第8節 契約各論
第3章 債権法
契約各論では、贈与・売買・賃貸借・請負など個別の典型契約のルールを学びます。契約総論で学んだ一般原則が実際の取引でどう適用されるかを理解することが重要です。試験では事例問題が頻出し、各契約類型の要件・効果・特有制度(手付、契約不適合責任、転貸借制限など)の正確な理解が合否を分けます。令和2年(2020年)施行の民法改正で、売買の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に大幅改正されたこと、使用貸借が諾成契約化されたことにも注意が必要です。
①贈与契約とは
549条・550条簡単にいうと
あげるという約束も契約です。ただで渡す契約なので、口約束だけならあとで取りやめられる場面があります。
ただで財産をあげる契約
贈与契約とは、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える契約です(549条)。あげる側を贈与者、もらう側を受贈者といいます。
贈与は諾成契約なので、合意だけで成立します。物を渡していなくても、契約そのものは成立しています。
片務・無償・諾成
贈与者だけが財産を渡す義務を負い、受贈者は何も義務を負いません。したがって片務契約です。対価がないので無償契約でもあります。
片務契約なので、原則として同時履行の抗弁権は発生しません。お互いに向かい合う債務がないからです。
負担付贈与は例外
もっとも、負担付贈与の場合は扱いが変わります。
小遣いをあげる代わりに庭の草むしりをしてもらう、というように、受贈者にも一定の負担を課す贈与です。この場合は双務契約に近い性質になるため、同時履行の抗弁権が発生します(553条)。
負担付贈与については、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負います。
口約束なら解除できる
贈与が成立しているとはいっても、書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができます(550条本文)。
ただし、履行の終わった部分については解除できません(550条但書)。この「履行が終わった」の意味が出題されるところで、次のテーマで詳しく見ます。
書面があれば解除できない
書面によってした贈与であれば、550条の解除はできません。
軽い気持ちで口約束をしてしまった人を救うための規定なので、わざわざ書面を作ったのであれば本気だったと見てよい、ということです。
具体例
AがBに「この時計をあげる」と口で約束したとします。この時点で贈与契約は成立していますが、まだ渡していないのであれば、Aはこの贈与を解除できます。これに対して、贈与する旨の書面を作っていたのであれば解除できません。

贈与契約とは
ポイント整理
- ・当事者の一方がある財産を無償で相手方に与えること(549条)
- ・相手方がこれを受諾すること(549条)
- ・物の引渡しは成立に必要ないこと(諾成契約)
効果
- ・贈与者が財産を与える義務を負い、受贈者は義務を負いません(片務・無償)
- ・書面によらない贈与は各当事者が解除できます(550条本文)
- ・履行の終わった部分については解除できません(550条但書)
- ・負担付贈与では同時履行の抗弁権が発生します(553条)
条文(549条・550条)
第549条(贈与)贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
重要メモ
- ・書面がなければ解除できるが、履行の終わった部分は解除できない点に注意
- ・549条: 贈与は諾成契約で、合意だけで成立する。片務・無償
- ・550条本文: 書面によらない贈与は各当事者が解除できる
- ・550条但書: 履行の終わった部分については解除できない
- ・553条: 負担付贈与では同時履行の抗弁権が発生する
②書面によらない贈与の解除
550条簡単にいうと
口約束の贈与はあとから取りやめられますが、渡し終わった分は取り戻せません。どこまでいけば渡し終わったといえるかが問われます。
なぜ解除できるのか
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができます(550条本文)。
贈与はただで財産を失う契約なので、その場の勢いで約束してしまうことがあります。軽率な贈与から贈与者を守るために、書面がなければやめられることにしました。
履行が終わった部分は別
ただし、履行の終わった部分については解除できません(550条但書)。
いったん渡してしまったのであれば、贈与者の意思は固まっていたとみてよいからです。渡した後になって返せというのでは、もらった側の立場が不安定になります。
動産の場合
動産については、引渡しがあれば履行が終わったことになります。
ここで押さえておきたいのは、占有改定による引渡しも含まれるという点です。現実に手渡していなくても、以後は受贈者のために占有するという合意があれば足ります。
不動産の場合
不動産については、引渡しまたは登記の移転があれば履行が終わったことになります。
ここは「または」である点に注意が必要です。両方そろう必要はありません。引渡しだけでも、登記の移転だけでも、履行は終わったことになります。
建物を引き渡したが登記はまだ、という状態でも解除できなくなります。逆に、登記だけ移したが建物はまだ渡していないという状態でも解除できません。
過去問の確認
Aは自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した。本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも解除することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を解除することができる、と出題され、誤りとされました(15-33-1改題)。
履行の終わった部分は解除できず、不動産の所有権移転登記手続の終了は履行が終わった場合にあたるためです。
具体例
AがBに建物を贈与すると口約束し、建物をBに引き渡したものの登記はまだAの名義のままだとします。この場合でも引渡しによって履行は終わっているので、Aはもう解除できません。登記だけを移して引渡しがまだという場合も同じです。
ポイント整理
- ・書面によらない贈与であること(550条本文)
- ・解除できるのは履行の終わっていない部分に限られること(550条但書)
効果
- ・動産は引渡しがあれば履行が終わったことになります(占有改定による引渡しを含む)
- ・不動産は引渡しまたは登記の移転のいずれかがあれば履行が終わったことになります
- ・履行が終わった部分は解除できなくなります
条文(550条)
第550条(書面によらない贈与の解除)書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
重要メモ
- ・不動産は引渡しか登記の移転のどちらか一方で履行が終わったことになる点に注意
- ・550条本文: 書面によらない贈与は各当事者が解除できる
- ・550条但書: 履行の終わった部分については解除できない
- ・動産では占有改定による引渡しも「履行が終わった」にあたる
- ・過去問15-33-1改題: 登記手続が終了した後でも解除できるという出題は誤り
①売買契約とは
555条・559条簡単にいうと
物を売り買いする契約です。試験でいちばん出るところなので、手付と契約不適合責任を中心に見ていきます。
財産権を移して代金を払う
売買契約とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約束し、相手方がこれに対して代金を支払うことを約束する契約です(555条)。
売る側を売主、買う側を買主といいます。土地の売買であれば、売主は土地を引き渡して登記を移す義務を負い、買主は代金を払う義務を負います。
双務・有償・諾成
売主も買主も義務を負うので双務契約です。代金という経済的な支出があるので有償契約です。そして合意だけで成立する諾成契約です。
物を引き渡さなくても契約は成立しています。引渡しは成立の要件ではなく、成立した契約を履行する行為です。
双務契約であることの意味
双務契約なので、第7節で見た同時履行の抗弁権や危険負担がそのまま働きます。
売主が引き渡さないのであれば買主は代金を払わなくてよく、引渡し前に目的物が双方の責めによらず滅失したのであれば買主は代金の支払いを拒めます。
売買の規定は広く準用される
売買の規定は、売買以外の有償契約について準用されます(559条本文)。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは準用されません(559条但書)。
このあと出てくる請負人の担保責任が、売主の契約不適合責任と同じ内容になるのは、この559条によります。
出題の中心は2つ
売買契約で出題されるのは、手付と契約不適合責任の2つです。
手付は契約を結ぶときに渡す金銭の扱い、契約不適合責任は引き渡した物が契約の内容に合っていなかったときの扱いです。順に見ていきます。
具体例
AがBに土地を3,000万円で売る契約を結んだとします。合意した時点で契約は成立し、Aは土地を引き渡して登記を移す義務を、Bは3,000万円を払う義務を負います。どちらもまだ履行していなければ、互いに同時履行の抗弁権を主張できます。

売買契約とは(民法555条)
ポイント整理
- ・当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約すること(555条)
- ・相手方がこれに対して代金を支払うことを約すること(555条)
- ・物の引渡しは成立に必要ないこと(諾成契約)
効果
- ・売主は財産権を移転する義務を、買主は代金を支払う義務を負います
- ・双務契約なので同時履行の抗弁権や危険負担が働きます
- ・売買の規定は売買以外の有償契約に準用されます(559条)
条文(555条・559条)
第555条(売買)売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
重要メモ
- ・合意だけで成立し、物の引渡しは成立の要件ではない点に注意
- ・555条: 財産権の移転と代金の支払いを約することで効力を生じる
- ・売買は双務・有償・諾成契約
- ・559条: 売買の規定は売買以外の有償契約に準用される
- ・出題の中心は手付(557条)と契約不適合責任(562条〜566条)の2つ
②手付
557条簡単にいうと
契約のときに買主が渡すお金です。これがあると、相手に落ち度がなくても契約を打ち切れます。
手付とは
手付とは、契約を結ぶ際に当事者の一方である買主から相手方に渡される金銭などをいいます。
手付にはいろいろな種類がありますが、大きく分けると証約手付と解約手付の2つになります。
証約手付は、契約をしたことの証拠としての意味を持つ手付です。解約手付は、相手に債務不履行がなくても契約を解除できるという意味を持つ手付です。
何も決めていなければ解約手付
当事者が手付の性質について何も言わなくても、解約手付と推定されます(557条1項)。
実際の取引では「この手付は解約手付です」とわざわざ書かないことが多いので、この推定が働く場面が大半になります。
解約手付による解除の要件
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができます(557条1項本文)。
買主が解除するなら手付を捨てる、売主が解除するなら手付の倍額を返す、ということです。100万円の手付であれば、買主は100万円を諦め、売主は200万円を返すことになります。
ここで押さえておきたいのは、売主側は現実の提供が必要だという点です。「倍額を返すから解除する」と口で言うだけでは足りません。実際にお金を用意して差し出す必要があります。
相手が履行に着手したら使えない
相手方が契約の履行に着手した後は、解除することができません(557条1項但書)。
相手が引渡しや代金支払いの準備を進めているのに解除を認めると、その信頼を裏切ることになるからです。
注意したいのは、着手しているかを見るのは相手方であって自分ではないという点です。自分が履行に着手していても、相手が着手していなければ解除できます。
損害賠償は請求できない
解約手付による解除の場合には、545条4項は適用されません(557条2項)。
つまり、手付解除をしたうえでさらに損害賠償を請求することはできません。手付を失うこと、または倍額を払うことが、そのまま解除の対価になっているからです。
債務不履行による解除であれば損害賠償を請求できるのと対比して覚えます。
具体例
AがBに土地を売る契約で、BがAに手付として100万円を渡したとします。Aがまだ何も準備を始めていなければ、Bは100万円を諦めて契約を解除できます。逆にAから解除するには、200万円を現実に用意してBに差し出す必要があります。

手付の種類と効果
ポイント整理
- ・買主が売主に手付を交付したこと(557条1項)
- ・相手方が契約の履行に着手していないこと(557条1項但書)
- ・買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供すること(557条1項本文)
効果
- ・相手に債務不履行がなくても契約を解除できます(557条1項)
- ・手付解除では損害賠償を請求できません(557条2項)
- ・当事者が何も決めていなければ解約手付と推定されます(557条1項)
条文(557条)
第557条第1項(手付)買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
重要メモ
- ・履行に着手しているかを見るのは相手方であって自分ではない点に注意
- ・557条1項: 当事者が何も決めていなければ解約手付と推定される
- ・買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供する。口頭の申出では足りない
- ・557条1項但書: 相手方が履行に着手した後は解除できない
- ・557条2項: 手付解除には545条4項が適用されず、損害賠償を請求できない
③契約不適合責任(担保責任)
562条〜564条簡単にいうと
買った建物が雨漏りしていたというように、引き渡された物が契約の内容に合っていなかったときの売主の責任です。記述式でも問われました。
契約の内容に合った物を渡す義務
売買契約の売主には、品質や数量などについて、契約の内容に沿った物を引き渡す義務があります。
引き渡した物が契約の内容に合っていなかった場合を契約不適合といい、このとき売主が負う責任を契約不適合責任といいます。2017年の改正前は瑕疵担保責任と呼ばれていたもので、内容が大きく変わりました。
買主が追及できる4つの手段
買った建物に雨漏りがするという欠陥があった場合を考えてください。買主は売主に対して次の4つを主張できます。
第1に、追完請求です。目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます(562条1項本文)。雨漏りを直せ、ということです。
第2に、代金減額請求です。相当の期間を定めて追完の催告をし、その期間内に追完がないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(563条1項)。欠陥がある分だけ安くしろ、ということです。
第3に、解除です。欠陥があるのだから契約を打ち切る、ということです(564条・541条・542条)。
第4に、損害賠償請求です(564条・415条)。雨漏りで濡れた家財道具の損害を賠償しろ、ということです。
帰責事由が要るのは損害賠償だけ
ここが出題されるところです。
追完請求、代金減額請求、解除の3つは、売主に帰責事由がなくても請求できます。契約の内容に合った物を渡すという約束を果たしていない以上、売主の落ち度の有無は関係ないからです。
これに対して損害賠償請求は、売主に帰責事由がなければできません(415条1項但書)。
買主に帰責事由があるときは使えない
不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は追完請求も代金減額請求もできません(562条2項・563条3項)。
自分のせいで不適合が生じたのに売主に責任を問うのは筋が通らないからです。
催告なしで代金減額を請求できる場合
追完が不能であるとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告をすることなく直ちに代金の減額を請求できます(563条2項各号)。
催告をしても意味がない場面では、ひと手間を省けるという整理です。
具体例
BがAから買った建物に雨漏りがするという欠陥があったとします。BはAに対して、雨漏りを直せという追完請求、欠陥の分だけ代金を下げろという代金減額請求、契約を打ち切るという解除、濡れた家財道具の損害を賠償しろという損害賠償請求ができます。このうち損害賠償だけは、Aに帰責事由がなければ請求できません。

契約不適合責任(担保責任)
ポイント整理
- ・引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないこと(562条1項)
- ・代金減額請求には、相当の期間を定めた追完の催告と、その期間内の追完がないこと(563条1項)
- ・損害賠償請求には売主の帰責事由があること(415条1項但書)
効果
- ・買主は追完請求ができます(562条1項)
- ・買主は代金減額請求ができます(563条)
- ・買主は解除ができます(564条・541条・542条)
- ・買主は損害賠償請求ができます(564条・415条)
- ・不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完請求も代金減額請求もできません(562条2項・563条3項)
条文(562条〜564条)
第562条第1項(買主の追完請求権)引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
重要メモ
- ・帰責事由が必要なのは損害賠償請求だけである点に注意
- ・562条1項: 追完請求は修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求めるもの
- ・563条1項: 代金減額請求には原則として相当の期間を定めた追完の催告が必要
- ・562条2項・563条3項: 不適合が買主の責めによるときは追完も代金減額も請求できない
- ・記述式で問われたことがある。4つの手段の名称と帰責事由の要否を対で覚える
④契約不適合責任が追及できる場合
562条〜565条簡単にいうと
欠陥があったときだけではありません。数が足りない、権利が移らないという場面でも売主の責任を問えます。
3つの場面
契約不適合責任を追及できるのは、次の3つの場面です。
種類、品質または数量が契約の内容に適合しない場合
562条から564条が適用される場面です。
購入した建物に欠陥があった場合が典型です。数量についても同じで、パソコン10台の売買契約だったのに8台しか引き渡されなかったのであれば、残り2台の追完請求ができます(562条1項本文)。
品質の問題だけでなく数が足りない場合も含まれる、という点を押さえてください。
移転した権利が契約の内容に適合しない場合
売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合には、562条から564条が準用されます(565条)。
購入した土地に他人の優先する地上権が設定されていて、思ったように使えなかった場合などです。土地そのものに欠陥はないけれども、ついてきた権利が契約の内容と違っていた、という場面になります。
権利の一部が移転されない場合
権利の一部が他人に属する場合において、その権利の一部を移転しないときも同じ扱いになります(565条かっこ書)。これを一部他人物売買といいます。
売買された土地の一部が他人の所有であって、売主が真の所有者から所有権を取得できなかった場合などです。
権利の全部が移転されない場合は別
ここは引っかけどころです。
売買された土地のすべてが他人の所有だった場合、いわゆる全部他人物売買や、購入した土地に設定されていた抵当権が実行されてしまった場合は、契約不適合責任の問題ではなく、通常の債務不履行として処理されます。
この場合にできるのは損害賠償請求と解除です。代金減額請求はできません。土地の権利がまったく手に入らないのに代金を減らしてもらっても意味がないからです。
一部なら代金減額ができるが全部なら解除と損害賠償だけ、という対比で覚えます。
具体例
パソコン10台の売買契約で8台しか届かなかった場合は数量の不適合なので、残り2台の追完請求ができます。これに対して、買った土地のすべてが他人の所有で売主が所有権を取得できなかった場合は、契約不適合責任ではなく通常の債務不履行として、解除と損害賠償を請求することになります。

契約不適合責任が追及できる場合
ポイント整理
- ・種類、品質または数量が契約の内容に適合しないこと(562条1項)
- ・または移転した権利が契約の内容に適合しないこと(565条本文)
- ・または権利の一部が他人に属し、その一部を移転しないこと(565条かっこ書)
効果
- ・3つの場面のいずれにあたれば、追完請求・代金減額請求・解除・損害賠償請求ができます
- ・権利の全部が移転されない場合は通常の債務不履行の問題になり、解除と損害賠償請求ができます
- ・この場合に代金減額請求をすることはできません
条文(562条〜565条)
第565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
重要メモ
- ・権利の全部が移転されない場合は代金減額ができず、解除と損害賠償だけになる点に注意
- ・562条: 品質だけでなく数量の不足も契約不適合にあたる
- ・565条本文: 移転した権利が契約の内容に適合しない場合も562条〜564条が準用される
- ・565条かっこ書: 権利の一部が移転されない一部他人物売買も同じ扱いになる
- ・一部なら代金減額ができ、全部なら解除と損害賠償だけ、という対比で覚える
⑤売主の権利の期間制限
566条簡単にいうと
欠陥に気づいたら、いつまでも放っておくわけにはいきません。1年以内に通知しないと権利を失います。
1年以内に通知する
売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができません(566条本文)。
これを失権効といいます。知ってから1年放っておくと、4つの手段をまとめて失うということです。
なぜ売主を守るのか
売主としては品質に問題があると気づくのが難しく、目的物を引き渡した後は履行が終わったと思っています。いつまでも責任を追及されるのでは落ち着きません。そこで買主に早めの通知を求めました。
通知で足りる
ここで押さえておきたいのは、1年以内にするのは通知であって権利行使ではないという点です。
「雨漏りがあったので責任を追及します」と知らせておけば足ります。1年以内に訴訟を起こす必要はありません。通知さえしておけば、その後に請求や訴訟をすることができます。
売主が悪意または重過失なら制限されない
売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、566条本文は適用されません(566条但書)。
欠陥を知りながら黙って渡したような売主を守る必要はないからです。この場合は通知をしなくても各種の権利を行使できます。
数量と権利の不適合には適用がない
566条は、種類または品質に関する不適合についての規定です。
数量の不適合や、移転した権利の不適合については566条の適用がありません。通知をしなくても各種の権利を行使できます。
品質に問題がある場合と違い、数が足りないことは比較的気づきやすいため、売主を保護する必要性が低いからです。
それでも消滅時効はある
566条の適用がない場合でも、通常の消滅時効のルールは働きます。
権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年で時効消滅します(166条1項)。永久に追及できるわけではありません。
具体例
買った建物の雨漏りに気づいてから1年以内に売主へ知らせておけば、その後に修補や損害賠償を請求できます。1年を過ぎて初めて知らせたのであれば、もう請求できません。これに対して、パソコンが8台しか届かなかったという数量の不足であれば、1年の通知は要りません。
ポイント整理
- ・種類または品質に関する契約不適合であること(566条本文)
- ・買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知すること(566条本文)
- ・売主が引渡しの時に悪意または重過失でないこと(566条但書)
効果
- ・1年以内に通知しないと、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除をすべて失います(566条本文)
- ・売主が引渡しの時に悪意または重過失であれば、通知がなくても権利を行使できます(566条但書)
- ・数量および権利の不適合には566条の適用がありません
- ・566条の適用がない場合でも、知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅します(166条1項)
条文(566条)
第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
重要メモ
- ・1年以内にするのは通知であって権利行使ではない点に注意
- ・566条本文: 知った時から1年以内に通知しないと4つの手段をすべて失う
- ・566条但書: 売主が引渡しの時に悪意または重過失なら期間制限がない
- ・数量の不適合と権利の不適合には566条の適用がない
- ・166条1項: 566条の適用がなくても、知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅する
①賃貸借契約とは
601条・604条簡単にいうと
アパートを借りる契約です。売買と並んで出題が多いので、物権化と敷金を中心に見ていきます。
使わせてもらって賃料を払う
賃貸借とは、当事者の一方がある物の使用収益を相手方にさせることを約束し、相手方がこれに賃料を払うことおよび引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約束することによって成立する契約です(601条)。
貸す側を賃貸人、借りる側を賃借人といいます。
双務・有償・諾成
賃貸人は使わせる義務を、賃借人は賃料を払う義務と返す義務を負うので双務契約です。賃料という対価があるので有償契約、合意だけで成立するので諾成契約です。
無償で借りる使用貸借と対になります。有償か無償かが分かれ目です。
返す義務まで含まれている
601条の定義には、契約が終了したときに物を返還するという部分まで入っています。
借りているだけで自分の物になるわけではないので、終わったら返す。当たり前のようですが、同じく物を借りる契約でも、消費貸借では借りた物そのものではなく同種同等同量の物を返すことになります。この違いがあとで比較表になります。
存続期間は最長50年
賃貸借の存続期間は、50年を超えることができません。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は50年とされます(604条1項)。更新することもできますが、更新の時から50年を超えることはできません(604条2項)。
ただし、住むために建物や土地を借りる場合には借地借家法が適用され、こちらのルールが優先します。借地借家法には最長期間の制限がありません。
期間を定めなかったとき
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができます(617条1項)。
解約の申入れの日から、土地の賃貸借は1年、建物の賃貸借は3か月、動産および貸席の賃貸借は1日を経過することによって終了します(617条1項各号)。
土地は1年、建物は3か月という数字が問われます。
具体例
AがBに建物を月10万円で貸す契約を結んだとします。Aは建物を使わせる義務を、Bは賃料を払う義務と契約終了時に返す義務を負います。期間を決めていなければどちらからでも解約を申し入れることができ、建物の場合は申入れから3か月で終了します。

賃貸借契約とは
ポイント整理
- ・当事者の一方がある物の使用収益を相手方にさせることを約すること(601条)
- ・相手方がこれに賃料を支払うことを約すること(601条)
- ・相手方が引渡しを受けた物を契約終了時に返還することを約すること(601条)
効果
- ・賃貸人は使用収益させる義務を、賃借人は賃料支払義務と返還義務を負います
- ・存続期間は50年を超えることができません(604条1項)
- ・期間を定めなかったときは、いつでも解約の申入れができます(617条1項)
条文(601条・604条)
第601条(賃貸借)賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
重要メモ
- ・存続期間の上限50年は民法のルールで、借地借家法が適用されるときは上限がない点に注意
- ・601条: 使用収益させること、賃料を払うこと、終了時に返還することの3つが内容
- ・賃貸借は双務・有償・諾成契約
- ・604条1項: 存続期間は50年を超えることができず、長い定めも50年に短縮される
- ・617条1項: 期間の定めがないときの解約申入れから終了まで、土地は1年、建物は3か月
②賃貸人・賃借人の義務
601条・606条・608条・621条簡単にいうと
大家さんには使わせる義務と直す義務、借りた人には賃料を払って大事に使い、返す義務があります。費用の扱いが問われます。
賃貸人の義務
第1に、目的物を使用、収益させる義務です(601条)。借りた人がちゃんと使える状態にしておく義務になります。
第2に、修繕義務です。賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負います(606条1項本文)。雨漏りがすれば直すということです。
第3に、費用償還義務です(608条)。これが出題されるところなので、分けて見ます。
必要費はすぐ請求できる
必要費とは、物を使える状態に保つために必要な費用です。屋根の修理費用などがこれにあたります。
賃借人が賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができます(608条1項)。
本来は賃貸人が負担すべきものを立て替えたのだから、すぐに返せ、ということです。
有益費は契約終了時
有益費とは、物の価値を高めるために支出した費用です。エアコンの設置費用や下水道の開設費用などがこれにあたります。
賃借人が有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、その償還をしなければなりません(608条2項)。
必要費はすぐ、有益費は契約が終わるときという違いを押さえてください。過去問では、必要費も有益費も直ちに償還請求できるとして出題され、誤りとされました(12-33-1)。
有益費については、賃借人が支出した費用の額と価値の増加額のどちらかを賃貸人が選んで支払うことになります。借りた人が選べるわけではありません。
賃借人が自分で修繕できる場合
賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人が修繕をすることができます(607条の2)。
急迫の事情があるときも同じです。
賃借人の義務
第1に、賃料支払義務です(601条)。
第2に、目的物の保管義務です。賃借人は特定物の引渡しをするまで善良な管理者の注意をもって保存する義務を負います(400条)。これを善管注意義務といいます。
第3に、目的物返還義務および原状回復義務です。賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負います(621条本文)。
原状回復が要らない損傷
もっとも、通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗ならびに賃借物の経年変化は除かれます(621条かっこ書)。
家具を置いたことでできた床のへこみや、日焼けによる壁紙の変色などは、原状回復の対象になりません。ふつうに住んでいれば生じるものだからです。
具体例
借りている建物の屋根が壊れて賃借人が修理したのであれば、必要費としてすぐに賃貸人へ償還を請求できます。これに対して、賃借人がエアコンを取り付けた費用は有益費なので、契約が終わるときに、価値が残っていれば償還を請求できます。
ポイント整理
- ・必要費の償還請求は、賃貸人の負担に属する必要費を賃借人が支出したこと(608条1項)
- ・有益費の償還請求は、賃貸借が終了し、価値の増加が現存すること(608条2項)
- ・原状回復義務は、賃借物を受け取った後に生じた損傷があること(621条本文)
効果
- ・必要費は直ちに償還を請求できます(608条1項)
- ・有益費は賃貸借の終了の時に償還を請求できます(608条2項)
- ・賃借人は善管注意義務を負います(400条)
- ・通常の使用による損耗と経年変化は原状回復の対象外です(621条かっこ書)
条文(601条・606条・608条・621条)
第608条第1項(賃借人による費用の償還請求)賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
重要メモ
- ・必要費はすぐ、有益費は契約終了時という違いに注意
- ・608条1項: 必要費は支出したときに直ちに償還を請求できる
- ・608条2項: 有益費は賃貸借の終了の時に償還される。支出額か価値の増加額かは賃貸人が選ぶ
- ・400条: 賃借人は善管注意義務を負う
- ・621条かっこ書: 通常の使用による損耗と経年変化は原状回復の対象にならない
③不動産賃借権の物権化(対抗要件)
605条・605条の4簡単にいうと
借りている建物が売られてしまったとき、新しい所有者から出ていけと言われないための仕組みです。
本来は新所有者に勝てない
賃借権は債権です。債権は契約の相手にしか主張できないので、通常の賃貸借では、その後に所有者が変わってしまうと、賃借人は新所有者に賃借権を主張できません。
賃貸人Aから建物を借りていたBがいて、AがCに建物を売ったとします。Cは所有権にもとづいて建物を返せと言えてしまいます。債権は物権に劣後するからです。
これでは借りている人の生活が成り立ちません。そこで土地や建物の賃貸借については、一定の対抗要件を備えれば新所有者にも賃借権を主張できることにしました。これを不動産賃借権の物権化といいます。
3つの対抗要件
第1に、自分の賃借権を登記することです(605条)。不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができます。
もっとも、賃借権の登記には賃貸人の協力が必要です。賃貸人が応じてくれないことが多く、実際にはあまり使われません。
第2に、建物の賃貸借の場合は、建物の引渡しを受けることです(借地借家法31条)。建物を借りて住み始めていれば、それだけで対抗要件になります。
第3に、土地の賃貸借の場合は、その土地の上の建物について所有権の登記をすることです(借地借家法10条1項)。借りた土地に建てた自分の建物を登記しておけば、土地の賃借権を対抗できます。
ここは土地と建物が入れ替わりやすいところです。建物を借りているなら建物の引渡し、土地を借りているなら土地の上の建物の登記、と結び付けて覚えてください。
先に備えたほうが勝つ
対抗要件を備えれば、賃借権という債権が物権に変わったものと考えることができます。そうすると物権どうしの争いになるので、先に対抗要件を備えたほうが優先します。
Bが建物の引渡しを受けた後にCが所有権の登記をしたのであれば、Bが勝ちます。Cが先に登記をしていればCが勝ちます。
不法占拠者にも主張できる
賃借権が物権化すると、借りている建物や土地に不法占拠者がいた場合、賃借権にもとづく妨害排除請求権を行使して明渡しを求めることができます(605条の4)。
物権化していない場合は、賃貸人の所有権を代位行使して対応することになります。債権者代位権の転用のところで見たとおりです。
具体例
Bが建物をAから借りて住み始めた後に、AがCへその建物を売ったとします。Bは建物の引渡しを受けているので、Cが所有権の登記をする前であればCに賃借権を主張でき、出ていく必要はありません。土地を借りて自分の建物を建てている場合は、その建物を登記しておけば同じように土地の賃借権を主張できます。

不動産賃借権の物権化(対抗要件)
ポイント整理
- ・賃借権を登記すること(605条)
- ・または建物の賃貸借であれば建物の引渡しを受けること(借地借家法31条)
- ・または土地の賃貸借であれば土地上の建物について所有権の登記をすること(借地借家法10条1項)
効果
- ・新所有者に賃借権を主張でき、明渡しを拒めます
- ・対抗要件を備えた順序で優劣が決まります
- ・不法占拠者に対して賃借権にもとづく妨害排除請求ができます(605条の4)
条文(605条・605条の4)
第605条(不動産賃貸借の対抗力)不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
重要メモ
- ・建物を借りているなら建物の引渡し、土地を借りているなら土地上の建物の登記という対応に注意
- ・605条: 賃借権を登記すれば第三者に対抗できる。ただし賃貸人の協力が必要で実際は使いにくい
- ・借地借家法31条: 建物の賃貸借は建物の引渡しが対抗要件になる
- ・借地借家法10条1項: 土地の賃貸借は土地上の建物の所有権の登記が対抗要件になる
- ・605条の4: 物権化していれば賃借権にもとづく妨害排除請求ができる
④賃貸目的物の新所有者と賃借人との関係
605条の2簡単にいうと
建物が売られても追い出されない賃借人は、そのまま新しい所有者を大家さんとして借り続けます。記述式で問われたことがあります。
賃貸人の地位は自動的に移る
賃借人が対抗要件を備えていれば、新所有者は賃借人に明渡しを請求できません。
では、この後の賃貸借はどうなるのでしょうか。賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します(605条の2第1項)。
新所有者Cが自動的に新しい賃貸人になります。AとBの賃貸借が、CとBの賃貸借に切り替わるということです。
賃借人の承諾は要らない
ここで押さえておきたいのは、賃借人Bの承諾が要らないという点です。
通常であれば契約上の地位が移るには相手方の同意が必要です。しかし賃貸人の義務は物を使わせることであって、誰が賃貸人であっても内容が変わりません。賃借人に不利益がないので、承諾なしに移すことにしました。
請求するには登記が必要
もっとも、賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません(605条の2第3項)。
新賃貸人Cが賃借人Bに賃料を請求したり、解除をしたりするには、所有権の移転登記をしておく必要があります。
登記がなければ、Bは「あなたが大家さんだとは認められない」と言って支払いを拒めます。二重に払わされる危険からBを守るためです。
過去問では、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、移転登記をしないときはCに対して賃料を請求できないと出題され、正しいとされました(13-32-イ)。
地位を移さないこともできる
例外として、不動産の譲渡人および譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨、およびその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しません(605条の2第2項前段)。
もとの所有者Aが引き続き賃貸人であり続け、AがCから物件を借りて又貸ししている形にする、ということです。留保するだけでは足りず、譲受人が譲渡人に賃貸するという合意までそろって初めて認められます。
この場合において、譲渡人と譲受人との間の賃貸借が終了したときは、留保されていた賃貸人たる地位は譲受人に移転します(605条の2第2項後段)。
費用償還債務と敷金返還債務も移る
賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、608条による費用の償還に係る債務と、622条の2第1項による敷金の返還に係る債務は、譲受人が承継します(605条の2第4項)。
敷金がどうなるかは次のテーマで詳しく見ます。
具体例
BがAから借りている建物に住んでいるところ、AがCにその建物を売ったとします。Cが自動的に新しい賃貸人になり、Bの承諾は要りません。ただしCがBに賃料を請求するには、所有権の移転登記をしておく必要があります。

賃貸目的物の新所有者と賃借人との関係
ポイント整理
- ・賃借人が賃貸借の対抗要件を備えていること(605条の2第1項)
- ・その不動産が譲渡されたこと(605条の2第1項)
- ・賃借人に賃料請求などをするには所有権の移転登記をすること(605条の2第3項)
効果
- ・賃貸人たる地位が譲受人に移転します(605条の2第1項)
- ・賃借人の承諾は要りません
- ・所有権の移転登記がなければ賃借人に対抗できません(605条の2第3項)
- ・費用償還債務と敷金返還債務も譲受人が承継します(605条の2第4項)
条文(605条の2)
第605条の2第1項(不動産の賃貸人たる地位の移転)前条、借地借家法第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
重要メモ
- ・地位の移転に賃借人の承諾は要らないが、請求するには所有権の移転登記が要る点に注意
- ・605条の2第1項: 対抗要件を備えた賃借人がいれば、賃貸人たる地位は譲受人に自動的に移転する
- ・605条の2第2項: 留保する旨と譲受人が譲渡人に賃貸する旨の両方を合意すれば移転しない
- ・605条の2第4項: 費用償還債務と敷金返還債務も譲受人が承継する
- ・過去問13-32-イ: 移転登記をしないときは賃料を請求できない。正しい
⑤敷金関係
622条の2・605条の2簡単にいうと
部屋を借りるときに預けるお金です。いつ返ってくるのか、大家さんや借主が変わったらどうなるのかが問われます。記述式に出たことがあります。
敷金とは
敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいいます(622条の2第1項かっこ書)。
賃借人が賃料を払わなかったり、原状回復の費用を払わなかったりした場合に、ここから差し引くことができます。
名目を問わないので、保証金という名前で預けたものでも、担保の目的であれば敷金にあたります。
返ってくるのは明渡しの時
賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を返還しなければなりません(622条の2第1項1号)。
つまり敷金返還請求権が発生するのは、契約が終了した時ではなく、明渡しの時です。
順番としては契約終了が先、明渡しが後になります。しかし契約終了の時点で返還請求権が発生してしまうと、明渡しの際に原状回復の必要が見つかっても費用を差し引けなくなります。そこで明渡しの時としました。
同時履行は主張できない
明渡しが先で返還が後なので、賃借人は敷金の返還と目的物の明渡しの同時履行を主張することができません(最判昭49.9.2)。
「敷金を返してくれるまで出ていかない」とは言えないということです。第7節の同時履行の関係の有無で見たとおりです。
賃貸人が代わったら敷金は移る
賃貸不動産の所有権とともに賃貸人の地位が新所有者に移転した場合、敷金返還に係る債務は譲受人が承継します(605条の2第4項)。
このとき、旧賃貸人に対する未払い賃料があればそれに充当され、残額について新賃貸人に移転します。
賃借人Bが旧賃貸人Aに10万円の敷金を預けていたのであれば、Bは新賃貸人Cに対して敷金の返還を請求することになります。
過去問では、AがFに甲建物を売却した場合にFはBに対して敷金の返還義務を負わないと出題され、誤りとされました(12-33-5改題)。
賃借人が代わったら敷金は移らない
これに対して、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときは、賃貸人はその時点で敷金を返還しなければなりません(622条の2第1項2号)。
つまり敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は、新賃借人に承継されません。敷金はもとの賃借人が自分のために預けたものであって、見ず知らずの新賃借人のために使われる筋合いがないからです。
賃貸人が代われば移る、賃借人が代われば移らない。この非対称を押さえてください。
具体例
BがAに敷金10万円を預けて建物を借りていたところ、AがCにその建物を売ったとします。敷金はCに引き継がれるので、BはCに返還を請求することになります。これに対して、Bが賃借権をDに譲り渡した場合は、敷金はDに引き継がれず、AがBに返すことになります。

敷金関係
ポイント整理
- ・賃料債務その他の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付した金銭であること(622条の2第1項かっこ書)
- ・返還請求権の発生には、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたこと(622条の2第1項1号)
効果
- ・敷金返還請求権は明渡しの時に発生します(622条の2第1項1号)
- ・賃借人は敷金の返還と明渡しの同時履行を主張できません(最判昭49.9.2)
- ・賃貸人が代われば、敷金返還債務は譲受人が承継します(605条の2第4項)
- ・賃借人が代われば、敷金は新賃借人に承継されません(622条の2第1項2号)
条文(622条の2・605条の2)
第622条の2第1項第1号 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
重要メモ
- ・賃貸人が代われば敷金は移るが、賃借人が代われば移らない点に注意
- ・622条の2第1項1号: 敷金返還請求権は契約終了の時ではなく明渡しの時に発生する
- ・最判昭49.9.2: 賃借人は敷金の返還と明渡しの同時履行を主張できない
- ・605条の2第4項: 賃貸人の地位が移れば敷金返還債務も譲受人が承継する
- ・過去問12-33-5改題: 建物を売却した場合に新所有者が敷金返還義務を負わないという出題は誤り
⑥賃借権の譲渡・転貸
612条・613条簡単にいうと
借りた部屋を又貸ししたり、借りる権利そのものを他人に譲ったりするには、大家さんの承諾が要ります。
転貸と賃借権の譲渡
10万円で借りたマンションを15万円で又貸しすることを転貸といいます。又貸しする賃借人を転貸人、借りる相手を転借人といいます。
これに対して、賃借権そのものを他人に譲ることを賃借権の譲渡といいます。
転貸の場合、もとの賃借人は賃借人のままで契約関係に残ります。これに対して賃借権の譲渡の場合、もとの賃借人は契約関係から離脱します。ここが違います。
どちらにも承諾が要る
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができません(612条1項)。
誰が使うかは賃貸人にとって重大な関心事です。見ず知らずの人が住み始めるのでは困るので、承諾を要求しました。
無断でやると解除される
賃借人が612条1項に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができます(612条2項)。
ここで押さえておきたいのは、無断で転貸の契約を結んだだけでは解除できないという点です。実際に第三者に使用または収益をさせたことが必要になります。
信頼関係を壊していなければ解除できない
もっとも、無断転貸であっても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除できません(最判昭28.9.25)。これを信頼関係破壊の法理といいます。
同居していた親族に名義を変えただけというように、実質的に使う人が変わっていないような場合がこれにあたります。形式的に違反があっても、賃貸人を裏切ったとはいえないからです。
適法な転貸の効果
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負います(613条1項前段)。
賃貸人Aは転借人Cに直接賃料を請求できるということです。ただし限度があります。AB間の賃料が10万円、BC間の賃料が15万円であれば、AがCに請求できるのは10万円までです。
また、転借人は賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができません(613条1項後段)。
なお、この規定は賃貸人が賃借人に対して権利を行使することを妨げません(613条2項)。AはBにもCにも請求できるということです。
具体例
BがAから月10万円で借りている建物を、Aの承諾を得てCに月15万円で転貸したとします。AはCに対して直接賃料を請求できますが、請求できるのはAB間の10万円までです。これに対してBが無断でCに使わせた場合、Aは賃貸借契約を解除できます。

⑥賃借権の譲渡・転貸
ポイント整理
- ・賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要であること(612条1項)
- ・解除には、賃借人が第三者に賃借物の使用または収益をさせたこと(612条2項)
- ・背信行為と認めるに足りない特段の事情がないこと(最判昭28.9.25)
効果
- ・無断で使用収益させたときは賃貸人が契約を解除できます(612条2項)
- ・特段の事情があれば解除できません(最判昭28.9.25)
- ・適法な転貸では、転借人が賃貸人に直接履行する義務を負います(613条1項前段)
- ・転借人が負う債務は、もとの賃貸借の賃借人の債務の範囲が限度になります
条文(612条・613条)
第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)第1項 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。第2項 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
重要メモ
- ・無断転貸の契約を結んだだけでは解除できず、実際に使用収益させたことが必要な点に注意
- ・612条1項: 賃借権の譲渡も転貸も賃貸人の承諾が必要
- ・最判昭28.9.25: 背信行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できない
- ・613条1項前段: 転借人は賃貸人に直接履行する義務を負うが、もとの賃料額が限度になる
- ・転貸では賃借人が残るが、賃借権の譲渡では賃借人が契約関係から離脱する
⑦賃貸借契約の解除と転貸借
613条簡単にいうと
大家さんともとの借主が契約をやめたとき、又貸しされている人は出ていかなければならないのか。やめ方によって結論が変わります。
問題の所在
賃貸人Aが賃借人Bに建物を貸し、Aの承諾を得てBがCに転貸したとします。その後、AとBの賃貸借契約が解除されました。
このとき、AはCに出ていけと言えるのでしょうか。BC間の転貸借はAB間の賃貸借を土台にしているので、土台がなくなればCの立場も危うくなるはずです。
結論は、解除の原因によって変わります。
合意解除の場合は対抗できない
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができません(613条3項本文)。
したがってAはCに明渡しを請求できません。
AとBが話し合って契約をやめるという形は、AとBが自由に決められることです。これでCを追い出せるのであれば、Cへの嫌がらせのために合意解除をすることもできてしまいます。自分たちの合意で第三者を不利益にすべきではない、という考え方です。
過去問では、A・B間の合意により賃貸借が解除された場合にAはDに明渡しを求めることができるとして出題され、誤りとされました(12-33-3)。
債務不履行解除の場合は対抗できる
これに対して、Bの債務不履行を理由にAが解除した場合は、Aは解除を転借人Cに対抗できます(613条3項但書)。したがってAはCに明渡しを請求できます。
Bが賃料を払わないのであれば、Aとしては解除するよりほかにありません。やむを得ない解除なので、Cが保護されないのもやむを得ないという整理です。
Cとしては、転貸人であるBを選んだ以上、Bの不始末によって立場を失うことは引き受けるべきだ、ということにもなります。
2つの見分け方
合意解除は、AとBが仲よく話し合ってやめる形です。嫌がらせに使われる危険があるのでCを守ります。
債務不履行解除は、BがAを裏切った結果としてやめる形です。Aを守る必要があるのでCは守られません。
どちらの解除かを読み取ることが、この論点を解く鍵になります。
具体例
BがAの承諾を得て建物をCに転貸した後、AとBが話し合って賃貸借を解除したとします。この場合、AはCに明渡しを請求できません。これに対して、Bが賃料を滞納したためAが解除したのであれば、AはCに明渡しを請求できます。

賃貸借契約の解除と転貸借
ポイント整理
- ・賃借人が適法に賃借物を転貸していたこと(613条3項本文)
- ・合意解除であれば転借人に対抗できないこと(613条3項本文)
- ・債務不履行による解除であれば転借人に対抗できること(613条3項但書)
効果
- ・合意解除の場合、賃貸人は転借人に明渡しを請求できません
- ・債務不履行解除の場合、賃貸人は転借人に明渡しを請求できます
条文(613条)
第613条第3項(転貸の効果)賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
重要メモ
- ・合意解除は転借人に対抗できず、債務不履行解除は対抗できるという違いに注意
- ・613条3項本文: 合意解除をもって転借人に対抗することができない
- ・613条3項但書: 解除の当時に債務不履行による解除権を有していたときは対抗できる
- ・合意解除で転借人が守られるのは、当事者の自由な合意で第三者を害すべきでないから
- ・過去問12-33-3: 合意解除の場合に転借人へ明渡しを求められるという出題は誤り
使用貸借・消費貸借
587条・587条の2・593条・597条簡単にいうと
物を借りる契約には賃貸借のほかにもあります。ただで借りる使用貸借と、使ってしまって同じ物を返す消費貸借です。
使用貸借
使用貸借とは、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用および収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる契約です(593条)。
友人から本をただで借りるようなものです。賃貸借と違って賃料がありません。借りた物そのものを返す点は賃貸借と同じです。
2017年の改正で諾成契約になりました。合意だけで成立します。
使用貸借は借主の死亡で終わる
使用貸借は、借主の死亡によって終了します(597条3項)。
ただで貸すのは、その人だから貸したのであって、相続人に使わせるつもりではなかったからです。したがって相続人に承継されません。
これに対して貸主が死亡した場合は終了しません。貸主の相続人が貸主の地位を引き継ぎます。
賃貸借であれば、借主が死亡しても契約は相続人に承継されます。無償だから人に着目する、有償だから物に着目する、と考えると整理しやすくなります。
消費貸借
消費貸借とは、当事者の一方が種類、品質および数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる契約です(587条)。
お金の貸し借りが典型です。借りた1万円札そのものを返すわけではなく、同じ額のお金を返します。
ここが使用貸借や賃貸借と大きく違うところです。借りた物そのものではなく、同種同等同量の物を返します。
消費貸借は原則として要物契約
587条の条文は「相手方から金銭その他の物を受け取ることによって」となっています。つまり物を受け取って初めて成立する要物契約です。
口約束だけでお金の貸し借りの契約が成立すると危険なので、要物契約とされています。
ただし、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と同じ物をもって返還をすることを約することによって効力を生じます(587条の2第1項)。つまり書面であれば諾成契約になります。
書面にしておけば、契約の危険をあらかじめ認識できるからです。電磁的記録によってされたときも書面とみなされます(587条の2第4項)。
利息があれば有償になる
消費貸借は無利息が原則なので無償契約です。利息を付ける特約があれば有償契約になります。
消費貸借では、借主が死亡しても契約は相続人に承継されます。使用貸借とは逆になります。
具体例
友人から自転車をただで借りるのが使用貸借で、その友人が亡くなっても契約は続きますが、借りた本人が亡くなれば契約は終わります。これに対して銀行から100万円を借りるのは消費貸借で、借りた100万円そのものではなく同じ額のお金を返し、借主が亡くなっても契約は相続人に承継されます。
ポイント整理
- ・使用貸借は、無償で使用収益をして契約終了時に返還することを約すること(593条)
- ・消費貸借は、同じ種類・品質・数量の物をもって返還することを約して物を受け取ること(587条)
- ・書面でする消費貸借は、物を受け取らなくても成立すること(587条の2第1項)
効果
- ・使用貸借は借主の死亡によって終了します(597条3項)
- ・消費貸借と賃貸借は、借主が死亡しても相続人に承継されます
- ・書面でする消費貸借は諾成契約になります(587条の2第1項)
条文(587条・587条の2・593条・597条)
第597条第3項(期間満了等による使用貸借の終了)使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
重要メモ
- ・借主の死亡で終了するのは使用貸借だけである点に注意
- ・597条3項: 使用貸借は借主の死亡によって終了する。貸主の死亡では終了しない
- ・587条: 消費貸借は原則として要物契約
- ・587条の2第1項: 書面でする消費貸借は諾成契約になる
- ・消費貸借は借りた物そのものではなく、同種・同等・同量の物を返す
①請負契約とは
632条・633条・634条簡単にいうと
家を建ててもらい、完成したら報酬を払う契約です。仕事を仕上げることが目的である点が委任と違います。
仕事を完成させる契約
請負契約とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって成立する契約です(632条)。
仕事をする側を請負人、頼む側を注文者といいます。建物の建築を頼む場面がよく出題されます。
双務・有償・諾成
請負人は仕事を完成させる義務を、注文者は報酬を支払う義務を負うので双務契約です。報酬があるので有償契約、合意だけで成立するので諾成契約です。
仕事の完成が先
請負人が仕事を完成させた後に、注文者が報酬を支払うという関係になります。したがって、仕事の完成と報酬の支払いは同時履行の関係にありません。仕事の完成が先履行です。
引渡しと報酬は同時履行
もっとも、報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければなりません(633条本文)。
つまり完成させることと報酬は同時履行ではないが、完成した物を引き渡すことと報酬は同時履行になります。第7節の同時履行の関係の有無で見たとおりです。
過去問では、木造建物建築工事についての請負代金の支払いは目的物の引渡しと同時になされるものとすると出題され、正しいとされました(11-34改題)。
下請けに出してよい
請負人は、原則として仕事を別の者に請け負わせることができます。
請負は仕事の結果を目的とする契約なので、誰がやるかは重要ではないからです。約束どおりの建物が建てばよい、ということになります。
受任者が自ら事務を処理しなければならない委任と対比されます。委任は信頼関係を重視する契約だからです。
完成しなかった場合の報酬
注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき、または請負が仕事の完成前に解除されたときであっても、請負人がすでにした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなします。
この場合、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(634条)。
途中までであっても、注文者が得をしている分は請求できるということです。
具体例
AがBから建物の建築を請け負ったとします。Aが建物を完成させるのが先で、Bが報酬を払うのは後です。ただし完成した建物を引き渡すことと報酬を払うことは同時履行なので、Bは引渡しを受けるまで報酬の支払いを拒めます。

請負契約とは(民法632条)
ポイント整理
- ・当事者の一方がある仕事を完成することを約すること(632条)
- ・相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約すること(632条)
効果
- ・請負人は仕事を完成させる義務を、注文者は報酬を支払う義務を負います
- ・仕事の完成が先履行で、報酬の支払いとは同時履行になりません
- ・報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払われます(633条本文)
- ・完成しなくても、注文者が利益を受ける部分については割合に応じて報酬を請求できます(634条)
条文(632条・633条・634条)
第632条(請負)請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
重要メモ
- ・仕事の完成と報酬は同時履行にならないが、目的物の引渡しと報酬は同時履行になる点に注意
- ・632条: 仕事を完成することと報酬を支払うことを約する契約
- ・633条本文: 報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払う
- ・請負人は原則として仕事を第三者に請け負わせることができる。委任と違う点
- ・634条: 完成しなくても、注文者が利益を受ける割合に応じて報酬を請求できる
②請負人の担保責任と請負契約の終了
559条・636条・641条・642条簡単にいうと
建てた建物に欠陥があれば請負人が責任を負います。注文者の側からはいつでもやめられるという特別のルールもあります。
売買と同じ内容の責任
請負人が建物を完成させたとしても、欠陥があり契約の内容に適合していない場合には、注文者は請負人に対して担保責任を追及することができます。
請負は有償契約なので、売買の規定が準用されます(559条)。したがって内容は売買契約の売主の契約不適合責任と同じです。
追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、解除の4つになります。売買では代金減額請求でしたが、請負では報酬減額請求という言い方になります。
注文者のせいなら追及できない
注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じた不適合については、注文者は履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができません(636条本文)。
言われたとおりに作った結果が契約の内容と合わなかったのであれば、請負人を責めるわけにはいきません。
ただし、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別です(636条但書)。
通常の終了原因
請負契約が終わる原因は、通常のものと請負に特有のものに分かれます。
通常の終了原因は3つです。第1に、仕事が完成したときです。第2に、債務不履行による解除です(541条・542条)。第3に、担保責任による解除です(559条・564条)。
注文者はいつでも解除できる
ここから請負に特有の終了原因です。
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(641条)。
途中で建物が要らなくなったのに、完成させてから壊すというのでは無駄が大きすぎます。そこで注文者の側から打ち切れることにしました。
もっとも請負人が損をしてはいけないので、損害の賠償が条件になっています。
注文者が破産したとき
注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人または破産管財人は、契約の解除をすることができます(642条1項本文)。
注文者が破産した以上、請負人は報酬を取れる見込みがありません。それなのに作り続けさせるのは酷だからです。破産管財人とは、破産者の財産を適切に管理する者をいいます。
ただし、請負人による解除については、仕事を完成した後はできません(642条1項但書)。
具体例
AがBの注文で建てた建物に雨漏りがあれば、BはAに対して修補、報酬の減額、損害賠償、解除を求めることができます。これに対して、Bが指定した材料のせいで雨漏りが生じたのであれば、Aがその材料の不適当を知りながら黙っていた場合を除き、Bは責任を追及できません。
ポイント整理
- ・完成した仕事の目的物が契約の内容に適合しないこと(559条・562条)
- ・注文者の供した材料または与えた指図によって生じた不適合でないこと(636条本文)
- ・注文者による任意解除は、請負人が仕事を完成しない間であること(641条)
効果
- ・注文者は追完請求・報酬減額請求・損害賠償請求・解除ができます(559条)
- ・注文者の材料や指図による不適合であれば追及できません(636条本文)
- ・注文者は仕事の完成前であればいつでも損害を賠償して解除できます(641条)
- ・注文者が破産したときは請負人または破産管財人が解除できます(642条1項)
条文(559条・636条・641条・642条)
第641条(注文者による契約の解除)請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
重要メモ
- ・注文者はいつでも解除できるが、仕事の完成前に限られ、損害の賠償が必要な点に注意
- ・559条: 請負人の担保責任は売主の契約不適合責任と同じ内容になる
- ・636条本文: 注文者の材料や指図による不適合であれば追及できない
- ・636条但書: 請負人が不適当であることを知りながら告げなかったときは追及できる
- ・642条1項: 注文者が破産したときは請負人または破産管財人が解除できる
①委任契約とは
643条・644条・648条簡単にいうと
弁護士に裁判を頼む、不動産会社に売却を依頼する、といった契約です。頼まれた側が何をしなければならないかが問われます。
法律行為を任せる契約
委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる契約です(643条)。
頼む側を委任者、頼まれる側を受任者といいます。不動産を高く売却してきてくれと頼むような場面です。
法律行為ではない事務を委託する場合は準委任といい、委任の規定が準用されます(656条)。
報酬は原則としてない
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができません(648条1項)。
したがって原則は片務・無償・諾成契約です。報酬の特約があれば双務・有償になります。
無償でも善管注意義務
ここが出題されるところです。
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(644条)。
報酬を受け取っていなくても善管注意義務を負います。ただで引き受けたのだから自分の財産と同じ程度の注意で足りる、ということにはなりません。
過去問では、委任が無償で行われた場合に受任者は自己の事務に対するのと同一の注意をもって処理すればよいと出題され、誤りとされました(12-32-4)。
後で見る無償寄託では自己の財産に対するのと同一の注意で足りるので、こちらと取り違えないでください。
自分で処理するのが原則
受任者は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません(644条の2第1項)。
委任は信頼関係を重視する契約で、その人だから頼んだという面があります。勝手に別の人に丸投げされては困るからです。
請負では原則として下請けに出せたのと対比されます。
受任者のその他の義務
受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は遅滞なくその経過および結果を報告しなければなりません(645条)。
また、委任事務を処理するにあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡し、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければなりません(646条)。
委任者に引き渡すべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければなりません(647条)。
委任者の義務
報酬支払義務は特約があるときだけです(648条1項)。
このほか、委任事務を処理するについて費用を要するときは、受任者の請求により前払をしなければなりません(649条)。受任者が立て替えた費用があれば、その費用と支出の日以後の利息を償還しなければなりません(650条1項)。
具体例
AがBから不動産の売却を依頼されたとします。報酬の特約がなければAは報酬を請求できませんが、それでもAは善管注意義務を負います。また、Aは原則として自分で処理しなければならず、Bの許諾がなければ別の業者に任せることはできません。

委任契約とは
ポイント整理
- ・当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託すること(643条)
- ・相手方がこれを承諾すること(643条)
- ・報酬を請求するには特約があること(648条1項)
効果
- ・受任者は善管注意義務を負います。無報酬でも同じです(644条)
- ・受任者は原則として自ら処理し、復受任者の選任には許諾かやむを得ない事由が必要です(644条の2第1項)
- ・受任者は報告義務、受取物の引渡義務、権利移転義務を負います(645条・646条)
- ・委任者は費用の前払義務と立替費用の償還義務を負います(649条・650条1項)
条文(643条・644条・648条)
第644条(受任者の注意義務)受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
重要メモ
- ・無報酬でも善管注意義務を負う点に注意。無償寄託と取り違えない
- ・643条: 法律行為をすることを委託し、相手方が承諾することで成立する
- ・648条1項: 受任者は特約がなければ報酬を請求できない
- ・644条の2第1項: 復受任者の選任には委任者の許諾かやむを得ない事由が必要
- ・過去問12-32-4: 無償委任なら自己の事務と同一の注意で足りるという出題は誤り
②委任契約の終了
651条・653条簡単にいうと
委任はいつでもやめられます。ただし相手に不利な時期にやめたときは損害を賠償することになります。
いつでも解除できる
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます(651条1項)。
委任者からも受任者からも、理由を示すことなく解除できます。信頼関係にもとづく契約なので、信頼がなくなったのであれば続ける意味がないからです。
損害賠償が必要になる場合
651条1項により委任の解除をした者は、次の場合には相手方の損害を賠償しなければなりません(651条2項本文)。
第1に、相手方に不利な時期に委任を解除したときです(651条2項1号)。
第2に、委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したときです(651条2項2号)。ただし、専ら報酬を得ることによる利益は除かれます。
ここで押さえておきたいのは、損害賠償が必要になるだけで解除自体はできるという点です。不利な時期だから解除できない、という話ではありません。
やむを得ない事由があれば賠償も要らない
やむを得ない事由があったときは、損害を賠償する必要がありません(651条2項但書)。
受任者が病気で動けなくなったというような場合です。
解除のほかの終了事由
委任は、次の事由によって終了します(653条)。
第1に、委任者または受任者の死亡です(653条1号)。
第2に、委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたことです(653条2号)。
第3に、受任者が後見開始の審判を受けたことです(653条3号)。
後見開始は受任者だけ
ここが引っかけどころです。
死亡と破産は委任者と受任者のどちらに生じても終了しますが、後見開始の審判は受任者に生じたときだけ終了します。
委任者が後見開始の審判を受けても委任は終了しません。判断能力を失った委任者のためにこそ、受任者が事務を続ける必要があるからです。
委任は相続されない
委任者または受任者が死亡すれば委任は終了するので、相続人に承継されません。
誰に頼むか、誰から頼まれるかが決定的に重要な契約だからです。相続人に承継される賃貸借や消費貸借と対比して覚えます。
具体例
AがBから不動産の売却を依頼されていたところ、Bがいつでも委任を解除できます。ただし売却の交渉がまとまる直前というように、Aにとって不利な時期に解除したのであれば、Bは損害を賠償しなければなりません。やむを得ない事由があれば賠償も要りません。
ポイント整理
- ・解除は各当事者がいつでもできること(651条1項)
- ・損害賠償が必要なのは、相手方に不利な時期の解除か、受任者の利益をも目的とする委任の解除であること(651条2項)
- ・やむを得ない事由があれば損害賠償は要らないこと(651条2項但書)
効果
- ・委任は各当事者がいつでも解除できます(651条1項)
- ・不利な時期の解除では相手方の損害を賠償します(651条2項1号)
- ・委任者または受任者の死亡・破産手続開始の決定で終了します(653条1号・2号)
- ・受任者が後見開始の審判を受けたときも終了します(653条3号)
条文(651条・653条)
第653条(委任の終了事由)委任は、次に掲げる事由によって終了する。一 委任者又は受任者の死亡 二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。 三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
重要メモ
- ・後見開始の審判で終了するのは受任者に生じたときだけである点に注意
- ・651条1項: 各当事者がいつでも解除できる
- ・651条2項: 不利な時期の解除や受任者の利益をも目的とする委任の解除では損害賠償が必要
- ・651条2項但書: やむを得ない事由があれば損害賠償も要らない
- ・653条1号・2号: 委任者と受任者のどちらの死亡・破産でも委任は終了する
寄託契約
657条・659条簡単にいうと
荷物やペットを預かってもらう契約です。ただで預かるときは注意の程度が下がる点が、委任との違いになります。
物を保管してもらう契約
寄託とは、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる契約です(657条)。
預ける側を寄託者、預かる側を受寄者といいます。ペットを預かってくれと頼む場面です。
2017年の改正で諾成契約になりました。合意だけで成立し、物を渡すことは成立の要件ではありません。
報酬は原則としてない
報酬支払義務については委任の規定が準用され(665条・648条)、特約がなければ報酬を請求できません。
注意義務は有償と無償で違う
ここが出題されるところです。
有償寄託の場合、受寄者は善良な管理者の注意をもって保管する義務を負います(400条)。
これに対して無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負います(659条)。
自己の財産に対するのと同一の注意とは、善管注意義務より低い基準です。自分の物を扱うのと同じ程度でよい、ということになります。
ただで預かってあげているのに、プロと同じ注意を求めるのは酷だからです。
委任との対比
無償委任では善管注意義務を負うのに、無償寄託では自己の財産に対するのと同一の注意で足ります。
同じ無償でも結論が逆になるので、ここは必ず対で覚えてください。
過去問では、寄託が無償で行われた場合に受寄者は善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならないと出題され、誤りとされました(12-32-5)。
寄託者の義務
寄託者は、寄託物の性質または瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければなりません(661条本文)。
危ないものを預けて受寄者に損害を与えたのであれば、預けた側が責任を負うということです。ただし、寄託者が過失なくその性質もしくは瑕疵を知らなかったとき、または受寄者がこれを知っていたときは賠償の必要がありません(661条但書)。
このほか、費用の前払義務(665条・649条)と立替費用の償還義務(665条・650条1項)を負います。
具体例
AがBからペットを預かったとします。報酬をもらっているのであればAは善管注意義務を負いますが、ただで預かっているのであれば、自分の財産に対するのと同じ程度の注意で足ります。同じ無償でも、委任であれば善管注意義務を負う点と違います。

寄託契約の当事者と義務関係
ポイント整理
- ・当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託すること(657条)
- ・相手方がこれを承諾すること(657条)
- ・報酬を請求するには特約があること(665条・648条1項)
効果
- ・有償寄託では受寄者が善管注意義務を負います(400条)
- ・無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意で足ります(659条)
- ・寄託者は寄託物の性質または瑕疵によって生じた損害を賠償します(661条本文)
条文(657条・659条)
第659条(無報酬の受寄者の注意義務)無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
重要メモ
- ・無償寄託は自己の財産と同一の注意で足りるが、無償委任は善管注意義務を負う点に注意
- ・657条: 寄託は諾成契約で、物を渡すことは成立の要件ではない
- ・659条: 無報酬の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって保管する
- ・661条: 寄託者は寄託物の性質または瑕疵によって生じた損害を賠償する
- ・過去問12-32-5: 無償寄託でも善管注意義務を負うという出題は誤り
組合契約
667条・670条・676条・678条簡単にいうと
複数の人が出資して一緒に事業をやる契約です。会社をつくるわけではない点に気をつけてください。
出資して共同で事業をやる
組合契約とは、2人以上の者が出資をして共同の事業を営むことを約することによってその効力を生ずる契約です(667条1項)。出資は労務を目的とすることもできます(667条2項)。
A・B・Cの3人の経営者が集まって、新しい事業のために協力し合うという形です。
ここで押さえておきたいのは、新しい会社をつくるわけではないという点です。組合には法人格がありません。あくまで契約です。
業務の決定
組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行します(670条1項)。出資額の割合ではなく頭数の過半数です。
組合契約の定めによって、組合の業務の決定および執行を、1人または数人の組合員または第三者に委任することができます(670条2項)。この委任を受けた者を業務執行者といいます。
業務執行者が数人あるときは、組合の業務は業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行します(670条3項)。
業務執行者がいなければ組合員の過半数、いれば業務執行者の過半数、という対比になります。
脱退
組合契約で組合の存続期間を定めなかったときは、各組合員はいつでも脱退することができます(678条1項本文)。
ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することはできません(678条1項但書)。
逆にいえば、やむを得ない事由があれば、組合に不利な時期であっても脱退できます。過去問では、存続期間を定めない場合に組合員はやむを得ない事由があっても組合に不利な時期に脱退することはできないと出題され、誤りとされました(13-33-3改題)。
組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員はやむを得ない事由があるときは脱退することができます(678条2項)。
組合財産
組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができません(676条3項)。
メンバーが欠けると目的を達成できなくなるかもしれないので、途中で自分の取り分を引き出すことを認めないという趣旨です。
組合員の個人財産にも及ぶ
組合の債権者は、組合財産だけでなく、組合員の個人財産にも強制執行をすることができます。
組合の借金を組合員個人が背負うことになる、というイメージです。会社であれば株主が会社の借金を負うことはありませんが、組合には法人格がないため扱いが違います。
具体例
A・B・Cの3人が出資して共同で事業を始めたとします。業務執行者を決めていなければ、業務は3人の過半数すなわち2人の賛成で決まります。存続期間を決めていなければ各自がいつでも脱退できますが、組合に不利な時期に抜けるにはやむを得ない事由が必要です。

組合契約
ポイント整理
- ・2人以上の者が出資をすること(667条1項)
- ・共同の事業を営むことを約すること(667条1項)
- ・出資は労務を目的とすることもできること(667条2項)
効果
- ・業務は組合員の過半数で決定します(670条1項)
- ・業務執行者がいる場合は業務執行者の過半数で決定します(670条3項)
- ・組合員は清算前に組合財産の分割を求めることができません(676条3項)
- ・組合の債権者は組合員の個人財産にも強制執行できます
条文(667条・670条・676条・678条)
第667条第1項(組合契約)組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
重要メモ
- ・やむを得ない事由があれば、組合に不利な時期であっても脱退できる点に注意
- ・670条1項: 業務は組合員の過半数で決定する。出資額ではなく頭数
- ・678条1項但書: やむを得ない事由がある場合を除き、不利な時期には脱退できない
- ・676条3項: 組合員は清算前に組合財産の分割を求めることができない
- ・過去問13-33-3改題: やむを得ない事由があっても不利な時期には脱退できないという出題は誤り
まとめ
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