第5節 代理
第1章 総則
代理とは、本人に代わって代理人が意思表示を行い、その効果が本人に帰属する制度です。日常生活でも、親が子のために契約したり、会社員が会社の名で取引したりする場面で不可欠です。試験では無権代理や表見代理が最頻出論点となります。また、無権代理と相続の組み合わせ問題(誰が誰を相続したかで結論が変わる)や、表見代理の3類型(109条・110条・112条)の区別も頻繁に問われます。
代理の意義と要件
第99条代理とは、代理人が本人の名において意思表示をし、その効果が直接本人に帰属する制度です。顕名(本人のためにすることを示すこと)が原則として必要です。
具体例
Aは海外出張中のため、友人Bに「私の代理人として」と明示して、C不動産屋との賃貸借契約を依頼した。Bが顕名してCと契約すれば、契約の効果はA本人に帰属する。
要件
- ・代理人が本人のためにすることを示す(顕名)
- ・代理人に代理権があること
- ・代理人が代理行為(意思表示の発信または受領)をすること
効果・結論
- ・代理行為の効果は直接本人に帰属する
- ・相手方は本人に対して権利を主張できる
条文(第99条)
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
試験のポイント
- ・顕名がない場合は原則として代理人自身が契約当事者となる(民法100条本文)
- ・相手方が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは本人に帰属する(100条ただし書)
- ・代理と委任の区別:委任は内部関係(代理人・本人間)、代理は外部関係(代理人・相手方間)
任意代理と法定代理
第104、859条代理権の発生原因によって任意代理と法定代理に分類されます。任意代理は本人の委任(契約)により生じ、法定代理は法律の規定により当然に生じます。
具体例
AがBに土地売却の代理権を与えた(任意代理)。一方、未成年のCの親権者Dは法律上当然にCの法定代理人となる。BはAの許諾なく復代理人を選任できないが、DはCのために必要があれば原則として自由に復代理人を選任できる。
要件
- ・任意代理:本人との委任契約その他の法律行為による代理権授与
- ・法定代理:法律の規定(親権・後見など)による代理権付与
効果・結論
- ・任意代理人は本人の指示の範囲内で行動する
- ・法定代理人は法定の権限範囲内で行動する
条文(第104、859条)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。(104条)
試験のポイント
- ・任意代理人の復代理人選任:本人の許諾またはやむを得ない事由が必要(104条)
- ・法定代理人は原則として復代理人を自由に選任できる(105条)
- ・法定代理の例:未成年者の親権者(818条)、成年後見人(859条)
自己契約・双方代理の禁止
第107条自己契約とは代理人が相手方となる契約、双方代理とは代理人が契約当事者双方を代理することです。いずれも本人の利益を害するおそれがあるため、原則として無権代理となります(107条)。
具体例
AはBに土地売却をB代理人として依頼したが、Bが自分を買主として契約した(自己契約)。Aの利益が害されるおそれがあるため原則として無権代理となる。ただしAが事前に「Bに売ってよい」と許諾していれば有効。
要件
- ・代理人が自ら相手方となる(自己契約)
- ・代理人が当事者双方を代理する(双方代理)
- ・本人の許諾または債務の履行の場合は例外的に有効
効果・結論
- ・原則として無権代理とみなされる
- ・本人の許諾があれば有効
- ・債務の履行(弁済など)は例外的に有効
条文(第107条)
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
試験のポイント
- ・自己契約・双方代理禁止の趣旨:本人の利益保護(利益相反防止)
- ・例外①:債務の履行(すでに決まった内容を実行するだけなので利益相反が生じない)
- ・例外②:本人があらかじめ許諾した行為(事前の許諾が必要、事後の追認は「無権代理の追認」として処理)
代理権の濫用
第107条代理権の濫用とは、代理人が代理権の範囲内で行動しながら、自己または第三者の利益を図る目的で代理行為をすることです。民法107条が類推適用(2020年改正で明文化)され、相手方が悪意または有過失の場合は無権代理とみなされます(107条)。
具体例
AはBに100万円の借入代理権を与えたが、Bは自分の借金返済のためにAの名義で200万円借り入れた(権限内の100万円部分)。CがBの背信目的を知っていた(悪意)なら、Bの行為は無権代理とみなされAに効果は帰属しない。
要件
- ・代理人が代理権の範囲内で行為をした
- ・代理人に自己または第三者の利益を図る目的がある(背信的意図)
- ・相手方が目的を知り、または知ることができた(悪意・有過失)
効果・結論
- ・相手方が悪意・有過失の場合:無権代理とみなされる
- ・相手方が善意・無過失の場合:有効な代理行為として本人に帰属
条文(第107条)
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
試験のポイント
- ・旧法では判例(93条ただし書類推)で処理されていたが、2020年改正で107条に明文化
- ・相手方の善意・無過失が保護の要件であることに注意
- ・代理権の範囲内の行為であることが前提(範囲外なら110条の問題)
顕名
第99、100条顕名とは、代理人が「本人のためにすること」を相手方に示すことをいいます(99条1項)。顕名は代理の外形的要件であり、顕名がない場合は原則として代理人自身が契約当事者となります(100条)。
具体例
Bは「A社の担当者として」とだけ告げてCと契約した。これは「A社のために」することが示されており顕名あり。一方、Bが自己名義で契約したが、CがBはA社代理人と知っていた場合も本人帰属となる(100条ただし書)。
要件
- ・本人のためにすることを相手方に示すこと
- ・明示・黙示いずれでも可
- ・「本人の名」を告げることは必須ではないが実務上は一般的
効果・結論
- ・顕名あり:効果は本人に帰属
- ・顕名なし+相手方が善意無過失:代理人自身に帰属
- ・顕名なし+相手方が悪意または有過失:本人に帰属
条文(第99、100条)
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。(99条1項) 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、この限りでない。(100条)
試験のポイント
- ・顕名は「本人の氏名を告げること」ではなく「本人のためにすることを示すこと」
- ・商法では商行為の代理に顕名不要の特則あり(商法504条)
- ・100条ただし書:相手方が「知り、または知ることができた」場合→本人帰属
復代理
第104、105、106条復代理とは、代理人がさらに代理人(復代理人)を選任し、本人のために代理行為をさせることです。復代理人は本人の代理人であり、代理人の代理人ではありません。
具体例
AはBに不動産売却の代理権を与えた。BはAの許諾を得てCを復代理人に選任。Cがした売買契約の効果はAに直接帰属する。BではなくAが契約当事者となる点が重要。
要件
- ・任意代理人:本人の許諾またはやむを得ない事由が必要(104条)
- ・法定代理人:原則として自由に選任できる(105条)
- ・復代理人の権限は代理人の権限を超えることができない
効果・結論
- ・復代理人の行為の効果は直接本人に帰属する(代理人を経由しない)
- ・復代理人は本人および第三者に対して代理人と同一の権利義務を有する(106条2項)
条文(第104、105、106条)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。(104条) 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。(106条1項)
試験のポイント
- ・復代理人は「本人の代理人」であって「代理人の代理人」ではない
- ・任意代理人が無断で復代理人を選任した場合→無権代理
- ・法定代理人は責任が重いため復代理人選任は自由だが、選任・監督上の過失があれば責任を負う(旧105条。現行法では不法行為等で処理)
代理行為の瑕疵
第101条代理行為の瑕疵とは、代理人の意思表示に錯誤・詐欺・強迫などの瑕疵がある場合の処理に関する問題です。原則として代理人を基準に判断しますが、本人の関与がある場合は本人を基準とすることもあります(101条)。
具体例
AはBを代理人に選び土地を購入。Bが売主Cに騙されて購入した場合(詐欺)、代理人Bを基準に詐欺取消が可能。しかしAが「Cの詐欺的事情を知っていたうえでBに指図した」なら、AはBの取消権を主張できない。
要件
- ・代理人が意思表示の主体であること
- ・瑕疵(錯誤・詐欺・強迫など)の有無は原則として代理人を基準に判断
- ・特定の法律行為を指図した場合は本人の悪意・過失も考慮(101条2項・3項)
効果・結論
- ・代理人が詐欺を受けた→代理人基準で取消可
- ・本人が知っていた事情→代理人が知らなくても本人の悪意が考慮される(101条3項)
- ・代理人の錯誤→代理人基準で錯誤取消を検討
条文(第101条)
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決する。(101条1項)
試験のポイント
- ・「善意・悪意は代理人を基準」が原則(101条1項・2項)
- ・ただし本人が特定の法律行為を指図し、かつその事情を知っていた場合は本人を基準(101条3項)
- ・「代理人が悪意でも本人が善意なら保護される」という誤解に注意
無権代理とは
第113条無権代理とは、代理権がないのに代理行為をすることです。無権代理の行為は原則として本人に効果が帰属せず、本人が追認すれば遡って有効となります(113条)。
具体例
Aの息子BがA名義でC不動産に土地を売却したが、BはAから代理権を与えられていなかった。AがCに追認の意思を示せば契約は有効となる。Cは「いつまでに決めてほしい」と催告権を行使できる。
要件
- ・代理権がない者が代理行為をした
- ・本人が追認するか否か
- ・相手方に正当な理由がある場合は表見代理の成否を検討
効果・結論
- ・原則:本人に効果不帰属
- ・本人が追認:契約時に遡って有効(113条1項)
- ・本人が追認拒絶:本人に効果不帰属が確定
条文(第113条)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。
試験のポイント
- ・追認・拒絶は相手方に対してしなければその相手方に主張できない(113条2項)
- ・相手方の催告権(114条):相当期間内に追認するか確答を求められる
- ・催告に対して確答がなければ追認拒絶とみなされる(114条)
無権代理における本人の保護
第113、114条無権代理において本人を保護する規定として、①追認権(113条)、②追認拒絶権、③催告への応答義務がない点が挙げられます。ただし、本人が追認も拒絶もしない場合は相手方に不安定な地位が続くため、相手方保護との均衡が問題となります。
具体例
Bが無断でA代理人として契約。CがAに「2週間以内に追認するか確答ください」と催告した場合、Aが沈黙(確答なし)なら追認拒絶とみなされる。Aにとって不利な規定なので注意が必要。
要件
- ・本人が無権代理行為の存在を知っていること(追認の前提)
- ・本人は積極的に相手方に申し出なくても保護される(消極的保護)
効果・結論
- ・本人は追認拒絶をすれば一切責任を負わない
- ・ただし本人が無権代理を黙認していた場合は表見代理(110条等)が成立する余地あり
条文(第113、114条)
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。(114条)
試験のポイント
- ・本人に追認義務はない(積極的に通知しなくてよい)
- ・催告があった場合に確答しないと追認拒絶とみなされる点に注意(本人不利)
- ・本人の追認は相手方に対してする必要あり(無権代理人への追認は相手方に対抗不可)
無権代理における相手方の保護
第114、115、117条無権代理において相手方を保護する規定として、①催告権(114条)、②取消権(115条)、③無権代理人への責任追及(117条)があります。表見代理が成立する場合は有権代理と同じ扱いで本人に請求できます。
具体例
BがA代理人として無断でCと契約。Cが善意無過失ならBに「契約を履行せよ(または損害を賠償せよ)」と請求できる。Cが悪意(Bに代理権がないと知っていた)なら保護されない。
要件
- ・相手方が善意・無過失の場合:無権代理人に履行または損害賠償請求可能(117条1項)
- ・相手方が悪意または有過失:無権代理人への責任追及不可(117条2項)
- ・無権代理人自身が制限行為能力者:責任なし(117条2項)
効果・結論
- ・催告権(114条):相当期間を定めて追認の確答を求められる
- ・取消権(115条):本人が追認するまで相手方は取消可能(善意の場合のみ)
- ・無権代理人への責任追及(117条):履行または損害賠償の選択請求
条文(第114、115、117条)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。(117条1項)
試験のポイント
- ・117条の責任は相手方善意・無過失が要件(悪意・有過失なら請求不可)
- ・115条の取消権は本人が追認する前まで行使可能(追認後は取消不可)
- ・相手方は催告権・取消権・117条責任追及のいずれかを選択できる
無権代理人が本人を単独相続した場合
第113、117条無権代理人が本人を単独相続した場合、判例は「無権代理人の地位と本人の地位が同一人に帰属するため、本人として追認拒絶することは信義則上許されない」として、無権代理行為は当然に有効になると解しています。
具体例
BがA代理人として無断でCと土地売買契約。その後AがBに相続された(Bが唯一の相続人)。この場合Bは「本人として追認拒絶する」と主張できず、契約は当然有効となる。
要件
- ・無権代理行為がなされた
- ・その後、無権代理人が本人を単独で相続した
- ・相手方が善意であること(表見代理の場合と異なり要件ではないが実務上重要)
効果・結論
- ・無権代理行為は当然に有効となる(追認拒絶は信義則上許されない)
- ・相手方は本人(=無権代理人)に対して契約の履行を請求できる
条文(第113、117条)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。(113条1項)
試験のポイント
- ・「追認拒絶できない」=「当然に有効」となる点が重要(追認が必要なわけではない)
- ・信義則(1条2項)を根拠とする判例理論
- ・単独相続か共同相続かで結論が異なる→次テーマと対比すること
無権代理人が本人を単独相続した場合(本人が追認拒絶後に死亡)
第113条本人が生前に追認拒絶をした後に死亡し、無権代理人がその本人を相続した場合、判例は追認拒絶の効力はすでに確定しているとして、無権代理行為は有効とならないと解しています。
具体例
BがA代理人として無断でCと契約。AはCに「追認しない」と拒絶した後に死亡し、Bが相続。この場合、すでに拒絶の効力が確定しているためBが相続しても契約は有効にならない。
要件
- ・本人が生前に追認拒絶をした(効果が確定している)
- ・その後本人が死亡し、無権代理人が相続
効果・結論
- ・追認拒絶の効力はすでに確定しているため、無権代理行為は有効とならない
- ・無権代理人は117条の責任を負う可能性がある
条文(第113条)
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。(113条2項)
試験のポイント
- ・「本人が追認拒絶後に死亡」→拒絶の効力はすでに確定→無権代理行為は有効にならない
- ・「本人が追認拒絶前に死亡」→当然有効(前テーマ)との対比が頻出
- ・追認拒絶の時期が結論を左右するため、事実関係の時系列確認が重要
無権代理人が本人を共同相続した場合
第113条無権代理人が他の相続人とともに本人を共同相続した場合、判例は「追認は共同相続人全員が共同してしなければならない」として、無権代理人単独では追認できず、他の相続人全員が追認しない限り無権代理行為は有効とならないと解しています。
具体例
BがA代理人として無断でCと契約。Aの死亡後、BとDが共同相続。BはA持分を相続しているが単独で追認はできず、DもBも共同して追認しなければ契約は有効にならない。
要件
- ・無権代理人が本人を他の相続人と共同相続した
- ・追認は相続人全員が共同して行う必要がある
効果・結論
- ・無権代理人の相続持分については当然有効になる余地があるが、判例は全体として有効とならないと解する
- ・他の相続人全員が追認すれば全体として有効
条文(第113条)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。(113条1項)
試験のポイント
- ・追認は全員共同が原則→単独では追認不可
- ・無権代理人の持分だけ有効にすることもできない(不可分)
- ・単独相続との対比:単独なら当然有効、共同相続なら全員の追認が必要
本人が無権代理人を単独相続した場合
第113、117条本人が無権代理人を単独相続した場合、判例は「本人は追認拒絶できる」と解しています。本人はもともと追認拒絶の権利を持っており、無権代理人の地位を相続したからといって追認義務を負うわけではないからです。ただし、117条の無権代理人の責任は相続により承継されます。
具体例
BがA代理人として無断でCと契約。その後BがAに相続された(Aが唯一の相続人)。AはCに対して追認拒絶できる。ただしAはBの117条責任(Cへの損害賠償義務)を相続しているため、Cは損害賠償請求はできる。
要件
- ・無権代理行為がなされた
- ・その後、本人が無権代理人を単独で相続した
効果・結論
- ・本人は追認拒絶できる(追認義務なし)
- ・ただし117条の無権代理人の責任(損害賠償等)は相続により承継される
- ・本人が追認拒絶しても、相手方は承継した117条責任を追及できる
条文(第113、117条)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。(117条1項)
試験のポイント
- ・「本人→無権代理人を相続」は追認拒絶可能(無権代理人が本人を相続する場合とは逆)
- ・117条責任の相続は別途認められる点が試験で問われる
- ・「誰が誰を相続したか」を整理する習慣をつけること
表見代理とは
第109、110、112条表見代理とは、代理権がない者の行為でも、相手方が代理権の存在を信じることに正当な理由(善意・無過失)がある場合に、本人に効果を帰属させる制度です。取引の安全を保護するために設けられており、本人に一定のリスク帰属を認める制度です。
具体例
Aは過去にBに代理権を与えていたが、すでに消滅していた。BがCとA名義で契約。CがBにまだ代理権があると信じ無過失ならば、表見代理(112条)が成立してAに効果帰属する。
要件
- ・相手方が代理権の存在を信じた
- ・そう信じることに正当な理由(善意・無過失)がある
- ・109条・110条・112条のいずれかの類型に該当
効果・結論
- ・本人に代理行為の効果が帰属する
- ・無権代理だが有権代理と同じ扱い
- ・本人は相手方に対して契約責任を負う
条文(第109、110、112条)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。(109条1項)
試験のポイント
- ・表見代理は無権代理の一種だが、有権代理と同じ効果が生じる
- ・相手方は表見代理と117条責任追及(無権代理人への請求)を選択できる
- ・表見代理が成立すれば本人に帰属→相手方は本人に請求できる
表見代理の種類(一覧)
第109、110、112条表見代理は3つの類型があります。①109条(代理権授与の表示)、②110条(権限外の行為)、③112条(代理権消滅後の行為)です。さらに、複数の類型を組み合わせた重畳適用も判例上認められています。
具体例
AがBに「Bは私の代理人です」と表示(109条)したうえで、BがAの授権範囲を超えた行為をした場合、109条1項+110条の重畳適用で表見代理が成立しうる。
要件
- ・109条:本人が代理権を与えた旨を表示した
- ・110条:基本代理権があり、その権限外の行為をした
- ・112条:かつて代理権があったが消滅後に代理行為をした
効果・結論
- ・各類型の要件を満たし、相手方が善意・無過失であれば本人に効果帰属
条文(第109、110、112条)
代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人はその行為についての責任を負う。(110条)
試験のポイント
- ・重畳適用:例えば109条1項+110条(代理権授与を表示した者が権限外の行為をした場合)→判例上認められる
- ・110条の「基本代理権」は公法上の代理権でも足りる場合がある(判例)
- ・3類型の区別は頻出:「授与表示」「権限外」「消滅後」のキーワードで判断
権限外の行為の表見代理(110条)
第110条110条の表見代理は、代理人が基本代理権の範囲を超えた行為をした場合に、相手方が権限があると信じる正当な理由(善意・無過失)があれば本人に効果を帰属させる制度です。「基本代理権」の有無が成否の分岐点となります。
具体例
AはBに「預金の引き出し」の代理権を与えた(基本代理権)。BがAの不動産をA代理人として売却。CがBに売却権限もあると信じ無過失ならば、110条の表見代理成立。
要件
- ・代理人に基本代理権(何らかの代理権)が存在すること
- ・代理人がその権限の範囲外の行為をしたこと
- ・相手方が権限内と信じる正当な理由(善意・無過失)があること
効果・結論
- ・要件を満たせば本人に効果帰属
- ・基本代理権がない場合は110条の表見代理は成立しない
条文(第110条)
代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人はその行為についての責任を負う。
試験のポイント
- ・基本代理権は公法上の代理権(例:印鑑証明書取得の代理権)でも足りる(判例)
- ・「正当な理由」の判断は諸事情を総合考慮→相手方の調査義務の程度も問われる
- ・日常家事代理権(761条)を基本代理権として110条が適用される問題が頻出(夫婦の日常家事代理権と表見代理)
基本代理権
第110条基本代理権とは、110条の表見代理において前提となる代理権のことです。代理人がまったく代理権を有しない場合は110条は適用されません。判例上、公法上の代理権(印鑑証明書取得・登記申請の代理権など)も基本代理権となりうるとされています。
具体例
夫Aが妻Bに「住民票取得」の代理権(公法上)を与えた。BがAの名義で高額の金銭消費貸借契約を締結。CがBに権限があると信じ無過失ならば、公法上の代理権を基本代理権として110条が成立しうる。
要件
- ・私法上・公法上を問わず何らかの代理権が存在すること
- ・その代理権を超えた行為がなされたこと
効果・結論
- ・公法上の代理権(例:不動産登記申請の代理権)も基本代理権に含まれる
- ・日常家事代理権(761条)も基本代理権となりうる
条文(第110条)
代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人はその行為についての責任を負う。
試験のポイント
- ・公法上の代理権も基本代理権に該当(最判昭39.4.2等)→民事・公法を問わない
- ・日常家事代理権を基本代理権とする110条の問題は頻出(夫婦の財産行為など)
- ・使者・履行補助者は代理権を持たないため基本代理権なし→110条不適用
無権代理との関係
第109、110、112、117条表見代理と無権代理は相互に排他的ではなく、表見代理は無権代理の特則です。表見代理が成立する場合でも、相手方は117条の無権代理人への責任追及を選択することができます。また、表見代理が成立しない場合は通常の無権代理として処理されます。
具体例
BがA代理人として無断でCと契約。CはBに代理権があると信じ無過失(110条の表見代理成立)。この場合CはAに「契約を履行せよ」と請求することも、Bに「損害賠償せよ」(117条)と請求することもできる。
要件
- ・表見代理の要件を満たすか否かを先に検討
- ・要件を満たせば本人への請求が可能
- ・相手方は表見代理(本人への請求)と117条責任(無権代理人への請求)のいずれかを選択
効果・結論
- ・表見代理成立→相手方は本人に請求可能
- ・表見代理不成立→無権代理として相手方は117条等で無権代理人に請求
- ・相手方は両者を選択できる(どちらを主張するかは相手方の任意)
条文(第109、110、112、117条)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。(117条1項)
試験のポイント
- ・表見代理は「無権代理の一種」であり、有権代理ではない点を正確に理解する
- ・相手方は表見代理か117条かを選択できる(有利な方を選べる)
- ・本人は表見代理成立後も追認拒絶はできない(効果帰属が確定している)
まとめ
関連判例
本人が無権代理人を相続
最判昭37.04.20Aが無権代理行為をされた後、Aが無権代理人Bを相続した事案。最高裁は、本人Aは追認拒絶できるとし、無権代理行為は当然には有効にならないと判示した。一方、BのAに対する117条の損害賠償責任はAが相続しているため、相手方はAにその責任を追及できる。試験では「誰が誰を相続したか」の方向を問う問題で頻出。
無権代理人が本人を単独相続
Bが無断でA名義の法律行為をした後、BがAを唯一の相続人として相続した事案。最高裁は、BはAの地位を承継したため、本人として追認を拒絶することは信義則上許されないとし、無権代理行為は当然に有効になると判示した。単独相続か共同相続かで結論が変わる点が試験のポイント
無権代理人を相続した者が後に本人を相続
無権代理人Bをいったん相続したCが、その後本人Aも相続した事案。最高裁は、Cは無権代理人の地位とともに本人の地位も持つことになるため、追認拒絶は信義則上許されず無権代理行為は当然有効になると判示した。相続が複数回行われる複合問題として出題される。
夫婦の日常家事代理権と表見代理
最判昭44.12.18夫が妻の日常家事代理権(761条)を基本代理権として、権限外の法律行為(不動産売買等)をした事案。最高裁は、日常家事の範囲を超える行為への110条の表見代理の成立について、相手方が日常家事の範囲内と信じるにつき正当な理由がある場合に限り類推適用を認めた。「基本代理権+日常家事」の組み合わせは頻出論点。
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