第6節 自由権
第2章 人権
自由権は、国家による干渉を排除し、個人の自由な領域を保障する人権の中核です。精神的自由・経済的自由・人身の自由の3つに分類され、それぞれ異なる保障の程度と違憲審査基準が適用されます。試験では判例の事案と結論を正確に理解することが合否の分かれ目となります。
精神的自由権(思想・良心の自由、表現の自由)
第19、21条精神的自由は、内心の自由と表現の自由を保障し、民主政の基盤となる権利です。思想・良心の自由(19条)は絶対的保障、表現の自由(21条)は民主主義に不可欠で優越的地位を持ちます。
具体例
Aさんは政府の政策を批判するビラを配布しました。警察は表現内容を理由に配布を禁止できません。ただしBさんが深夜の住宅街で拡声器を使った場合、時・場所・方法の規制は合憲です(表現の自由の内容中立規制)。
要件
- ・内心の自由は絶対的保障
- ・表現の自由は内容規制に厳格審査
- ・内容中立規制には緩やかな基準
効果・結論
- ・思想・良心を理由とする不利益扱いは違憲
- ・事前抑制は原則違憲(北方ジャーナル事件)
- ・検閲の絶対的禁止
条文(第19、21条)
19条:思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 21条:集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
試験のポイント
- ・優越的地位論は精神的自由のみ(経済的自由には適用されない)
- ・検閲の定義(行政権による事前規制)と判例を正確に
- ・猿払事件と目黒事件の違い(公務員の政治活動制限の合憲性基準の変化)
経済的自由権(職業選択の自由、財産権)
第22、29条経済的自由は職業選択・営業・財産権の自由を保障しますが、社会権実現のため精神的自由より広範な制約が許されます。規制目的が消極目的か積極目的かで違憲審査基準が異なります。
具体例
C県は新規薬局の開設に既存薬局との距離制限を設けました。最高裁は、この積極目的規制は必要性・合理性が厳格に審査されるべきとし違憲と判断しました(薬局距離制限事件)。
要件
- ・消極目的規制(警察目的)には緩やかな審査
- ・積極目的規制(社会経済政策)には厳格な審査
- ・財産権の内容は法律で定める
効果・結論
- ・職業の自由は目的二分論で審査
- ・財産権は公共の福祉による広範な制約が可能
- ・損失補償の要否は財産権の特別犠牲か否かで判断
条文(第22、29条)
22条:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 29条:財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
試験のポイント
- ・薬局距離制限事件の規範(積極目的規制の厳格審査)を正確に記述できるか
- ・精神的自由と経済的自由で審査基準が異なる理由(民主政の過程論)
- ・財産権の社会的制約と損失補償の要否の区別
人身の自由と刑事手続上の権利
第31-40条人身の自由は身体の自由を保障し、適正手続の保障(31条)が中核です。令状主義(33、35条)により逮捕・捜索には原則として裁判官の令状が必要で、刑事被告人には黙秘権等の防御権が保障されます。
具体例
警察官がDさんを現行犯逮捕し、Dさん宅を捜索しました。現行犯逮捕は無令状でも可能ですが、捜索には原則として令状が必要です。Dさんは取調べで黙秘権を行使でき、自白だけでは有罪とされません(38条3項)。
要件
- ・逮捕には令状が必要(現行犯等の例外あり)
- ・捜索・押収には令状が必要
- ・被告人には防御権が保障される
効果・結論
- ・令状主義の例外は厳格に解釈
- ・違法収集証拠は原則排除
- ・自白の証拠能力は任意性が前提
条文(第31-40条)
31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 33条:何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 35条:何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
試験のポイント
- ・適正手続の保障は刑事手続のみならず行政手続にも及ぶ
- ・令状主義の例外(現行犯逮捕、緊急逮捕)の要件を正確に
- ・博多駅事件での報道の自由と取材フィルム提出命令の利益衡量
プライバシー権と新しい人権
第13条幸福追求権(13条)から、プライバシー権(私生活をみだりに公開されない権利)、自己決定権等の新しい人権が導出されます。判例は具体的権利性を認めつつ、公共の福祉による制約を認めています。
具体例
市が運用する住基ネットにEさんの個人情報が登録されました。最高裁は、プライバシー権は13条で保障されるが、住基ネットは目的が正当で情報も限定的なため合憲と判断しました(住基ネット訴訟)。
要件
- ・13条から具体的権利として導出
- ・私生活上の情報の保護
- ・自己情報コントロール権の側面
効果・結論
- ・私生活の公開には本人同意が原則
- ・公的情報収集も過度なら違憲の可能性
- ・自己決定権は人格的生存に不可欠な事項に限定
条文(第13条)
13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
試験のポイント
- ・京都府学連事件での肖像権とプライバシー権の区別
- ・早稲田大学講演会事件での自己情報コントロール権の理論
- ・住基ネット訴訟での合憲判断の論理(目的の正当性と情報の限定性)
まとめ
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