止期間は廃止
- ・重婚禁止(732条)・直系血族や3親等内傍系血族間の近親婚禁止(734条)
- ・直系姻族間の婚姻禁止(735条):姻族関係終了後も同様
- ・養親子・養兄弟姉妹関係にある者の婚姻禁止(736条):縁組終了後も同様
- ・取消権者は婚姻障害の種類ごとに異なる(744条・745条)
婚姻の効果
第750条〜762条条簡単にいうと
簡単にいうと、婚姻すると法的にいろいろなことが変わります。氏が変わり、同居義務が生まれ、お互いの日常生活の費用を分担する義務が発生します!
婚姻が成立すると、身分上と財産上の両面にわたってさまざまな法律効果が生じます。
■ 身分上の効果
まず夫婦同氏の原則(750条)があります。夫婦はいずれかの氏(姓)を称しなければならず、婚姻により一方が改氏します。次に同居・協力・扶助義務(752条)として、夫婦はお互いに同居し、協力し、扶助しなければならない義務を負います。また夫婦間の契約は婚姻中いつでも取消せるとする夫婦間の契約取消権が認められていましたが(754条)、この規定については実質的に適用が限定的とされています(最判昭42.2.2:婚姻が実質的に破綻している場合には適用されません)。
■ 財産上の効果
婚姻費用分担義務(760条)として、夫婦は婚姻から生じる費用を分担する義務を負います。また日常家事連帯債務(761条)として、夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をした場合、他方の配偶者も連帯して責任を負います。ただし相手方が悪意・重過失の場合は連帯責任を負いません。財産の帰属については、婚姻前から有していた財産は各自の特有財産とし(762条1項)、婚姻中に取得した財産でも一方の名義のものは原則その者の特有財産ですが、いずれに属するかが明らかでない財産は夫婦の共有と推定されます(762条2項)。
具体例
夫Aが日用品の購入のために店Cと売買契約を結んだ場合、妻Bも連帯して代金支払い義務を負う(761条)。一方、夫Aが独断で高額な自動車を購入した場合は「日常家事」の範囲外であり、妻Bは連帯責任を負わない。
効果
- ・夫婦同氏(750条)
- ・同居・協力・扶助義務(752条)
- ・婚姻費用分担義務(760条)
- ・日常家事連帯債務(761条)
- ・夫婦間の契約取消権(754条)
条文(第750条〜762条条)
第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。 第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。 第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。
重要メモ
- ・「日常家事連帯債務(761条)」と「婚姻費用分担(760条)」が最頻出
- ・夫婦同氏の原則(750条):どちらかの氏を夫婦の氏とする
- ・同居・協力・扶助義務(752条):婚姻中は継続的義務
- ・婚姻費用分担義務(760条):資産・収入等一切の事情を考慮して分担
- ・日常家事連帯債務(761条):日常家事の範囲内のみ他方配偶者も連帯責任を負う
- ・夫婦間の契約取消権(754条):婚姻中いつでも取消可・ただし破綻状態では不可(最判昭42.2.2)
- ・特有財産(762条1項):婚姻前取得財産・婚姻中自己名義で得た財産。不明財産は共有推定(762条2項)
内縁
第752条・760条・761条・768条条簡単にいうと
簡単にいうと、婚姻届を出していない「事実婚(内縁)」には法律上の夫婦の権利義務の一部が認められます。準用される規定とされない規定の区別が試験の核心です!
内縁とは、当事者間に婚姻意思および夫婦としての実態(共同生活)が存在するにもかかわらず、婚姻の届出をしていない男女関係をいいます。法律上の婚姻とは認められないため、婚姻に関するすべての規定が適用されるわけではありませんが、判例はその実態に着目して一部の規定を類推適用しています。
■ 内縁に準用される(類推適用される)規定
同居・協力・扶助義務(752条)、婚姻費用分担義務(760条)、日常家事連帯債務(761条)、財産分与に関する規定(768条)が類推適用されます。内縁関係が不当に破棄された場合は、相手方に損害賠償請求が認められます(最判昭33.4.11)。また住居の賃借権や社会保険上の扶養認定など、一定の法的保護が内縁配偶者にも与えられることがあります。
■ 内縁に準用されない(適用されない)規定
姻族関係の発生(725条3号)、夫婦同氏(750条)、嫡出推定(772条)、配偶者の相続権(890条)、夫婦間の契約取消権(754条)は内縁に適用されません。特に相続権については、内縁配偶者に相続権は認められないという点が試験で頻繁に問われます。内縁解消時の財産関係は財産分与(768条)の類推適用や不当利得・事実上の共有として解決されます。
具体例
内縁の夫が死亡した場合、内縁の妻には相続権がない。一方、内縁の夫が不当に内縁関係を破棄した場合は妻は損害賠償を請求できる。
ポイント整理
- ・婚姻意思の存在
- ・夫婦としての実態(共同生活)の存在
- ・婚姻届の不提出(届出があれば婚姻となる)
効果
- ・財産分与請求権(768条類推適用)
- ・不当破棄による損害賠償請求権
- ・同居・協力・扶助義務(752条類推適用)
条文(第752条・760条・761条・768条条)
(直接の規定なし。婚姻規定の類推適用による)
重要メモ
- ・「内縁に相続権なし(890条は適用されない)」が最重要
- ・内縁とは婚姻意思と夫婦としての実態があるが婚姻届を提出していない関係
- ・準用される規定:同居・協力・扶助義務(752条)・婚姻費用分担(760条)・日常家事連帯(761条)・財産分与(768条)
- ・準用されない規定:相続権(890条)・嫡出推定(772条)・夫婦同氏(750条)・姻族関係(725条3号)・夫婦間契約取消権(754条)
- ・不当破棄による損害賠償請求は認められる(最判昭33.4.11)
- ・死亡による内縁解消には財産分与の規定を準用できない(最決平12.3.10)
- ・住居の賃借権など一定の法的保護が内縁配偶者に与えられる場合がある
離婚の成立
第763条〜771条条簡単にいうと
簡単にいうと、離婚も婚姻と同じく届出が必要です。でも離婚の「意思」は婚姻意思より緩く、形式的意思(届出したい意思)で足りるとされています!
離婚は法律上の婚姻関係を解消する身分行為であり、日本法は協議離婚を原則とします。協議離婚は①離婚意思の合致と②離婚届の提出(763条)により成立します。離婚の意思については、判例(最判昭57.3.26)において「形式的意思説」が採用されており、離婚届を提出する意思(形式的意思)があれば足り、真に夫婦関係を解消しようとする実質的意思は不要とされています。婚姻意思が実質的意思説を採用しているのと対比して整理することが重要です。
協議が調わない場合や、相手方が協議に応じない場合は調停離婚の申立てを行います(家事事件手続法244条)。日本の家事事件手続法は調停前置主義を採用しており(同法257条)、裁判上の離婚を申し立てる前に必ず調停を経なければなりません。調停でも解決しない場合に初めて離婚訴訟(裁判離婚・民法770条)を提起できます。
離婚の方式には①協議離婚(763条)、②調停離婚(家事事件手続法268条)、③審判離婚(家事事件手続法284条)、④裁判離婚(770条)の4種類があります。なお離婚届が相手方の知らない間に提出されたような場合は、離婚意思のない離婚として無効となります。また離婚届が受理された後に無効を主張する方法として離婚無効の訴えが認められています。
具体例
夫Aが妻Bに離婚届を偽造して提出した場合、Bに離婚意思がなかったとして離婚は無効となる。一方、Bが生活保護目的でのみ離婚に合意した場合でも、届出を提出する意思があれば形式的意思として離婚は有効とされる。

離婚の成立
ポイント整理
- ・離婚意思の合致(形式的意思で足りる・最判昭57.3.26)
- ・離婚届の提出(763条)
- ・裁判離婚の場合は法定離婚原因(770条)が必要
効果
- ・婚姻関係の解消
- ・姻族関係の当然終了(728条1項)
- ・復氏(767条)
- ・子の単独親権の確定(819条)
- ・財産分与請求権の発生(768条・2年以内)
条文(第763条〜771条条)
第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
重要メモ
- ・「離婚意思=形式的意思(最判昭57.3.26)」と「調停前置主義」の2点が頻出
- ・離婚成立には①離婚意思の合致と②離婚届の提出が必要(763条)
- ・離婚意思は「離婚届を提出したい」という形式的意思で足りる(婚姻意思の実質的意思説と対比)
- ・生活保護受給目的のみの離婚届提出でも形式的意思あれば有効(最判昭57.3.26)
- ・裁判上の離婚は調停前置主義(家事事件手続法257条):調停を経なければ離婚訴訟不可
- ・離婚の方式:協議離婚(763条)→調停離婚→審判離婚→裁判離婚(770条)の4種類
- ・相手方に知られずに離婚届が提出された場合は離婚意思なく無効
裁判離婚
第770条条簡単にいうと
簡単にいうと、相手が離婚に応じてくれない場合でも、法律で定められた「離婚原因」があれば裁判で離婚できます。5つの原因と「有責配偶者からの請求」の例外が頻出です!
裁判離婚は、協議・調停によって離婚が成立しない場合に、法定離婚原因(770条1項)に基づいて裁判所が離婚判決を下す制度です。以下の5つの離婚原因が法定されています。①不貞行為(770条1項1号):配偶者以外の者との性的関係。②悪意の遺棄(770条1項2号):正当な理由なく同居・協力・扶助義務を履行しないこと。③3年以上の生死不明(770条1項3号):生死が3年以上明らかでないこと。④回復の見込みのない強度の精神病(770条1項4号):一方が強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと。⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由(770条1項5号):暴力・著しい侮辱・家庭内別居等。
5号は包括的な規定であり、実務上最も多く利用される原因です。裁判所は1〜4号のうち一つが認められる場合でも、婚姻の継続が相当と認めるときは離婚の請求を棄却できます(770条2項)というセーフティバルブ条項があります。
有責配偶者(自ら離婚原因を作った者)からの離婚請求については、最大判昭62.9.2が判例変更を行い、原則として認められませんが例外的に認められる場合があるとしました。その例外の3要件として、①夫婦の別居が相当長期間にわたること、②夫婦間に未成熟の子が存在しないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に著しく過酷な状況に置かれないことが挙げられています。
具体例
夫Aが不倫をして家を出た(有責配偶者)。妻Bが長期別居を続け未成熟の子もいない状況で、AからBへ離婚請求→最大判昭62.9.2の3要件を満たせば認められる場合がある。
ポイント整理
- ・法定離婚原因のいずれかが存在すること(770条1項1号〜5号)
- ・調停前置主義を経ていること(家事事件手続法257条)
効果
- ・婚姻関係の解消(判決確定時)
- ・財産分与・慰謝料請求権の発生
条文(第770条条)
第770条第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。一 配偶者に不貞な行為があったとき 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
重要メモ
- ・「裁判離婚5原因の暗記(770条1項1〜5号)」と「有責配偶者からの請求:原則NG・例外3要件(最大判昭62.9.2)」が頻出
- ・法定離婚原因①不貞行為(1号)②悪意の遺棄(2号)③3年以上生死不明(3号)④強度の精神病(回復見込みなし)(4号)⑤婚姻継続困難な重大事由(5号)
- ・5号は包括規定で実務上最多利用。DVや家庭内別居もここに該当
- ・裁判所は1〜4号に該当してもなお婚姻継続が相当と認めれば棄却可(770条2項・セーフティバルブ条項)
- ・有責配偶者からの離婚請求:原則不可・例外3要件(①相当長期の別居②未成熟子の不存在③相手方の著しい過酷状況なし)(最大判昭62.9.2)
離婚の効果
第728条・767条・768条・819条条簡単にいうと
簡単にいうと、離婚すると氏・姻族関係・子の親権・財産などが変わります。特に「財産分与の請求は2年以内」という期限は要注意です!
離婚が成立すると、身分上・財産上・子に関して次のような効果が生じます。
■ 身分上の効果
まず姻族関係が当然に終了します(728条1項)。これは離婚届の提出と同時に当然に生じる効果であり、意思表示は不要です(配偶者死亡の場合と異なります)。次に氏について、婚姻により改氏した者は離婚により当然に婚姻前の氏(旧姓)に戻ります(復氏原則・767条1項)。ただし離婚の日から3カ月以内に届出をすることで、離婚の際に称していた氏(婚氏)を続けて使用することができます(離婚の際に称していた氏を称する届出・767条2項)。
■ 財産上の効果
財産分与(768条)があります。財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を、離婚に際して清算する制度です(清算的財産分与)。これには慰謝料的要素や扶養的要素も含まれる場合があります。財産分与の請求は離婚成立後2年以内にしなければなりません(768条2項)。
■ 子に関する効果
未成年の子の親権は父または母の単独親権となります(819条1項・2項)。2024年民法改正により共同親権が導入されましたが(819条改正)、原則は協議離婚では父母の協議、協議が調わない場合は家庭裁判所が単独・共同を決定する制度となりました。親権と監護権は分離することもできます(766条参照)。
具体例
Aは婚姻後「田中」姓を名乗っていたが、離婚により原則「鈴木」に戻る。ただし離婚から3カ月以内に届出をすれば「田中」を継続使用できる(767条2項)。
効果
- ・姻族関係の当然終了(728条1項)
- ・復氏原則・3カ月以内の届出で婚氏続称可(767条)
- ・財産分与請求権(768条・2年以内)
- ・子の単独親権確定(819条)
条文(第728条・767条・768条・819条条)
第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。 第768条第2項 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
重要メモ
- ・「財産分与は離婚から2年以内(768条2項)」「姻族関係は離婚で当然終了(728条1項)」「復氏原則・婚氏続称は3カ月以内の届出(767条2項)」の3点が頻出
- ・姻族関係は離婚届提出と同時に当然終了(意思表示不要)(728条1項)
- ・復氏原則(767条1項):婚姻により改氏した者は離婚により当然に婚姻前の氏に戻る
- ・婚氏続称(767条2項):離婚から3カ月以内に届出で婚氏を継続使用可
- ・財産分与(768条):清算的財産分与・慰謝料的要素・扶養的要素を含む。請求は離婚後2年以内
- ・子の親権(819条):離婚により単独親権が原則。2024年改正で共同親権制度導入(協議または家庭裁判所が決定)
- ・配偶者の死亡の場合は復氏しないが届出で復氏可(751条)・姻族関係は意思表示で終了(728条2項)
法律上の親子関係
第772条・779条・787条条簡単にいうと
簡単にいうと、「法律上の親子」は血がつながっていれば自動的に認められるわけではありません。母子関係と父子関係では発生のしくみが違う点がポイントです!
民法上の法律的な親子関係(実子関係)は、①婚姻関係にある父母から生まれた嫡出子と、②婚姻関係にない父母から生まれた非嫡出子(婚外子)に区別されます。
母子関係については、判例(最判昭37.4.27)において、母子関係は分娩(出産)の事実によって当然に発生するとされています。したがって、認知や届出を要せず、出産した女性が法律上の母として位置づけられます。
父子関係の発生方式は母子関係と異なります。嫡出子については、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する嫡出推定(772条)によって父子関係が推定されます。非嫡出子については、父の認知(779条)によって初めて法律上の父子関係が生じます。父の認知がなければ、血縁上の父であっても法律上の父子関係は発生しません。
嫡出子と非嫡出子の区別については、最大決平25.9.4において、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法旧900条4号但書が違憲とされ、2013年の民法改正により嫡出子と非嫡出子の相続分は同等とされました。現行民法900条においては嫡出・非嫡出の区別なく平等な相続分が認められます。
具体例
未婚の女性AがBを出産した場合、AとBの母子関係は出産の事実により当然成立する。一方、Bと父Cの間の父子関係は、Cの認知(779条)がなければ法律上は発生しない。
ポイント整理
- ・母子関係:分娩の事実(最判昭37.4.27)
- ・嫡出子の父子関係:嫡出推定(772条)
- ・非嫡出子の父子関係:父の認知(779条)または強制認知(787条)
効果
- ・法律上の親子関係の成立
- ・親権・扶養・相続の前提関係が確定する
- ・嫡出子・非嫡出子ともに相続分は同等(900条・最大決平25.9.4後の改正)
条文(第772条・779条・787条条)
第779条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
重要メモ
- ・「母子関係=分娩の事実で当然成立(最判昭37.4.27)」「父子関係=嫡出推定か認知」が基本
- ・母子関係は出産(分娩)の事実により認知・届出なく当然発生(最判昭37.4.27)
- ・嫡出子の父子関係:婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定(嫡出推定・772条)
- ・非嫡出子の父子関係:父の認知(779条)または強制認知(787条)がなければ法律上の父子関係は発生しない
- ・非嫡出子の相続分は嫡出子と同等(最大決平25.9.4違憲決定→2013年900条改正)
- ・父が認知を拒む場合は子・直系卑属・法定代理人が認知の訴えを提起できる(強制認知・787条)
嫡出推定
第772条・775条〜778条条簡単にいうと
簡単にいうと、婚姻中に生まれた子は夫の子と「推定」されます。この推定を覆すには嫡出否認の訴えを提起しなければならず、勝手に否定することはできません!
嫡出推定とは、婚姻中に妻が懐胎した子を夫の子と推定する制度です(772条)。これにより、子の父が誰かという不確かな事実関係が法律上確定し、家族関係の安定を図っています。
2022年の民法改正(2024年4月施行)により、嫡出推定の規定が大きく改正されました。改正後の772条の内容は以下の通りです。①婚姻成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(772条2項)。②女が子の懐胎から出生時の間に2以上の婚姻をしていたときは、その子は直近の婚姻の夫の子と推定されます(772条3項・新設)。これにより、再婚後300日以内に生まれた子について重複推定が生じる問題が解消されました。
嫡出推定を否認するためには、嫡出否認の訴えを提起しなければなりません(775条)。嫡出否認の訴えは、夫または子・妻・前夫(2022年改正で拡大)が原告となることができます。出訴期間は子の出生を知った時から1年以内(旧規定)が、2022年改正で夫は子の出生を知った時から3年以内、子は21歳に達するまで(ただし子が成年に達した後は1年以内)に拡大されました(777条・778条)。なお、嫡出推定が及ばない場合(外観上明らかに夫の子でないとき等)は、嫡出否認の訴えによらず親子関係不存在確認の訴えが認められる場合もあります(最判昭44.5.29)。
具体例
Aと婚姻中のBが産んだ子Cは、Aの子と推定される(772条)。この推定を否定してDが実の父であると主張するには、嫡出否認の訴えを提起しなければならない(775条)。

嫡出推定(民法772条)
ポイント整理
- ・妻が婚姻中に懐胎した子であること(772条1項)
- ・婚姻成立後200日経過後または解消後300日以内の出生(772条2項)
効果
- ・夫の子と推定される(法律上の父子関係の推定)
- ・嫡出否認の訴えによってのみ推定を覆せる(775条)
条文(第772条・775条〜778条条)
第772条第1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。 第772条第3項 女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。
重要メモ
- ・「300日ルール(婚姻解消後300日以内の子は婚姻中懐胎と推定)」と「2022年改正:再婚後の重複推定は直近の婚姻の夫の子(772条3項)」が頻出
- ・婚姻成立後200日以内に生まれた子は婚姻前に懐胎したものと推定(772条2項前段)
- ・婚姻成立後200日経過後または解消後300日以内に生まれた子は婚姻中懐胎と推定(772条2項後段)
- ・2022年改正:女が懐胎から出生まで2以上の婚姻をしていたときは直近の婚姻の夫の子と推定(772条3項)。再婚後の重複推定問題を解消
- ・嫡出推定を否定するには嫡出否認の訴えのみ可(775条)。親子関係不存在確認の訴えが認められる例外あり(最判昭44.5.29)
- ・嫡出否認の訴えの出訴期間(2022年改正後):父・前夫・母→子の出生を知った時から3年以内(777条)。子→21歳まで・成年後は1年以内(778条)
非嫡出子の認知
第779条〜789条条簡単にいうと
簡単にいうと、婚外子と父の法律上の親子関係は認知によってのみ生まれます。胎児の認知や死亡した子の認知など、特殊なケースの条件も押さえましょう!
非嫡出子については、父の認知によらなければ法律上の父子関係が発生しません(779条)。認知には、父が自発的に行う任意認知と、裁判によって強制的に父子関係を確定させる強制認知(787条)があります。
■ 任意認知(779条〜782条)
父または母が自発的に自分の子と認める行為であり、届出によって行います(781条)。認知は遺言によっても行うことができます(781条2項)。認知にあたっては、成年の子を認知するには子の承諾が必要(782条)、胎児を認知するには母の承諾が必要(783条1項)、死亡した子を認知する場合はその直系卑属の承諾が必要(783条2項)という制約があります。認知は取り消すことができません(785条)。認知された子は出生時にさかのぼって認知の効力が生じますが(784条)、第三者の既得権を害することはできません。
■ 強制認知(787条)
父が任意認知を拒む場合に、子・その直系卑属またはこれらの者の法定代理人が認知の訴えを提起して父子関係を確定させる方法です。出訴期間の制限はありませんが、父が死亡している場合は死亡後3年以内に提起しなければなりません(787条但書)。
■ 認知の効果
認知によって父子間に親子関係が発生し(779条)、それにより父の法定相続人となる地位・扶養請求権・認知された子の氏の変更申請権(791条)等が発生します。また父の婚姻後に認知した場合、要件を満たすと準正(婚姻準正・790条2項)により嫡出子の地位を取得します。
具体例
AがBとの間に生まれた子Cを認知した場合、認知の効力はCの出生時に遡る(784条)。しかしその遡及効により第三者Dの既得権(例えば相続完了後に取得した財産権)は害されない。
ポイント整理
- ・父または母の届出による任意認知(781条)
- ・成年の子の認知:子の承諾が必要(782条)
- ・胎児の認知:母の承諾が必要(783条1項)
- ・死亡した子の認知:直系卑属の承諾が必要(783条2項)
効果
- ・認知の効力は出生時に遡る(784条)
- ・法律上の父子関係の発生
- ・認知された子は父の法定相続人となる
- ・認知は取り消し不可(785条)
条文(第779条〜789条条)
第784条 認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
重要メモ
- ・「認知の効力は出生時に遡る(784条)・ただし第三者の既得権は害せない」「胎児の認知=母の承諾(783条1項)」「強制認知の訴えは父の死後3年以内(787条但書)」が頻出
- ・任意認知(779条):父または母が届出(781条)または遺言(781条2項)で行う。認知は取消し不可(785条)
- ・成年の子を認知する場合は子の承諾が必要(782条)
- ・胎児を認知する場合は母の承諾が必要(783条1項)
- ・死亡した子を認知する場合は直系卑属の承諾が必要(783条2項)
- ・強制認知(787条):父の死亡後3年以内に限り提起可(787条但書)
- ・認知の効力は出生時に遡る(784条)。ただし遡及効により第三者の既得権を害することはできない
- ・準正(790条):父母の婚姻後に認知すれば嫡出子の地位を取得(婚姻準正)
養親子関係・普通養子と特別養子
第792条〜817条の11条簡単にいうと
簡単にいうと、血縁がなくても法律上の親子関係を作れるのが養子縁組です。普通養子と特別養子では実親との関係が続くかどうかが大きく違います!
養子縁組とは、血縁関係のない者の間に法律上の親子関係を創設する制度です。民法は普通養子縁組(792条〜817条)と特別養子縁組(817条の2〜817条の11)の2種類を定めています。
■ 普通養子縁組
縁組意思の合致と届出(799条・739条)によって成立します。普通養子縁組の要件は①養親は20歳以上(792条)、②養子は養親より年少者(793条)、③未成年者を養子とする場合は家庭裁判所の許可(797条)が必要です。ただし自己の直系卑属を養子とする場合はこの許可は不要です(797条但書)。普通養子縁組によっても実親との親子関係は終了せず、実父母・養父母の双方と法律上の親子関係が継続します。離縁は当事者の協議(811条)または裁判(814条)によって行います。
■ 特別養子縁組
養親の請求に基づく家庭裁判所の審判(817条の2)によって成立します。特別養子縁組の要件は①養親は夫婦でともに養親となり(817条の3)、一方が25歳以上・他方が20歳以上、②養子は原則として15歳未満(817条の5)、③養子となる者の父母の同意が必要(817条の6)、④父母による養育が著しく困難または不適当その他特別の事情があること(817条の7)、⑤試験養育期間が6カ月以上(817条の8)が必要です。特別養子縁組が成立すると実親との親族関係は原則終了します(817条の9)。これが普通養子縁組との最大の違いです。
具体例
普通養子Aは、実親Bとの関係も養親Cとの関係も両方維持される(相続権が両方に発生)。一方、特別養子Dは実親Eとの関係が終了し、養親Fとの関係のみが残る。
ポイント整理
- ・【普通養子】縁組意思+届出(799条・739条)
- ・【普通養子】養親20歳以上・養子より年長(792条・793条)
- ・【普通養子】未成年養子の場合は家庭裁判所の許可(797条)
- ・【特別養子】家庭裁判所の審判(817条の2)
- ・【特別養子】養親は夫婦・一方が25歳以上(817条の3・4)
- ・【特別養子】養子は原則15歳未満(817条の5)
- ・【特別養子】6カ月以上の試験養育期間(817条の8)
効果
- ・【普通養子】実親との関係存続・養親との関係も発生
- ・【特別養子】実親との親族関係原則終了(817条の9)・養親との関係のみ
条文(第792条〜817条の11条)
第817条の9 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。
重要メモ
- ・「特別養子=実親との関係終了(817条の9)・普通養子=実親との関係存続」が最頻出
- ・普通養子縁組:縁組意思+届出(799条・739条)で成立。養親は20歳以上・養子より年長(792条・793条)
- ・普通養子の未成年者養子:家庭裁判所の許可が必要(797条)。ただし自己の直系卑属は不要(797条但書)
- ・特別養子縁組:養親の請求による家庭裁判所の審判(817条の2)で成立
- ・特別養子の養親要件:夫婦で縁組・一方が25歳以上・他方が20歳以上(817条の3・4)
- ・特別養子の養子年齢:原則15歳未満(817条の5)。試験養育期間6カ月以上(817条の8)
- ・特別養子縁組:実親との関係は原則終了(817条の9)。離縁も原則不可(817条の10)
- ・普通養子縁組:実親との関係存続・両方から相続権が発生。離縁は協議・裁判で可(811条・814条)
利益相反行為
第826条条簡単にいうと
簡単にいうと、親が子を代理するとき「親の利益になるが子の利益にならない行為」は禁止です。形式的に判断して特別代理人が必要になります!
親権者は未成年の子を代理する権限(824条)を有しますが、その代理権行使が親と子の利益が衝突する場面では弊害が生じます。このような利益相反行為については、民法826条1項が規定を置き、親権者は子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないとしています。
利益相反行為かどうかは、判例(最判昭42.4.18)において「行為の外形・形式によって客観的に判断する(外形標準説)」という基準が採用されています。したがって、親権者の内心の意図や、実際に子が損害を受けたかどうかは関係なく、行為の外形から見て親と子の利益が相反するかどうかで判断されます。たとえば、親が自分の借金のために子の不動産に抵当権を設定する行為は、形式上「親の債務のために子の財産を担保に供する行為」であり、外形上利益が相反するとして利益相反行為にあたります。
一方、親が子の名義で借金をして子の土地に抵当権を設定する行為については、借金も抵当権設定も子の名義で行われており、形式上は「子の行為」であって子のみに関係するため、利益相反行為にはあたらないとされます(最判昭37.10.2)。この形式的・外形的判断基準による区別が試験で問われます。
利益相反行為を特別代理人なしに親権者が行った場合は無権代理(113条)として取り扱われ、無効となります(ただし子が成年に達した後に追認可能)。826条2項として、親権者が数人の子の法定代理人であって一部の子との間で利益が相反する場合も同様に特別代理人が必要とされます。
具体例
親Aが自分の借金のために子Bの土地に抵当権を設定する行為→利益相反行為(特別代理人必要)。親Aが子Bの名義で借金をして子Bの土地に抵当権を設定する行為→子Bのみの行為として形式的に見て利益相反行為にあたらない(最判昭37.10.2)。

利益相反行為と特別代理人
ポイント整理
- ・親権者と子の間で利益が相反すること
- ・外形・形式で客観的に判断(最判昭42.4.18)
- ・特別代理人の選任を家庭裁判所に請求(826条1項)
効果
- ・特別代理人なしに行った利益相反行為は無権代理(113条)として無効
- ・子が成年後に追認すれば有効となる(116条類推)
条文(第826条条)
第826条第1項 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
重要メモ
- ・「利益相反行為は外形標準説(最判昭42.4.18)で形式的に判断」「違反は無権代理(113条)として無効」「特別代理人の選任を家庭裁判所に請求(826条)」が頻出
- ・親権者は未成年子の法定代理人(824条)だが、親と子の利益が相反する行為は利益相反行為として禁止
- ・利益相反行為の判断基準:行為の外形・形式から客観的に判断(外形標準説・最判昭42.4.18)。目的・実害は不問
- ・利益相反行為にあたる例:親の債務のために子の不動産に抵当権設定・親と子の遺産分割協議(826条2項)
- ・利益相反行為にあたらない例:子の名義で借入して子の土地に抵当権設定(最判昭37.10.2)・第三者の債務のために子の不動産に抵当権設定
- ・違反した場合:無権代理(113条)として無効。子が成年後に追認すれば有効(116条類推)
- ・826条2項:数人の子の一方との間でも利益相反が生じる場合も特別代理人が必要
まとめ
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民法の重要用語
限定承認
相続財産の範囲内でのみ債務を返済する条件で相続を承認する方法のこと。
弁済の提供
債務者が債務を履行するために、債権者が受け取れる状態にすること。口頭の提供と現実の提供の2種類がある。
不特定物の特定
不特定物債権において、債務者が具体的に引き渡すべき物を決定・分離することで、特定物債権に変わること。
相続欠格
相続人が被相続人を殺害するなど重大な非行をした場合に、法律上当然に相続権を失う制度のこと。
未成年者
18歳未満の人のこと。単独で完全に有効な契約などの法律行為をする能力が制限される。
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