第6節 無効・取消し
第1章 総則
法律行為は原則として有効ですが、一定の事由がある場合は無効または取消しとなります。この節では、意思表示に瑕疵がある場合や法律行為が法令に違反する場合に、その行為がどのような扱いを受けるかを学びます。試験では具体的事例での効果の違いや第三者保護の論点が頻出です。
無効と取消しの違い
第119-126条無効とは法律行為が初めから当然に法的効力を生じないことをいいます。取消しとは取り消すまでは一応有効であるが、取消権者の意思表示により初めから無効になることをいいます。
具体例
Aさんが8歳の子供と土地売買契約を結んだ場合は取消し可能です。一方、Aさんが人を殺す報酬として100万円を約束した場合は公序良俗違反で無効となります。
要件
- ・無効:要件に該当すれば当然に効力なし
- ・取消し:取消権者による取消しの意思表示が必要
効果・結論
- ・無効:誰でも主張可、追認不可、時効にかからない
- ・取消し:取消権者のみ主張可、追認可、5年・20年の消滅時効あり(126条)
条文(第119-126条)
第126条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
試験のポイント
- ・無効は誰でも主張できるが取消しは取消権者のみという点が頻出
- ・無効な行為は追認できないが、取消し得る行為は追認により確定的に有効となる
- ・取消しの5年・20年の消滅時効の起算点を正確に
心裡留保
第93条心裡留保とは、表意者が真意でないことを知りながら行う意思表示です。原則として有効ですが、相手方が表意者の真意でないことを知り、または知ることができた場合は無効となります。
具体例
Aさんが冗談で「この時計を100万円で売るよ」と言ったところ、Bさんが本気と勘違いして承諾しました。Bさんが善意なら契約は有効ですが、冗談と知っていたら無効です。
要件
- ・表意者が真意でないことを知りながら意思表示をすること
- ・無効となるには相手方が悪意または有過失であること
効果・結論
- ・原則:有効
- ・相手方悪意・有過失の場合:無効
- ・善意の第三者には対抗不可(93条2項)
条文(第93条)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。 2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
試験のポイント
- ・原則有効で例外的に無効という構造を理解する
- ・相手方の悪意・有過失の立証責任は表意者側にある
- ・善意の第三者保護(93条2項)は過失の有無を問わない点に注意
虚偽表示
第94条虚偽表示とは、相手方と通じてする虚偽の意思表示です。通謀虚偽表示ともいいます。当事者間では無効ですが、善意の第三者には対抗できません(94条2項)。
具体例
Aさんが債権者の差押えを逃れるため、Bさんと通謀して土地をBに仮装譲渡しました。AB間では無効ですが、事情を知らないCさんがBから購入した場合、Aは無効を主張できません。
要件
- ・相手方と通じていること(通謀)
- ・虚偽の意思表示であること
効果・結論
- ・当事者間では無効
- ・善意の第三者には無効を対抗できない(過失の有無を問わない)
- ・第三者は登記なくして対抗可能
条文(第94条)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。 2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
試験のポイント
- ・第三者保護は善意で足り無過失不要という点が超重要
- ・第三者は登記がなくても保護される(判例)
- ・94条2項類推適用(他人名義での不動産取得など)の論点も頻出
錯誤
第95条錯誤とは、意思表示の内容が表意者の真意と異なり、表意者がその不一致に気づかないことです。動機の錯誤は原則として取消し不可ですが、動機が表示されていれば取消し可能です。要素の錯誤で重過失がない場合に取消しできます。
具体例
Aさんは駅ができると誤信して土地を買いましたが計画は中止されていました。この動機をBに伝えていれば錯誤取消しできますが、黙っていた場合は取消せません。
要件
- ・意思表示に錯誤があること
- ・その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること
- ・表意者に重過失がないこと(ただし相手方の帰責事由があれば重過失あっても可)
効果・結論
- ・要件を満たせば取消し可能
- ・表意者に重過失がある場合は原則取消し不可
- ・第三者保護規定あり(95条4項)
条文(第95条)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。 3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
試験のポイント
- ・動機の錯誤は表示されていることが取消しの要件という点が最重要
- ・重過失ある場合の例外事由(相手方の悪意・重過失、共通錯誤)を正確に
- ・第三者保護は善意無過失要件である点(虚偽表示と異なる)
詐欺・強迫
第96条詐欺とは、他人を欺いて錯誤に陥らせることをいいます。強迫とは、他人を畏怖させて意思表示をさせることです。いずれも取り消すことができますが、第三者保護の範囲が異なります。
具体例
AさんがBさんに騙されて偽物の絵を購入した場合は詐欺で取消し可能です。善意無過失のCさんがBから転得していれば取消しを対抗できません。強迫の場合は善意のCにも対抗できます。
要件
- ・詐欺:欺罔行為、錯誤、因果関係、故意
- ・強迫:畏怖させる行為、意思表示、因果関係
- ・第三者による詐欺は相手方の悪意が必要(96条2項)
効果・結論
- ・詐欺:取消し可、善意無過失の第三者には対抗不可
- ・強迫:取消し可、第三者にも対抗可(第三者保護規定なし)
- ・第三者詐欺は相手方が悪意の場合のみ取消し可
条文(第96条)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。 2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。 3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
試験のポイント
- ・詐欺は善意無過失の第三者保護あり、強迫は保護なしという違いが最頻出
- ・第三者詐欺(96条2項)は相手方の悪意・有過失が要件
- ・強迫は第三者保護規定がないため、善意の第三者にも取消しを対抗できる
まとめ
📱 アプリのご紹介
スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。
行政書士試験学習には必須の判例のわかりやすい解説から科目別テキスト、過去問演習、択一演習をスマホでまとめて持ち歩ける学習アプリです。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。