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テキスト/憲法/第6節 自由権

第6節 自由権

第2章 人権

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自由権は、国家による干渉を受けずに個人が自分で決められる領域を守る人権です。精神的自由・経済的自由・人身の自由の3つに分かれ、どの分類かによって違憲審査の厳しさが変わります。本節では、思想・良心の自由から人身の自由までを、判例の事案と結論を対にして確認します。

1

思想・良心の自由(19条)

憲法19条

簡単にいうと

心の中にとどまる限り、思想は絶対に規制できません。公共の福祉による制限すら認められない、数少ない権利です。

思想・良心の自由の意義

憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と規定し、内心の自由を絶対的に保障します。絶対的保障とは、公共の福祉を理由にしても一切の制約が許されないことを意味し、国家が国民に特定の思想をもつことを強制したり、特定の思想をもつことを理由に不利益を課したりすることは許されません。

保障の範囲

思想・良心の自由は、純粋な内心の領域にとどまる限り、いかなる手段によっても制約されません。ただし、外部に表れた行動(表現行為)については、憲法21条の表現の自由の問題となります。

謝罪広告事件(最大判昭31.7.4)

裁判所が謝罪広告の掲載を命じることが19条に反するかが争われましたが、最高裁は「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のもの」であれば思想・良心の自由を侵害しないと判示し、合憲としました。なお、内心の表明ではなく強制的に特定の世界観・人生観を発表させることは19条に反するとも述べており、謝罪内容の性質による判断が必要です。

具体例

ある企業が入社時に「共産主義に賛成か」を問うアンケートを実施し、回答拒否者を不採用にした場合、19条に反するかが問題となる(三菱樹脂事件参照)。

思想・良心の自由は内心にとどまる限り公共の福祉による制約を受けず絶対的に保障されるが、外部に表れた行為は制約を受ける

内心にとどまる限り絶対的に保障される

ポイント整理

  • ・内心の自由への「侵害」があること
  • ・国家権力(または私人間効力が及ぶ場面)による強制・不利益付与があること

効果

  • ・内心の自由は絶対的に保障される(公共の福祉による制限なし)
  • ・違反行為は違憲・違法となる

条文(憲法19条)

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

場面
結論
判例
内心にとどまる思想・良心
絶対的に保障され、公共の福祉による制約を受けない
—
沈黙の自由
思想の告白を強制されない
—
謝罪広告の掲載命令
事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度なら合憲
謝罪広告事件・最大判昭31.7.4

重要メモ

  • ・内心にとどまる限り絶対的に保障される、というのがポイント
  • ・思想・良心の自由(19条):内心の絶対的自由。公共の福祉による制約を受けない
  • ・謝罪広告事件(最大判昭31.7.4):単なる事実の告知と謝意の表明にとどまる謝罪広告の強制は合憲
  • ・倫理的な意思や道徳的判断そのものを強制する場合は19条違反となる
  • ・内心が外部の行為として表れた場合は、表現の自由の問題となり制約を受けうる
2

信教の自由(20条)

憲法20条

簡単にいうと

信仰そのものは絶対的に保障されますが、宗教的な行為は制約を受けます。国と宗教の関わりをどこまで許すかが政教分離の問題です。

信教の自由の3内容

憲法20条は信教の自由を保障します。信教の自由の内容は、①信仰の自由(宗教を信じる・信じない・宗教を選ぶ自由)、②宗教的行為の自由(宗教上の儀式・礼拝等を行う自由)、③宗教的結社の自由(宗教団体を設立・加入・脱退する自由)の3つからなります。信仰の自由は内心の自由として絶対的に保障され、宗教的行為・結社は公共の福祉による制約を受けます。

政教分離原則

20条1項後段・3項および89条は政教分離原則を定め、国家が特定の宗教と結びつくことを禁止します。国家と宗教の関わり合いが許容される限度を超えるかどうかの判断基準として「目的効果基準」が用いられます。すなわち、①その行為の目的が宗教的意義をもち、かつ②その効果が特定の宗教を援助・助長・促進し、または他の宗教を圧迫・干渉するようなものであるかを審査します。

目的効果基準で判断した事例

津地鎮祭事件(最大判昭52.7.13)では、市体育館の起工式(地鎮祭)への公金支出は目的が宗教的意義をもたず慣習的行事にとどまるとして合憲とされました。愛媛玉串料事件(最大判平9.4.2)では、愛媛県が靖国神社等に玉串料等として公金を支出したことは、目的効果基準に照らして政教分離原則に反し違憲とされました。

目的効果基準によらずに判断した事例

孔子廟訴訟(最大判令3.2.24)では、那覇市が一般社団法人に公園敷地を無償で使用させたことは、社会通念に照らして総合的に判断し政教分離原則に反し違憲とされました(目的効果基準ではなく「社会通念に照らした総合判断」が用いられた点が新しい点です)。

宗教団体への解散命令

宗教法人に対する解散命令が信教の自由を侵害しないかが争われた事案があります。最高裁は、解散命令の制度はもっぱら世俗的な目的によるもので合理性があるとしたうえで、解散命令によって宗教活動に支障が生じても、それは解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまるとして、20条1項に反しないとしました(オウム真理教解散命令事件・最決平8.1.30)。宗教法人という法人格を失うだけで、信仰そのものや宗教上の行為が禁止されるわけではない、という理解です。

具体例

公立学校での宗教的儀式の実施への参加強制(エホバの証人剣道受講拒否事件)。信仰上の理由による退学・原級留置処分は裁量権の逸脱として違法(最判平8.3.8)。

信教の自由と政教分離

信教の自由と政教分離(憲法20条)

ポイント整理

  • ・国または公の機関が主体であること
  • ・宗教との関わり合いが相当と認められる限度を超えること(目的効果基準または総合判断)

効果

  • ・政教分離原則違反の行為は違憲・違法となる
  • ・信教の自由侵害の不利益処分は裁量権逸脱として違法

条文(憲法20条)

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

判例名
事案の概要
結論
判断のポイント
津地鎮祭事件(最大判昭52.7.13)
市の体育館起工式に神職を招き公金を支出
合憲
宗教的意義が希薄な慣習的行事にとどまる
愛媛玉串料事件(最大判平9.4.2)
愛媛県が靖国神社等に玉串料を公金で支出
違憲
特定宗教への援助・助長効果あり(目的効果基準)
孔子廟訴訟(最大判令3.2.24)
那覇市が公園敷地を無償提供
違憲
社会通念に照らした総合判断で政教分離違反
エホバの証人剣道事件(最判平8.3.8)
信仰上の理由で剣道受講拒否→退学処分
違法(裁量逸脱)
信教の自由を尊重しない処分は裁量権の逸脱・濫用
オウム真理教解散命令事件(最決平8.1.30)
宗教法人に対する解散命令
合憲
支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまる

重要メモ

  • ・目的効果基準で合憲・違憲が分かれるのがポイント
  • ・信教の自由の3内容:①信仰の自由(絶対的自由)②宗教的行為の自由③宗教的結社の自由(②③は制約可)
  • ・政教分離(20条3項・89条):相当とされる限度を超える国と宗教の関わりを禁止する
  • ・目的効果基準:①行為の目的が宗教的意義を持つか②効果が特定宗教の援助・促進・圧迫・干渉になるか
  • ・オウム真理教解散命令事件(最決平8.1.30):宗教活動への支障は間接的・事実上のものにとどまり合憲
3

表現の自由の意義と保障範囲(21条)

憲法21条

簡単にいうと

表現の自由は、経済的自由より手厚く守られます。その理由は自己実現と自己統治という2つの価値にあります。

表現の自由の2つの価値

憲法21条1項は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定し、あらゆる表現活動を広く保護します。表現の自由が特に重要視される理由には2つの価値があります。第1は「自己実現の価値」であり、表現活動によって自己の人格を発展させることができるという個人的な価値です。第2は「自己統治の価値」であり、表現活動によって国民が政治的意思決定に関与できるという民主主義的な価値です。

優越的地位と二重の基準

これらの価値があるため、表現の自由は経済的自由権よりも優越的な地位を占めるとされ(「二重の基準」論)、より厳格な違憲審査基準が適用されます。表現の自由が不当に制限されると、誤った法律・政策の是正手段そのものが失われてしまうからです。

保障される内容

表現の自由が保障する内容は広く、言論・出版はもちろん、報道の自由・取材の自由(21条の精神に照らし十分尊重に値するとされます・博多駅事件)、「知る権利」も含まれます。21条2項は通信の秘密と検閲の禁止を規定します。通信の秘密は信書・電話・電子メールなど個人間の通信の内容を秘密として保護するものです。

具体例

新聞社が政府の不正を報道した場合、その記事内容を規制する法律は内容規制として厳格な審査基準に服する。

表現の自由

憲法21条:表現の自由の構造

ポイント整理

  • ・表現活動(言論・出版・報道・取材・集会・結社等)であること
  • ・国家による制約・規制があること

効果

  • ・厳格な違憲審査基準(経済的自由権より高い基準)が適用される
  • ・内容規制は違憲推定が働く

条文(憲法21条)

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

対象
21条による保障
判例
知る権利
保障される
—
報道の自由
保障される
博多駅事件・最大決昭44.11.26
取材の自由
保障されない(十分尊重に値する)
博多駅事件・最大決昭44.11.26
法廷でメモを取る自由
保障されない(尊重に値する)
レペタ訴訟・最大判平元.3.8
(価値)
自己実現の価値と自己統治の価値の2つ
—

重要メモ

  • ・何が21条で「保障」され、何が「尊重に値する」にとどまるかの線引きがポイント
  • ・表現の自由の2つの価値:①自己実現(個人の人格発展)②自己統治(民主的な政治参加)
  • ・21条が直接保障するもの:知る権利・報道の自由
  • ・21条が直接保障するものではないが尊重に値するもの:取材の自由(博多駅事件・最大決昭44.11.26)、法廷でメモを取る自由(レペタ訴訟・最大判平元.3.8)
  • ・記者の証言拒絶:刑事裁判では認められない(石井記者事件)/民事裁判では認められる場合がある(NHK記者事件)
4

報道・取材の自由と関連判例

憲法21条

簡単にいうと

報道の自由と取材の自由では、守られ方の厚さが違います。さらに取材の自由も、刑事と民事で扱いが分かれます。

報道・取材の自由の保障

報道の自由は表現の自由(21条)の保障を受けます。取材の自由は、報道が正しい内容を持つために必要なものであるから、21条の精神に照らし「十分尊重に値する」とされています(博多駅事件・最大決昭44.11.26)。ただし取材の自由は21条で「保護される」とまでは言われておらず、報道の自由より弱い保障にとどまる点に注意が必要です。

博多駅事件(最大決昭44.11.26)

学生と機動隊員が衝突した事件で、裁判所がテレビ放送会社に撮影フィルムの提出を命じました。報道・取材の自由は21条の保障のもとにありますが、取材の自由は十分尊重に値するにとどまり、公正な裁判の実現のために必要であれば提出命令は合憲とされました。

レペタ訴訟(最大判平元.3.8)

米国弁護士レペタ氏が法廷でメモを取ることを禁止された事件です。法廷でメモを取る自由は21条1項によって直接保護される表現の自由そのものとは異なる権利であり、尊重に値しますが、制限は合憲とされました(法廷秩序維持のための裁判長の訴訟指揮権の範囲内とされました)。

石井記者事件・NHK記者事件・西山記者事件

石井記者事件(最大判昭27.8.6)では刑事裁判における証言拒絶(取材源秘匿)は認められませんでした。一方、民事裁判については(NHK記者事件・最決平18.10.3)認められる場合があります。西山記者事件(最決昭53.5.31)では、正当な取材行為の範囲を逸脱するような取材行為は取材の自由によって保護されないとされました。

具体例

テレビ局が取材したフィルムを、裁判所が証拠として提出するよう命令。取材の自由と公正な裁判の実現を比較衡量して合憲と判断された(博多駅事件)。

報道の自由は21条で保障されるが、取材の自由は21条の精神に照らして十分尊重に値するにとどまり、保障されるとまではいえない

報道の自由と取材の自由の違い

ポイント整理

  • ・報道機関による取材・報道活動であること
  • ・取材の自由の制約が「公正な裁判の実現」等の必要性を上回らないこと

効果

  • ・取材の自由は十分尊重(21条の精神に照らし)されるが絶対ではない
  • ・正当な取材行為の範囲を逸脱すれば保護されない

条文(憲法21条)

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

判例名
争点
結論
博多駅事件(最大決昭44.11.26)
テレビフィルム提出命令の合憲性
合憲(公正な裁判の実現のため許容)
レペタ訴訟(最大判平元3.8)
法廷でのメモ禁止の合憲性
合憲(21条1項の直接保護外・尊重に値するが制限可)
石井記者事件(最大判昭27.8.6)
刑事裁判での取材源秘匿(証言拒絶)
認められない
NHK記者事件(最決平18.10.3)
民事裁判での取材源秘匿
認められる場合あり
西山記者事件(最決昭53.5.31)
取材行為の限界
正当な取材行為の範囲を逸脱すれば違法

重要メモ

  • ・刑事と民事で証言拒絶の可否が逆になるのがポイント
  • ・博多駅事件(最大決昭44.11.26):報道の自由は21条で保障。取材の自由も十分尊重に値するが、フィルム提出命令は合憲
  • ・石井記者事件(最大判昭27.8.6):刑事裁判では記者の証言拒絶権は認められない
  • ・NHK記者事件(最決平18.10.3):民事裁判では記者の証言拒絶が認められる場合がある
  • ・西山記者事件(最決昭53.5.31):欺罔的な手段による取材は正当な取材活動の範囲を逸脱し違法
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表現の自由の規制方法(内容規制・内容中立規制)

憲法21条

簡単にいうと

同じ規制でも、表現の中身を狙うのか、時・場所・方法を狙うのかで審査の厳しさが変わります。

2種類の規制方法

表現の自由に対する規制方法は、大きく2種類に分けられます。第1は「内容規制」であり、表現の内容(中身)そのものを規制する方法です。たとえば、特定の思想を内容とする表現の禁止や、国家機密の公開を禁止する規制がこれにあたります。内容規制は、何を言うかという表現の中身そのものを狙い撃ちにするため、違憲が強く推定され、厳格な審査基準が適用されます。

内容中立規制

第2は「内容中立規制」であり、表現の内容とは無関係に、方法・場所・時間等を規制するものです。たとえば、公園での午後10時以降の集会禁止、拡声器の音量規制などがこれにあたります。内容中立規制は、表現の機会が完全に奪われるわけではなく代替手段が残されるため、相対的に緩やかな中間審査基準で判断されます。ただし、必要以上に表現の機会を制限する場合には違憲となりえます。

区別の重要性

規制方法の区別が重要なのは、同じ「表現の規制」であっても、審査の厳しさが大きく異なるからです。内容規制は「表現の中身を狙い撃ちにする」という意味で特に危険視され、民主主義の機能を損なうおそれが強いとされます。

内容中立規制とされた例

立川宿舎反戦ビラ配布事件(最判平20.4.11)では、自衛隊宿舎にビラを投函する目的で敷地に立ち入った行為が住居侵入罪にあたるかが争われました。最高裁は、処罰の対象になっているのはビラの内容ではなく、管理権者の意思に反して立ち入った行為そのものだとして、21条1項に違反しないとしました。表現の中身を狙った規制ではないため、内容中立規制として扱われます。

具体例

「政府の転覆を勧める文書の禁止」は内容規制(特定の思想・メッセージが対象)。「公園での午後10時以降の演説禁止」は内容中立規制(場所・時間の制限、場所を変えれば演説可能)。

表現の自由の規制方法

表現の自由の規制方法

ポイント整理

  • ・内容規制:表現の内容(中身・メッセージ)そのものが規制対象であること
  • ・内容中立規制:表現の内容に関わりなく方法・場所・時間が規制対象であること

効果

  • ・内容規制:厳格な審査基準(違憲推定・必要最小限度の制限でなければ違憲)
  • ・内容中立規制:中間審査基準(合理的な時間・場所・方法の制限であれば合憲)

条文(憲法21条)

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

規制の種類
規制対象
審査基準
具体例
内容規制
表現の内容(中身・メッセージ)
厳格な審査基準(違憲推定)
特定思想の発表禁止、国家機密の公開禁止
内容中立規制
方法・場所・時間等
中間審査基準(合理的制限なら合憲)
公園での夜間集会禁止、拡声器音量規制

重要メモ

  • ・中身を狙う規制ほど厳しく審査される、というのがポイント
  • ・内容規制:表現の中身(意見・思想・情報)を対象とする規制。厳格な審査基準が適用される
  • ・内容中立規制:中身に関わらない時・場所・方法の規制(デモの騒音規制など)。より緩やかな審査
  • ・事前抑制の原則禁止:発表前に表現活動を抑えることは原則として許されない
  • ・船橋市西図書館蔵書破棄事件(最判平17.7.14):職員が思想を理由に蔵書を廃棄した行為は違法
6

検閲の禁止(21条2項)

憲法21条2項

簡単にいうと

検閲は例外なく絶対に禁止されます。ただし「検閲」にあたるかどうかは、6つの要件をすべて満たすかで厳しく絞られます。

検閲の絶対的禁止

憲法21条2項は「検閲は、これをしてはならない」と規定し、検閲を絶対的に禁止します。公共の福祉による例外すら認められない、21条の中でも特に絶対的な禁止規定です。これは、国家が発表前に表現内容を審査・禁止することが、表現の自由を根本から損なう最も危険な規制形態だからです。

検閲の定義(6要件)

検閲の定義は、北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)において示された6要件によって確定されています。すなわち、①行政権が主体となって、②思想内容等の表現物を対象とし、③その全部または一部の発表の禁止を目的とし、④対象とされる一定の表現物につき網羅的・一般的に、⑤発表前にその内容を審査したうえで、⑥不適当と認めるものの発表を禁止することをいいます。この6要件のすべてを満たして初めて「検閲」となり、1つでも欠ければ検閲にはあたりません。

検閲にあたらない具体例

税関検査(最大判昭59.12.12)は、対象が国外で発表済みであること・税関は思想内容そのものを禁止するのではなく関税法上の規制として行うこと等から、検閲にあたらないとされました。教科書検定(第1次家永教科書事件・最判平5.3.16)は、一般図書としての発行を妨げるものではなく教科書としての発行の特別な規制にとどまること・思想内容の禁止を目的とするものではないことから、検閲にあたらないとされました。

裁判所による事前差止め

裁判所による事前差止めは「検閲」にはあたりませんが(行政権主体でないため)、原則として表現の自由を保障する21条の意義に照らし許されません。例外として、①表現内容が真実でなく、かつ②それが明らかに被害者に重大・回復困難な損害を与えるおそれがある場合に限り、事前差止めが許されます(北方ジャーナル事件)。

具体例

出版前の段階で行政機関が書籍の内容を審査し、政府批判の箇所を削除させる制度は検閲(絶対禁止)。一方、書店で販売中の書籍が問題となった後に裁判所が差止めを命じる場合は事前差止め(検閲ではないが原則禁止・例外あり)。

検閲は行政権が主体となって発表前に表現物の内容を審査し、不適当と認めるものの発表を禁止すること。6つの要件をすべて満たす場合に検閲にあたり、例外なく禁止される

検閲の禁止(21条2項)

ポイント整理

  • ・①行政権が主体
  • ・②思想内容等の表現物を対象
  • ・③発表の禁止を目的
  • ・④網羅的・一般的な審査
  • ・⑤発表前の内容審査
  • ・⑥不適当なものの発表禁止

効果

  • ・6要件すべてを満たす検閲は絶対的に禁止(例外なし)
  • ・裁判所の事前差止めは検閲にあたらないが原則禁止・例外的に許容される場合あり

条文(憲法21条2項)

第21条2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

規制の種類
主体
検閲該当
根拠判例
税関検査(わいせつ物等の輸入禁制品)
行政権(税関)
非該当
最大判昭59.12.12
教科書検定(家永事件)
行政権(文部大臣)
非該当
最判平5.3.16
裁判所による事前差止め
司法権(裁判所)
非該当(行政権ではないため)
北方ジャーナル事件・最大判昭61.6.11
北方ジャーナル事件(裁判所の事前差止め)
裁判所
非該当(だが原則禁止・例外許容)
最大判昭61.6.11

重要メモ

  • ・検閲の定義に該当すれば例外なく違憲、というのがポイント
  • ・検閲の6要件:①行政権が主体②思想内容等の表現物③発表禁止が目的④網羅的・一般的⑤発表前の審査⑥不適当と認めるものの発表を禁止
  • ・検閲にあたらない:税関検査(最大判昭59.12.12)・教科書検定(最判平5.3.16)
  • ・裁判所による事前差止めは主体が行政権でないため検閲にあたらないが、事前抑制として原則禁止
  • ・北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)の例外要件:①内容が真実でない②専ら公益目的でない③重大で回復困難な損害のおそれ
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集会・結社の自由(21条1項)

憲法21条1項

簡単にいうと

集会や結社、デモ行進も21条で保障されます。許可制そのものは直ちに違憲とはなりませんが、不許可の要件は限定される必要があります。

集会の自由と結社の自由

憲法21条1項は集会・結社の自由を保障します。集会の自由とは、多数の人が政治・学問・宗教・娯楽などの目的で一定の場所に集まる自由をいいます。結社の自由とは、多数の人が共同の目的のために継続的に結合する団体をつくり、加入し、活動する自由をいいます。一時的な集まりか、継続的な団体かが両者の分かれ目です。どちらも公共の福祉による制約を受けます。

集団行動は動く集会として保障される

デモ行進のような集団示威運動も、動く集会として21条で保障されます。場所を移動するという形をとるだけで、複数人が意思を表明する点は集会と変わらないためです。

許可制はどこまで許されるか

東京都公安条例事件(最大判昭35.7.20)では、デモ行進に事前の許可を求める条例が争われました。最高裁は、不許可とする事由が限定され、かつ明確に定められている許可制であれば合憲としています。許可制そのものが直ちに違憲になるわけではありません。同事件は、集会や示威行進に単純に参加しただけの者を処罰することは許されないとも述べています。

具体例

公園でのデモ行進の事前届出・不許可に対し、主催者が強行実施した場合の処罰の合憲性(東京都公安条例事件参照)。

デモ行進などの集団行動は動く集会として21条で保障されるが、公共の福祉による制約を受け、事前の許可制を定める条例も合憲とされている

集団行動は動く集会として保障される

ポイント整理

  • ・集会・結社・デモ行進等の表現活動であること
  • ・国家による規制・制限があること

効果

  • ・公共の福祉による制約は許されるが不許可要件は限定・明確であること要
  • ・表現の手段が他人の権利を侵害する場合は制限可

条文(憲法21条1項)

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

対象
内容
判例・注意点
集会の自由
一時的に集まる自由
公共の福祉による制約あり
結社の自由
継続的な団体を形成する自由
公共の福祉による制約あり
集団行動(デモ行進)
動く集会として保障される
事前の許可制を定める条例は合憲(東京都公安条例事件・最大判昭35.7.20)

重要メモ

  • ・許可制そのものは違憲ではない。不許可事由が限定され明確かどうかで判断する
  • ・集会は一時的な集まり、結社は継続的な団体。どちらも公共の福祉による制約を受ける
  • ・デモ行進などの集団行動も動く集会として21条で保障される
  • ・東京都公安条例事件(最大判昭35.7.20):限定・明確な許可制は合憲
  • ・同判決は、集会や示威行進の単純参加者を処罰することは許されないとした
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学問の自由・大学の自治(23条)

憲法23条

簡単にいうと

学問の自由は研究・発表・教授の3つからなります。これを制度として支えるのが大学の自治です。

学問の自由の3内容

憲法23条は「学問の自由は、これを保障する」と規定します。学問の自由の内容は、①学問研究の自由(思想・研究活動を自由に行う)、②研究発表の自由(研究成果を公表する自由)、③教授の自由(研究成果を教育の場で教える自由)の3つからなります。

大学の自治

23条は、大学において学問の自由を実質的に保障するために、大学の自治を制度的に保障しています。大学の自治の内容は、①人事の自治(学長・教授等の選任を大学自らが行う)と②施設・学生管理の自治(大学の構内管理・学生の規律)を含みます。

東大ポポロ事件(最大判昭38.5.22)

東京大学の学生劇団が大学の教室で演劇発表会を行った際に、会場に潜入していた警察官に学生が暴行を加えた事件です。最高裁は、大学の学問の自由と自治は、学術的・教育的目的の活動を保護するためのものであり、大学における集会であっても、実社会の政治的・社会的活動と同じ目的のものであれば大学の自治の保護が及ばないと判示しました。このため、警察官が大学内に立ち入ること自体は大学の自治を侵害しないと結論づけられました。

具体例

国立大学の教授が政府の政策に反する論文を発表したとして解雇された場合、学問の自由(研究発表の自由)の侵害が問題となる。

大学の自治は大学側が享有するもので学生側が主張できるものではなく、実社会の政治的社会的活動にあたる集会には自治が及ばない

大学の自治を主張できるのは誰か

ポイント整理

  • ・大学または大学と同等の学術機関における学術・研究活動であること
  • ・国家による干渉・規制があること

効果

  • ・学術・研究活動に対する国家の直接干渉は原則として違憲
  • ・政治的・社会的活動目的の場合は大学の自治の保護外

条文(憲法23条)

第23条 学問の自由は、これを保障する。

内容
説明
注意点
研究の自由
学問的な研究を行う自由
—
研究発表の自由
研究成果を発表する自由
—
教授の自由
研究成果を教授する自由
義務教育の教師に完全な教授の自由は認められない
大学の自治
人事・施設管理・学生管理を大学が自律的に決める
自治を主張できるのは大学側で、学生側ではない(東大ポポロ事件・最大判昭38.5.22)

重要メモ

  • ・自治が及ぶのは学術活動の範囲まで、というのがポイント
  • ・学問の自由(23条)の3内容:①研究の自由②研究成果を発表する自由③教授の自由
  • ・大学の自治:人事・施設管理・学生管理について大学が自律的に決定し、外部の干渉を排除する
  • ・東大ポポロ事件(最大判昭38.5.22):真に学術的な研究・発表のための集会でなく実社会の政治活動なら大学の自治は及ばない
  • ・高校以下の教師には一定程度の教授の自由が認められるが、完全な教授の自由は認められない(旭川学テ事件)
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居住・移転の自由・職業選択の自由(22条)

憲法22条

簡単にいうと

職業への規制は、目的が安全確保か社会政策かで審査の厳しさが変わります。薬局と小売市場の対比が定番です。

居住・移転の自由と職業選択の自由

憲法22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定します。経済的自由権(22条・29条)は精神的自由権より低い審査基準が適用されますが、それでも目的に応じた審査が行われます。

規制目的二分論

職業選択の自由に対する規制は、「規制目的二分論」によって2種類に分けられます。第1は「消極目的規制」であり、国民の生命・健康・安全への危険を防止するための規制です(例:薬局の設置場所の制限)。第2は「積極目的規制」であり、社会・経済政策の実現のための規制です(例:小売市場の適正配置)。消極目的規制には比較的厳格な審査基準(必要最小限度の制限か)が適用され、積極目的規制には緩やかな審査基準(著しく不合理でなければ合憲)が適用されます。

薬局距離制限事件(最大判昭50.4.30)

薬局の設置場所に距離制限を設けることは消極目的規制として判断され、競業防止のための距離制限は過剰規制であり違憲とされました。

小売市場距離制限事件(最大判昭47.11.22)

小売市場の設置に距離制限を設けることは積極目的規制として判断され、立法府の裁量に委ねられる事項として合憲とされました。

酒類販売業免許事件

規制目的二分論にきれいに収まらない判例もあります。酒類の販売業を免許制としたことが争われた事案で、最高裁は、この規制の目的を国家の財政目的(酒税の適正な賦課徴収の確保)と捉えたうえで、立法府の裁量を逸脱するものではないとして合憲としました(酒類販売業免許事件・最判平4.12.15)。消極目的でも積極目的でもない第3の類型として出題されます。

22条2項

22条2項は外国に移住する自由と国籍を離脱する自由を保障します。国籍離脱の自由といっても、どこの国の国籍も持たない無国籍となる自由まで認めるものではないと解されています。

具体例

医薬品の過剰供給による調剤濫用を防ぐための薬局距離制限。最高裁は消極目的規制として審査し、過剰規制として違憲と判断した。

国民の生命や健康を守る消極目的の規制は厳しく審査され薬局距離制限は違憲、社会政策を実現する積極目的の規制は緩やかに審査され小売市場距離制限は合憲

規制目的二分論(消極目的と積極目的)

ポイント整理

  • ・職業選択または営業の自由(職業活動の自由)の制約があること
  • ・消極目的規制:必要最小限度の制限でなければ違憲
  • ・積極目的規制:著しく不合理でなければ合憲

効果

  • ・消極目的規制として過剰と認められれば違憲(薬局距離制限事件)
  • ・積極目的規制は広い立法裁量が認められ合憲となりやすい(小売市場距離制限事件)

条文(憲法22条)

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

規制の種類
判例
目的
結論
審査基準
消極目的規制
薬局距離制限事件(最大判昭50.4.30)
競業による医薬品乱売・不良医薬品防止(消極)
違憲(過剰規制)
必要最小限度の制限か(比較的厳格)
積極目的規制
小売市場距離制限事件(最大判昭47.11.22)
中小企業保護・経済政策(積極)
合憲
著しく不合理でなければ合憲(緩やか)
財政目的の規制
酒類販売業免許事件(最判平4.12.15)
酒税の適正な賦課徴収の確保(財政)
合憲
立法府の裁量を逸脱しないか

重要メモ

  • ・消極目的は厳しく、積極目的は緩やかに審査する。酒類販売は財政目的という第3類型
  • ・薬局距離制限事件(最大判昭50.4.30):消極目的規制として違憲。許可制自体は合憲
  • ・小売市場距離制限事件(最大判昭47.11.22):積極目的規制として合憲(明白性の原則)
  • ・酒類販売業免許事件(最判平4.12.15):財政目的の規制として合憲
  • ・22条2項の国籍離脱の自由は、無国籍となる自由までは含まない
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財産権(29条)

憲法29条

簡単にいうと

財産権は法律で内容を定められる一方、特別の犠牲を課された場合には正当な補償を受けられます。

財産権の保障

憲法29条1項は財産権を保障し、2項は財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律で定めることができると規定します。3項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」とし、損失補償の根拠規定となっています。

財産権の制限と審査基準

財産権の制限は経済的自由権として公共の福祉による制約を受けますが、規制目的二分論(消極目的・積極目的)に照らして審査されます。森林法共有林事件(最大判昭62.4.22)では、共有林の分割を制限した森林法の規定は、財産権の本質的内容を侵害するものとして違憲と判断されました。

損失補償

損失補償が必要となるのは「特別の犠牲」が生じる場合です。特別の犠牲とは、広く一般人が均等に受ける損失(社会的制約)を超えて、特定の人のみに財産的損失を強いる場合をいいます。最大判昭43.11.27は、損失補償に関する規定が不十分である場合、憲法29条3項を直接根拠として補償請求できると判示しており、立法の不備を補う直接適用が認められた重要判例です。

「正当な補償」の意義については、完全補償説(市場価格での全額補償)と相当補償説(社会通念上相当と認められる程度の補償)の争いがあります。

具体例

土地収用法に基づく道路建設のための土地収用は、正当な補償(時価での補償)を支払うことで適法に行える。補償なしに土地を収用すれば29条3項違反となる。

29条1項は私有財産制と個々の財産権を保障し、2項は内容を法律で定めるとし、3項は正当な補償のもとで公共のために用いることを認めている

財産権の保障と損失補償(29条)

ポイント整理

  • ・公共のために私有財産を用いること(収用・使用制限等)
  • ・「特別の犠牲」が生じていること(一般的社会的制約を超える損失)
  • ・正当な補償の支払い

効果

  • ・特別の犠牲が生じれば正当な補償義務が発生
  • ・補償規定が不十分でも29条3項を直接根拠に補償請求可能(最大判昭43.11.27)
  • ・財産権の本質的内容を侵害する規制は違憲(森林法共有林事件)

条文(憲法29条)

第29条 財産権は、これを侵してはならない。 2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

条文
内容
注意点
29条1項
私有財産制の保障と個々の財産権の保護
両面を持つ
29条2項
財産権の内容は公共の福祉に適合するよう法律で定める
共有森林の分割請求権の制限は違憲(森林法事件・最大判昭62.4.22)
29条3項
私有財産は正当な補償のもとに公共のために用いることができる
法律に補償規定がなくても29条3項を直接の根拠として補償を請求できる

重要メモ

  • ・内容規定は広く許されるが、特別の犠牲には補償が要る、というのがポイント
  • ・29条1項は私有財産制の保障と個々の財産権の保護の両面を持つ
  • ・29条2項:財産権の内容は公共の福祉に適合するよう法律で定める。立法裁量は広い
  • ・29条3項:私有財産を公共のために用いる場合は正当な補償が必要
  • ・特別の犠牲にあたる場合は、補償規定がなくても29条3項を根拠に補償を請求できる余地がある
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適正手続の保障(31条)

憲法31条

簡単にいうと

刑罰を科すには、どんな行為が犯罪になるのかを法律で決めたうえで、決められた手順を踏む必要があります。手続と中身の両方が問われます。

31条から読み取る4つの要求

憲法31条は、法律の定める手続によらなければ生命や自由を奪われないと定めています。条文が書いているのは手続の法定だけですが、通説はここから4つの要求を読み取ります。①手続が法律で定められていること、②その手続の内容が適正であること、③どんな行為が犯罪となりどんな刑罰が科されるかが法律で定められていること(罪刑法定主義)、④その実体規定の内容が適正であることの4つです。

なぜ手続の中身まで問われるのか

法律さえあればよいとすると、形だけの手続で人を処罰できてしまいます。そこで手続の内容そのものが適正かどうかも問われます。代表的な要請が告知と弁解の機会です。どのような理由でどの刑罰が科されるのかをあらかじめ伝え、それに対して反論する機会を与えることをいいます。行政手続との関係では、同じ趣旨を告知と聴聞という言い方で表すこともあります。

行政手続にも及ぶのか

31条は直接には刑事手続についての規定です。ただし最高裁は、行政手続であっても刑事手続ではないという理由だけですべてが保障の枠外にあると判断すべきではないとしました(成田新法事件・最大判平4.7.1)。もっとも行政手続は刑事手続と性質が異なるため、常に必ず告知や聴聞の機会を与えなければならないわけではない、とも述べています。結論として、成田新法に告知・弁解・防御の機会を与える規定がなくても31条には違反しないとされました。ここを「行政手続には一切及ばない」あるいは「行政手続でも必ず聴聞が要る」と読むと、どちらも誤りになります。

具体例

Aが行政庁から施設の使用禁止処分を受けたとします。31条の保障が及ぶ余地はありますが、処分の目的や緊急性によっては、事前にAの言い分を聴かなくても憲法違反にはなりません(成田新法事件)。

適正手続の保障

適正手続の保障(憲法31条)

ポイント整理

  • ・刑罰を科す手続が法律で定められていること
  • ・その手続の内容が適正であること(告知と弁解の機会など)
  • ・犯罪と刑罰が法律で定められていること(罪刑法定主義)
  • ・その実体規定の内容が適正であること

効果

  • ・法律の定める手続によらない刑罰の賦課は違憲となる
  • ・成田新法には告知・弁解・防御の機会の規定がないが31条に違反しない

条文(憲法31条)

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

刑事手続
行政手続
31条の適用
直接適用される
保障が及ぶ場合がある(成田新法事件)
告知と弁解(聴聞)の機会
必要
常に必要とまではいえない
理由
刑罰は重大な不利益なので慎重に進める
目的や緊急性により迅速さが求められる場面がある

重要メモ

  • ・手続の法定だけでなく、手続の適正・実体の法定・実体の適正まで求められる点に注意
  • ・31条から導かれる4つ:手続の法定/手続の適正/実体の法定(罪刑法定主義)/実体の適正
  • ・手続の適正の代表例は告知と弁解の機会。不利益処分を受ける者に反論の機会を与えること
  • ・成田新法事件(最大判平4.7.1):行政手続も、刑事手続でないという理由だけで枠外とはしない
  • ・同判決は、行政手続では常に告知・聴聞が必要とまではいえないとも述べている
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令状主義と被疑者・被告人の権利(33条〜38条)

憲法33条・35条・37条・38条

簡単にいうと

捜査機関が自分の判断だけで身体や住居に踏み込めないように、裁判官のチェックを挟む仕組みが置かれています。

逮捕にも捜索押収にも令状がいる

33条は、現行犯として逮捕される場合を除き、裁判官が発する令状によらなければ逮捕されないと定めます。35条1項は、住居・書類・所持品への侵入、捜索、押収についても令状を要求します。条文にある「司法官憲」は裁判官だけを指し、検察官や警察官は含みません。捜査機関が自分で自分に許可を出す事態を防ぐための仕組みです。

令状がいらない場面が違う

逮捕について令状が不要になるのは、現行犯の場合です。捜索や押収について令状が不要になるのは、逮捕に伴って行われる場合です(35条1項が33条の場合を除いている部分)。どちらも例外は1つずつですが、その中身が違います。この2つを入れ替えた形の出題が多いので、逮捕は現行犯、捜索押収は逮捕に伴う場合、と対にして覚えます。

裁判と取調べの場面で保障されるもの

37条は、公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利、すべての証人を審問する機会、資格を有する弁護人を依頼する権利を保障します。審理が15年以上中断したまま放置された事件で、最高裁は迅速な裁判を受ける権利が侵害されたと認めました(高田事件・最大判昭47.12.20)。38条1項は自己に不利益な供述を強要されない権利を定めます。ただし氏名は、それ自体では不利益な供述にあたらないというのが判例の立場です。

具体例

警察官がAを現行犯として逮捕し、その場でAのかばんを捜索したとします。逮捕に伴う捜索なので、別に捜索令状を取っていなくても35条には違反しません。

逮捕と捜索押収には裁判官の発する令状が必要で、例外は逮捕が現行犯の場合、捜索押収が逮捕に伴う場合に限られる

令状主義(逮捕・捜索押収)

ポイント整理

  • ・逮捕には、現行犯の場合を除き、裁判官の発する令状が必要
  • ・捜索・押収には、逮捕に伴う場合を除き、裁判官の発する令状が必要
  • ・令状には理由となっている犯罪、捜索する場所、押収する物が明示されていること

効果

  • ・令状によらない逮捕・捜索押収は違憲・違法となる
  • ・迅速な裁判を受ける権利が侵害された場合、審理を打ち切る判断がありうる

条文(憲法33条・35条・37条・38条)

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 第35条第1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。 第37条第1項 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。 第38条第1項 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

場面
原則
例外(令状不要)
条文
逮捕
裁判官の令状が必要
現行犯逮捕
33条
住居への侵入・捜索・押収
裁判官の令状が必要
逮捕に伴う場合
35条1項
令状を出せる者
裁判官(司法官憲)
検察官・警察官は出せない
33条・35条2項

重要メモ

  • ・逮捕は現行犯、捜索押収は逮捕に伴う場合が令状不要の例外。入れ替えに注意
  • ・33条の「司法官憲」は裁判官のみ。検察官・警察官は含まれない
  • ・37条:公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利・証人審問権・弁護人依頼権
  • ・高田事件(最大判昭47.12.20):15年以上の審理中断で迅速な裁判を受ける権利の侵害を認めた
  • ・38条1項の対象は自己に不利益な供述。氏名は原則としてこれにあたらない
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遡及処罰の禁止と二重処罰の禁止(39条)

憲法39条

簡単にいうと

国が刑罰を使えるのは一度きりで、しかも行為の時点のルールに限られます。39条はこの2つの区切りを引いています。

39条が禁じている3つのこと

39条は短い条文ですが、3つの内容を含みます。1つ目は遡及処罰の禁止で、実行のときに適法だった行為を、後から作った法律で処罰することを禁じます。2つ目は一事不再理で、すでに無罪とされた行為について再び刑事上の責任を問うことを禁じます。3つ目は二重処罰の禁止で、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うことを禁じます。

なぜこの区切りが必要なのか

後から作った法律で処罰できるとすれば、国民はどの行為なら安全なのかを事前に判断できません。行為の時点で適法だったかどうかを基準にすることで、はじめて行動の予測が立ちます。また、一度決着した事件を何度も蒸し返されると、生活の落ち着きが失われます。刑罰権の行使を一回限りに区切ることで、この不安を取り除いています。

間違えやすいところ

遡及処罰の禁止が働くのは、処罰を新たに設けたり刑を重くしたりする方向だけです。行為の時より刑が軽くなる改正を遡って適用することは、39条の趣旨に反しません。また、同じ事実について刑罰と行政上の措置が重ねて科されても、その行政上の措置が刑罰にあたらなければ、二重処罰にはなりません。

具体例

Aがある物質を所持した時点では、その物質は規制の対象ではなかったとします。その後に規制する法律ができても、Aの所持行為をその法律で処罰することはできません。

憲法39条は、遡及処罰の禁止、一事不再理、二重処罰の禁止の3つを定めて、国家の刑罰権の行使を一回限りに区切っている

39条が禁じる3つのこと

ポイント整理

  • ・処罰の対象となる行為が、実行の時点で違法とされていること
  • ・同一の犯罪について、すでに確定した刑事責任の追及がないこと

効果

  • ・実行時に適法だった行為を処罰する法律の適用は違憲となる
  • ・無罪が確定した行為について再度起訴することはできない

条文(憲法39条)

第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

禁止される内容
場面
結論
遡及処罰の禁止
実行時は適法だった行為を、後からできた法律で処罰する
許されない
一事不再理
無罪が確定した後に再調査して起訴する
許されない
二重処罰の禁止
一度処罰した犯罪について重ねて刑罰を科す
許されない
(反対に許される例)
行為時より刑を軽くする改正を遡って適用する
39条に反しない

重要メモ

  • ・遡及処罰の禁止・一事不再理・二重処罰の禁止の3つを分けて押さえる
  • ・遡及処罰の禁止が働くのは刑を重くする方向のみ。刑が軽くなる改正の遡及適用は許される
  • ・一事不再理:すでに無罪とされた行為について再び刑事上の責任を問えない
  • ・二重処罰の禁止:同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問えない
  • ・刑罰にあたらない行政上の措置が重ねて科されても二重処罰にはならない

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
精神的自由
優越的地位・厳格審査
検閲の定義を誤ると失点
経済的自由
目的二分論で審査基準変動
薬局距離制限事件の規範は頻出
人身の自由
令状主義が原則・例外は限定的
現行犯逮捕の要件を正確に
プライバシー権
13条から導出・具体的権利性あり
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