第4節 裁判所
第3章 統治
裁判所は、憲法の番人として違憲審査権を行使し、国民の人権を守る最後の砦です。この節では、裁判所の組織・権限・違憲審査制の仕組みと限界を学びます。特に付随的違憲審査制や統治行為論など、試験頻出の論点を確実に理解しましょう。
司法権の範囲と限界
第76条司法権とは、具体的な争訟について法を適用し権利義務を確定する作用です。憲法76条1項により全ての司法権は裁判所に属しますが、法律上の争訟に限られ、統治行為や部分社会の内部問題は司法審査の対象外となります。
具体例
A大学がB学生を退学処分にした事件で、Bは裁判で争いました。裁判所は「大学の単位認定は学問の自由に関わる内部問題で、著しく不当でない限り裁判所は審査しない」と判断しました(部分社会の法理)。
要件
- ・具体的な権利義務に関する紛争であること(法律上の争訟性)
- ・当事者間の対立する主張があること
- ・法律を適用して終局的に解決できる事件であること
効果・結論
- ・司法審査の対象となる事件は裁判所が判断
- ・統治行為(高度に政治的な問題)は裁判所の審査権が及ばない(砂川事件判例)
- ・部分社会の法理により自律的団体の内部問題は原則審査しない(昭和女子大学事件など)
条文(第76条)
第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。 ②特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
試験のポイント
- ・統治行為論は違憲審査権の自制理論。日米安保条約のような高度に政治的問題に適用(砂川事件)。試験では統治行為と部分社会の法理の区別が頻出
- ・苫米地事件では衆議院解散の効力が争われたが、直接国家統治の基本に関する高度に政治性を有する国家行為は司法審査の対象外とされた
- ・部分社会の法理は自律権を持つ団体内部の問題。ただし一般市民法秩序と直接関係する場合は審査可能(南九州税理士会事件では強制加入団体の政治献金が審査対象に)
違憲審査制(付随的違憲審査制)
第81条違憲審査権とは、法律・命令等が憲法に適合するかを審査し違憲の法令を無効とする権限です。日本は付随的違憲審査制を採用し、具体的な訴訟事件を前提として、その解決に必要な限度で違憲審査を行います(抽象的違憲審査は認められない)。
具体例
C社が薬局開設を申請したが、既存薬局との距離制限規定により不許可。C社は裁判で争い、最高裁は具体的事件の解決に必要な範囲で距離制限規定が憲法22条に違反するか審査しました(薬局距離制限事件)。
要件
- ・具体的な争訟事件が存在すること
- ・当該法令の合憲性判断が事件解決に必要であること
- ・最高裁判所が終審裁判所として判断(下級裁判所も違憲審査権を持つ)
効果・結論
- ・違憲と判断された法令は当該事件において適用されない
- ・最高裁の違憲判断には事実上の一般的効力が生じる
- ・法令違憲(法令自体が違憲)と適用違憲(特定の場合の適用が違憲)の2類型がある
条文(第81条)
第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
試験のポイント
- ・付随的審査制と抽象的審査制の違いは超頻出。日本では具体的事件がなければ違憲審査できない。法令自体への異議申立(抽象的審査)は不可
- ・法令違憲と適用違憲の区別が重要。適用違憲は法令自体は合憲だが特定の適用が違憲とする手法で、裁判所が謙抑的に判断する場合に用いる(猿払事件は法令違憲、堀越事件は適用違憲)
- ・議員定数不均衡事件では「事情判決の法理」類似の手法で違憲状態と判断しつつ選挙を無効としない判例理論が展開された。試験では違憲判断と効果の分離に注目
裁判所の組織と権限
第76-80条最高裁判所と下級裁判所(高裁・地裁・家裁・簡裁)で構成されます。特別裁判所の禁止(76条2項)により、弾劾裁判所を除き特別裁判所は設置できません。裁判官は独立性を保障され、良心に従い憲法と法律にのみ拘束されます(76条3項)。
具体例
D裁判官が汚職で訴追され国会の弾劾裁判所で裁かれた。これは例外的に認められる特別裁判所です。一方、かつての軍法会議は特別裁判所として禁止されています。
要件
- ・最高裁判所は終審裁判所として法令の違憲審査権を持つ
- ・下級裁判所は法律で定めて設置
- ・裁判官は身分保障を受け、心身の故障・弾劾以外で罷免されない(78条)
効果・結論
- ・全ての司法権は裁判所に属し、行政機関は終審として裁判できない(76条2項)
- ・裁判の公開原則(82条)により、裁判は公開法廷で行われる(例外:対審は公開、判決は非公開可)
- ・最高裁判所裁判官は国民審査の対象(79条)、下級裁判所裁判官は10年の任期制(80条)
条文(第76-80条)
第76条3項 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。 第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。
試験のポイント
- ・特別裁判所の禁止は戦前の軍法会議への反省。ただし弾劾裁判所は憲法が明示的に認める例外(64条)で、裁判官を罷免する国会の機関。試験では特別裁判所の例外として弾劾裁判所のみ許容と覚える
- ・裁判官の独立は「良心」に従うとされるが、これは裁判官個人の主観的良心ではなく「裁判官としての良心」すなわち法に基づく客観的判断を意味する。人権問題との関連で出題
- ・国民審査制(79条)は最高裁判事のみ。下級裁判所裁判官は対象外で任期制。この違いを問う引っかけ問題が頻出
違憲審査の基準と重要判例
第null条違憲審査では目的・手段審査が用いられます。目的効果基準(政教分離)、二重の基準論(精神的自由は経済的自由より厳格審査)、LRAの基準(より制限的でない他の選びうる手段)などの審査基準を事案に応じて使い分けます。
具体例
市が神社の地鎮祭に公金支出した津地鎮祭事件で、最高裁は目的が宗教的意義を持たず効果も特定宗教への援助でないと判断し、合憲としました(目的効果基準の適用)。
要件
- ・制限される人権の種類に応じた審査基準の選択
- ・立法目的の正当性の審査
- ・目的と手段の関連性(合理性・必要性)の審査
効果・結論
- ・厳格審査(必要最小限度の制限か)は精神的自由や平等原則違反で用いられる
- ・合理性の基準(明白性の原則)は経済的自由や社会権で用いられる(薬局距離制限事件など)
- ・在外邦人選挙権事件では選挙権制約に厳格な基準を適用し、やむにやまれぬ事由がない限り許されないとした
試験のポイント
- ・目的効果基準は政教分離(20条3項、89条)の判断基準。行為の目的が宗教的意義を持ち、効果が特定宗教への援助・圧迫等になれば違憲(津地鎮祭事件で定式化)
- ・二重の基準論は精神的自由(表現の自由等)には厳格審査、経済的自由には合理性審査を適用。ただし薬局距離制限事件では職業選択の自由でも規制目的が積極目的(社会政策)の場合は緩やかな基準を用いる
- ・議員定数不均衡事件では投票価値の平等が問題に。最大判昭和51年は1対3未満を合憲、その後は1対2を超えると違憲状態とする基準が確立。在外邦人選挙権事件では選挙権制約に最も厳格な基準を適用
まとめ
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