第8節 契約各論
第3章 債権法
契約各論では、売買・賃貸借・請負など個別の典型契約のルールを学びます。契約総論で学んだ一般原則が、実際の取引でどう適用されるかを理解することが重要です。試験では事例問題が頻出し、各契約類型の要件・効果の正確な理解が合否を分けます。
売買
第555条売買とは、当事者の一方(売主)が財産権を相手方に移転することを約し、相手方(買主)が代金を支払うことを約する契約です。最も基本的な有償・双務契約であり、日常取引で最も頻繁に利用されます。
具体例
Aさんが自分の自転車をBさんに3万円で売る約束をした。Aは自転車を引き渡す義務を、Bは3万円を支払う義務を負う。
要件
- ・売主が財産権を移転する意思表示
- ・買主が代金を支払う意思表示
- ・当事者間の合意
効果・結論
- ・売主は目的物を引き渡し、所有権を移転する義務を負う
- ・買主は代金を支払う義務を負う
- ・同時履行の抗弁権が認められる
- ・契約不適合があれば買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除ができる
条文(第555条)
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
試験のポイント
- ・契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)は売主の無過失責任ではなく債務不履行責任に統一された
- ・買主の権利行使には1年以内の通知が必要(知った時から)
- ・同時履行の抗弁権と留置権の違いに注意
賃貸借
第601条賃貸借とは、当事者の一方(賃貸人)が物の使用収益をさせることを約し、相手方(賃借人)が賃料を支払うことを約する契約です。所有権は移転せず、使用収益権のみを与える点が売買と異なります。
具体例
AさんがBさんに自分のアパートの一室を月5万円で貸す契約を結んだ。Bは部屋を使えるが、無断で転貸したり改造したりはできない。
要件
- ・賃貸人が物の使用収益をさせる意思表示
- ・賃借人が賃料を支払う意思表示
- ・当事者間の合意
効果・結論
- ・賃貸人は目的物を使用収益させる義務を負う
- ・賃借人は賃料支払義務・善管注意義務・原状回復義務を負う
- ・賃借人は無断譲渡・転貸が禁止される
- ・賃貸借の対抗要件は不動産登記または引渡し
条文(第601条)
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
試験のポイント
- ・無断譲渡・転貸は原則として賃貸人に解除権を与える(背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り)
- ・賃借権の対抗要件は不動産登記または引渡し(建物賃貸借は引渡しで足りる)
- ・使用貸借(無償)との区別が重要
請負
第632条請負とは、当事者の一方(請負人)が仕事の完成を約し、相手方(注文者)が報酬を支払うことを約する契約です。仕事の完成が債務の内容である点が、単なる労務提供を内容とする委任・雇用と異なります。
具体例
Aさんが大工のBさんに自宅の増築工事を依頼し、完成したら200万円を支払う約束をした。Bは完成させる義務を負う。
要件
- ・請負人が仕事の完成を約する意思表示
- ・注文者が報酬を支払う意思表示
- ・当事者間の合意
効果・結論
- ・請負人は仕事を完成させる義務を負う
- ・注文者は報酬支払義務を負う(仕事完成が条件)
- ・目的物に契約不適合があれば注文者は修補請求・報酬減額請求・損害賠償請求・解除ができる
- ・注文者は完成前でも損害を賠償して契約解除できる
条文(第632条)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
試験のポイント
- ・報酬支払時期は原則として仕事完成時(後払い)
- ・注文者の任意解除権(641条)は請負特有の制度
- ・委任(事務処理)との区別:請負は完成が目的、委任は善管注意義務を尽くせば足りる
委任
第643条委任とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを委託し、相手方(受任者)がこれを承諾することで成立する契約です。受任者は善管注意義務を負いますが、仕事の完成義務は負いません。
具体例
Aさんが弁護士Bさんに訴訟の代理を依頼した。Bは最善を尽くす義務はあるが、必ず勝訴させる義務まではない。
要件
- ・委任者が法律行為の委託をする意思表示
- ・受任者が承諾する意思表示
- ・当事者間の合意
効果・結論
- ・受任者は善管注意義務を負う
- ・受任者は報告義務・受取物引渡義務を負う
- ・原則として無償(特約で有償も可)
- ・各当事者はいつでも解除できる
条文(第643条)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
試験のポイント
- ・委任は原則無償(請負は有償が原則)
- ・委任はいつでも解除可能(やむを得ない事由なく不利な時期の解除は損害賠償)
- ・準委任(事務委託)との違い:委任は法律行為、準委任は事実行為
まとめ
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