第7節 受益権
第2章 人権
受益権とは、国民が国に対して一定の行為を求めることができる権利です。自由権が国家からの自由を求めるのに対し、受益権は国家による積極的な保護や給付を求める権利であり、人権保障を実効的にするための重要な権利群です。請願権・裁判を受ける権利・国家賠償請求権・刑事補償請求権が含まれます。
請願権
第16条請願権とは、国民が国や地方公共団体の機関に対して、希望や苦情を述べることができる権利です。法律の留保がなく無条件に保障され、何人も差別されず、請願したことで不利益を受けません。
具体例
Aさんは市役所の対応に不満があり、市議会に「窓口対応の改善を求める請願書」を提出した。市はこれを受理し審査する義務があり、Aさんが請願したことで不利益な扱いを受けることはない。
要件
- ・国または地方公共団体の機関に対する請願であること
- ・請願法に定める形式(文書による提出)を満たすこと
効果・結論
- ・請願を受けた機関は誠実に処理する義務を負う
- ・請願者は請願したことを理由に差別的取扱いを受けない
条文(第16条)
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
試験のポイント
- ・請願権には法律の留保がないことが重要(無条件保障)
- ・請願に対する応答義務は憲法上は規定されていない点に注意
- ・請願したことによる不利益取扱いの禁止は憲法で明記
裁判を受ける権利
第32条裁判を受ける権利とは、何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないという権利です。司法による権利救済を保障し、付随的違憲審査制の前提となる基本的人権です。民事・刑事・行政事件すべてに及びます。
具体例
Aさんは隣人Bさんとの土地境界紛争で話し合いがつかず、裁判所に訴えを提起した。国はAさんが裁判所で公正な裁判を受ける機会を保障しなければならず、この権利を奪うことはできない。
要件
- ・裁判所による判断を求める具体的な紛争が存在すること
- ・法律で定められた手続に従って裁判を申し立てること
効果・結論
- ・裁判所における公正な裁判を受ける機会が保障される
- ・違憲審査権の行使により人権救済が可能となる
条文(第32条)
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
試験のポイント
- ・砂川事件では統治行為論により、高度に政治的な問題は司法審査の対象外とされた
- ・苫米地事件では衆議院解散の効力は統治行為として司法審査の対象外
- ・部分社会の法理により、大学や政党などの内部問題は司法審査が抑制される場合がある(昭和女子大学事件)
国家賠償請求権
第17条国家賠償請求権とは、公務員の不法行為により損害を受けた国民が、国や公共団体に対して賠償を求める権利です。国家賠償法により具体化され、公権力の行使(1条)と公の営造物の設置管理の瑕疵(2条)が対象です。
具体例
Aさんは税務署職員の違法な差押えにより事業が倒産し損害を受けた。Aさんは国家賠償法に基づき国に損害賠償を請求できる。公務員個人ではなく国が賠償責任を負う。
要件
- ・公務員の職務行為に起因する損害であること
- ・公務員に故意または過失があること(1条)、または営造物の設置管理に瑕疵があること(2条)
- ・損害との因果関係が認められること
効果・結論
- ・国または公共団体が賠償責任を負う
- ・公務員個人は原則として賠償責任を負わない(求償権の行使がある場合を除く)
条文(第17条)
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
試験のポイント
- ・国家賠償法1条は公権力の行使による損害、2条は公の営造物の瑕疵による損害を対象
- ・賠償責任を負うのは国または公共団体であり、公務員個人は原則として責任を負わない
- ・法律の定めるところによりとあり、国家賠償法による具体化が必要
刑事補償請求権
第40条刑事補償請求権とは、刑事事件で無罪判決を受けた者が、抑留または拘禁による損失の補償を国に求める権利です。刑事補償法により具体化され、無罪判決確定後に請求できます。国家賠償とは別に無過失で補償される点が特徴です。
具体例
Aさんは窃盗罪で起訴され6か月間勾留されたが、裁判で無罪判決が確定した。Aさんは刑事補償法に基づき国に対し勾留期間の補償金を請求でき、国は公務員の過失がなくても補償する義務を負う。
要件
- ・刑事事件で無罪判決が確定したこと
- ・抑留または拘禁を受けていたこと
- ・刑事補償法に基づく請求手続を行うこと
効果・結論
- ・国は無罪判決を受けた者に補償金を支払う義務を負う
- ・公務員の故意・過失を問わず補償される(無過失補償)
条文(第40条)
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
試験のポイント
- ・刑事補償は無過失補償であり、国家賠償(過失責任)とは異なる制度
- ・対象は無罪判決を受けた場合に限られ、起訴猶予や不起訴は対象外
- ・抑留または拘禁に限定され、在宅起訴の場合は対象外
まとめ
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