第3節 人権の限界
第2章 人権
人権は無制限ではありません。他者の人権との衝突や公共の福祉による調整が必要となります。この節では、人権がどのような原理で制約されるのか、そして制約が許される限界はどこにあるのかを学びます。また、憲法の人権規定が私人間(国家ではなく個人と個人の関係)にどう及ぶかという「間接適用」の問題も重要論点です。試験では具体的事例における人権制約の合憲性判断が頻出です。
公共の福祉
簡単にいうと
簡単にいうと、人権は「公共の福祉」によって制限されることがあります。二重の基準論による審査の違いがポイントです。
■ 公共の福祉による制限
人権は他者の人権や社会全体の利益(公共の福祉)と衝突することがあり、一定の制限を受けます(12条・13条)。人権は絶対無制限ではなく、公共の福祉により制限されます。
■ 内在的制約と政策的制約
内在的制約とは、人権そのものに内在する制約です。他者の人権との調整のために認められるもので、誰の人権も等しく保護するための制約といえます。政策的制約とは、社会経済政策のための制約です。職業選択の自由などに認められ、内在的制約より広い範囲で制約が可能です。
■ 消極目的規制と積極目的規制
消極目的規制とは、国民の生命・健康への危険を防止するための規制です(例:薬局の距離制限→違憲)。積極目的規制とは、社会・経済政策上の目的による規制です(例:小売市場開設の距離制限→合憲)。
■ 二重の基準論
精神的自由への規制には厳格な審査基準が適用されます(違憲になりやすい)。経済的自由への規制には緩やかな審査基準が適用されます(立法裁量を尊重)。精神的自由に厳格審査を要求する理由は、①民主制の維持に不可欠であること、②一度侵害されると回復が困難であることの2点です。
重要メモ
- ・「人権は公共の福祉(12条・13条)により制限可・二重の基準論:精神的自由は厳格審査・経済的自由は緩やかな審査」
- ・公共の福祉(12条・13条):人権は絶対無制限ではなく、公共の福祉により制限される
- ・内在的制約:人権そのものに内在する制約——他者の人権との調整(誰の人権も等しく保護するための制約)
- ・政策的制約:社会経済政策のための制約——職業選択の自由などに認められる(内在的制約より広い)
- ・二重の基準論:精神的自由の規制→厳格な基準(違憲になりやすい)、経済的自由の規制→緩やかな基準(立法裁量を尊重)
- ・精神的自由に厳格審査を要求する理由:①民主制の維持に不可欠②一度侵害されると回復困難
私人間効力
簡単にいうと
簡単にいうと、憲法は本来、国家と国民の関係を規律するものであり、会社同士や個人間には直接適用されません。間接適用説と三菱樹脂事件がポイントです。
■ 私人間への憲法の適用
憲法は本来、国家と国民の間の関係を規律するものであり、私人(個人・企業)間の関係に直接適用することはできません(直接適用否定説・通説)。ただし、民法90条(公序良俗)や民法の適切な解釈・運用を通じて、間接的に私人間の関係に憲法の精神を及ぼすことができます(間接適用説)。
■ 直接適用説と間接適用説
直接適用説は、私人間にも憲法の人権規定が直接適用されるという考え方ですが、通説・判例はこれを否定しています。間接適用説(通説・判例)は、私人間には直接適用されないが、民法90条等の一般条項の解釈を通じて間接的に適用されるという考え方です。
■ 三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)
三菱樹脂事件では、企業は採用の自由を有し、思想・信条を理由とした採用拒否も原則として違法ではないと判示されました。間接適用説を採用したリーディングケースです。
■ 日産自動車事件(最判昭56.3.24)
男女で定年年齢を異なるものとした就業規則は民法90条により無効とされました。間接適用の具体例として重要です。なお、国家人権機関への請求も可能であり、直接適用説でなくても私人間の人権侵害には救済手段があります。

私人間効力
重要メモ
- ・「憲法の人権規定は私人間に直接適用されない(間接適用説・通説・判例)・民法90条等の一般条項を通じて間接的に適用」(三菱樹脂事件)
- ・直接適用説:私人間にも憲法の人権規定が直接適用される——通説・判例は否定
- ・間接適用説(通説・判例):私人間には直接適用されないが、民法90条等の一般条項の解釈を通じて間接的に適用される
- ・三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12):企業は採用の自由を有し、思想・信条を理由とした採用拒否も原則として違法ではない——間接適用説を採用
- ・日産自動車事件(最判昭56.3.24):男女で定年年齢を異なるものとした就業規則は民法90条により無効——間接適用の具体例
- ・国家人権機関への請求は可——直接適用説でなくても私人間の人権侵害には救済手段がある
まとめ
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