第2節 能力
第1章 総則
民法において、人が法律行為を有効に行うには一定の能力が必要です。この節では、行為能力の制度を中心に、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の4類型それぞれの保護の仕組みを学びます。各類型で「誰が同意するか」「誰が取り消せるか」「単独でできる行為はどこまでか」を整理することが合格への近道です。試験では事例問題で頻出の最重要分野です。
能力とは(権利能力・意思能力・行為能力)
第3条・3条の2・4条条簡単にいうと
契約を有効に結ぶためには「能力」が必要ですが、民法では3種類の能力を区別しています。4歳の子どもが3000万円の土地を買う契約をしても有効になるのでしょうか?
民法は、人が法律行為を有効に行うために必要な能力を、①権利能力・②意思能力・③行為能力の3段階で捉えています。これら3つはそれぞれ根拠条文・要件・効果が異なり、試験でも混同しやすいため、一つひとつ正確に理解することが重要です。
第1の「権利能力」とは、権利・義務の主体となることができる法律上の地位のことです(3条1項)。自然人は出生によって権利能力を取得し、死亡によって消滅します。原則として胎児には権利能力がありませんが、例外として①相続(886条1項)、②不法行為に基づく損害賠償請求(721条)、③遺贈(965条)の3場面については、胎児が生きて生まれてきたことを条件として、遡って権利能力を認める「停止条件説」が判例・通説とされています(大判昭7.10.6)。したがって、胎児の出生前に親が胎児を代理して加害者に損害賠償請求をすることはできません。
第2の「意思能力」とは、自分がした法律行為の意味・内容を理解できる精神的能力のことです(3条の2)。具体的には7〜10歳程度の精神的発達が必要とされており、重度の認知症患者・泥酔状態の者・幼児なども意思無能力者となりえます。意思能力を欠く者が締結した法律行為は「無効」となります(3条の2)。無効は取消しと異なり、最初から効力が生じておらず、追認によって有効にすることもできません。また、無効は誰でも主張できるのが原則です。
第3の「行為能力」とは、単独で完全な法律行為をすることができる能力のことです。民法は満18歳をもって成年と定め(4条)、成年に達することで原則として完全な行為能力を取得します。行為能力が制限された者を「制限行為能力者」といい、①未成年者・②成年被後見人・③被保佐人・④被補助人の4類型があります。これらの者が保護者の同意なく行った法律行為は「取り消すことができる」とされており(取消可能行為)、取消しにより法律行為は遡及的に無効となります(121条)。
具体例
4歳の幼児が隣人と不動産売買契約を締結した場合、意思能力を欠くため契約は無効となります。これに対して、16歳の高校生が親の同意なくスマートフォンを購入した場合は、意思能力はあっても行為能力が制限されているため、取り消すことができます(取消可能行為)。
ポイント整理
- ・権利能力:出生により自動取得、死亡で消滅
- ・意思能力:当該法律行為の意味・内容を理解できる精神的能力(7〜10歳程度)
- ・行為能力:成年(18歳)に達していること、または制限が解除されていること
効果
- ・権利能力なし:権利義務の主体になれない
- ・意思能力なし(意思無能力):法律行為は無効(3条の2)——追認不可、誰でも主張可
- ・行為能力制限(制限行為能力者):法律行為は取消可能(121条)——追認で有効確定
条文(第3条・3条の2・4条条)
第3条(権利能力)私権の享有は、出生に始まる。 第3条の2(意思能力)法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。 第4条(成年)年齢十八歳をもって、成年とする。
重要メモ
- ・「3つの能力の違い」と「意思無能力=無効、制限行為能力=取消可能」の区別が最頻出ポイント
- ・権利能力(3条1項):出生で取得・死亡で消滅。権利義務の主体となれる地位
- ・意思能力(3条の2):7〜10歳程度の精神的発達が基準。欠けると法律行為は無効・追認不可・誰でも主張可
- ・行為能力(4条〜):18歳で成年。制限された者を「制限行為能力者」といい、取消可能行為となる(121条)
- ・3能力の対比:①根拠条文・②欠いた場合の効果(権利能力なし→主体不可、意思無能力→無効、制限→取消可能)・③主張できる者を整理すること
- ・重要度Cだが土台となる概念。まず3つの違いを一覧表で頭に入れておく
権利能力と胎児の例外
第3条1項・886条・721条・965条条簡単にいうと
まだ生まれていない胎児でも、相続や損害賠償請求ができる場合があります。どんな場面が例外として認められているのかを押さえましょう。
権利能力とは、権利・義務の主体となることができる法律上の地位のことです(3条1項)。自然人は出生によって権利能力を取得し、死亡によって消滅するのが原則です。したがって、胎児はまだ生まれていない以上、原則として権利能力を持ちません。
しかし、この原則を貫くと胎児にとって不都合な場面が生じます。たとえば父が交通事故で死亡した場合、胎児が出生前では父の財産を相続できず、また加害者への損害賠償請求もできないことになってしまいます。そこで民法は、特定の3場面に限って胎児に例外的に権利能力を認めています。
例外が認められる3つの場面は、①相続(886条1項)、②不法行為に基づく損害賠償請求(721条)、③遺贈(965条)です。これらについては、胎児が生きて生まれてきたことを条件として、遡って権利能力を認める「停止条件説」が判例・通説です。なお、「解除条件説」(生きて生まれることを条件に出生前から権利能力あり)という考え方もありますが、判例(大判昭7.10.6)は停止条件説を採用しており、胎児が出生前の段階では権利能力がないと判示しています。
停止条件説の実践的な帰結として重要なのは、「胎児の出生前に、親が胎児を代理して加害者に損害賠償請求することはできない」という点です。胎児はまだ権利能力を取得していないため、代理の客体となれず、したがって代理人(親)も法的な請求行為をすることができません。この判例の結論は試験で頻繁に問われます。
また、胎児の段階では死産となってしまった場合(出生できなかった場合)は、遡及効が生じないため、最終的に権利能力は認められません。
具体例
Aが交通事故で死亡した時点でAの妻Bは妊娠中であった。この場合、胎児Cは生きて生まれてきたときに限り、Aの財産を相続できる(886条1項)。また、加害者Dへの損害賠償請求権も出生後に行使できる(721条)。しかし、出生前の段階でBがCを代理してDに請求することはできない(大判昭7.10.6)。

権利能力の取得と胎児の例外規定
ポイント整理
- ・対象場面が①相続・②不法行為損害賠償請求・③遺贈のいずれかであること
- ・胎児が生きて生まれてきたこと(停止条件説)
効果
- ・上記3場面に限り、出生時に遡って権利能力が認められる
- ・出生前は代理の客体となれないため、親による代理行為は不可
- ・死産の場合は遡及効が生じず、権利能力は認められない
条文(第3条1項・886条・721条・965条条)
第3条(権利能力)私権の享有は、出生に始まる。 第886条第1項(相続)胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。 第721条(損害賠償請求)胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。 第965条(遺贈)第886条及び第891条の規定は、受遺者について準用する。
重要メモ
- ・「胎児の例外3場面(相続・不法行為損賠・遺贈)を暗記」と「出生前は代理不可(大判昭7.10.6)」が試験の核心
- ・原則:胎児は出生前に権利能力なし(3条1項)
- ・例外3場面:①相続(886条1項)②不法行為に基づく損害賠償請求(721条)③遺贈(965条)——生きて生まれてきたときに遡って認める(停止条件説)
- ・停止条件説の実践的帰結:出生前は権利能力がないため、親が胎児を代理して加害者に損害賠償請求することはできない(大判昭7.10.6)
- ・死産の場合:遡及効は生じず権利能力は認められない
- ・例外3場面以外(売買・贈与など通常の法律行為)には胎児の権利能力は認められない
- ・過去問頻出:「母は胎児の出生前に代理して損賠請求できる→✕」
意思能力と意思無能力者の保護
第3条の2条簡単にいうと
4歳の子どもが土地売買の契約をしても、その意味を理解しているとはいえません。意思能力を欠く「意思無能力者」の契約はどうなるのでしょうか?
意思能力とは、法律行為の意味・内容を理解し、自らの意思に基づいて判断する精神的な能力のことです。民法3条の2はこれを明文化し、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と規定しています。
意思能力の有無は、一般的に7〜10歳程度の精神的発達を基準として個別に判断されます。意思無能力者の典型例としては、幼児(4歳児など)、重度の認知症患者、泥酔状態にある者などが挙げられます。これらの者は、法律行為の意味を理解する能力を欠くとして、その行為は無効と扱われます。
意思無能力による「無効」は、行為能力制限に基づく「取消し」と根本的に異なります。無効は最初から法律効果が生じておらず、追認によって有効にすることができません。また、無効の主張は誰でも(原則として)行うことができます。これに対して取消しは、取消権を持つ特定の者しか主張できず、追認によって確定的に有効となります。
なお、意思無能力者が行った法律行為が無効とされた場合、当事者は受け取った給付を返還しなければなりませんが(121条の2第1項)、意思無能力者の保護のために、現存利益の範囲でのみ返還すれば足ります(121条の2第3項)。この「現存利益の返還」の規律は行為能力制限の場合と共通です。
具体例
重度の認知症により意思能力を欠く状態にあるAが、不動産業者Bとの間で自宅の売買契約を締結した。この場合、Aの意思表示は意思無能力によって無効であり、Bは所有権を取得できない。追認によって有効にすることもできない。

意思能力と契約の有効性
ポイント整理
- ・意思表示をした時点において意思能力を欠いていたこと
- ・意思能力の欠如は個別具体的に判断される
効果
- ・法律行為は無効(3条の2)——最初から法律効果なし
- ・追認によって有効にすることはできない
- ・無効は誰でも主張できる(原則)
- ・原状回復義務あり、ただし意思無能力者は現存利益の返還のみで足りる(121条の2第3項)
条文(第3条の2条)
第3条の2(意思能力)法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
重要メモ
- ・「意思無能力=無効(3条の2)、行為能力制限=取消可能」という対比が最重要
- ・意思無能力者の典型:4歳児・重度認知症患者・泥酔状態の者(7〜10歳程度の精神的発達が基準)
- ・無効の特徴3点:①最初から法律効果なし②追認によって有効にできない③誰でも主張可(原則)
- ・取消しとの対比:取消しは追認で確定的有効・取消権者のみ主張可——この違いを問う問題が頻出
- ・原状回復の特則(121条の2第3項):意思無能力者は現存利益の範囲のみ返還義務(行為能力制限の場合と共通)
- ・重要度C。無効と取消しの違いを一言で言えるようにしておく
制限行為能力者制度の概要
第4条・7条・11条・15条条簡単にいうと
判断能力が不十分な人を守るために、民法は「制限行為能力者制度」を設けています。4つの類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)の全体像を把握しましょう。
制限行為能力者制度とは、判断能力が不十分な者の財産を守るために、その者に保護者を付け、保護者の同意なく行われた重要な契約を後から取り消せるようにする制度です。制限行為能力者が単独で行った法律行為は「取り消すことができる」とされており(取消可能行為)、取消しにより法律行為は遡及的に無効となります(121条)。
制限行為能力者には4つの類型があります。第1の「未成年者」は満18歳未満の者であり、2022年4月1日の民法改正施行により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました(4条)。第2の「成年被後見人」は判断能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者です(7条・8条)。第3の「被保佐人」は判断能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者です(11条・12条)。第4の「被補助人」は判断能力が不十分な者で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者です(15条・16条)。
判断能力の程度としては、成年被後見人が最も重度(ほぼ全く判断能力を欠く)、次いで被保佐人(著しく不十分)、被補助人(不十分)の順となり、未成年者については年齢により一律に行為能力を制限するものです。
各類型の保護者には、代理権・同意権・追認権・取消権のうち一定の権限が与えられますが、その内容は類型によって大きく異なります。特に成年後見人には同意権がない(同意しても取り消せる)点、保佐人・補助人の代理権は家庭裁判所の審判がある場合のみ付与される点が重要な試験ポイントとなっています。
具体例
20歳の大学生Aは法的に成年であり、完全な行為能力を持つ。これに対して、17歳の高校生Bは未成年者として法定代理人(親権者)の同意なく行った契約を取り消すことができる。また、重度の認知症により判断能力を欠くCが家裁の後見開始審判を受けると成年被後見人となり、成年後見人が保護者となる。
ポイント整理
- ・未成年者:満18歳未満であること(4条)
- ・成年被後見人:判断能力を欠く常況にあること+家庭裁判所の後見開始の審判(7条)
- ・被保佐人:判断能力が著しく不十分な状況にあること+家庭裁判所の保佐開始の審判(11条)
- ・被補助人:判断能力が不十分な状況にあること+家庭裁判所の補助開始の審判(15条)
効果
- ・保護者の同意なく行った重要な法律行為は取り消すことができる
- ・取消しにより法律行為は遡及的に無効となる(121条)
- ・取消権は追認可能時から5年・行為時から20年の消滅時効にかかる(126条)
条文(第4条・7条・11条・15条条)
第4条(成年)年齢十八歳をもって、成年とする。 第7条(後見開始の審判)精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。 第11条(保佐開始の審判)精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。 第15条(補助開始の審判)精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
重要メモ
- ・「4類型の判断能力の序列(欠く常況→著しく不十分→不十分)」と「各保護者の権限の違い(特に成年後見人に同意権なし)」が頻出
- ・4類型:①未成年者(18歳未満・審判不要)②成年被後見人(欠く常況+後見開始審判)③被保佐人(著しく不十分+保佐開始審判)④被補助人(不十分+補助開始審判)
- ・取消権の消滅時効:追認可能時から5年・行為時から20年(126条)
- ・保護者の4権限(代理権・同意権・追認権・取消権)の有無は類型ごとに異なる——まとめ表で一括整理
- ・判断能力が高い順:被補助人>被保佐人>成年被後見人。保護の必要性は逆順
- ・重要度A。4類型の条件と審判要件・保護者の権限一覧表を完全に頭に入れること
未成年者の法律行為
第5条・6条条簡単にいうと
未成年者が親の同意なく勝手に契約した場合、その契約はどうなるのでしょうか。原則と例外をしっかり確認しましょう。
未成年者(満18歳未満の者)が法律行為をするには、原則として法定代理人(親権者または未成年後見人)の同意が必要です(5条1項本文)。同意を得ずに行った法律行為は取り消すことができます(5条2項)。取消しは未成年者本人または法定代理人が行うことができます(120条1項)。
ただし、以下の場合には未成年者が単独で有効な法律行為をすることができます。第1に、「単に権利を得、または義務を免れる行為」は法定代理人の同意なく単独でできます(5条1項但書)。例としては、無償で物をもらう(贈与の受領)・借金を免除してもらうなど、未成年者にとって利益しかない行為が挙げられます。第2に、「法定代理人から処分を許された財産の処分」も単独でできます(5条3項)。ただし許可された目的の範囲内に限られ、学費として渡されたお金でゲームを買う行為などは目的外として取り消すことができます。第3に、「法定代理人から一種または数種の営業を許可された場合のその営業に関する行為」も単独でできます(6条1項)。
なお、未成年者が婚姻すると成年に達したとみなす「成年擬制」の規定(旧753条)は2022年の民法改正で廃止されています。現行法では成年年齢が18歳となったため、この規定は不要となりました。
法定代理人の権限は、①代理権(本人の代わりに契約を締結する)、②同意権(事前に契約内容を確認して承認する)、③追認権(事後に契約を承認する)、④取消権(同意なく行われた契約を取り消す)の4つです。追認権については、家庭裁判所の審判によって代理権を付与することもできます(876条の4第1項)。
具体例
17歳のAが親の同意なく、友人Bから時計を5万円で購入した場合、Aまたは親は後でこの売買契約を取り消すことができる。これに対して、Aが祖父Cから時計を無償でもらった場合(贈与の受領)は、単に権利を得る行為として単独でできる。

未成年者の法律行為(契約)
ポイント整理
- ・未成年者(18歳未満)が法律行為をすること
- ・法定代理人の同意を得ていないこと
- ・例外:①単に権利を得・義務を免れる行為、②処分を許された財産の処分(目的内)、③許可された営業に関する行為
効果
- ・同意なき法律行為は取り消すことができる(5条2項)
- ・取消権者:未成年者本人または法定代理人(120条1項)
- ・取消しで遡及的無効(121条)、追認で確定的有効(122条)
条文(第5条・6条条)
第5条第1項(未成年者の法律行為)未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。 第5条第2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。 第5条第3項 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。 第6条第1項(未成年者の営業の許可)一種又は数種の営業を許可された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
重要メモ
- ・「法定代理人の同意なし→取消可能、例外3つは単独OK」が核心
- ・原則:未成年者(18歳未満)が法定代理人の同意なく行った法律行為→取り消すことができる(5条2項)
- ・例外①:単に権利を得・義務を免れる行為(5条1項但書)——無償贈与の受領・借金免除など
- ・例外②:処分を許された財産の処分(5条3項)——ただし許可された目的の範囲内に限る(学費でゲーム購入→目的外で取消可)
- ・例外③:許可された営業に関する行為(6条1項)——許可された営業の範囲内では成年者と同一の行為能力
- ・法定代理人の4権限:代理権・同意権・追認権・取消権——未成年者本人も取消権・追認権あり(追認は成年後かつ取消権を知った後・124条)
- ・成年擬制(旧753条)は2022年改正で廃止——現行法では不要
- ・重要度A。例外3つと学費→ゲーム購入の具体例判断を確実に押さえる
法定代理人の権限(代理権・同意権・追認権・取消権)
第5条・120条・121条・122条条簡単にいうと
親などの法定代理人には、未成年者の契約に関してどんな権限があるのでしょうか。4つの権限(代理権・同意権・追認権・取消権)と追認の効果を確認しましょう。
法定代理人(親権者または未成年後見人)には、制限行為能力者(主に未成年者)を保護するために以下の4つの権限が認められています。
第1の「代理権」とは、制限行為能力者の代わりに法定代理人が本人名義で契約を締結する権限です。未成年者の親権者は当然に代理権を持ちますが、成年後見人も当然に代理権を持ちます。これに対して保佐人・補助人については、当然には代理権を持たず、家庭裁判所の審判によって付与される場合のみ代理権を行使できます(876条の4第1項・876条の9第1項)。
第2の「同意権」とは、制限行為能力者が契約を締結する前に事前に承認する権限です。法定代理人が同意を与えると、制限行為能力者は単独で有効な法律行為をすることができます。ただし、成年後見人には同意権がありません(9条)。成年被後見人の行為は同意があっても取り消すことができます。
第3の「追認権」とは、制限行為能力者が同意なく行った法律行為を事後的に承認する権限です(122条)。追認によって、当該法律行為は取消しができない確定的に有効な法律行為となります(122条)。追認は取消権を有する者が、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にする必要があります(124条1項)。
第4の「取消権」とは、制限行為能力者が同意なく行った法律行為を取り消す権限です(120条1項)。取消権は制限行為能力者本人も行使できます。取消権は追認可能時から5年または行為時から20年の経過によって消滅します(126条)。
取消しの効果として、取り消された法律行為は遡及して無効となります(121条)。相手方はすでに受け取った給付を返還しなければならず(121条の2第1項)、制限行為能力者は現存利益のみの返還で足ります(121条の2第3項)。なお、被保佐人・被補助人の場合、家庭裁判所の審判によって付与される代理権については、本人の同意が必要とされています(876条の4第2項・876条の9第2項)。
具体例
17歳Aが親の同意なく50万円のギターを購入した。後日、親Cがこの売買契約を追認すると(122条)、以後取り消すことができなくなる。逆に親Cが取消権を行使すれば、契約は遡及的に無効となり、AはギターをB楽器店に返し、B楽器店はAに50万円を返還しなければならない。

法定代理人の追認
ポイント整理
- ・代理権行使:代理権限があること、本人のためにすることの明示(顕名)
- ・追認:取消しの原因が消滅した後であること(124条1項)、取消権を有する者がすること
- ・取消し:取消権が消滅時効(126条)にかかっていないこと
効果
- ・同意権行使→制限行為能力者が単独で有効な法律行為可能
- ・追認(122条)→確定的有効、以後取り消せない
- ・取消し(120条)→遡及的無効(121条)、現存利益の返還義務(121条の2第3項)
条文(第5条・120条・121条・122条条)
第120条第1項(取消権者)行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。 第122条(取消しと追認)取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認をすることができる。 第126条(取消権の消滅時効)取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
重要メモ
- ・「成年後見人に同意権なし(9条)」と「追認→確定有効・取消→遡及無効」の効果の違いが最頻出
- ・代理権:法定代理人(未成年)・成年後見人→当然に付与。保佐人・補助人→家庭裁判所の審判で付与のみ(876条の4第1項・876条の9第1項)
- ・同意権:法定代理人(未成年)・保佐人→あり。成年後見人→なし(9条)。補助人→審判で付与のみ
- ・追認(122条):追認可能時以降に取消権を有する者が行う(124条1項)。追認後は取消不可
- ・取消権(120条1項):制限行為能力者本人も行使可能。追認可能時から5年・行為時から20年で消滅(126条)
- ・取消しの効果:遡及的無効(121条)。制限行為能力者は現存利益のみ返還(121条の2第3項)
- ・重要度A。保護者ごとの権限の違いは比較表で整理すること
取消しの効果と現存利益の返還
第121条・121条の2条簡単にいうと
制限行為能力者が契約を取り消したとき、すでに受け取ったお金や物はどうなるのでしょうか。「現存利益」という概念を理解しましょう。
制限行為能力者が法律行為を取り消すと、その法律行為は遡及して無効となります(121条)。つまり最初から契約をしていなかったものとして扱われます。その結果、契約の各当事者はすでに受け取った給付を相手方に返還する義務が生じます(121条の2第1項)。これを「原状回復義務」といいます。
原則として、両当事者は受け取ったものを全額・現物のまま返還しなければなりません。しかし、制限行為能力者や意思無能力者を保護するため、民法は特則を設けています。意思無能力者または制限行為能力者が行った法律行為が取り消された場合、その者は現に利益を受けている限度において(現存利益)返還すれば足ります(121条の2第3項)。
「現存利益」とは、取消し時点で当事者の財産として現実に残存している利益のことです。たとえば、未成年者Aが親の同意なく10万円の商品を購入し、受け取った10万円のうち6万円をギャンブルで消費した場合、現存利益は4万円だけなので、Aが返還すべき金額は4万円に限られます。これに対して、Aが6万円を生活費(食費・交通費など)として消費した場合、生活費は本来Aが自ら負担すべきものであり、その分だけAの財産支出が節約されているため、6万円も「現存利益」として残存していると考えられます。この場合は10万円全額を返還しなければなりません。
一方、相手方(制限行為能力者でない通常の成年者)は、受け取った給付を全額返還しなければならず、現存利益の特則の適用はありません。
具体例
未成年者Aが親の同意なく10万円の時計を購入し、代金10万円を支払った後、後日取消しを行使した。Aが10万円のうち6万円をギャンブルで使った場合→Aの返還義務は残存する4万円のみ。6万円を食費として使った場合→出費が節約されているため全額10万円が現存利益として返還義務あり。

取消しの効果(現存利益の返還)
ポイント整理
- ・制限行為能力者または意思無能力者が行った法律行為であること
- ・取消しが有効に行われたこと
- ・給付を受領していること
効果
- ・取消し後→法律行為は遡及的に無効(121条)
- ・相手方(成年者)→受領した給付を全額返還義務
- ・制限行為能力者・意思無能力者→現存利益の範囲でのみ返還義務(121条の2第3項)
- ・消費した代金が生活費節約に充てられた場合→その額も現存利益に含まれる
条文(第121条・121条の2条)
第121条(取消しの効果)取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。 第121条の2第1項(原状回復の義務)無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。 第121条の2第3項 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
重要メモ
- ・「制限行為能力者は現存利益のみ返還でOK(121条の2第3項)」が頻出
- ・取消しの効果:法律行為は遡及的に無効(121条)——原状回復義務が発生(121条の2第1項)
- ・成年者(通常の相手方):受領した給付を全額返還
- ・制限行為能力者・意思無能力者:現存利益の範囲のみ返還義務(121条の2第3項)
- ・現存利益の判断:ギャンブルで消費→現存なし→消費分は返還不要。生活費として消費→出費が節約されているため全額返還必要
- ・過去問頻出(H11-27-オ):未成年者が金銭を借りて取り消した場合→現存利益のみ返還でよい→○
- ・重要度A。生活費消費と浪費消費の区別を具体例で説明できるようにする
成年被後見人の法律行為
第7条・8条・9条条簡単にいうと
判断能力がほとんどない成年者を守る制度が「後見制度」です。成年被後見人の法律行為は原則としてほぼ取り消せますが、例外もあります。
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所が後見開始の審判をすることで保護の対象となる者です(7条・8条)。後見開始の審判がなされると、成年後見人が選任されます。判断能力が著しく失われた重度認知症患者や知的障害者などが典型例です。
成年被後見人の法律行為については、原則として単独で行うことができず(9条本文)、成年後見人が代わりに行為を行います。同意権の付与がないため、仮に成年後見人が事前に同意を与えたとしても、成年被後見人の行為を有効にすることはできません。これは「成年被後見人の判断能力が非常に低く、同意を与えても本人が同意の内容を理解できない可能性が高い」という趣旨によるものです。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は例外として単独でできます(9条但書)。スーパーでの食料品購入や日常的なバス代の支払いなど、日常生活に必要な行為については取り消すことができません。これ以外の行為(不動産の売買・預金の引き出し・贈与など)については、成年後見人の代理によって行われます。
成年後見人の権限は以下の通りです。代理権(○:当然に付与)、同意権(×:なし)、追認権(○)、取消権(○)。特に「同意権がない」点は最重要の試験ポイントです。なお、成年被後見人本人も自分の行為を取り消すことができます(120条1項)。また、居住用不動産の処分については、成年後見人といえども家庭裁判所の許可が必要です(859条の3)。
具体例
重度認知症のAが成年被後見人として後見開始の審判を受け、成年後見人Bが選任された。Aが単独で自宅土地の売買契約を締結した場合、Bはこの契約を取り消すことができる(9条)。これに対して、Aがスーパーで日用食料品を購入する行為は日常生活に関する行為として取り消せない(9条但書)。

成年被後見人の法的地位と制限
ポイント整理
- ・精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあること(7条)
- ・家庭裁判所の後見開始の審判を受けていること(7条)
- ・日用品購入等の日常生活に関する行為には例外適用あり(9条但書)
効果
- ・原則:成年被後見人の単独行為は取り消すことができる(9条本文)
- ・例外:日用品購入等の日常生活行為は単独でできる(取消不可・9条但書)
- ・成年後見人の同意があっても有効にならない(同意権なし)
- ・居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要(859条の3)
条文(第7条・8条・9条条)
第9条(成年被後見人の法律行為)成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
重要メモ
- ・「成年後見人に同意権なし(9条)」と「日用品購入は例外で取消不可(9条但書)」が最頻出ポイント
- ・要件:①精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある②家庭裁判所の後見開始審判(7条・8条)
- ・原則:成年被後見人の単独行為は取り消すことができる(9条本文)——成年後見人の同意があっても取消可(同意権なしの理由)
- ・例外:日用品の購入その他日常生活に関する行為は単独でできる・取消不可(9条但書)
- ・成年後見人の権限:代理権○・同意権×・追認権○・取消権○
- ・成年被後見人本人も自らの行為を取り消せる(120条1項)——「本人は取消不可」という誤りに注意
- ・居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要(859条の3)
- ・重要度A。「同意権なし」「日用品例外」を確実に押さえる
被保佐人の法律行為
第11条・12条・13条条簡単にいうと
判断能力が「著しく不十分」な被保佐人の場合、どんな行為に保佐人の同意が必要なのでしょうか。重要行為(13条1項)の内容と取消しの仕組みを確認しましょう。
被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者について、家庭裁判所が保佐開始の審判をすることで保護の対象となる者です(11条・12条)。判断能力が「欠く常況」の成年被後見人よりも軽く、「不十分」の被補助人よりも重い状態です。
被保佐人は、原則として単独で法律行為をすることができます(同意がなくても取り消せない行為が多数あります)。ただし、民法13条1項に列挙された重要な行為については、保佐人の同意が必要です。同意がなければ取り消すことができます(13条4項)。
13条1項に列挙された重要な行為は以下の通りです。①元本を領収し、または利用すること、②借財または保証をすること、③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること(不動産の売買・担保設定等はすべて同意必要)、④訴訟行為をすること、⑤贈与・和解・仲裁合意をすること、⑥相続の承認・放棄・遺産分割をすること、⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること、⑧新築・改築・増築または大修繕をすること、⑨民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
参考書の重要ポイントとして、不動産については高額なものも低額なものもすべて同意が必要です。これに対して動産(時計・車など)については、重要な財産かどうかによって判断されます。通常の動産売買は13条1項の重要行為に含まれないため、保佐人の同意なく単独でできる場合が多いです。
保佐人の権限は、代理権(△:家庭裁判所の審判がある場合のみ・876条の4第1項)、同意権(○)、追認権(○)、取消権(○)です。代理権の付与には本人の同意が必要です(876条の4第2項)。
具体例
被保佐人Aが保佐人Bの同意なく自宅土地を第三者Cに売却した場合、不動産の売却は13条1項3号の重要な行為に該当するため、BはこのACの売買契約を取り消すことができる(13条4項)。これに対して、Aが書店で参考書を購入する行為は日常的な動産売買として同意なく単独でできる。

被保佐人の制度と権限関係
ポイント整理
- ・精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であること(11条)
- ・家庭裁判所の保佐開始の審判を受けていること(11条)
- ・13条1項に列挙された重要な行為を同意なく行ったこと
効果
- ・13条1項に列挙された重要な行為を同意なく行った場合→取り消すことができる(13条4項)
- ・それ以外の行為→単独で有効にできる(取消不可)
- ・家庭裁判所の審判があれば保佐人に代理権付与可(876条の4第1項)、ただし本人同意必要
条文(第11条・12条・13条条)
第11条(保佐開始の審判)精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、(略)保佐開始の審判をすることができる。 第13条第1項(保佐人の同意を要する行為等)被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。一 元本を領収し、又は利用すること。二 借財又は保証をすること。三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。(以下略) 第13条第4項 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
重要メモ
- ・「13条1項の重要行為(不動産・借財・保証・元本利用など)は保佐人の同意必要→なければ取消可」が核心
- ・要件:①判断能力が著しく不十分②家庭裁判所の保佐開始審判(11条・12条)
- ・原則:被保佐人は単独で法律行為可能(同意なくても取消不可)
- ・例外(13条1項列挙):①元本の領収・利用②借財・保証③不動産その他重要財産の権利得喪④訴訟行為⑤贈与・和解・仲裁合意⑥相続の承認・放棄・遺産分割⑦負担付贈与等の拒絶・承諾⑧新築・改築等⑨長期賃貸借(602条超)
- ・不動産はすべて同意必要。動産は重要なもののみ(過去問:「動産の譲渡は常に取消可→✕」)
- ・保佐人の権限:代理権→審判で付与のみ(876条の4)・同意権○・追認権○・取消権○
- ・代理権付与の審判には本人の同意が必要(876条の4第2項)
- ・重要度A。13条1項列挙事項と不動産・動産の区別を頭に入れる
被補助人の法律行為
第15条・16条・17条条簡単にいうと
被補助人は制限行為能力者の中で最も制約が軽い類型です。家庭裁判所の審判で補助人が付く仕組みと、本人同意が必要となる特徴を学びましょう。
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者について、家庭裁判所が補助開始の審判をすることで保護の対象となる者です(15条・16条)。被補助人は制限行為能力者の中で最も軽い類型であり、判断能力が「不十分」に留まることから、本人の自律を最大限尊重した制度設計となっています。
被補助人は、原則として単独で法律行為をすることができます(17条1項本文)。補助人の同意が必要となるのは、家庭裁判所の審判によって特定の行為に同意権が付与された場合のみです(17条1項但書)。この「特定の行為」は13条1項に列挙された重要行為の中から審判で指定されたものに限られます。同意が必要とされた行為を補助人の同意なく行った場合は、取り消すことができます(17条1項但書)。
被補助人制度の最大の特徴は、「すべての開始・権限付与に本人の同意が必要」という点です。具体的には、①補助開始の審判(本人以外の者の請求による場合に本人の同意必要・15条2項)、②補助人への同意権付与の審判(本人の同意必要・17条2項)、③補助人への代理権付与の審判(本人の同意必要・876条の9第2項)の3つすべてで本人の同意が求められます。これは他の類型(未成年者・成年被後見人・被保佐人)にはない特徴であり、試験頻出ポイントです。
補助人の権限は、代理権(△:審判で付与のみ)、同意権(△:審判で付与のみ)、追認権(△:同意権がある行為について)、取消権(△:同意権がある行為について)です。これらの権限はすべて家庭裁判所の審判によって付与された範囲に限られ、当然には何の権限もないことに注意が必要です。
具体例
軽度認知症のAについて補助開始の審判が行われ、不動産の処分について補助人Bに同意権が付与された。Aがこの審判を経ずして自宅を売却しようとした場合、Bの同意が必要であり、同意なく行った売買契約はBが取り消すことができる(17条1項但書)。なお、補助開始の審判は本人A以外の者が請求する場合はAの同意が必要(15条2項)。

被補助人の判断能力と法的行為
ポイント整理
- ・精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であること(15条)
- ・家庭裁判所の補助開始の審判を受けていること(15条)
- ・本人以外の者の請求による場合は本人の同意が必要(15条2項)
- ・同意権が審判で付与された特定の行為を同意なく行ったこと(17条1項但書)
効果
- ・審判で指定された特定の行為を同意なく行った場合→取り消すことができる(17条1項但書)
- ・それ以外の行為→単独で有効にできる(取消不可)
- ・補助開始・同意権付与・代理権付与すべてに本人の同意が必要(他類型にない特徴)
条文(第15条・16条・17条条)
第15条第1項(補助開始の審判)精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、(略)補助開始の審判をすることができる。ただし、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 第15条第2項 本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 第17条第1項(補助人の同意を要する行為等)家庭裁判所は、(略)17条所定の行為につき補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。この場合において、その同意を得ないでした行為は、取り消すことができる。 第17条第2項 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
重要メモ
- ・「補助人の権限はすべて審判で付与のみ(当然には何もなし)」と「補助開始・同意権・代理権付与すべてに本人同意必要」が被補助人特有の最頻出ポイント
- ・要件:①判断能力が不十分②家庭裁判所の補助開始審判(15条・16条)——本人以外の請求には本人の同意必要(15条2項)
- ・原則:被補助人は単独で法律行為可能(17条1項本文)
- ・例外:家庭裁判所の審判で指定された特定の行為(13条1項の中から選択)について補助人の同意が必要(17条1項但書)——同意なしで取消可
- ・「本人同意」が3場面で必要:①補助開始審判(本人以外の請求の場合・15条2項)②同意権付与審判(17条2項)③代理権付与審判(876条の9第2項)——他の類型にはない被補助人特有の規定
- ・補助人の権限:代理権△(審判で付与のみ)・同意権△(審判で付与のみ)・追認権△・取消権△(同意権がある行為についてのみ)
- ・重要度C。成年被後見人・被保佐人をマスターしてから確認する程度でよいが、本人同意3場面は試験で問われる
相手方の催告権
第20条条簡単にいうと
制限行為能力者と契約した相手方は、いつ取り消されるかわからず不安定な立場に置かれます。そこで相手方には「催告権」が認められています。
制限行為能力者と契約をした相手方は、契約がいつ取り消されるかわからないという不安定な地位に置かれます。この不安定さを解消するために、民法20条は相手方に「催告権」を認めています。催告権とは、1か月以上の期間を定めて「追認するか取り消すかを確答せよ」と問い合わせる権利です。催告に対して確答がなかった場合の効果は、誰に催告したかによって異なります。
第1のケースとして、「成年に達した本人(制限行為能力者ではなくなった後の本人)」「保護者(法定代理人・保佐人・補助人)」「能力回復後の本人」に対して催告した場合、確答がなければ追認したものとみなされます(20条1項・2項)。保護者は適切な判断ができる者であり、返答しないことは「認める」と解釈されるからです。
第2のケースとして、「まだ能力回復前の成年被後見人(または制限行為能力者のまま)に直接」催告した場合、確答がなければ取り消したものとみなされます(20条3項。なお98条の2参照)。能力が十分でない者は、催告の意味を理解して返答できないかもしれないため、保護的に「取消し」とみなします。
第3のケースとして、「保佐人または補助人」が審判で定められた行為について同意するかどうかの催告がなされた場合、確答がなければ取り消したものとみなされます(20条4項)。
このように、催告の相手方が「判断能力のある者(保護者・能力回復後の本人)」かどうかによって、確答なしの効果が「追認みなし」か「取消しみなし」か真逆になる点が最重要ポイントです。
具体例
相手方BがA(被保佐人)の保佐人Cに対して「1か月以内に追認するか回答を」と催告したが、Cが確答しなかった。この場合、追認したものとみなされる(20条2項)。これに対して、BがAに直接催告し(Aはまだ能力回復前)、Aが確答しなかった場合は、取り消したものとみなされる(20条3項)。

相手方の催告権
ポイント整理
- ・相手方が1か月以上の期間を定めて催告すること(20条)
- ・催告は制限行為能力者・保護者・能力回復後の本人のいずれかに対して行うこと
効果
- ・保護者・能力回復後の本人に催告→確答なし→追認したものとみなす(20条1項・2項)
- ・能力回復前の本人に直接催告→確答なし→取り消したものとみなす(20条3項)
- ・保佐人・補助人(同意要否の催告)→確答なし→取り消したものとみなす(20条4項)
条文(第20条条)
第20条第1項(制限行為能力者の相手方の催告権)制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対して、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。 第20条第2項 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対して前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。 第20条第3項 特別の方式を要する行為については、その期間内に、その方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 第20条第4項 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内に追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
重要メモ
- ・「催告相手が保護者・能力回復後の本人→確答なしで追認みなし、能力回復前の本人に直接→確答なしで取消しみなし」という真逆の効果が最頻出ポイント
- ・制度趣旨:相手方の不安定な地位を解消するため、1か月以上の期間を定めた催告権を認める(20条)
- ・催告→確答なし→「追認みなし」となる相手方:①能力回復後の本人(成年になった後等・20条1項)②法定代理人・保佐人・補助人などの保護者(20条2項)
- ・催告→確答なし→「取消しみなし」となる相手方:①能力回復前の本人に直接催告(20条3項・98条の2)②被保佐人・被補助人本人への同意取得催告(20条4項)
- ・1か月以上の期間を定めることが必須要件
- ・記述式での出題歴あり——催告相手と確答なしの効果の組み合わせを正確に暗記すること
- ・重要度B
制限行為能力者の詐術
第21条条簡単にいうと
未成年者が「私は成年者です」とウソをついて契約した場合にまで保護する必要はありません。この場合、制限行為能力者でも取消権を行使できなくなります。
制限行為能力者の制度は、判断能力が十分でない者を保護するためのものです。しかし、制限行為能力者自らが積極的に相手方を騙して(詐術を用いて)契約をした場合にまで保護を与えることは妥当ではありません。そこで民法21条は、「制限行為能力者が詐術を用いて相手方を信じさせ契約した場合には、取り消すことができない」と規定しています。
詐術に「あたる」行為と「あたらない」行為の区別が重要です。判例(最判昭44.2.13)は以下のような基準を示しています。第1に、「積極的な行動」(身分証明書の偽造・年齢の積極的な詐称など)は詐術にあたります。第2に、「単なる黙秘」(契約時に自分が制限行為能力者であることを相手方に告げないだけ)は詐術にあたりません。民法は相手方に確認義務を課していないため、黙っているだけでは詐術とはなりません。第3に、「黙秘+α」(単なる黙秘に加えて、相手方が勘違いするような言動・発言をした場合)は詐術にあたります。たとえば「年齢は関係ありません」と言ったり、成年者のふりをする言動をするなど、相手方の誤信を積極的に利用した場合です。
詐術を用いた場合の効果として、制限行為能力者本人だけでなく、その保護者(法定代理人・保佐人・補助人)も取消権を失います(21条)。これは詐術が制限行為能力者の側の不正行為であるため、制度全体の信頼性を守るためです。なお、相手方が詐術を行ったことについて悪意・有過失であっても、21条の適用があるかについては議論があります。
具体例
17歳のAが偽造した運転免許証(年齢を21歳と記載)を見せてBから高額商品を購入した場合、Aは詐術を用いたものとして取消権を失う(21条)。これに対して、Aが何も告げず(黙秘のみ)でBと契約した場合は詐術にあたらず、取り消すことができる。

制限行為能力者の詐術
ポイント整理
- ・制限行為能力者が詐術を用いたこと
- ・詐術:積極的行動(偽造等)または黙秘+相手方の誤信を招く言動
- ・単なる黙秘のみでは詐術にあたらない
効果
- ・制限行為能力者・保護者ともに取消権を行使できなくなる(21条)
- ・契約は確定的に有効となる
条文(第21条条)
第21条(制限行為能力者の詐術)制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
重要メモ
- ・「詐術あり→取消不可(21条)、詐術なし(単なる黙秘)→取消可」が核心
- ・詐術の定義:制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために行う欺罔的行為(21条)
- ・詐術あたる:積極的な行動(身分証明書の偽造・年齢の積極的詐称)
- ・詐術あたらない:単なる黙秘——制限行為能力者であることを告げないだけでは詐術にならない
- ・詐術あたる(黙秘+α):黙秘に加えて相手方の誤信を招く言動・相手方の誤信に便乗した場合(最判昭44.2.13)
- ・効果:制限行為能力者本人だけでなく保護者(法定代理人・保佐人・補助人)も取消権を失う(21条)
- ・相手方の善意・悪意は問わない——詐術があれば取消権喪失
- ・重要度A。詐術あり・なしの具体例(偽造OK、黙秘NG、黙秘+α OK)を判別できるようにする
まとめ
関連判例
阪神電鉄事件
大判昭7.10.06停止条件説(判例)によれば、胎児の間は権利能力がなく、出生後に事故時点へさかのぼって権利能力が認められる 解除条件説(有力学説)によれば、胎児の間から権利能力を持ち、出生前でも代理人による権利行使が可能だが、死産の場合は権利能力がなかったことに戻る 注意:停止条件説では胎児の間に代理人が権利を処分することはできないため、出生前の和解はその胎児を拘束しない 民法721条の例外は損害賠償請求に限られ、相続(民法886条)・遺贈(民法965条)・認知(民法783条)にも胎児保護の規定がそれぞれ別途ある 内縁の妻・子への扶養利益の侵害は民法709条の不法行為として認められる(本件で確認)
詐術の場合の取消権の否定
最判昭33.10.14相続人自身は被相続人の包括承継人であり民法177条の「第三者」にはあたらない しかし、相続人からの譲受人(第三者)は民法177条の「第三者」にあたる 被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人は対抗関係に立ち、先に登記を備えた方が勝つ この結論は被相続人と相続人の間が贈与・売買・遺贈・死因贈与のいずれの場合にも同様に妥当する 注意:「相続人は第三者にならない=登記不要」という誤解が典型的なひっかけ問題になりやすい
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