第3節 動産物権変動
第2章 物権法
動産物権変動とは、動産の所有権などの物権がいつ、誰に移転するのかを定めるルールです。不動産と異なり登記制度がない動産では、対抗要件として引渡しが重要な役割を果たします。また、善意の第三者を保護する即時取得制度も重要論点であり、試験頻出です。
動産物権変動の対抗要件(引渡し)
第178条動産の物権変動は、当事者間では意思表示のみで効力が生じますが、第三者に対抗するには引渡しが必要です。引渡しには、現実の引渡し、簡易の引渡し、占有改定、指図による占有移転の4種類があります。
具体例
AがBに自動車を売却した。AとBの間では売買契約で所有権が移転するが、Aが自動車を二重にCにも売却した場合、BとCのどちらが所有権を主張できるかは、先に引渡しを受けた方が優先される。
要件
- ・動産に関する物権変動の存在
- ・第三者との対抗関係が生じていること
効果・結論
- ・先に引渡しを受けた者が物権を取得し第三者に対抗できる
- ・引渡しを受けていない者は第三者に対抗できない
条文(第178条)
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
試験のポイント
- ・不動産は登記、動産は引渡しが対抗要件である点の対比
- ・占有改定(183条)は引渡しとして認められるが対抗力が最も弱い
- ・二重譲渡では引渡しの先後で優劣が決まる(登記と同様)
即時取得
第192条即時取得とは、無権利者から動産を取引により取得した者が、その動産を占有したときは、善意無過失であれば、即時にその動産の所有権を取得する制度です。取引の安全と動産の流通保護のための制度です。
具体例
AはBから盗まれた時計を、盗品とは知らずに質屋Cから購入した。Aが善意無過失で時計を受け取れば、Aは即座に所有権を取得し、真の所有者Bは時計の返還を請求できなくなる。
要件
- ・取引行為による譲受けであること
- ・動産の占有を取得したこと
- ・譲受人が善意無過失であること
- ・前主が無権利者または処分権限のない者であること
効果・結論
- ・善意無過失の譲受人は即時に所有権を原始取得する
- ・真の所有者は原則として動産の返還を請求できない(盗品・遺失物は2年間例外)
条文(第192条)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
試験のポイント
- ・占有改定では即時取得は成立しない(現実の引渡しが必要)
- ・盗品・遺失物は2年間、被害者・遺失者からの回復請求が可能(193条)
- ・善意無過失の立証責任は譲受人側にあるが、188条の占有の推定により軽減される
動産の二重譲渡
第178条動産の二重譲渡とは、同一の動産について譲渡人が複数の者に譲渡した場合をいいます。この場合、引渡しの先後によって優劣が決まり、先に引渡しを受けた者が所有権を確定的に取得します。
具体例
AがBに骨董品を売却し、その後Cにも同じ骨董品を売却した。BもCも代金を支払ったが、Cが先に骨董品の引渡しを受けた場合、Cが所有権を取得し、Bは所有権を取得できない。
要件
- ・同一動産についての複数の物権変動
- ・各譲受人が対抗要件としての引渡しを備えたか
効果・結論
- ・先に引渡しを受けた者が所有権を確定的に取得
- ・後れた者は債務不履行に基づく損害賠償請求が可能
条文(第178条)
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
試験のポイント
- ・占有改定による引渡しも有効だが、他の引渡し形態より対抗力が弱い
- ・背信的悪意者は第三者に該当せず保護されない(判例)
- ・引渡しの時期が同時の場合は、両者とも対抗できず共有となる(判例)
盗品・遺失物の特則
第193、194条即時取得の例外として、盗品・遺失物については、被害者・遺失者は2年間に限り、占有者に対して無償での返還を請求できます。ただし、占有者が競売・公の市場等で買った場合は、代価弁償を受けて返還義務を負います。
具体例
Aの遺失した指輪をBが拾い、Cに売却した。Cは善意無過失で即時取得したが、Aは2年以内であればCに無償返還請求ができる。ただしCが質屋から購入していた場合、Aは支払額を弁償すれば返還を受けられる。
要件
- ・動産が盗品または遺失物であること
- ・被害者・遺失者が占有を失ってから2年以内であること
- ・代価弁償の場合は、占有者が競売・公の市場・商人から善意取得したこと
効果・結論
- ・2年以内は被害者・遺失者が返還請求可能
- ・2年経過後は即時取得により占有者の所有権確定
- ・代価弁償を受ければ占有者は返還義務を負う
条文(第193、194条)
193条:前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。194条:占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
試験のポイント
- ・2年の起算点は盗難・遺失の時であり、即時取得の時ではない
- ・代価弁償は被害者・遺失者の選択であり、占有者から請求できない
- ・2年経過後は通常の即時取得として所有権確定し返還請求不可
まとめ
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