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テキスト/憲法/第9節 社会権

第9節 社会権

第2章 人権

社会権は、20世紀に登場した新しい人権です。生存権・教育を受ける権利・勤労の権利・労働基本権を学びます。自由権が「国家からの自由」であるのに対し、社会権は「国家による自由」として、国家に積極的な配慮を求める権利です。試験では生存権の法的性格と労働基本権の制約が最頻出です。

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生存権

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生存権は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利です。国に対して積極的な施策を求める社会権の中核をなし、その法的性格が最大の論点となります。プログラム規定説法的権利説の対立があります。

具体例

生活保護を受けていたAさんは、月8000円の保護費では健康で文化的な最低限度の生活ができないとして国を訴えました。裁判所は、何が「最低限度」かは厚生大臣の裁量に委ねられると判断しました(朝日訴訟)。

要件

  • 健康で文化的な生活水準を下回る状態にあること
  • 国の施策によって改善が可能であること

効果・結論

  • 国は社会的立法・社会保障制度を整備する責務を負う
  • 具体的給付内容は立法府・行政府の広範な裁量に委ねられる
  • 著しく合理性を欠く場合には違憲となりうる

条文(第25条)

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

場合
効果
プログラム規定説
国の政治的・道義的責務を定めたもので、直接具体的な権利ではない
抽象的権利説(判例)
権利として保障されるが、具体的内容は立法により初めて確定する
具体的権利説
直接裁判所に給付を請求できる具体的権利である

試験のポイント

  • 朝日訴訟はプログラム規定説に立ちつつ、著しく合理性を欠けば違法としたことに注意
  • 堀木訴訟では児童扶養手当と障害福祉年金の併給禁止を合憲とし、立法裁量を広く認めた
  • 生存権は抽象的権利だが、立法不作為が著しく不合理なら違憲の余地がある点を押さえる
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教育を受ける権利

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すべて国民は、その能力に応じて等しく教育を受ける権利を有します。26条1項が子どもの学習権を、2項が保護者の子女への普通教育を受けさせる義務と義務教育の無償を定めます。

具体例

Aさんは小学生の子Bを持つ親です。憲法は、Aさんに子Bへ普通教育を受けさせる義務を課すとともに、国に対して義務教育を無償とすることを求めています。Bさん自身も能力に応じて教育を受ける権利を持ちます。

要件

  • 国民であること
  • 能力に応じた教育機会であること

効果・結論

  • 国は教育制度を整備し、義務教育を無償とする責務を負う
  • 義務教育の無償は授業料不徴収を意味する(判例)
  • 教科書代等その他の費用は無償の範囲外とされる

条文(第26条)

すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

試験のポイント

  • 義務教育の無償は授業料不徴収を意味し、教科書代は含まないのが判例
  • 教育権の主体は子ども自身であり、親や国家は補助的立場という理解が通説
  • 社会権としての性格と自由権(親の教育の自由)の性格を併せ持つ
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勤労の権利

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勤労の権利は、すべて国民が勤労の権利を有し義務を負うことを定めます。権利面では国に雇用政策を求め、義務面は倫理的責務を示すものと解されています。

具体例

失業中のAさんは、憲法27条に基づき国に対して職業紹介や雇用対策を求めることができます。ただし、国に直接雇用を請求する具体的権利まではなく、国が雇用政策を講じる責務を負うという意味です。

要件

  • 国民であること
  • 勤労可能な状態にあること

効果・結論

  • 国は雇用政策や職業紹介制度を整備する責務を負う
  • 直接に雇用を請求する具体的権利ではない(抽象的権利)
  • 児童酷使の禁止など勤労条件の基準を法律で定める義務

条文(第27条)

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。児童は、これを酷使してはならない。

試験のポイント

  • 勤労の「義務」は法的義務ではなく倫理的・道徳的義務であることを確認
  • 2項の勤労条件基準の法定は労働基準法などで具体化されている
  • 生存権と並び社会権の中核だが、試験では労働基本権に比重が置かれる
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労働基本権

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労働基本権は、労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)の労働三権を保障します。労働者が対等な立場で使用者と交渉するため、集団的労使関係を保障する権利です。公務員警察職員への制約が最重要論点です。

具体例

民間企業Xに勤めるAさんら労働者は、賃上げを求めて労働組合を結成し(団結権)、会社と交渉し(団体交渉権)、交渉が決裂したためストライキを実施しました(争議権)。憲法28条がこれらを保障しています。

要件

  • 労働者であること(使用従属関係にある者)
  • 正当な組合活動または争議行為であること

効果・結論

  • 労働組合法により刑事免責・民事免責が与えられる
  • 公務員の労働基本権は職務の性質により制約される
  • 全農林警職法事件判例により、代償措置があれば制約は合憲とされる

条文(第28条)

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

場合
効果
民間労働者
労働三権が全面的に保障される。正当な争議行為には刑事・民事免責
公務員(一般職・非現業)
団結権・団体交渉権は一部制約、争議権は禁止。代償措置があれば合憲
警察職員・消防職員・自衛隊員
職務の特殊性から労働三権すべてが制約される

試験のポイント

  • 公務員は全体の奉仕者(15条)として労働基本権に制約があり、特に争議権は原則禁止
  • 国労広島地本事件は公労法17条1項(争議行為禁止)を合憲とし、代償措置論を展開
  • 三井美唄炭鉱事件は民間労働者の争議行為でも、暴力等を伴えば刑事免責が否定されると判示
  • 猿払事件は公務員の政治活動制限を合憲としたが、労働基本権とは別論点なので注意

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
生存権(25条)
抽象的権利。立法裁量広いが著しく不合理なら違憲
朝日訴訟・堀木訴訟で具体的権利説は採用されていない
教育を受ける権利(26条)
義務教育無償は授業料不徴収を意味する
教科書代は無償の範囲外というのが判例
勤労の権利(27条)
抽象的権利。勤労義務は道徳的義務
国に直接雇用を請求する具体的権利ではない
労働基本権(28条)
労働三権。公務員は職務性質により制約可能
代償措置があれば公務員の争議権禁止も合憲

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