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テキスト/民法/第7節 契約総論

第7節 契約総論

第3章 債権法

この節では、契約の成立・種類・効果を学びます。同時履行の抗弁権、危険負担、解除は試験で最頻出の重要テーマです。令和元年改正で解除要件から債務者の帰責事由が不要となり、催告解除(541条)と無催告解除(542条)に整理された点に注意しましょう。

1

契約の成立

簡単にいうと

簡単にいうと、「買いたい」という申込みと「売ってもいい」という承諾が合致したとき、はじめて契約が成立します。到達主義がポイントです。

契約は、原則として申込み(買いたいという意思表示)と承諾(売ってもいいという意思表示)が揃った場合に成立します(522条1項)。申込みの意思表示と承諾の意思表示は、ともに相手方に到達した時に効力が生じます(到達主義/97条1項)。

重要メモ

  • 「申込み+承諾が揃って初めて契約成立、意思表示は到達時に効力発生」がポイント
  • 契約成立には申込みと承諾の双方が必要(522条1項)
  • 意思表示は相手方に到達した時に効力が生じる(到達主義/97条1項)
  • 申込みに条件を付けたり変更を加えて承諾した場合は、申込みを拒絶した上で新たな申込みをしたとみなされる(528条)
  • 重要度Cの論点:出題実績は少なく、読んでおく程度で十分
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契約の種類

簡単にいうと

簡単にいうと、民法には13種類の典型契約があり、双務・片務、有償・無償、諾成・要物・要式の組み合わせで整理できます。各分類の意味と代表例を押さえましょう。

■ 典型契約とは

民法では日常生活でよく行う契約を典型契約として13種類規定しており、様々な目的から各契約を分類しています。

■ 典型契約の分類(重要なもの)

・贈与:片務・無償・諾成 ・売買:双務・有償・諾成 ・消費貸借:片務・無償(利息付きは有償)・要物(書面の場合は諾成) ・使用貸借:片務・無償・諾成 ・賃貸借:双務・有償・諾成 ・請負:双務・有償・諾成 ・委任:片務・無償(報酬付きは双務)・諾成 ・寄託:片務・無償(報酬付きは有償)・諾成 ・組合:双務・有償・諾成

■ 用語の意味

双務契約:双方に義務が生じる/片務契約:一方のみに義務 有償契約:経済的な支出を伴う/無償契約:伴わない 諾成契約:合意のみで成立/要物契約:物の引渡しも必要

重要メモ

  • 「消費貸借は原則要物だが書面なら諾成、贈与・使用貸借は無償、売買・賃貸借・請負は有償」が判別ポイント
  • 消費貸借は原則要物契約だが書面(または電磁的記録)の場合は諾成契約として成立する(587条の2)
  • 贈与・使用貸借・寄託は無償契約;売買・賃貸借・請負・組合は有償契約
  • 委任・寄託は無報酬なら片務・無償、報酬付きなら双務・有償
  • 双務契約(売買・賃貸借・請負・組合など)には同時履行の抗弁権が発生しうる
  • 重要度Cの論点:典型契約の表を見ておく程度で十分
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①同時履行の抗弁権とは

簡単にいうと

簡単にいうと、「先に払え」「先に渡せ」と言い合うのを防ぐため、相手が履行しない限り自分も拒否できる権利があります。同時履行の抗弁権がポイントです。

■ 同時履行の抗弁権とは

民法上の多くの契約が双務契約であり、お互いに債務を負っています。この場合、自分が債務を履行しても相手方が履行してくれなければ不公平なので、「相手がやらなければ自分もやらない」という主張を認めることにしています(同時履行の抗弁権/533条)。

■ 重要ポイント

・同時履行の抗弁権を主張し続けた結果、弁済期を過ぎたとしても、履行遅滞とはなりません。 ・一度物を提供したが受け取ってもらえなかった場合、再度物の提供をする必要があります(大判明44.12.11)。 ・裁判所は同時履行の抗弁権が主張される場合、引換給付判決をすることになります(大判明44.12.11)。

①同時履行の抗弁権とは

同時履行の抗弁権とは

重要メモ

  • 「双務契約で相手が履行しない限り自分も拒絶できる、その間は履行遅滞にならない」がポイント
  • 双務契約において相手方が履行しない限り自分の債務の履行を拒絶できる(533条)
  • 同時履行の抗弁権を主張し続けた結果、弁済期を過ぎたとしても履行遅滞にはならない
  • 一度物を提供したが受け取ってもらえなかった場合、再度物の提供をする必要がある(大判明44.12.11)
  • 同時履行の抗弁権が主張されると、裁判所は引換給付判決(お互いに義務を果たせという判決)を下す(大判明44.12.11)
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②同時履行の関係の有無

簡単にいうと

簡単にいうと、どの場面で同時履行の関係が成り立つのか、具体例で押さえておきましょう。「ある・なし」の区別が重要です。

■ 同時履行の関係にあるもの

・売買と受取証書(領収書)の交付 ・売買取消・解除における双方の原状回復義務 ・請負人の仕事完成義務と注文者の報酬支払義務(仕事完成後のみ) ・建物の明渡しと建物明渡し代金支払(建物明渡しが先履行の場合あり) ・造作買取請求権が行使された場合の、建物明渡義務と造作代金支払義務(建物明渡しが先)

■ 同時履行の関係にないもの

・弁済と受取証書(借用証)の返還(弁済が先履行) ・弁済と担保消滅手続(弁済が先履行) ・建物の明渡しと敷金の返還(建物明渡しが先) ・請負人の仕事完成義務と注文者の報酬支払義務(仕事完成前)

重要メモ

  • 「敷金返還と建物明渡しは同時履行でない(明渡しが先)、借用証返還と弁済も同時履行でない(弁済が先)」が頻出
  • 同時履行の関係にある:弁済と受取証書(領収書)の交付
  • 同時履行の関係にある:売買代金債務と所有権移転登記義務
  • 同時履行の関係にある:契約取消・解除における双方の原状回復義務
  • 同時履行の関係にある:請負の仕事完成義務と報酬支払義務(仕事完成後)
  • 同時履行の関係にある:造作買取請求権行使時の建物明渡義務と造作代金支払義務
  • 同時履行の関係にない:建物の明渡しと敷金の返還(明渡しが先履行)
  • 同時履行の関係にない:弁済と債権証書(借用証)の返還(弁済が先履行)
  • 同時履行の関係にない:弁済と担保消滅手続(弁済が先履行)
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③同時履行の抗弁権と第三者

簡単にいうと

簡単にいうと、同時履行の抗弁権は契約した当事者だけの権利であって、建物を買った第三者には主張できません。当事者限定がポイントです。

■ 同時履行の抗弁権と第三者

同時履行の抗弁権は、契約に基づいて生じた権利であり、契約当事者以外の者に対して主張することはできません。

例:AがBに時計を売った後でBがCに転売した場合、AはBに対して同時履行の抗弁権を主張できますが、新所有者Cに対しては主張することができません。

③同時履行の抗弁権と第三者

同時履行の抗弁権と第三者

重要メモ

  • 「同時履行の抗弁権は契約当事者間だけの権利、第三者(新所有者など)には主張できない」がポイント
  • 同時履行の抗弁権は契約から発生した権利であり、契約当事者間においてのみ主張できる
  • 第三者(新所有者等)には対抗不可(例:BがCに転売した場合、AはCに同時履行の抗弁権を主張できない)
  • 記述問題頻出:「契約当事者以外の第三者には主張することができない」と明確に記載すること
  • なお留置権(物権)は第三者にも主張できる点と対比して押さえておく
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危険負担

簡単にいうと

簡単にいうと、建物を売買した後、引渡し前に地震で建物が壊れてしまったら、買主は代金を払わなければならないのか、というのが危険負担の問題です。債権者主義・債務者主義がポイントです。

■ 危険負担とは

危険負担とは、例えば建物の売買契約締結後・引渡し前において、落雷など売主(債務者)の帰責事由によらずに建物が滅失して売主の引渡債務が履行不能となった場合、買主(債権者)が代金の支払いを拒むことができるかという問題です(536条)。

■ 原則

①建物が売主・買主双方の帰責事由なく消滅した場合→買主(債権者)Bは売主(債務者)Aからの代金支払いの請求を拒むことができます(536条1項)。 ②売主(債務者)Aの帰責事由によって目的物が滅失した場合→買主(債権者)Bは、売主(債務者)Aからの代金支払いの請求を拒むことはできません(536条2項)。ただし損害賠償請求権・解除権を有します。

危険負担

危険負担(民法536条)

重要メモ

  • 「双方に帰責なく目的物が滅失→買主は代金支払いを拒絶できる、買主に帰責あり→拒絶できない」がポイント
  • 双方に帰責事由なく目的物が滅失した場合、買主(債権者)は代金支払いを拒絶できる(536条1項)
  • 買主(債権者)の帰責事由による滅失の場合、買主は代金支払いを拒絶できない(536条2項)
  • 売主(債務者)の帰責事由による滅失の場合、買主は代金支払いを拒絶できないが、損害賠償請求権・解除権を行使できる
  • 目的物が買主に引き渡された後は、買主は代金支払いを拒むことができない(567条1項)
  • 民法改正により「債務者主義」が原則となった(改正前は特定物については「債権者主義」だった)
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①解除の意義

簡単にいうと

簡単にいうと、一度結んだ契約を「なかったこと」にする制度が解除です。債務不履行があったときなどに利用します。

■ 解除とは

解除とは、契約が締結された後に、当事者の一方的な意思表示によって、契約が最初からなかったのと同じ状態に戻すための制度です。例えば、債務者が債務を履行しない場合に、その契約を打ち切ってほかの者と契約を結ぶ際に活用されます。

■ 解除の種類

解除の種類としては、①約定解除(当事者の契約で解除原因を決めておく)、②合意解除(当事者双方の意思で契約を解除する)、③法定解除(債務不履行の場合の解除)があります。

①解除の意義

解除の意義と種類

重要メモ

  • 「解除は一方的意思表示で契約を遡及的に消滅させる制度、債務者に帰責事由がなくても解除できる」がポイント
  • 解除により契約は最初からなかったことになり、各自が原状回復義務を負う(545条1項)
  • 試験対策上は法定解除(債務不履行を原因とする解除)が最重要
  • 民法改正により、債務者に帰責事由がない場合でも債権者は解除できる(損害賠償請求は帰責事由がなければ不可)
  • 損害賠償請求権と解除権は両立して行使できる(545条4項)
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②解除の種類

簡単にいうと

簡単にいうと、解除には約定・合意・法定の3種類があり、試験では法定解除(債務不履行による解除)が中心です。

■ 解除の3種類

①約定解除:当事者の契約であらかじめ解除原因を決めておきます。 ②合意解除:当事者双方の意思で契約を解除します。 ③法定解除:債務不履行の場合の解除です。

試験対策としては③法定解除が重要です。

重要メモ

  • 「解除は約定・合意・法定の3種類、試験では法定解除(541条・542条)が中心」がポイント
  • 法定解除:債務不履行を原因とし、法律の規定に基づいて行う解除
  • 約定解除:当事者があらかじめ契約で解除原因・解除権を定めておく
  • 合意解除:当事者双方の合意によって既存の契約を消滅させる
  • 法定解除の行使には原則として相当の期間を定めた催告が必要(541条)
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③法定解除(債務不履行に基づく解除)

簡単にいうと

簡単にいうと、相手が約束を守らないとき、一定のステップを踏めば契約を解除できます。催告の要否がポイントです。

■ 法定解除の要件(履行遅滞の場合)

履行遅滞を原因として解除するためには、下記要件を満たす必要があります(541条)。 ①債務者が履行期に債務を履行しないこと。 ②債権者が相当の期間を定めて履行の催告をすること。 ③債務者が相当の期間内に履行しないこと。 ④相当の期間経過時における履行が軽微でないこと。 ⑤解除の意思表示をすること。

■ 催告が不要な場合(542条1項各号)

・債務の全部の履行が不能なとき ・債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき ・債務の一部の履行が不能であり残存部分だけでは契約を達成できないとき ・定期行為(一定期日または期間内に履行しないと目的達成不能)で不履行 ・債務者がその債務の履行をせず、催告をしても解約目的を達する履行の見込みがないとき

③法定解除(債務不履行に基づく解除)

法定解除(債務不履行に基づく解除)

重要メモ

  • 「原則は相当期間を定めた催告が必要、履行不能・明確な拒絶・定期行為などは催告不要で即解除できる」がポイント
  • 履行遅滞による法定解除の要件:①履行期に不履行②相当期間を定めた催告③期間内に不履行④履行不足が軽微でない⑤解除の意思表示(541条)
  • 期間を定めない催告でも、客観的に相当な期間を経過すれば解除できる
  • 催告不要の場合①:債務の全部の履行が不能なとき(542条1項1号)
  • 催告不要の場合②:債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき(542条1項2号)
  • 催告不要の場合③:一部不能または一部拒絶で残存部分だけでは契約目的を達成できないとき(542条1項3号)
  • 催告不要の場合④:定期行為(特定の日時・期間内に履行しないと目的達成不能)で期間経過したとき(542条1項4号)
  • 催告不要の場合⑤:催告しても契約目的を達する履行がされる見込みがないことが明らかなとき(542条1項5号)
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④解除権の不可分性

簡単にいうと

簡単にいうと、当事者が複数いる場合、全員でまとめて解除しなければなりません。一部の人だけの解除はできません。

■ 解除権の不可分性

当事者の一方が複数いる場合、契約の解除はその全員からまたはその全員に対してする必要があります(544条1項)。

例:AとBが共有する建物をCに売却する契約を締結した場合、当該売買契約を解除するにはAとBの全員からCに対して解除の意思表示をする必要があります。AのみがCに解除の意思表示をするだけでは足りません。

④解除権の不可分性

解除権の不可分性

重要メモ

  • 「当事者が複数いる場合、解除は全員からまたは全員に対して行わなければならない」がポイント
  • 複数当事者の場合、解除は全員からまたは全員に対して行う必要がある(544条1項)
  • 一部の者だけからの解除または一部の者に対する解除のみでは解除の効力が生じない
  • 過去問例:AとBが共有建物をCに売却した場合、DがAに対してのみ解除の意思表示をするだけでは足りない(544条1項)
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⑤解除の効果

簡単にいうと

簡単にいうと、契約が解除されると最初からなかったことになり、受け取ったものはお互いに返し合う義務(原状回復義務)が生じます。

■ 解除の効果

契約を解除すると、最初からその契約はなかったことになるため、各自が原状回復義務を負うことになります(545条1項)。

・買主Bは売主Aから受け取った車を返す義務を負います。 ・買主Bがまだ代金を払っていなければ、代金支払義務は消滅します。 ・なお解除後に返還する場合、利息や果実(収益)も返還しなければなりません(545条2項・3項)。 ・損害賠償請求権は解除によって妨げられません(545条4項)。

⑤解除の効果

⑤解除の効果

重要メモ

  • 「解除後は原状回復義務+受領物には利息・果実も返還、損害賠償請求は別途行使できる、第三者の権利は害せない」がポイント
  • 解除の効果:各自が原状回復義務を負う(545条1項)—受け取ったものをお互いに返し合う
  • 受領した金銭には受領時から利息を付して返還しなければならない(545条2項)
  • 受領した物から生じた果実も返還しなければならない(545条3項)
  • 解除しても損害賠償請求権は妨げられず、別途行使できる(545条4項)
  • 解除は第三者の権利を害することができない(545条1項但書)—解除前に権利を取得した第三者は保護される

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
契約の成立
申込みと承諾の合致で成立(522条)。原則書面不要
到達主義(97条)。承諾期間の定めある申込みは期間内承諾が必要
契約の種類
双務・片務/有償・無償/諾成・要物で分類。各典型契約の分類を暗記
使用貸借は令和元年改正で要物→諾成に変更。消費貸借は書面で諾成可
同時履行の抗弁権
双務契約で相手の履行提供まで自己の履行を拒絶できる(533条)。履行遅滞にならない
建物明渡しと敷金返還・弁済と担保権抹消・仕事完成と報酬(引渡不要)は同時履行の関係なし
危険負担
双方無帰責の履行不能は債権者が反対給付を拒絶可(536条1項)
令和元年改正で「当然消滅」から「履行拒絶権」に変更。解除権は別途行使可
催告解除
相当期間の催告→期間内不履行→解除可(541条)。帰責事由不要
不履行が軽微な場合は解除不可(541条ただし書き)
無催告解除
全部不能・全部拒絶・定期行為の徒過・目的達成見込みなし等(542条)
542条1項の5つの号を正確に整理。帰責事由不要
解除の効果
遡及的消滅+原状回復義務(545条)。損害賠償と両立可
解除権の不可分性(544条):複数当事者は全員から全員に。第三者保護(545条1項ただし書き)
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