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テキスト/憲法/第6節 財政

第6節 財政

第3章 統治

財政とは、国が活動するための金銭の収入と支出の仕組みです。税金の徴収や予算の使い道は国民生活に直結するため、憲法は財政に関する厳格なルールを定めています。特に財政民主主義の原則により、国会の関与が強く求められる分野です。

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財政の基本原則(租税法律主義)

84条・85条

簡単にいうと

簡単にいうと、国が税金を課すには必ず「法律」の根拠が必要です。租税法律主義の意味と適用範囲がポイントです。

■ 租税法律主義(84条)

憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定し、租税法律主義を定めています。租税法律主義の趣旨は、国民の財産権の保障と国会による財政民主主義の実現にあり、新たな税の創設や既存の税の変更は必ず国会の制定した法律によらなければなりません。租税とは、国家が国民に対し反対給付なしに強制的に徴収する金銭をいいます。

■ 国民健康保険の「料」と「税」の区別

国民健康保険の「料」と「税」については区別が問題となります。「税」として徴収する場合は84条が直接適用されます。一方、「料」として徴収する場合でも、強制徴収の性質を有し租税に類似する強制的負担(反対給付を伴わずに強制的に徴収されるもの)は、租税そのものではありませんが84条の趣旨が及ぶとされています(最判平成18年3月1日)。したがって、料であるからといって84条の制約が一切及ばないわけではなく、できる限り法律で具体的に定めるべきとされています。

■ 財政民主主義(83条)

財政に関しては、憲法83条が「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」と定め、財政国会中心主義(財政民主主義)の原則を宣言しています。国費の支出または国の債務負担についても、国会の議決に基づくことが必要とされており(85条)、行政府が独断で支出することは許されません。

具体例

市町村が行う国民健康保険の保険料は、租税以外の公課であるが、強制徴収の強制的度合いにおいては租税に類似する性質を有するため、憲法84条の趣旨が及ぶ(最判平18.3.1)。

ポイント整理

  • 新たに租税を課す場合:法律または法律の定める条件による必要がある
  • 現行の租税を変更する場合:法律または法律の定める条件による必要がある
  • 国民健康保険の「料」でも強制徴収の性質がある場合:84条の趣旨が及ぶ

効果

  • 法律の根拠なく行政機関が独自に租税を課すことは違憲
  • 国民健康保険料のように強制的に徴収される負担金についても、できる限り法律で具体的に定めることが求められる

条文(第84条・85条条)

(憲法84条)あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 (憲法83条)国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。 (憲法85条)国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

区分
根拠条文の適用
内容
租税(税)として徴収
84条 直接適用
法律または法律の定める条件が必要
保険料(料)として徴収(強制徴収の性質なし)
84条 適用なし
法律の具体的規定は不要
保険料(料)として徴収(強制徴収の性質あり)
84条の趣旨が及ぶ
できる限り法律で具体的に定めるべき

重要メモ

  • 「租税法律主義(84条):新たな課税・変更には法律または法律の定める条件が必要・国民健康保険「料」にも84条の趣旨が及ぶ」
  • 租税法律主義(84条):新たに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件による必要がある
  • 租税の特徴:反対給付を伴わず強制的に徴収される——反対給付のある使用料・手数料は租税ではない
  • 国民健康保険「税」:形式上の税なので84条が直接適用される
  • 国民健康保険「料」:税ではないが強制的に徴収するため84条の趣旨が及ぶ——できる限り法律で具体的に定める必要
  • 国費の支出(85条):国費の支出・国が債務を負担するには国会の議決が必要
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予算・決算

85条・86条・87条・90条

簡単にいうと

簡単にいうと、国の予算は内閣が作り国会が議決します。予備費・決算・会計検査院の仕組みに注目してください。

■ 予算の作成と議決(86条・60条)

予算とは、一会計年度(4月1日から翌年3月31日までの1年間)における国の収入・支出の見積もりです。内閣が毎会計年度予算を作成し、国会に提出して国会の議決を経て成立します(86条)。予算の先議権は衆議院にあり(60条1項)、衆議院の議決が参議院の議決と異なった場合は両院協議会を開きます。それでも不一致のときや参議院が受け取った後30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決となります(60条2項)。これを「衆議院の優越」といいます。

■ 予備費(87条)

予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は国会の議決に基づいて予備費を設けることができます(87条1項)。予備費の支出については内閣の責任で行えますが、内閣は事後に国会の承認を得なければなりません(87条2項)。なお、国費を支出し、または国が債務を負担するには国会の議決が必要です(85条)。

■ 決算と会計検査院(90条)

決算とは、一会計年度における国の収入・支出の実績を示すものです。国の収入支出の決算はすべて毎年会計検査院がこれを検査します(90条)。内閣は翌年度に、その検査報告とともに決算を国会に提出しなければなりません(90条)。会計検査院は、国の財政執行が適切かどうかを監視・検査する行政機関です。なお、収入の見積もりに過ぎない「歳入」の決算も、歳出と同様に会計検査院の検査を受けなければならない点に注意が必要です。

具体例

内閣が予算に計上されていなかった緊急の支出を予備費から支弁した場合、後日国会の承認を得なければならない(87条2項)。

予算・決算

予算・決算の流れと関係機関

ポイント整理

  • 予算の成立:内閣が作成し、国会の議決が必要(86条)
  • 予備費の設置:国会の議決に基づく(87条1項)
  • 予備費の支出:内閣の責任で支出できるが事後に国会の承認が必要(87条2項)
  • 決算の検査:毎年、会計検査院が検査する(90条)
  • 決算の国会提出:翌年度に検査報告とともに国会に提出(90条)

効果

  • 国会の議決なく内閣が独断で予算外の支出を行うことは原則不可
  • 予備費については内閣が支出できるが、事後の国会承認がなければ政治的責任を問われる
  • 歳入・歳出ともに会計検査院の検査対象となる

条文(第85条・86条・87条・90条条)

(憲法85条)国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。 (憲法86条)内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。 (憲法87条1項)予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。 (憲法87条2項)すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 (憲法90条)国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

項目
根拠条文
ポイント
予算の作成・提出
86条
内閣が作成し国会に提出・議決が必要
予算の先議権
60条1項
衆議院に先議権あり
衆議院の優越(予算)
60条2項
参議院が30日以内に議決しなければ衆院議決が国会議決に
予備費の設置
87条1項
国会の議決に基づき設置
予備費の支出
87条2項
内閣の責任で支出できるが事後に国会の承認が必要
国費の支出・債務負担
85条
国会の議決に基づくことが必要
決算の検査
90条
会計検査院が毎年検査(歳入・歳出ともに対象)
決算の国会提出
90条
翌年度に検査報告とともに内閣が提出

重要メモ

  • 「予算は内閣が作成→先に衆議院へ提出(60条1項)→国会の議決で成立・決算は会計検査院が検査・翌年度に国会へ報告」
  • 予算の作成・提出:内閣が作成し国会に提出(86条)——衆議院に先に提出(衆の予算先議権・60条1項)
  • 予算の議決:両院での議決が必要——不一致の場合は両院協議会(必要的)→それでも不一致なら衆の議決が国会の議決(60条2項)
  • 予備費(87条):見込み難い支出のため国会の議決を経て設置可——内閣の責任で支出できるが事後に国会の承認が必要
  • 決算(90条):会計検査院が毎年検査——内閣が次年度に検査報告とともに国会に提出
  • 会計検査院:内閣に対して独立した機関——行政機関だが内閣からの独立性を持つ

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
財政民主主義
財政処理は国会の議決に基づく
単なる民主主義ではなく財政に特化した原則
租税法律主義
課税には法律の根拠が必須
課税要件明確主義も含まれる点を忘れない
予算
内閣作成・国会議決・法律ではない
予算は法律と異なる法的性格を持つ
決算と会計検査
会計検査院が独立して事後チェック
会計検査院の独立性と事後統制の意義を理解
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