第4節 所有権
第2章 物権法
所有権は、物を全面的に支配する最も強力な物権です。自分の土地や建物を自由に使い、収益を得て、処分できる権利ですが、相隣関係や共有など、他人との調整が必要な場面もあります。また、令和3年改正により所有者不明土地・建物管理制度および管理不全土地・建物管理制度が創設され(令和5年4月施行)、適切な不動産管理の仕組みが整備されました。この節では、所有権の内容と限界、共有の仕組み、そして新制度について学びます。
所有権の意義
206条簡単にいうと
所有権は、物を使う・収益を得る・処分するという3つをまとめて持つ権利です。物権のなかで最も強い権利になります。
所有権とは
所有権とは、法令の制限内において、目的物を自由に使用・収益・処分できる権利です(206条)。物権のなかで最も内容が広く、物の王様ともいえる権利です。
3つの権能
使用とは、物を直接に利用することです。自分の家に住む、自分の車を運転するといった場面が当たります。
収益とは、物から生じる果実を取得することです。土地を貸して賃料を得る、果樹園から果実を得るといった場面です。
処分とは、物を売る、贈る、担保に入れる、壊すといった行為です。法律上の処分も事実上の処分も含みます。
この3つをすべて持っているのが所有権であり、どれか一部だけを切り出したものが地上権や抵当権といった制限物権になります。
自由といっても無制限ではない
206条は「法令の制限内において」と定めています。自由に使えるといっても、何をしてもよいわけではありません。
隣の土地との関係では相隣関係のルールが働きますし、建築基準法や都市計画法のような行政上の規制もかかります。また、自分の土地に地上権や抵当権を設定すれば、その範囲で所有権の内容は制限されます。
侵害されたときにできること
所有権が侵害されたときは、物権的請求権を行使できます。占有を奪われたときは返還請求権、占有以外の方法で妨げられているときは妨害排除請求権、これから侵害されそうなときは妨害予防請求権です。
なお、所有権そのものは消滅時効にかかりません。ただし、相手方から取得時効を主張された結果、所有権を失うことはあります。
この節で扱うこと
所有権に関して出題が多いのは、隣の土地との調整を定めた相隣関係と、1つの物を複数人で持つ共有です。どちらも自分の所有権が他人との関係でどこまで制限されるか、という問題です。
具体例
Aが自分の土地に家を建てて住むのが使用、その土地をBに貸して賃料を受け取るのが収益、Cに売却するのが処分です。3つをすべてできるのが所有権です。ただしAが家を建てる際には、境界線から50センチメートル以上離さなければならないなど、相隣関係のルールによる制限を受けます。
ポイント整理
- ・目的物について使用・収益・処分の権能をすべて持つこと
- ・行使は法令の制限内であること(206条)
効果
- ・目的物を自由に使用・収益・処分できます
- ・侵害されたときは返還請求・妨害排除請求・妨害予防請求ができます
- ・制限物権が設定されると、その範囲で所有権の内容が制限されます
- ・所有権そのものは消滅時効にかかりません
条文(206条)
第206条(所有権の内容)所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
重要メモ
- ・206条の「法令の制限内において」という限定に注意
- ・3つの権能は、使用・収益・処分
- ・制限物権は、所有権の権能の一部を切り出したもの
- ・侵害されたときは、返還請求・妨害排除請求・妨害予防請求ができる
- ・所有権は消滅時効にかからないが、取得時効によって失うことはある
隣地通行権(囲繞地通行権)
210条・212条・213条簡単にいうと
他人の土地に囲まれて公道に出られない土地の所有者は、隣の土地を通らせてもらえます。範囲と償金に条件があります。
袋地の所有者を助ける仕組み
日本は国土が狭く、土地を細かく分けて使っています。その結果、他の土地に囲まれて公道に出られない土地ができてしまうことがあります。こうした土地を袋地といいます。
公道に出られなければその土地は使えません。そこで民法は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行できると定めました(210条1項)。
通れる範囲は必要最小限
通行できる範囲には限りがあります。袋地の所有者が好きなだけ通れるわけではなく、必要であり、かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。通路を開設することもできますが、やはり必要最小限の範囲にとどまります。
償金を支払う
通行する側は、通行する土地の損害に対して償金を支払う必要があります(212条本文)。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとに支払うことができます(212条但書)。
分割で袋地ができた場合は別扱い
土地の分割や一部の譲渡によって袋地が生じた場合は、扱いが変わります。この場合、袋地の所有者は分割された他の土地、または譲渡した残りの土地についてのみ通行できます(213条1項・2項)。関係のない第三者の土地を巻き込むのは不当だからです。
そしてこの場合、償金を支払う必要はありません。自分たちの都合で袋地を作った以上、その負担も自分たちで引き受けるべきだからです。
登記がなくても主張できる
隣地通行権は法律上当然に発生する権利なので、袋地の所有権について登記を備えていなくても主張できます。囲んでいる土地の所有者に対しても、その土地を取得した者に対しても同じです。
過去問では「隣地通行権を主張するためには甲土地の所有権の登記を具備していなければならない」という形で出題され、誤りとされました。
具体例
Bの土地はAの土地に囲まれていて、公道に出るにはAの土地を通るしかないとします。BはAの土地を通行できますが、通れる範囲はAの損害が最も少なくなるように定められ、Bは償金を支払わなければなりません。このときBは自分の土地の所有権登記を備えていなくても、Aに対して通行権を主張できます。

隣地通行権(囲繞地通行権)の仕組み
ポイント整理
- ・自分の土地が他の土地に囲まれて公道に通じないこと(210条1項)
- ・通行の場所と方法は、必要であり、他の土地のために損害が最も少ないものであること
- ・通行する土地の損害に対して償金を支払うこと(212条本文)
効果
- ・袋地の所有者は囲んでいる土地を通行できます
- ・償金は1年ごとに支払うことができます(212条但書)。通路開設の損害分は除かれます
- ・分割や一部譲渡で袋地が生じた場合は、その相手方の土地だけを通行でき、償金は不要です(213条)
- ・所有権の登記がなくても通行権を主張できます
条文(210条・212条・213条)
第210条第1項(公道に至るための他の土地の通行権)他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
重要メモ
- ・所有権の登記がなくても通行権を主張できる点に注意
- ・210条1項: 公道に通じない土地の所有者は、囲んでいる土地を通行できる
- ・通行の場所と方法は、必要で他の土地の損害が最も少ないものを選ぶ
- ・212条: 償金を支払う。通路開設の損害分を除き1年ごとの支払いも可能
- ・213条: 分割や一部譲渡で袋地が生じた場合は、相手方の土地だけを通行でき償金は不要
相隣関係(境界)
209条・213条の2・223条・233条・234条簡単にいうと
隣の土地との境界をめぐるルールです。2021年の改正で、越境した枝の切除と設備設置権が変わりました。
隣の土地との調整
自分の土地とはいえ、隣との境界ぎりぎりまで何をしてもよいわけではありません。逆に、工事のためにどうしても隣に入らせてもらいたいこともあります。民法はこうした調整のためのルールを置いています。これを相隣関係といいます。2021年の改正で内容が大きく変わりました。
隣地の使用(209条1項)
土地の所有者は、次の目的のために必要な範囲で隣地を使用できます。境界またはその付近における障壁・建物その他の工作物の築造、収去または修繕。境界標の調査または境界に関する測量。そして233条3項による枝の切取りです。
ただし住家については、その居住者の承諾がなければ立ち入ることができません。また、隣地の所有者や現に使用している者のために損害が最も少ない日時・場所・方法を選ばなければならず、損害を受けたときは償金を請求されます(209条2項・4項)。
継続的給付のための設備の設置(213条の2)
電気・ガス・水道水などの継続的給付を受けるために、他の土地に設備を設置したり他人の設備を使用したりできます。2021年改正で新設されました。
ここでも損害が最も少ないものを選ばなければならず、償金を支払う必要があります。この償金は1年ごとに支払うことができます(213条の2第2項・第5項)。
境界標の設置(223条)
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で境界標を設けることができます。
竹木の枝と根(233条)
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に枝を切除させることができます。自分で勝手に切ることはできないのが原則です。
もっとも、竹木の所有者に催告したのに相当の期間内に切除しないときなどは、土地の所有者が自ら切り取ることができます(233条3項1号)。これが2021年改正で加わった部分です。
これに対し、根が境界線を越えるときは、土地の所有者が自ら切り取ることができます。枝は他人に切らせる、根は自分で切れる、という違いが問われます。
境界線付近の建築の制限(234条1項)
建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければなりません。
具体例
Aが境界付近の塀を修繕するため、隣のBの土地を使う必要が生じたとします。目的が工作物の修繕なのでAは必要な範囲でBの土地を使用できますが、Bの住家に立ち入るにはBの承諾が必要です。またBに損害が生じれば償金を支払います。Bの木の枝がAの土地に越境している場合、AはまずBに切除を求め、相当の期間内に切除されなければ自分で切り取れます。根であれば最初からAが切り取れます。
ポイント整理
- ・隣地の使用: 工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査や測量、枝の切取りのいずれかの目的であること(209条1項)
- ・隣地の使用: 住家に立ち入るには居住者の承諾が必要であること
- ・枝の切取り: 竹木の所有者に催告し、相当の期間内に切除されないこと(233条3項1号)
効果
- ・必要な範囲で隣地を使用でき、損害には償金を支払います(209条)
- ・継続的給付のために他の土地に設備を設置できます(213条の2)
- ・共同の費用で境界標を設けることができます(223条)
- ・越境した枝は所有者に切除させ、条件を満たせば自ら切り取れます(233条)
- ・越境した根は自ら切り取ることができます(233条4項)
条文(209条・213条の2・223条・233条・234条)
第209条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。(以下略) 第223条 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。 第233条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。 第234条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
重要メモ
- ・枝は切除させる、根は自ら切り取れるという違いに注意
- ・209条1項の目的は、工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査や測量、枝の切取りの3つ
- ・住家に立ち入るには居住者の承諾が必要
- ・233条3項1号: 催告しても相当の期間内に切除されなければ自ら切り取れる(2021年改正)
- ・234条1項: 建物を築造するには境界線から50センチメートル以上離す
共有関係
249条・250条・251条・252条簡単にいうと
1つの物を複数人で持つのが共有です。使う・直す・貸す・売るで、必要な同意の重さが変わります。
共有とは
車や土地を兄弟や夫婦で一緒に持っていることがあります。このように1つの物を複数人が共同で所有する状態を共有といいます。
各共有者が持つ所有権の割合を持分といいます。共有者の間で決めがなければ、持分は平等と推定されます(250条)。
共有者の1人であるAは、単独で土地全体を使うことができます。しかし土地を売りたい場合には、ほかの共有者の同意が必要です。何をするかによって必要な同意が変わる、というのがこの論点の中心です。
4つの行為と必要な同意
使用行為(249条1項)は、共有物を利用する行為です。各共有者が単独でできます。共有地全体を使うこともできます。
ただし、共有物を使用する共有者は、ほかの共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(249条2項)。ただで使い続けられるわけではありません。
保存行為(252条5項)は、共有物の原状を維持する行為です。単独でできます。共有物の修繕や妨害排除請求がこれにあたります。急を要することが多く、また他の共有者にとっても利益になるからです。
管理行為(252条1項)は、共有物の性質を変えることなく、これを利用しまたは改良する行為です。持分の価格の過半数の同意が必要です。共有物の管理者の選任と解任、所定の期間を超えない賃借権の設定、賃貸借契約の解除などが当たります。
変更行為(251条1項)は、共有物の性質もしくは形状またはその両方を変更することです。共有者全員の同意が必要です。共有物の売買、その解除、田を宅地に変えることなどが当たります。
なお、形状または効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は、全員の同意までは要らず、持分の価格の過半数で決められます(251条1項かっこ書・252条1項)。
不法占拠者に対して
共有地を不法に占拠する者に対しては、各共有者が単独で共有持分の全部の返還を請求できます。保存行為にあたるからです。
これに対し、損害賠償の請求も単独でできますが、請求できる額は自己の持分の割合による範囲に限られます。全体の損害が900万円で持分が3分の1であれば、請求できるのは300万円までです。返還は全部、賠償は持分まで、という対比が問われます。
所在が分からない共有者がいる場合
2021年改正で、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときの手当てが置かれました。裁判所は、共有者の請求により、その共有者以外の共有者の同意を得て変更を加えられる旨の裁判ができます(251条2項)。管理については、持分の価格の過半数で決められる旨の裁判ができます(252条2項)。
具体例
A・B・Cが土地を3分の1ずつ共有しているとします。Aは単独で土地全体を使えますが、自己の持分を超える分の対価はB・Cに償還しなければなりません。土地の修繕はAが単独でできます。土地を貸すには持分の価格の過半数の同意が要ります。土地を売るにはA・B・C全員の同意が必要です。不法占拠者Dに対しては、Aが単独で土地全部の明渡しを求められますが、損害賠償は自己の持分にあたる範囲までしか請求できません。

共有関係の権利行使と意思決定
ポイント整理
- ・使用行為・保存行為: 各共有者が単独でできること
- ・管理行為: 持分の価格の過半数の同意があること(252条1項)
- ・変更行為: 共有者全員の同意があること(251条1項)
- ・軽微な変更: 持分の価格の過半数で決められること(251条1項かっこ書)
効果
- ・共有物を使用する共有者は、持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(249条2項)
- ・持分は、別段の定めがなければ平等と推定されます(250条)
- ・不法占拠者に対しては単独で共有持分の全部の返還を請求できます
- ・損害賠償の請求は自己の持分の割合による範囲に限られます
条文(249条・250条・251条・252条)
第249条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 第250条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。 第251条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。 第252条 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
重要メモ
- ・不法占拠者への返還は全部、損害賠償は持分までという違いに注意
- ・使用行為と保存行為は単独、管理行為は持分の過半数、変更行為は全員の同意
- ・共有物を使う共有者は、持分を超える分の対価を償還する義務を負う(249条2項)
- ・形状や効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は持分の過半数で決められる
- ・所在が分からない共有者がいる場合、変更は251条2項、管理は252条2項の裁判で対応する
共有物分割請求
256条・258条・262条の2簡単にいうと
共有をやめたければ、いつでも分割を請求できます。禁止の特約は5年以内なら有効で、裁判での分け方は3種類あります。
いつでも分割を請求できる
共有は、意見が食い違えば物を自由に使えなくなる不便な状態です。そこで民法は、各共有者がいつでも共有物の分割を請求できるとしました(256条1項本文)。ほかの共有者が反対していても請求できます。
分割を禁止する特約
もっとも、5年を超えない期間であれば、分割をしないという特約を結ぶこともできます(256条1項但書)。
この特約は、登記をしておかなければ第三者に主張することができません。持分を買った人が、分割できない土地だと知らずに取得してしまうことを防ぐためです。
過去問では「共有者間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効である」という形で出題され、誤りとされました。5年を超えなければ有効です。
分割の3つの方法
現物分割は、共有物を物理的に分ける方法です。土地を2つに分けて、それぞれの単独所有にします。
代金分割は、共有物を売って、その代金を持分に応じて分ける方法です。
価格賠償は、共有物を1人の単独所有にして、ほかの共有者には持分に相当する金銭を支払う方法です。
協議がまとまらないときは裁判
共有物分割は、まず協議で行います。まとまらない場合や、所在の分からない共有者がいて協議ができない場合には、裁判で行います(258条1項)。
裁判による分割では、現物分割または価格賠償が原則です(258条2項)。これらの方法で分割できないとき、または分割によって著しく価額を減少させるおそれがあるときに、裁判所が競売を命じます(258条3項)。代金分割は最後の手段という位置づけです。
所在が分からない共有者がいる場合
2021年改正により、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は共有者の請求により、その共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる裁判ができます(262条の2第1項前段)。
請求した共有者が2人以上あるときは、それぞれの持分の割合で按分して取得させます。
具体例
A・B・Cが土地を共有しているとき、Aはいつでも分割を請求できます。BとCが反対しても同じです。協議がまとまらなければ、Aは裁判所に分割を請求できます。裁判では土地を分ける現物分割か、Aの単独所有にしてB・Cへ金銭を支払う価格賠償が原則となり、それが難しい場合に競売による代金分割が命じられます。なお、A・B・Cが5年間は分割しないと約束していた場合、その特約は有効です。

共有物分割請求
ポイント整理
- ・各共有者はいつでも分割を請求できること(256条1項本文)
- ・分割禁止の特約は5年を超えない期間であること(256条1項但書)
- ・特約を第三者に主張するには登記が必要であること
- ・協議がまとまらないときは裁判による分割を請求できること(258条1項)
効果
- ・分割によって共有関係が解消されます
- ・裁判による分割では、現物分割または価格賠償が原則です(258条2項)
- ・分割できない場合などに競売が命じられます(258条3項)
- ・所在の分からない共有者の持分を取得させる裁判ができます(262条の2第1項)
条文(256条・258条・262条の2)
第256条第1項(共有物の分割請求)各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
重要メモ
- ・5年を超えない分割禁止の特約は有効である点に注意
- ・256条1項: 各共有者はいつでも分割を請求できる
- ・分割禁止の特約を第三者に主張するには登記が必要
- ・裁判による分割は現物分割または価格賠償が原則で、競売は例外(258条2項・3項)
- ・所在の分からない共有者の持分を取得させる裁判ができる(262条の2第1項)
所有者不明土地・建物の管理制度
264条の2〜264条の8簡単にいうと
所有者が分からない土地や建物について、裁判所が管理人を選ぶ制度です。2021年改正で新設されました。
なぜ新しい制度ができたのか
民法には、財産を管理する人がいない場合の仕組みとして、不在者財産管理制度(25条以下)や相続財産管理制度(951条以下)がありました。しかし、適切な管理がされないまま放置されている土地や建物が増えるという問題が残っていました。
そこで2021年の改正により、裁判所が所有者不明土地・建物管理人を選任して、その管理人による管理を命ずることができるようになりました(264条の2以下)。
管理命令が出される要件
第1に、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないことです。
第2に、利害関係人の請求があることです。利害関係人には、土地等の管理不全により不利益を被るおそれがある隣接地の所有者、土地等を時効取得したと主張する者、土地等を取得してより適切な管理をしようとする民間の買受希望者などが含まれます。
第3に、裁判所が必要であると認めることです。
管理人は何ができるか
選任された管理人は、対象の土地等の管理処分権を専属的に持ちます。保存行為や利用・改良行為を行うことができます。
ただし、土地等の売却については裁判所の許可が必要です(264条の3・264条の8第5項)。所有者本人がいないところで財産を手放す行為なので、裁判所のチェックを通す仕組みになっています。
管理の対象になる範囲
管理の対象は、所有者不明の土地・建物そのものだけではありません。その土地や建物にある所有者の動産、そして売却したときの代金なども対象に含まれます。
対象が建物である場合には、借地権などの敷地の利用権も対象になります(264条の8第2項)。建物だけ管理できても敷地を使えなければ意味がないからです。
具体例
隣の土地が所有者不明のまま放置され、建っている建物が倒壊しそうになっているとします。隣接地の所有者は、管理不全によって不利益を被るおそれがある利害関係人として、裁判所に管理命令を申し立てることができます。裁判所が必要と認めて管理人を選任すれば、その管理人が建物の修繕などを行えます。ただし管理人がその建物を売却するには、裁判所の許可が必要です。
ポイント整理
- ・所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないこと
- ・利害関係人の請求があること
- ・裁判所が必要であると認めること
効果
- ・選任された管理人が対象の土地等の管理処分権を専属的に持ちます
- ・管理人は保存行為や利用・改良行為を行うことができます
- ・土地等の売却には裁判所の許可が必要です(264条の3・264条の8第5項)
- ・土地・建物にある所有者の動産や売却代金も管理の対象になります
条文(264条の2〜264条の8)
第264条の2 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
重要メモ
- ・管理人が売却するには裁判所の許可が要る点に注意
- ・要件は、所有者不明であること、利害関係人の請求、裁判所が必要と認めること
- ・利害関係人には隣接地の所有者や民間の買受希望者も含まれる
- ・管理人は管理処分権を専属的に持ち、保存行為や利用・改良行為ができる
- ・管理の対象には、土地建物にある動産や売却代金も含まれる
まとめ
関連判例
共有物の保存
最判平15.7.11共有物に関する行為の3分類を必ず押さえること:「保存行為」→単独可、「管理行為」→持分の過半数、「変更行為」→全員の同意(民法252条) 不実登記の抹消請求=保存行為にあたり、共有者が単独で行うことができる 請求の根拠は「保存行為」であると同時に、**「持分権に基づく妨害排除請求」**でもある点を押さえること 注意:「共有物の変更だから全員の同意が必要では?」という引っかけに対し、抹消請求は「現状を回復・維持する行為」であり変更行為ではないと整理する 注意:自己の持分についてのみ抹消請求できるのではなく、共有不動産全体について単独で請求できる点が重要
時効と登記・時効完成前の第三者
最判昭41.11.22時効完成前に登記を備えた第三者→時効取得者は登記なしで対抗できる(本判決) 時効完成後に登記を備えた第三者→時効取得者は登記がないと対抗できない(別判例) 判断の分岐点は「第三者が登記を備えたのが時効完成の前か後か」の一点 時効完成前の第三者が民法177条の「第三者」に該当しない理由:A→B(譲渡)→(Cが時効取得)は単線的な権利移転関係であり、BとCが二重譲渡的な対抗関係に立つわけではないため 注意:「時効が完成した=必ず登記が必要」という思い込みは危険。相手方の登記時期によって結論が逆転する
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