第5節 代理
第1章 総則
代理とは、本人に代わって代理人が法律行為を行い、その効果が本人に帰属する制度です。しかし、代理権のない者が代理行為をした場合(無権代理)、その行為は原則として本人に効果が帰属しません。この節では、無権代理における本人・相手方の保護の仕組みと、無権代理でありながら有効な代理として扱われる表見代理について学びます。無権代理と相続の組合せは試験頻出の難問です。
代理とは
第99条・102条条簡単にいうと
自分の代わりに誰かに契約を結んでもらい、その効果がそのまま自分に帰属する——それが民法の「代理」制度です。成立要件と効果帰属の仕組みをしっかり押さえましょう。
代理とは、代理人Bが本人Aのために相手方Cと法律行為(契約など)を行い、その効果が直接本人Aに帰属する制度をいいます(99条1項)。本人が自分で契約交渉ができない場合(未成年者・多忙なビジネスパーソンなど)に活用されます。
代理が有効に成立するためには、①本人からの代理権授与行為があること(代理権授与)、②代理人が「本人のためにすること」を相手方に示すこと(顕名)、③代理人が代理権の範囲内で代理行為を行うこと——の3要件が必要です(99条1項・3項参照)。いずれか1つが欠けると代理として有効に成立しません。
代理人は相手方と直接交渉して契約を締結するため、意思能力は必要ですが、行為能力は不要とされています(102条本文)。未成年者でも代理人になれるという点は試験で頻出です。なお、制限行為能力者を代理人に選んだ場合でも、その行為を行為能力の欠如を理由に取り消すことはできません(102条但書)。
具体例
AがBに「私の土地を売ってきてほしい」と依頼し(代理権授与)、BがCに「Aの代理人として参りました。この土地を売ります」と告げて(顕名)売買契約を結んだ(代理行為)場合、売買の効果(代金請求権・土地引渡義務)は直接Aに帰属する。

代理とは
ポイント整理
- ・①本人からの代理権授与行為があること
- ・②代理人が顕名すること(本人のためにすることを示す)
- ・③代理人が代理権の範囲内で代理行為を行うこと
効果
- ・代理行為の効果は直接本人に帰属する(99条1項)
- ・代理人は行為能力者でなくてもよい(102条本文)
- ・代理人は意思能力が必要
条文(第99条・102条条)
第99条(代理行為の要件及び効果) 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 第102条(代理人の行為能力) 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
重要メモ
- ・「代理権授与・顕名・代理権範囲内」の3要件が揃って初めて本人への効果帰属が生じる制度
- ・3要件①本人からの代理権授与行為があること、②代理人が顕名すること(99条1項「本人のためにすることを示す」)、③代理権の範囲内で行為すること——いずれか1つが欠けると代理として有効に成立しない
- ・代理人は行為能力者でなくてもよい(102条本文)が、意思能力は必要——この組合せが頻出
- ・制限行為能力者が代理人としてした行為を、行為能力の制限を理由に取り消すことはできない(102条但書)
- ・代理行為の効果は直接本人に帰属する(99条1項)——「代理人に帰属してから本人に移転する」のではなく「直接帰属」
- ・未成年者でも代理人になれる点は記述・択一ともに頻出のひっかけポイント
任意代理と法定代理
第103条・104条・105条条簡単にいうと
代理には「自分で頼んで作り出す任意代理」と「法律が自動的に与える法定代理」の2種類があります。代理権の範囲の決まり方がそれぞれ異なります。
代理は、その発生根拠によって任意代理と法定代理の2種類に分類されます。法定代理とは、法律の規定によって自動的に代理権が付与されるものであり、代理権の範囲も法律によって定められます(例:未成年者の親権者、後見人など)。本人の意思とは無関係に代理関係が生じる点が特徴です。
任意代理とは、本人が自らの意思で代理権を授与するものであり、代理権の範囲は本人が決めた授権行為の内容によります(例:「土地を売却する代理権を与える」旨の委任状)。どの範囲まで代理権を与えるかは本人が自由に決定できます。
権限の定めのない任意代理人が行使できる権限は制限されており、103条により①保存行為(財産の現状を維持する行為)と②代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内での利用・改良行為のみが認められます。土地の売却といった処分行為は、明示的な授権なしには認められません。この点は過去問でも繰り返し問われる重要論点です。
具体例
【法定代理】:12歳のAの母Bが子Aの代理人として土地を管理する(親権に基づく法定代理)。【任意代理・権限の定めなし】:AがBに「財産管理をお願い」とだけ依頼した場合、Bが行えるのは保存行為と利用・改良行為のみ。土地を売ること(処分行為)はできない。
ポイント整理
- ・【任意代理・権限の定めなし】①保存行為(財産の現状維持)
- ・【任意代理・権限の定めなし】②利用・改良行為(物・権利の性質を変えない範囲内)
効果
- ・法定代理:代理権の範囲は法律で定められる
- ・任意代理:代理権の範囲は本人の授権行為の内容による
- ・権限の定めのない任意代理人:保存行為・利用改良行為のみ可(103条)
条文(第103条・104条・105条条)
第103条(権限の定めのない代理人の権限) 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。一 保存行為 二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
重要メモ
- ・「法定代理は法律が権限範囲を決める、任意代理は本人が決める」という発生根拠の違いで覚える
- ・法定代理の例:未成年者の親権者・成年後見人——本人の意思とは無関係に代理関係が生じる
- ・任意代理の例:委任状による土地売却代理——本人の授権行為の内容が権限範囲を画する
- ・権限の定めのない任意代理人は「処分行為」不可。行えるのは①保存行為と②利用・改良行為のみ(103条)——「財産管理を頼んだだけでは土地は売れない」と覚える
- ・復代理の選任要件が任意代理(本人の許諾またはやむを得ない事由・104条)と法定代理(自由に選任可・105条)で異なる点も本テーマの関連論点
- ・「保存行為・管理行為は代理権の範囲内(103条)」という条文の構造を確認しておくこと
自己契約・双方代理の禁止
第108条条簡単にいうと
代理人が本人の相手方になったり、両当事者の代理人を兼ねたりすること——本人の利益を最も害する危険があるため、民法は原則として禁止しています(108条1項)。
自己契約とは、代理人が本人(委任者)の代理人として、かつ自分自身も相手方当事者として契約を締結することをいいます。例えば、本人Aから「土地を売ってきてほしい」と代理権を授与されたBが、Aの代理人として自分(B)に対して売却するケースです。代理人Bには「できるだけ高く売る」インセンティブがなく、本人の利益が著しく害されるおそれがあるため、原則として禁止されています(108条1項)。
双方代理とは、代理人Bが売主Aの代理人と買主Cの代理人を同時に兼ねて契約を締結することをいいます。売主側代理人は高値を追求し、買主側代理人は安値を追求すべきところ、同一人物が双方を兼任すると一方の利益が犠牲になるおそれがあるため、原則として禁止されています(108条1項)。
禁止に違反してなされた自己契約・双方代理行為は無権代理として扱われ(108条1項後段)、本人が追認しない限り効果が帰属しません。ただし、①本人があらかじめ許諾した場合、②債務の履行行為(登記申請の代理など確定した義務を実行する場合)については例外的に許容されます(108条1項但書)。
具体例
Aから土地売却の代理権を受けたBが、Aの代理人として自ら100万円で買い受ける契約(自己契約)→原則として無権代理。AがCの代理人とBの代理人の両方を兼ねて売買契約を締結(双方代理)→原則として無権代理。

自己契約・双方代理の禁止
ポイント整理
- ・【例外①】本人があらかじめ許諾している場合
- ・【例外②】債務の履行行為(登記申請の代理・弁済の受領など)
効果
- ・違反した場合:無権代理となる(108条1項後段)
- ・本人が追認すれば遡って有効(116条)
- ・本人が追認拒絶すれば無効に確定
条文(第108条条)
第108条(自己契約及び双方代理の禁止) 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした意思表示は、代理権を有しない者がした意思表示とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
重要メモ
- ・自己契約・双方代理は原則禁止で、違反すると無権代理扱い(108条1項後段)——記述式でも頻出テーマ
- ・自己契約:代理人が本人の相手方として自ら契約する行為(例:本人の土地を代理人が自分で安く買い取る)
- ・双方代理:代理人が契約の両当事者の代理人を兼任する行為——一方の利益が犠牲になるおそれがあるため原則禁止
- ・例外①本人があらかじめ許諾した場合(108条1項但書)——許諾は事前に行う必要あり
- ・例外②債務の履行行為(登記申請の代理・弁済の受領など確定した義務の実行)——108条1項但書
- ・違反の効果は「無権代理」扱い。本人が追認すれば遡って有効(116条)、追認拒絶で無効確定
- ・「自己契約=無権代理」という過去問(09-27-3)の結論は必ず押さえる
代理権の濫用
第107条条簡単にいうと
代理人が与えられた代理権を自分の利益のために悪用した場合、民法107条はどう対処するのか——相手方が善意か悪意かによって結論が変わります。
代理権の濫用とは、代理人が本人から与えられた代理権の範囲内で行為をするものの、本人のためではなく自己または第三者の利益を図る目的で代理行為を行うことをいいます。代理権の範囲内の行為であるため形式的には有効な代理行為に見えますが、民法107条はこれを規律する特別のルールを設けています。
原則として、代理権濫用による行為は有効です。代理人Bが自分の利益のためにAの土地をCに売却しても、形式上は代理権の範囲内の行為であり、AはCに対して土地返還を請求できません。これは取引の安全を保護するためです。
例外として、相手方Cが代理人Bの濫用目的を知っていた(悪意の)場合、または知ることができた(善意有過失の)場合は、その行為は代理権を有しない者がした行為(無権代理)とみなされます(107条)。この処理は心裡留保(93条1項)と同じ構造であり、原則有効・例外として相手方が悪意または善意有過失なら無権代理という点を押さえてください。記述式試験にも出題実績があります。
具体例
AがBに土地売却の代理権を授与。Bは売却代金を着服しようと考え(私腹を肥やす目的)、AのためではなくBのためにCに売却。Cが善意無過失なら有効(AはCに土地を渡す義務あり)。CがBの悪用を知っていた(悪意)なら無権代理→AはCに土地を渡さなくてよい。

代理権の濫用(民法107条)
ポイント整理
- ・代理人が与えられた代理権の範囲内で行為すること
- ・代理人が自己または第三者の利益を図る目的であること
効果
- ・原則:代理権濫用行為は有効(取引の安全保護)
- ・例外:相手方が悪意または善意有過失→無権代理とみなされる(107条)
- ・無権代理となった場合、本人が追認しない限り効果は帰属しない
条文(第107条条)
第107条(代理権の濫用) 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなす。
重要メモ
- ・代理権濫用は原則有効だが、相手方が悪意または善意有過失なら無権代理扱い(107条)——記述式出題実績あり
- ・「代理権の範囲内の行為」なので形式的には有効な代理行為に見えるが、代理人が自己または第三者の利益を図る目的で行った場合に107条が適用される
- ・原則:取引の安全保護のため代理行為は有効(相手方が善意無過失なら本人に土地引渡義務が生じる)
- ・例外:相手方が代理人の濫用目的につき悪意または善意有過失→無権代理とみなされる(107条)
- ・心裡留保(93条1項)と同じ処理構造——原則有効・相手方悪意または善意有過失なら例外的に無効(無権代理扱い)——この対比が試験で使われる
- ・無権代理とみなされた場合、本人が追認しない限り効果は帰属しない
顕名
第99条1項・99条2項条簡単にいうと
代理人が「Aの代理人として参りました」と相手方に伝えること——これが顕名です。顕名があるかどうかで、契約の効果がどこに帰属するかが決まります。
顕名とは、代理人が本人のためにすること(「本人のためにすること」99条1項)を相手方に対して表示することをいいます。顕名は口頭でも書面でも可能であり、「Aの代理人として」「Aのために」など明確に意思表示されれば足ります。
顕名がある場合、契約の効果はA(本人)に帰属します。AとCの契約として考えることになります(99条1項)。顕名がない場合、つまり代理人Bが自分の名前だけで契約した場合、契約の効果はB(代理人)に帰属します。BとCの契約として処理され、他人物売買(561条)の問題となります(99条2項反対解釈)。
ただし、顕名がない場合でも、相手方Cが代理人Bを代理人であると知っていた(悪意)場合、または知ることができた(有過失)場合は、例外的に契約の効果はA(本人)に帰属します(99条2項)。相手方が代理関係を知っているにもかかわらず形式的な顕名の欠如を理由に本人への効果帰属を否定することは相当でないためです。この例外規定は試験でよく問われます。
具体例
BがCに土地を売る際に「Aの代理人として売ります」と告げた(顕名あり)→効果はAに帰属(AとCの売買)。Bが「私の土地を売ります」と言った(顕名なし)→原則として効果はBに帰属(BとCの売買=他人物売買)。ただしCがBをAの代理人と知っていた場合→効果はAに帰属。

代理における顕名の効果
ポイント整理
- ・顕名あり:代理人が「本人のためにすること」を表示すること(99条1項)
- ・顕名なし例外:相手方が代理関係を悪意または有過失で知っていること(99条2項)
効果
- ・顕名あり→効果はA(本人)に帰属(99条1項)
- ・顕名なし・相手方善意無過失→効果はB(代理人)に帰属(他人物売買として処理)
- ・顕名なし・相手方悪意または有過失→効果はA(本人)に帰属(99条2項)
条文(第99条1項・99条2項条)
第99条(代理行為の要件及び効果)1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
重要メモ
- ・顕名あれば効果はA(本人)へ帰属(99条1項)、顕名なしは原則B(代理人)へ帰属、ただし相手方が代理関係を悪意または有過失で知っていれば例外的にAへ帰属(99条2項)
- ・顕名とは「代理人が本人のためにすることを示すこと」——口頭・書面どちらでも可
- ・顕名がある場合:AとCの契約として効果がAに帰属(99条1項)
- ・顕名がない場合の原則:BとCの契約として効果がBに帰属——他人物売買(561条)の問題となる
- ・顕名がない場合の例外:相手方Cが代理関係を悪意または有過失で認識していた→例外的にAに効果帰属(99条2項)
- ・「顕名なし+相手方善意無過失→他人物売買(561条)」の処理も押さえること
- ・受動代理(相手方からの意思表示を受ける場合)にも99条2項が準用される
復代理
第104条・105条条簡単にいうと
代理を頼まれた代理人が、さらに別の人を代理人として選ぶ——これが「復代理」です。任意代理と法定代理とでは選任できる要件が大きく異なります。
復代理とは、代理人がさらに別の代理人(復代理人)を選任する制度をいいます(104条・105条)。復代理人はあくまで本人Aの代理人として活動し、復代理人がした行為の効果はA(本人)に帰属します。復代理人は代理人の代理人ではなく、本人の代理人であるという点は重要です。
任意代理人が復代理人を選任するには、原則として制限があります(104条)。なぜなら、任意代理は本人がその代理人を信頼して代理権を授与したものであり、代理人が独断で別の人物を選ぶことは本人の信頼を裏切るおそれがあるためです。例外として、①本人の許諾がある場合、②やむを得ない事由がある場合(病気・緊急事態など)は、任意代理人も復代理人を選任できます(104条)。
法定代理人は、任意代理人と異なり、復代理人を自由に選任できます(105条)。法定代理人は通常、被後見人・未成年者などの監護という法律上の職務を負っており、自らの責任で適切な人物を選任する必要があるためです。なお、法定代理人が復代理人を選任した場合、法定代理人はその選任・監督上の過失についてのみ責任を負います(105条)。
具体例
Aが代理人Bに不動産売却を依頼(任意代理)。BがCを復代理人に選任するには本人の許諾またはやむを得ない事由が必要(104条)。CがDに土地を売った場合、効果はA(本人)に帰属する。

復代理
ポイント整理
- ・【任意代理・104条】①本人の許諾がある場合 または ②やむを得ない事由がある場合
- ・【法定代理・105条】制限なし(自由に選任できる)
効果
- ・復代理人は本人Aの代理人として活動する
- ・復代理人の行為の効果はA(本人)に帰属する
- ・代理人が復代理人を選任しても代理人自身の代理権は消滅しない
条文(第104条・105条条)
第104条(任意代理人による復代理人の選任) 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。 第105条(法定代理人による復代理人の選任) 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
重要メモ
- ・任意代理人は原則復代理人を選任できない(例外:本人の許諾またはやむを得ない事由・104条)、法定代理人は自由に選任できる(105条)
- ・復代理人は「代理人の代理人」ではなく「本人の代理人」として行為する——行為の効果は本人に直接帰属
- ・復代理人を選任しても代理人自身の代理権は消滅しない(代理人も本人のために活動できる)
- ・任意代理(104条):原則不可。例外①本人の許諾、②やむを得ない事由(病気・緊急事態など)
- ・法定代理(105条):自由に選任可。ただし選任・監督上の過失があれば責任を負う
- ・復代理人は本人Aのための代理人であることを示す顕名(「Aの代理人として」)が必要
- ・法定代理人が自由に復代理人を選任できる理由:被後見人・未成年者などの監護という法律上の職務を遂行するためやむを得ない場合があるため
代理行為の瑕疵
第101条条簡単にいうと
代理行為において詐欺・錯誤・悪意などを誰の基準で判断するのか——実際に交渉するのは代理人なので「代理人基準」で考えるのが原則です(101条)。
代理行為の瑕疵とは、代理の場合に詐欺・強迫・錯誤・悪意などの意思表示の欠陥(瑕疵)をどの時点で、誰の視点で判断するかの問題をいいます(101条)。実際に相手方と交渉して契約を結ぶのは代理人であるため、原則として代理人を基準として判断されます。
代理人が相手方をだました場合(96条1項):代理人基準で考え、本人Aはだましていないが代理人Bがだましたのであれば「代理人Bがだました=本人Aがだました」として扱い、相手方Cは詐欺を理由に取消しを主張できます(101条1項参照)。代理人が相手方にだまされた場合(101条1項):代理人基準で考え、代理人Bがだまされたのであれば「代理人Bがだまされた=本人Aがだまされた」として扱い、本人Aは詐欺を理由に取消しを主張できます。
特定の法律行為をすべきことを委託された場合(101条2項)には、本人が悪意・有過失であったときは、代理人の善意を主張できません。例えば、本人が悪意なのに代理人が善意であることを理由に保護されることは許されないのです。このように代理行為の瑕疵は「代理人基準」が原則ですが、本人の悪意・有過失が問題となる場面では本人基準も補完的に機能します。
具体例
【代理人が相手方をだました】:AがBに土地売却を依頼。BがCをだまして売買契約締結→代理人B基準で考え、Cは詐欺取消し可(96条1項)。【代理人がだまされた】:AがBに依頼。CがBをだまして高値で買わせた→代理人B基準で考え、Aは詐欺取消し可(101条1項)。

代理行為の瑕疵(民法101条)
ポイント整理
- ・代理行為の効力の判断基準→原則として代理人基準(101条1項)
- ・本人が特定の法律行為を指示した場合→本人の悪意・有過失は代理人の善意で遮断できない(101条2項)
効果
- ・代理人が相手方をだます→相手方は詐欺取消し可(96条1項)
- ・代理人がだまされる→本人は詐欺取消し可(101条1項)
- ・代理人が善意でも本人が悪意なら本人は善意を主張できない(101条2項)
条文(第101条条)
第101条(代理行為の瑕疵)1項 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決する。2項 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決する。
重要メモ
- ・代理行為の瑕疵(詐欺・強迫・錯誤・悪意など)は「代理人基準」で判断するのが原則(101条)
- ・代理人が相手方をだました→「代理人Bがだました=本人Aがだました」と考え、相手方Cは詐欺取消し可(96条1項・101条1項参照)
- ・代理人が相手方にだまされた→「代理人Bがだまされた=本人Aがだまされた」と考え、本人Aは詐欺取消し可(101条1項)
- ・本人が特定の法律行為をすべきことを委託した場合(101条2項):本人が悪意または有過失のとき、代理人の善意を主張できない——本人の悪意・有過失が問題となる場面では本人基準も機能する
- ・判断基準は「原則代理人基準、本人が悪意のときは本人基準が補完」という二段構え
- ・過去問(12-28-3改題):「代理行為の瑕疵は代理人につき決する(101条1項・2項)」○——頻出の正答肢
無権代理とは
第113条条簡単にいうと
本人から頼まれてもいないのに勝手に本人の代理人として相手方と契約してしまった——これが「無権代理」です。本人保護と相手方保護の両方を考える必要があります。
無権代理とは、代理権を持っていない者が本人の代理人として相手方と契約を締結してしまうことをいいます(113条)。代理権がないにもかかわらず行われた行為であるため、原則として本人には効果が帰属しません。本人の意思に反して権利義務を負わされることは不当であるためです。
無権代理が問題となる典型例は2つあります。第1に、そもそも代理権の授与が全くなかった場合(親族が勝手に代理人として振る舞うなど)、第2に、代理権は存在したが代理権の範囲を超えた行為を行った場合です。
無権代理行為がなされた場合には、本人の利益と相手方の利益の両方を保護するための規定が民法に設けられています。本人側には追認権と追認拒絶権(113条)が、相手方側には催告権(114条)・取消権(115条)・無権代理人への責任追及権(117条)が与えられています。これらのルールは一括して試験で問われることが多いため、体系的に整理して理解することが重要です。
具体例
AとBは兄弟。Bが勝手にAの土地の売買契約をCと締結(AはBに代理権を与えていない)。この売買は無権代理として本人Aに効果が帰属しない。AがBの行為を追認すれば、契約時に遡って有効となる(116条)。

無権代理とは
ポイント整理
- ・代理権がない者が本人の代理人として行為すること
- ・または代理権の範囲を超えた行為を行うこと
効果
- ・原則:無権代理行為は本人に効果が帰属しない(113条1項)
- ・本人が追認すれば、契約時に遡って有効(116条本文)
- ・本人が追認拒絶すれば、無効に確定
条文(第113条条)
第113条(無権代理)1項 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
重要メモ
- ・無権代理=本人への効果帰属なし(113条1項)。追認で契約時に遡って有効(116条)、追認拒絶で無効確定
- ・無権代理とは、代理権を持っていない者が本人の代理人として相手方と契約してしまうこと——「代理権が全くない場合」と「代理権の範囲を超えた場合」の両方が含まれる
- ・本人保護と相手方保護の両面を体系的に理解することが合格への近道——本人側(追認権・追認拒絶権)と相手方側(催告権・取消権・117条責任追及)を対比して整理する
- ・催告に応答しなかった場合は「追認拒絶みなし」(114条)——沈黙の効果は本人不利であることに注意
- ・無権代理行為は本人が追認しなければ本人に「効力を生じない」(113条1項)——「無効」ではなく「効力が生じない(有効にもなりうる)」という表現が重要
- ・追認の遡及効(116条本文)と第三者保護の例外(116条但書)もあわせて押さえる
本人の保護(無権代理)
第113条・116条条簡単にいうと
無権代理が行われたとき、本人には「認める(追認)」か「認めない(追認拒絶)」かの選択権があります。どちらを選ぶかによって法律関係が確定します。
無権代理行為が行われた場合、本人には①追認拒絶権と②追認権が認められています(113条)。
追認拒絶権とは、本人が無権代理行為を認めないと意思表示する権利です。本人が追認を拒絶した場合、無権代理行為は無効に確定し、以後は相手方も取消しなどを行使できなくなります。追認権とは、本人が無権代理行為を遡って認める権利です。本人が追認した場合、無権代理行為は契約時(無権代理行為をした時点)に遡って有効となります(116条本文)。追認した日から有効となるのではなく、「契約時に遡って」有効となる点は試験で頻出です。
追認または追認拒絶は、相手方Cに対してしなければ相手方に対抗できません(113条2項)。もっとも、無権代理人Bに対して追認や追認拒絶を行った場合でも、Cがその事実を知っていればCに対しても対抗できます。なお、追認拒絶後は本人が翻意して追認することは認められないと解されています。
具体例
BがAの代理人として土地をCに売却(無権代理)。AがCに「その売買を認める」と伝えた(追認)→売買は契約締結時に遡って有効。Aが「認めない」と伝えた(追認拒絶)→売買は無効に確定。

本人の保護(無権代理)
ポイント整理
- ・追認:本人が無権代理行為を追認する意思表示(原則として相手方Cに対して行う)
- ・追認拒絶:本人が追認を拒絶する意思表示(原則として相手方Cに対して行う)
効果
- ・追認→契約時に遡って有効(116条本文)
- ・追認拒絶→無効に確定
- ・相手方に対して行わないと対抗できない(113条2項)
- ・追認拒絶後に追認することは認められない
条文(第113条・116条条)
第113条2項 前項の規定により契約の追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。 第116条(無権代理行為の追認) 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
重要メモ
- ・追認は「契約時に遡って」有効(116条)、追認は原則として相手方への通知が必要(113条2項)、追認拒絶後の翻意不可——この3点セットが頻出
- ・追認権:本人が無権代理行為を遡って認める権利——契約締結時に遡って有効(追認した日からではない・116条本文)
- ・追認拒絶権:本人が無権代理行為を認めないとする権利——拒絶後は無効に確定し、相手方も取消し等を行使できなくなる
- ・追認・追認拒絶は「相手方Cに対して」しなければCに対抗できない(113条2項)。ただしCが知っていればBへの追認拒絶でもCに対抗可
- ・追認拒絶後に本人が翻意して追認することは認められない(一度確定した法律効果は覆せない)
- ・追認の遡及効の例外:第三者の権利を害することはできない(116条但書)——追認によっても既に生じた第三者の権利は失われない
相手方の保護(無権代理)
第114条・115条・117条条簡単にいうと
無権代理の被害を受けた相手方には3つの保護手段があります——①催告権、②取消権、③無権代理人への責任追及です。それぞれの要件と違いを整理しましょう。
無権代理行為が行われた場合、相手方には3つの保護手段が認められています。
第1に催告権(114条)。相手方は本人に対して、相当の期間を定めて追認するかどうかを催告することができます。催告権は善意・悪意を問わず行使できます。期間内に本人からの確答がない場合は、追認拒絶とみなされます。
第2に取消権(115条)。本人が追認するまでの間、善意の相手方は無権代理行為を取り消すことができます。悪意(無権代理であることを知っていた)の相手方は取消権を行使できません。本人が追認した後は取消権を行使できなくなります(本人が追認するまでの間に限る)。
第3に無権代理人への責任追及(117条)。①代理人が代理権を証明できないとき、②本人が追認しなかったとき、③相手方が善意かつ無過失のとき——この3要件を満たす場合、相手方は無権代理人に対して履行または損害賠償の請求ができます(117条1項)。相手方が悪意または有過失の場合は無権代理人への責任追及はできません(117条2項)。なお、無権代理人が制限行為能力者であった場合も責任追及できません(117条2項2号)。
具体例
BがAに無断でAの土地をCに売却。①CがAに「2週間以内に追認するか答えてください」と催告→期間内に返答なければ追認拒絶みなし。②Cは善意であれば無権代理行為を取り消せる(本人追認前まで)。③Cが善意無過失ならBに「土地を渡せ(履行)または損害賠償せよ」と請求可。

相手方の保護(無権代理)
ポイント整理
- ・【催告権・114条】善意・悪意問わず行使可。相当期間内に確答なければ追認拒絶とみなされる
- ・【取消権・115条】善意の相手方のみ行使可。本人が追認するまでの間のみ
- ・【117条責任追及】①代理権証明不可 ②本人追認なし ③相手方善意かつ無過失の全要件
効果
- ・催告→期間内確答なし→追認拒絶とみなされる(114条)
- ・取消→無権代理行為は遡って無効
- ・117条責任追及→履行または損害賠償請求可
- ・相手方が悪意または有過失→117条の責任追及不可(117条2項)
条文(第114条・115条・117条条)
第114条(無権代理の相手方の催告権) 前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。 第115条(無権代理の相手方の取消権) 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。 第117条1項(無権代理人の責任) 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
重要メモ
- ・①催告権は善意悪意問わず行使可(114条)、②取消権は善意のみかつ本人追認前まで(115条)、③117条責任追及は善意かつ無過失のみ——この3つの違いを比較表で覚えることが合格への近道
- ・催告権(114条):善意・悪意を問わず行使可。相当期間を定めて本人に確答を求め、期間内に確答なければ追認拒絶みなし
- ・取消権(115条):善意の相手方のみ行使可(悪意は不可)。本人が追認するまでの間のみ行使できる——本人追認後は取消不可
- ・117条責任追及:①代理権証明不可②本人追認なし③相手方善意かつ無過失の全要件が必要。相手方が悪意または有過失の場合は不可(117条2項)
- ・無権代理人が制限行為能力者であった場合も117条責任追及はできない(117条2項2号)——これも試験で問われる
- ・過去問(08-28-1改題):「本人追認後は取消不可」——頻出の正答肢
無権代理と相続(無権代理人が本人を単独相続した場合)
第113条・116条(判例)条簡単にいうと
無権代理行為をした本人が死亡し、無権代理人がその地位を相続した場合、無権代理行為の効力はどうなるのか——判例の立場を覚えましょう。
無権代理と相続の問題は、無権代理人または本人が死亡して相続が発生した場合に、無権代理行為の効力がどうなるかという問題です。パターンごとに判例の結論が異なるため、個別に整理する必要があります。
パターン①:無権代理人Bが本人Aを単独で相続した場合。Bが本人Aの土地を勝手に売った後、AがBに全財産を残して死亡し、BがAを単独相続したケースです。この場合、無権代理行為は有効となります(最判昭40.6.18)。理由は、Bが本人Aの地位を承継した結果、追認拒絶権もBに帰属することになりますが、自ら無権代理行為を行ったBが自分で追認拒絶することは信義則に反し許されないためです。
パターン②:本人Aが追認を拒絶した後に死亡し、無権代理人Bが単独相続した場合。Aが生前に追認を拒絶した後にBがAを相続した場合は、無権代理行為は無効のまま確定します(最判昭10.7.17)。Aが生前に明確に追認拒絶の意思を示している以上、Bがその地位を相続してもすでに拒絶済みの事実は変わらないためです。この2つのパターンの結論の違いを明確に区別して記憶することが重要です。
具体例
【パターン①】Bが無断でAの土地をCに売却(無権代理)→その後A死亡・B単独相続→無権代理行為は有効(最判昭40.6.18)。【パターン②】Bが無断でAの土地をCに売却(無権代理)→Aが追認拒絶→その後A死亡・B単独相続→無権代理行為は無効のまま(最判昭10.7.17)。

無権代理と相続(無権代理人が本人を単独相続した場合)
ポイント整理
- ・【有効となる要件】無権代理人が本人を単独相続し、かつ本人の生前に追認拒絶がなかったこと
- ・【無効確定の要件】本人が生前に追認拒絶を行った後に無権代理人が相続したこと
効果
- ・パターン①:信義則により追認拒絶不可→無権代理行為は有効(最判昭40.6.18)
- ・パターン②:生前の追認拒絶の効力は相続で変わらない→無権代理行為は無効のまま(最判昭10.7.17)
条文(第113条・116条(判例)条)
第113条(無権代理)1項 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
重要メモ
- ・無権代理人が本人を単独相続→追認拒絶なしなら有効(最判昭40.6.18)、本人が生前に追認拒絶済みなら無効のまま(最判昭10.7.17)——「追認拒絶があったかどうか」が結論を分けるキーポイント
- ・パターン①:無権代理人Bが本人Aを単独相続し生前の追認拒絶なし→無権代理行為は有効(最判昭40.6.18)。理由:自ら無権代理行為をしたBが本人として追認拒絶することは信義則に反する
- ・パターン②:本人Aが生前に追認拒絶→その後Bが相続→無権代理行為は無効のまま(最判昭10.7.17)。理由:追認拒絶時点で有効無効が確定し、その後の相続で覆せない
- ・無権代理人Bを相続した者が後日本人Aを相続した場合も「無権代理人が本人を相続したもの」として扱われ有効(最判昭63.3.1)——間接相続パターン
- ・判例番号(昭40.6.18・昭10.7.17)は過去問で具体的に問われるため暗記必須
無権代理と相続(その他のパターン)
第113条(判例)条簡単にいうと
無権代理と相続の問題は、単純な単独相続以外にも複数のパターンがあります。共同相続や本人が無権代理人を相続した場合の結論をしっかり区別しましょう。
無権代理と相続の問題には、パターン①②以外にも重要な場面があります。
パターン③:無権代理人Bが本人Aを他の相続人と共同相続した場合。Bが本人Aを、C・Dとともに共同相続したケースです。この場合、ほかの共同相続人(C・D)が共同で追認しない限り、無権代理行為は有効とはなりません(最判平5.1.21)。Bだけが追認の意思を持っていても、共同相続人全員の追認が必要であり、B単独での追認は認められません。
パターン④:本人Aが無権代理人Bを単独相続した場合。Bが無権代理行為をした後にBが死亡し、本人AがBを単独相続したケースです。この場合、本人Aは追認拒絶権を行使できます(最判昭37.4.20)。もともとAは追認拒絶権を持っていたのであり、Bを相続したからといってその権利が消滅するわけではないためです。また、相手方CからBの代理人としての責任(117条)を追及された場合でも、本人Aはこれを拒否できます(最判昭48.7.3)。
具体例
【パターン③】Bが無断でAの土地をEに売却→A死亡・B・C・Dが共同相続→B単独ではなくB・C・D全員が共同して追認しない限り有効とならない(最判平5.1.21)。【パターン④】Bが無断でAの土地をCに売却→B死亡・Aが単独相続→Aは追認拒絶可(最判昭37.4.20)。

無権代理と相続(その他のパターン)
ポイント整理
- ・【パターン③】全共同相続人(B含む)が共同して追認することが必要(最判平5.1.21)
- ・【パターン④】本人Aは追認拒絶権を行使できる(最判昭37.4.20)
効果
- ・パターン③:共同相続人全員の追認なし→無権代理行為は有効とならない(最判平5.1.21)
- ・パターン④:本人Aは追認拒絶権行使可(最判昭37.4.20)
- ・パターン④:相手方Cの117条責任追及に対しAは拒否可(最判昭48.7.3)
条文(第113条(判例)条)
第113条(無権代理)1項 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
重要メモ
- ・共同相続なら「共同相続人全員の共同追認」が必要(最判平5.1.21)、本人が無権代理人を単独相続した場合は追認拒絶可(最判昭37.4.20)かつ117条責任追及も拒否可(最判昭48.7.3)
- ・パターン③:無権代理人Bが本人Aを他の相続人C・Dとともに共同相続→他の共同相続人C・D全員が共同して追認しない限り有効とならない(最判平5.1.21)。B単独の追認では有効にならない
- ・パターン③の理由:無権代理人Bだけが利得するのに全員で追認が必要とするのは公平の観点から
- ・パターン④-a:本人AがBを単独相続→Aは追認拒絶権を行使できる(最判昭37.4.20)。Aはもともと追認拒絶権を持っており、Bを相続しても権利は消滅しない
- ・パターン④-b:本人AがBを相続し相手方Cから117条追及された→Aはその責任追及を拒否できる(最判昭48.7.3)
- ・過去問(16-28-5):「共同相続の場合、Bの相続分に相当する部分だけ有効とはならない」○——判例(平5.1.21)の帰結として頻出
表見代理とは(3パターン総論)
第109条・110条・112条条簡単にいうと
無権代理は本来本人に効果が帰属しませんが、本人に「落ち度」があり相手方が代理権があると信じた場合——表見代理として有効とする制度です(109条・110条・112条)。
表見代理とは、無権代理行為であるにもかかわらず、本人に何らかの帰責性(落ち度)があり、相手方がその状況を信頼して(善意無過失で)代理人と契約した場合、表見代理が成立してその無権代理行為を有効とする制度をいいます。
表見代理が成立するための基本的な要件は、①本人に帰責性(落ち度)があること、②相手方が善意かつ無過失であること(3パターン共通)です。本人の落ち度が全くない場合には表見代理は成立せず、本人は保護されます。
民法は本人の落ち度の態様によって3つのパターンを定めています。①代理権授与の表示による表見代理(109条1項):代理権を与えていないのに「与えた」と表示した場合。②権限外の行為の表見代理(110条):基本代理権の範囲を超えた代理行為を行った場合。③代理権消滅後の表見代理(112条1項):過去に代理権があったが消滅した後に代理行為を行った場合。これら3パターンを組み合わせた表見代理(109条2項・112条2項)も認められています。表見代理が成立すると、相手方は本人に対して有効な契約の履行を請求できます。
具体例
①Aが「Bに代理権を与えた」と告示した(実際は与えていない)→Cが善意無過失で契約→表見代理成立(109条1項)。②Aが賃貸借の代理権をBに与えた→Bが売買契約を締結→Cが善意無過失→表見代理成立(110条)。③Aの代理権がBから消滅した後→Bが代理行為→Cが善意無過失→表見代理成立(112条1項)。

表見代理とは
ポイント整理
- ・①本人に帰責性(落ち度)があること(パターンにより異なる)
- ・②相手方が善意かつ無過失であること(3パターン共通)
効果
- ・表見代理成立→無権代理行為が有効として扱われる
- ・相手方は本人に対して契約の履行を請求できる
- ・表見代理の主張は相手方の選択(強制されない)
条文(第109条・110条・112条条)
第109条1項(代理権授与の表示による表見代理等) 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。 第110条(権限外の行為の表見代理) 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。 第112条1項(代理権消滅後の表見代理等) 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理人がした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。
重要メモ
- ・本人の落ち度3パターン(①代理権授与表示・②権限外・③代理権消滅後)+相手方の善意無過失で表見代理成立——全パターン共通で相手方善意無過失が必須
- ・表見代理の趣旨:無権代理行為であっても本人に帰責性(落ち度)があり相手方が善意無過失の場合、相手方を保護して無権代理行為を有効と扱う
- ・①代理権授与の表示による表見代理(109条1項):代理権を与えていないのに「与えた」と表示した——例:代理権を与えるつもりのない者に委任状を交付
- ・②権限外の行為の表見代理(110条):基本代理権を与えたが代理人が権限を超えた行為をした——相手方に「正当な理由(善意無過失)」が必要
- ・③代理権消滅後の表見代理(112条1項):過去に代理権を与えていたが消滅後に代理行為をした——例:代理人を解任後に代理行為
- ・組合わせ表見代理(109条2項・112条2項)も認められている——複数パターンの重畳適用
- ・表見代理が成立すると相手方は本人に対して有効な契約の履行を請求できる。主張するかどうかは相手方の選択(強制されない)
権限外の行為の表見代理(110条)
第110条条簡単にいうと
代理人が与えられた代理権(基本代理権)の範囲を超えた行為をした場合でも、相手方が善意無過失なら表見代理が成立します(110条)。「基本代理権」の意味をしっかり押さえましょう。
権限外の行為の表見代理(110条)とは、代理人が本人から与えられた基本代理権の範囲を超えた行為をした場合に、相手方が代理権があると信ずべき正当な理由(善意無過失)があるときは、表見代理が成立するとする制度です。
110条が適用されるためには、①代理人に基本代理権が存在すること(完全な無権代理人には適用されない)、②代理人が基本代理権の範囲を超えた行為を行ったこと、③相手方に善意無過失(代理権があると信ずべき正当な理由)があること——の3要件が必要です。
「基本代理権」にあたるかどうかが実務上重要な論点となります。私法上の代理権(賃貸借契約の代理権・100万円の融資受領権など)は基本代理権にあたります。勤務業務の代行権限(単なる使用人としての業務遂行権)は基本代理権にあたりません。公法上の代理権は原則として基本代理権にあたらないとされていますが、例外として登記申請の代理権は私法上の取引の一環としてなされたものとして基本代理権にあたるとされています(最判昭46.6.3)。この判例は試験でも頻出です。
具体例
AがBに「賃貸借契約の交渉をしてきてほしい(私法上の代理権)」と基本代理権を授与。BがAの代理人としてCと売買契約を締結(権限外の行為)。Cが善意無過失なら110条による表見代理成立。

権限外の行為の表見代理(110条)
ポイント整理
- ・①代理人に基本代理権が存在すること(私法上の代理権であること)
- ・②基本代理権の範囲を超えた代理行為を行ったこと
- ・③相手方に善意無過失(正当な理由)があること
効果
- ・3要件を満たせば表見代理成立→無権代理行為が有効として扱われる
- ・本人は相手方に対して契約の履行義務を負う
条文(第110条条)
第110条(権限外の行為の表見代理) 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
重要メモ
- ・基本代理権あり+権限外の行為+相手方善意無過失で110条表見代理成立。基本代理権の判断が核心論点
- ・3要件:①代理人に基本代理権が存在すること、②基本代理権の範囲を超えた行為を行ったこと、③相手方に善意無過失(正当な理由)があること
- ・基本代理権に「あたる」もの:私法上の代理権(賃貸借契約・売買・100万円融資受領の代理権など)
- ・基本代理権に「あたらない」もの:勤務業務の代行権限(単なる使用人としての業務遂行権)——表見代理不成立
- ・公法上の代理権は原則あたらない(例:役所に印鑑証明書を取りに行く代理権)。例外:登記申請の代理権は私法上の取引の一環として基本代理権にあたる(最判昭46.6.3)
- ・過去問(12-28-4改題):「権限外の行為が有効となる余地はない」→✕(110条表見代理が成立しうる)——頻出の誤答肢
無権代理と表見代理の関係
第110条・117条条簡単にいうと
相手方は表見代理と無権代理人への責任追及の両方を主張できる場合、どちらかを自由に選べます——主張するかどうかも相手方の選択次第です。
無権代理行為が行われた場合において、表見代理の成立要件と無権代理人への責任追及(117条)の要件を両方満たすことがあります。この場合、相手方はどちらを選択してもよいとされています(最判)。
具体的には、相手方Cは、①本人Aに対して表見代理の成立を主張し、無権代理行為を有効なものとして本人に履行を求めることができます。また、②表見代理の主張をあえてせず、無権代理人Bに対して117条に基づく履行または損害賠償請求をすることもできます。表見代理の主張は相手方にとって任意であり、強制されるものではありません。
この選択権の趣旨は、相手方にとって柔軟な救済手段を確保することにあります。例えば、本人の資力が乏しい場合には無権代理人への責任追及が実質的に有利なこともあり、どちらが有利かは個別の事情によります。なお、無権代理人への117条責任追及を行うためには、相手方が善意かつ無過失であることが必要です。
具体例
BがAに無断でAの土地をCに売却。Cは①「AとBの間に基本代理権があった。Bが権限外の行為をした。自分は善意無過失だ」として表見代理(110条)を主張してAに履行を求めることもできる。②あるいは表見代理を主張せず、Bに「土地を渡せ(または損害賠償せよ)」と117条責任追及することもできる。

無権代理と表見代理の関係
ポイント整理
- ・表見代理の主張:本人への履行請求(相手方善意無過失)
- ・117条責任追及:無権代理人への履行または損害賠償(相手方善意無過失)
効果
- ・相手方は①表見代理の主張 または ②117条責任追及 どちらでも選択可
- ・相手方が善意無過失であれば両方の選択肢が利用可能
- ・表見代理の主張は強制されない(任意)
条文(第110条・117条条)
第117条1項(無権代理人の責任) 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
重要メモ
- ・相手方は表見代理の主張(本人への請求)と117条責任追及(無権代理人への請求)を自由に選択できる——「選択の自由」が出題ポイント
- ・選択肢①:本人Aに対して表見代理の成立を主張し、有効な契約として履行を請求(109条・110条・112条)——相手方善意無過失が必要
- ・選択肢②:表見代理の主張をせず、無権代理人Bに対して117条責任追及(履行または損害賠償)——相手方善意かつ無過失が必要
- ・相手方が悪意または有過失の場合:どちらも行使不可(117条2項)
- ・表見代理の成立を「無権代理人に対して」主張することはできない——表見代理はあくまで本人を相手にする制度
- ・本人の資力が乏しい場合など個別事情によってどちらを選ぶかが変わる——相手方の戦略的選択が認められている点が重要
まとめ
関連判例
本人が無権代理人を相続
最判昭37.04.20Aが無権代理行為をされた後、Aが無権代理人Bを相続した事案。最高裁は、本人Aは追認拒絶できるとし、無権代理行為は当然には有効にならないと判示した。一方、BのAに対する117条の損害賠償責任はAが相続しているため、相手方はAにその責任を追及できる。試験では「誰が誰を相続したか」の方向を問う問題で頻出。
無権代理人が本人を単独相続
最判昭40.6.18Bが無断でA名義の法律行為をした後、BがAを唯一の相続人として相続した事案。最高裁は、BはAの地位を承継したため、本人として追認を拒絶することは信義則上許されないとし、無権代理行為は当然に有効になると判示した。単独相続か共同相続かで結論が変わる点が試験のポイント
無権代理人を相続した者が後に本人を相続
最判昭63.3.1無権代理人Bをいったん相続したCが、その後本人Aも相続した事案。最高裁は、Cは無権代理人の地位とともに本人の地位も持つことになるため、追認拒絶は信義則上許されず無権代理行為は当然有効になると判示した。相続が複数回行われる複合問題として出題される。
夫婦の日常家事代理権と表見代理
最判昭44.12.18夫が妻の日常家事代理権(761条)を基本代理権として、権限外の法律行為(不動産売買等)をした事案。最高裁は、日常家事の範囲を超える行為への110条の表見代理の成立について、相手方が日常家事の範囲内と信じるにつき正当な理由がある場合に限り類推適用を認めた。「基本代理権+日常家事」の組み合わせは頻出論点。
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不特定物債権において、債務者が具体的に引き渡すべき物を決定・分離することで、特定物債権に変わること。
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