第1節 条文の構成・判例の表記
第1章 総論
憲法の学習を始める前に、まず「道具の使い方」を身につけましょう。憲法の条文がどのように構成されているか、判例をどう読み解くかを知らなければ、正確な理解も答案作成もできません。この節では、憲法学習の「基本ルール」を習得します。
条文の構成
簡単にいうと
条文は「条・項・号」の3段階でできています。この住所の読み方が分かると、以後の学習で条文を引くのが楽になります。
条文の階層構造
法令の条文は、まず条番号で区分され、各条はさらに「項」で区分されます。項の中に事柄を列挙する場合は「号」で区分します。
条(大区分)→ 項(中区分)→ 号(列挙事項の小区分)
この3段階が条文の住所にあたります。「民法96条1項」であれば、96条という条の中の1項という意味です。
憲法の条文表記の特徴
憲法の条文には、法律にある枝番(○条の○)がありません。また、項が置かれていない条も多くあります。
・項がある条:29条は1項・2項・3項に分かれています。「憲法29条2項」のように引用します。 ・項がない条:7条は項に分かれず、一号から十号までが並んでいます。そのため「憲法7条1号」のように、条と号だけで引用します。41条のように条全体が一文の場合は「憲法41条」とだけ書きます。
法律との違い
法律には、あとから条文を追加したときに使う枝番(○条の○)があります。民法の「423条の2」などがその例です。憲法にはこれがありません。この違いは基礎法学でも問われます。
具体例
民法96条1項は「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と定めています。これは96条という条の1項です。同じ96条には2項・3項もあり、それぞれ第三者による詐欺、取消しの対抗要件を定めています。条文を引くときに「96条」とだけ書くと3つの項すべてを指してしまうので、答案では項まで特定して引用します。
重要メモ
- ・条→項→号の3階層と、憲法に枝番がないことがポイント
- ・階層:条(大区分)→項(中区分)→号(列挙事項の小区分)
- ・憲法の条文表記は「○条」のみ。法律のような枝番(○条の○)は存在しない
- ・項がない条もある。7条は項に分かれず一号から十号が並ぶため「7条1号」と引用する
- ・41条のように条全体が一文の場合は「41条」とだけ書く
判例の表記
簡単にいうと
判例には「最大判昭53.10.4」のような独特の書き方があります。裁判所・判断の種類・年月日の3つを読み取ります。
最高裁判例の種類
最高裁判所の判例には「最大判(大法廷判決)」と「最判(小法廷判決)」の2種類があります。大法廷は裁判官15人全員で判断し、重要な憲法判断は大法廷で行われます。「最大判昭53.10.4」のように、裁判所名・判決の種類・年月日で表記されます。
判例表記の読み方
最大判(最高裁判所大法廷判決)は裁判官15人全員で構成されます。最判(最高裁判所小法廷判決)は通常5人で構成される日常的な上告審です。最大決は大法廷決定、最決は小法廷決定を指します。「判決」と「決定」の違いも押さえてください。
年号と下級審の表記
年号は昭○○(昭和)、平○○(平成)、令○○(令和)で表記されます。例として「最大判昭53.10.4」のように使います。下級審では高判(高等裁判所判決)や地判(地方裁判所判決)の表記も使われます。下級審の判例も学習の参考になりますが、試験対策では最高裁判例が中心となります。
具体例
「最大判昭53.10.4」は、最高裁判所大法廷が昭和53年10月4日に下した判決という意味です(マクリーン事件)。これが「最判平8.3.19」であれば、最高裁判所小法廷が平成8年3月19日に下した判決です。判例集で「最大判」と書かれていたら、法令の憲法適合性の判断か判例変更のどちらかが行われた重要な事件だと見当がつきます。
重要メモ
- ・「最大判」なら大法廷、つまり重要な憲法判断だと読めるのがポイント
- ・最大判=最高裁判所大法廷判決。裁判官15人全員で構成し、重要な憲法判断を行う
- ・最判=最高裁判所小法廷判決。通常5人で構成する日常的な上告審
- ・最大決=大法廷決定、最決=小法廷決定。「判決」と「決定」の違いにも注意
- ・年号は昭=昭和、平=平成、令=令和。下級審は高判(高等裁判所)・地判(地方裁判所)
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