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テキスト/民法/第7節 時効

第7節 時効

第1章 総則

時効とは、一定期間が経過することで権利の取得や消滅という重大な法律効果が生じる制度です。長年続いた事実状態を尊重し、法的安定性を確保するために認められています。取得時効と消滅時効の要件・効果の違い、時効の援用、完成猶予・更新といった頻出論点を確実に押さえましょう。

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時効とは

簡単にいうと

簡単にいうと、ある状態が一定期間続くことにより権利の取得や消滅を認める制度が時効です。取得時効と消滅時効の2種類と、援用が必要な点がポイントです。

■ 時効とは

時効とは、ある状態が一定期間継続することにより、その状態の権利の取得や消滅を認める制度です。

■ 2種類の時効

①取得時効(162条):一定期間の経過により権利を取得します。例:他人の物を使い続けると自分の土地になります。 ②消滅時効(166条):一定期間の経過により権利・義務が消滅します。例:お金を貸して取り立てをしないでいると、返してとは言えなくなります。

■ 援用の必要性

時効の効果を受けるためには援用(145条)が必要です。

重要メモ

  • 「時効は2種類——取得か消滅か、と援用が必要かを押さえれば十分」がポイント
  • 取得時効(162条):他人の物を一定期間占有し続けることで権利を取得する制度
  • 消滅時効(166条):権利を一定期間行使しないまま放置すると権利が消滅する制度
  • 145条:時効は援用(利益を受ける者が主張)しなければ効果が生じない——自動的には完成しない点に注意
  • 試験での出題比重:重要度Cで基本概念の確認レベル。取得・消滅の区別が問われる
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取得時効とは

簡単にいうと

簡単にいうと、他人の物を一定期間使い続けた者はその物の所有権を取得できます(162条)。どんな要件が必要なのかを押さえましょう。

■ 取得時効とは

取得時効とは、他人の物を一定期間使い続けた者がその物の所有権を取得できる制度です(162条)。

■ 対象となる権利

所有権以外にも地上権・永小作権・地役権・不動産賃借権などの財産権についても取得時効が成立します(163条)。

取得時効とは

取得時効とは

重要メモ

  • 「他人の物でも長期間使い続ければ自分のものになる——社会的な有効活用を促す制度」がポイント
  • 162条:不動産・動産を問わず所有権の取得時効が成立する
  • 163条:所有権以外の財産権(地上権・永小作権・地役権・不動産賃借権)も取得時効の対象
  • 時効取得は原始取得——占有開始時点から制限のない完全な所有者であったことになる(144条)
  • 重要度Aの頻出テーマ。繰り返し出題されるため要件と効果をセットで覚えること
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取得時効の要件

簡単にいうと

簡単にいうと、取得時効が成立するためには、他人の物を一定期間継続して占有するなどの要件が必要です。善意・悪意で期間が異なる点がポイントです。

■ 取得時効の要件(162条)

①他人の物を占有すること ②意思をもって占有すること(自主占有) ③平穏かつ公然に占有すること ④善意無過失の場合は10年間継続して占有すること ⑤悪意または有過失の場合は20年間継続して占有すること

■ 効果(144条)

占有開始時点から制限のない完全な所有者であったことになります(原始取得)。所有権のみならず地上権・永小作権・地役権・不動産賃借権などの財産権についても取得時効が成立します(163条)。

■ 占有の承継(引き継ぎ)

Bが7年、CがBを承継して5年占有した場合、Cは12年の占有として計算できます。善意・悪意の判断は前の者(最初に占有を始めた者)を基準とします。

取得時効の要件

取得時効の要件

重要メモ

  • 「①他人の物を②自主占有で③平穏公然に④善意無過失なら10年・悪意なら20年継続」がポイント
  • 162条1項:善意無過失の自主占有→10年間の継続で時効取得
  • 162条2項:悪意または有過失の占有→20年間の継続で時効取得
  • 要件の4本柱:他人の物・自主占有(所有の意思)・平穏かつ公然・継続占有——いずれか欠けると不成立
  • 占有の承継(前後合算):Bの占有をCが承継した場合、B+Cの期間を合算できる。善意・悪意の判断は「最初に占有を始めた者」を基準とする
  • 承継例:B(善意無過失)7年+C(善意)5年→Cは12年の善意無過失占有として時効完成。B(悪意)7年+C(善意)5年→Bが悪意のため20年要件が適用され時効不完成(過去問[17-30-4])
  • 効果(144条):時効完成により、占有開始時点にさかのぼって所有権取得(原始取得)——既存の抵当権も消滅しうる
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消滅時効とは

簡単にいうと

簡単にいうと、権利を取得した後に何もしないまま一定期間が経過すると権利が消滅します——これが消滅時効です(166条)。債権の種類ごとの期間を押さえましょう。

■ 消滅時効とは

消滅時効とは、権利を取得した後に何もしないまま一定期間が経過すると権利が消滅する制度です(166条)。消滅時効の成立には時効の援用(145条)が必要です。

■ 主な消滅時効の期間(166条)

①一般の債権:「知った時から5年・権利を行使できる時から10年」 ②不法行為に基づく損害賠償請求権(724条):「知った時から3年(人の生命・身体の場合は5年)・不法行為の時から20年」 ③人の生命・身体を害する不法行為(724条の2):「知った時から5年・不法行為の時から20年」 ④物以外の財産権(166条2項):権利を行使することができる時から20年

消滅時効とは

消滅時効とは

重要メモ

  • 「債権の種類ごとに『知った時から』と『行使できる時から』の2つの起算点と期間を覚える」がポイント
  • 166条:一般の債権→「知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方
  • 167条:債務不履行による人の生命・身体侵害の損害賠償→「知った時から5年」「行使できる時から20年」
  • 724条:不法行為に基づく損害賠償→「損害および加害者を知った時から3年(生命・身体侵害は5年)」「不法行為の時から20年」
  • 724条の2:人の生命・身体を害する不法行為→「知った時から5年」「不法行為の時から20年」
  • 166条2項:債権または所有権以外の財産権(地上権など)→「権利を行使できる時から20年」
  • 消滅時効は援用(145条)が必要——自動的には消滅しない
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消滅時効の客観的起算点

簡単にいうと

簡単にいうと、消滅時効の客観的起算点は「権利を行使することができる時から」とされています(166条1項2号)。具体的にどの時点から計算するかを押さえましょう。

■ 客観的起算点の原則

消滅時効の客観的起算点は「権利を行使することができる時から」です(166条1項2号)。

■ 具体的な起算点

①確定期限付き債権:期限到来時から計算します(例:令和元年10月31日に支払う約束→その日が来たらカウントスタート)。 ②不確定期限付き債権:期限成立時から計算します(例:次に雨が降ったら支払う約束→雨が降った時から)。 ③停止条件付き債権:条件が成立した時から計算します(例:試験に合格したら支払う約束→合格したらカウントスタート)。 ④期限の定めのない債権:債権成立時から計算します(例:支払い期日を決めなかった→契約した日からカウントスタート)。 ⑤履行不能による損害賠償請求権:本来の債務の履行を請求できる時から計算します。 ⑥不法行為に基づく損害賠償請求権:不法行為の時から計算します(突き飛ばされてケガをした時からカウント)。

重要メモ

  • 「『権利を行使できる時』は債権の種類ごとに異なる——確定期限は期限到来時、条件付きは条件成就時が起点」がポイント
  • 166条1項2号:客観的起算点=「権利を行使することができる時」から
  • ①確定期限付き債権→期限到来時から(例:令和元年10月31日に支払う約束→その日からカウント)
  • ②不確定期限付き債権→期限到来(成立)時から(例:次に雨が降ったら支払う→雨が降った時から)
  • ③停止条件付き債権→条件が成就した時から(例:試験合格を条件→合格時からカウント)
  • ④期限の定めのない債権→債権成立時から(例:弁済期を定めなかった→契約成立日からカウント)
  • ⑤履行不能による損害賠償請求権→本来の債務の履行を請求できた時から(元の期限到来時が起点)
  • ⑥不法行為に基づく損害賠償請求権(724条)→不法行為の時から(客観的起算点)
  • 2023年試験で出題実績あり。期限(発生が確実)と条件(発生が不確実)の違いも合わせて整理すること
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時効の援用・放棄

簡単にいうと

簡単にいうと、時効の効果を得るには「援用」が必要です。また、時効の利益を放棄することもできますが、あらかじめの放棄は認められていません(146条)。

■ 時効の援用とは

時効の援用とは、時効の効果を受けるために直接利益を受ける者が必要な期間を経過した後に時効の利益を主張することです(145条)。

■ 援用できる者

保証人(145条)・物上保証人(145条)・抵当不動産の第三取得者(145条)・詐害行為の受益者は援用できます。

■ 援用できない者

一般債権者・後順位抵当権者は援用できません。

■ 時効の利益の放棄(146条)

時効完成前の放棄はできません。お金を借りる際の契約書に「将来時効が完成しても援用しない」と書いても無効です。時効完成後の放棄は認められます。

■ 時効完成後の債務の承認

①時効完成を知りながら承認した場合:時効の利益の放棄となり時効の援用ができなくなります。 ②時効完成を知らずに承認した場合:信義則上時効の援用ができなくなります(最大判昭41.4.20)。

時効の援用・放棄

時効の援用・放棄

重要メモ

  • 「援用できる者・できない者の区別と、時効完成前の放棄は無効というルールを暗記する」がポイント
  • 145条:時効の援用権者——保証人・物上保証人・抵当不動産の第三取得者・詐害行為の受益者は援用できる
  • 援用できない者:一般債権者・後順位抵当権者(直接利益を受けない者)
  • 146条:時効完成前の利益の放棄は無効——契約書に「将来時効が完成しても援用しない」と記載しても効力なし
  • 時効完成後の放棄は有効——債務者が任意に返済したい場合は時効利益を放棄できる
  • 時効完成後の承認①:時効完成を知りながら承認した→時効の利益の放棄として扱われ、援用不可
  • 時効完成後の承認②:時効完成を知らずに承認した→放棄にはならないが、信義則上援用できなくなる(最大判昭41.4.20)
  • 過去問[16-27-イ改題]:保証人Dは主債務の消滅時効を援用できる(直接利益を受ける地位にあるため)
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時効の完成猶予・更新

簡単にいうと

簡単にいうと、債権者が権利を行使した場合、時効の完成が猶予(一時停止)または更新(リセット)されます。民法改正で整理されたルールを押さえましょう。

■ 時効の完成猶予とは

猶予事由が発生しても時効の進行自体は止まりませんが、本来の時効期間の満了期を過ぎても一定期間は時効が完成しない制度です。

■ 時効の更新とは

一定の更新事由があった場合、それまで経過した期間がまったく無意味なものとなり、新たに時効が進行を開始する制度です。

■ 主な猶予・更新事由

①裁判上の請求(147条) 訴えの提起(権利を行使した段階)→時効の完成が猶予されます。判決確定(権利の存在が認められた段階)→時効が更新され、新たに時効が進行します。

②(裁判外の)催告(150条1項) 催告から6か月以内は時効の完成が猶予されます。6か月以内に訴えを提起しなければ猶予は消滅します。

③協議を行う旨の合意(151条1項) 書面で合意を得た場合、当事者が定めた期間内(最大1年)は時効完成が猶予されます。再度の合意も有効です(151条2項本文)。

④天災等(161条) 天災など権利行使できない事由が止んだ後一定期間は猶予されます。

時効の完成猶予・更新

時効の完成猶予・更新

重要メモ

  • 「猶予は『一時停止』、更新は『カウントリセット』——権利行使の段階で猶予、権利確定で更新と整理する」がポイント
  • 時効の完成猶予:猶予事由があっても時効の進行は止まらないが、時効期間満了後も一定期間は完成しない
  • 時効の更新:更新事由が生じると過去の経過期間がすべて無効となり、新たにカウントが開始する
  • 147条1項:訴えの提起→時効の完成猶予(裁判中は完成しない)
  • 147条2項:判決確定(権利の存在が認められた段階)→時効の更新(ゼロからリセット)
  • 150条1項:(裁判外の)催告→催告から6カ月以内は時効の完成が猶予される——6カ月以内に訴え提起しなければ猶予消滅
  • 催告による猶予は一度限り有効——繰り返し催告しても時効の完成猶予は延長されない
  • 149条:仮差押え・仮処分→時効の完成猶予事由(更新にはならない)
  • 151条1項:協議を行う旨の書面による合意→当事者が定めた期間(最大1年)の完成猶予
  • 151条2項本文:再度の書面合意も有効——催告と異なり複数回の合意ができる
  • 161条:天災等で権利行使ができない場合→障害が止んだ後一定期間は完成猶予
  • 民法改正で整理されたルール。「完成猶予=権利行使段階」「更新=権利確定段階」のイメージで覚えること

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
取得時効
所有の意思・平穏・公然の占有が必要。善意無過失10年、その他20年で所有権取得
所有の意思は客観的判断。賃借人・使用借主は他主占有で不可。援用が必要
消滅時効
一般債権は主観的起算点から5年・客観的起算点から10年のいずれか早い方で消滅
不法行為は3年・20年。生命身体侵害(不法行為・債務不履行)は5年・20年。援用が必要
時効の援用権者
債務者・保証人・物上保証人・第三取得者・詐害行為の受益者が援用可
一般債権者・後順位抵当権者は援用不可(反射的利益にすぎない)。完成後の債務承認で援用権喪失
時効の利益の放棄
時効完成後の放棄は可能。事前放棄は不可(146条)
時効完成を知らずに債務承認→その後の援用は信義則上不可(最判昭41.4.20)
完成猶予と更新
裁判上の請求は完成猶予→判決確定で更新。債務承認はその時点で更新
催告は6か月猶予のみ・更新効なし・反復無効。協議合意は書面必要・最大5年まで延長可

関連判例

時効の援用権者・詐害行為の受益者

最判平10.6.22

詐害行為の受益者は、取消債権者の被保全債権の消滅時効を援用することができる 援用できる根拠:被保全債権が消滅すれば詐害行為取消権も行使できなくなり、受益者が得た利益を守ることができるという直接的な利益があるから 本判決の判例法理は平成29年改正で民法145条に明文化された(「権利の消滅について正当な利益を有する者」として受益者が含まれる) 注意:「反射的な利益にすぎない」として援用が認められない例→後順位抵当権者(最判平11.10.21)は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない 一般債権者(ライバルの債権者)も直接の利益がないため、原則として他人の時効を援用できない

時効完成後の債務の承認

最判昭41.04.20

時効完成後に債務を承認した場合、債務者はその後に消滅時効を援用できない 「時効完成を知らなかった」という事情は関係ない。知らなくても援用は許されない 法的根拠は民法1条2項の信義則(信義誠実の原則) 注意:時効完成前の承認は時効の更新(民法152条・時効のリセット)の問題であり、本判決とは場面が異なる。混同しないこと 試験では「時効完成の事実を知らなかった場合でも援用できない」という部分がひっかけとして出やすい

消滅時効の援用権の代位行使

最判昭43.9.26

物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用できる(直接利益を受ける者にあたるため) 物上保証人の援用権は平成29年改正で民法145条に明文化 債権者代位による時効援用:①債務者が無資力、②自己の債権保全に必要な限度、という要件のもとで認められる 時効援用権は一身専属的な権利ではないため債権者代位権の対象となりうる 対比:後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない(最判平11.10.21)→順位上昇は反射的利益にすぎないため 本判決は1つの判決で時効援用の2つの重要論点をカバーしている点を押さえること

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