第4節 所有権
第2章 物権法
所有権は、物を全面的に支配する最も強力な物権です。自分の土地や建物を自由に使い、収益を得て、処分できる権利ですが、相隣関係や共有など、他人との調整が必要な場面もあります。この節では、所有権の内容と限界、複数人で所有する共有の仕組みを学びます。
所有権の内容
第206条所有権とは、法令の制限内で、自由にその所有物の使用・収益・処分をする権利です。使用権能(自ら使う)、収益権能(賃料等を得る)、処分権能(売却・廃棄等)の3つの権能から成ります。
具体例
Aさんは自分の土地を所有している。この土地に自分で家を建てて住むこともでき(使用)、他人に貸して賃料を得ることもでき(収益)、売却や贈与も自由にできる(処分)。
要件
- ・所有権の取得原因が存在すること(売買、相続、時効取得等)
- ・対抗要件としての登記(不動産の場合)
効果・結論
- ・物を全面的に支配できる
- ・第三者に対抗するには登記が必要(不動産)
条文(第206条)
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
試験のポイント
- ・所有権は絶対ではなく【法令の制限内】であることに注意
- ・不動産所有権の対抗には登記が必要(177条)
- ・使用・収益・処分の3権能を正確に区別できるようにする
相隣関係
第209-238条相隣関係とは、隣接する不動産の所有者同士が、互いの土地利用を調整するための権利義務関係です。所有権の限界として、隣地所有者の通行権、境界付近の建築制限、水の自然流下などが規定されています。
具体例
Aさんの土地が道路に接していない場合、Aさんは隣地Bさんの土地を通行して公道に出る権利を持つ(囲繞地通行権)。Bさんは正当な理由なく通行を拒めない。
要件
- ・隣接する不動産所有者間の関係であること
- ・法定の相隣関係事由に該当すること
効果・結論
- ・隣地使用権、囲繞地通行権などが認められる
- ・償金の支払義務が生じる場合がある
条文(第209-238条)
土地の所有者は、他の土地に囲まれて公道に通じない場合には、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。(213条1項抜粋)
試験のポイント
- ・囲繞地通行権は償金支払が原則(無償ではない)
- ・境界から50cm未満の建築制限(234条)は頻出
- ・竹木の枝の切除(233条)は所有者が切除、根は自ら切除可能の区別
共有
第249-264条共有とは、一つの物を複数人が持分に応じて所有する形態です。各共有者は持分権を有し、物全体を持分に応じて使用できますが、変更・管理・保存行為には制約があります。
具体例
AさんとBさんが土地を2分の1ずつ共有している。この土地全体を二人とも使えるが、売却するには両者の同意が必要。賃貸借契約の解除は持分の過半数で決定できる。
要件
- ・複数人が同一物に所有権を有すること
- ・各人の持分が観念的に定まっていること
効果・結論
- ・保存行為は各共有者が単独で可能
- ・管理行為は持分の過半数で決定
- ・変更・処分行為は全員の同意が必要
条文(第249-264条)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。(249条1項)
試験のポイント
- ・変更・管理・保存行為の区別が最重要(251条・252条)
- ・管理行為は【持分の過半数】で決定(共有者の頭数ではない)
- ・共有物分割請求は原則いつでも可能だが、5年を超えない範囲で不分割特約可(256条)
所有権の取得
第162-239条所有権は、売買・贈与等の契約、相続、取得時効、即時取得、添付(付合・混和)などにより取得されます。原始取得と承継取得に分類され、原始取得では前主の負担が承継されません。
具体例
Aさんが20年間、他人の土地を所有の意思をもって平穏公然と占有し続けた場合、時効により所有権を取得できる。登記がなくても時効完成後は所有権を主張できる。
要件
- ・取得原因に応じた要件の充足
- ・対抗要件の具備(第三者対抗の場合)
効果・結論
- ・所有権を適法に取得する
- ・原始取得の場合、前主の負担(抵当権等)は消滅
条文(第162-239条)
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。(162条1項)
試験のポイント
- ・取得時効は占有開始時の善意無過失で10年、それ以外は20年(162条)
- ・即時取得(192条)は動産のみで、取引行為+占有取得+無過失が要件
- ・時効完成後の第三者との関係では登記の先後で優劣(判例)
まとめ
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