第8節 民衆訴訟・機関訴訟
第4章 行政事件訴訟法
行政事件訴訟には4類型あります。これまで学んだ抗告訴訟・当事者訴訟(主観訴訟=個人の権利利益の救済を目的とする)に加え、本節では民衆訴訟(5条)と機関訴訟(6条)を学びます。この2つは客観訴訟に分類され、個人の権利救済ではなく客観的な法秩序の維持や機関相互の権限争いの解決を目的とする特殊な訴訟類型です。いずれも法律に定める場合において、法律に定める者に限り提起できる(42条)法定訴訟である点が最大の特徴です。
民衆訴訟・機関訴訟
簡単にいうと
個人の権利とは関係なく、行政の適法性や社会秩序のために提起できる訴訟が民衆訴訟と機関訴訟です。地方自治法でも登場します。
民衆訴訟と機関訴訟は、取消訴訟などとは異なり、個人の権利利益が直接問題となっているわけではありませんが、それを放置すると行政の適法性や社会秩序が維持されなくなるため、是正を求める訴訟です。
【民衆訴訟とは(5条)】 民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行政活動を是正する訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(5条)。 例:公職選挙法における選挙無効訴訟、地方自治法における住民訴訟。
【機関訴訟とは(6条)】 「機関訴訟」とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟をいいます(6条)。 例:国の関与に対する不服の訴訟、県知事と県議会の間で起こった紛争に対し、総務大臣が行った判断に対する不服の訴訟。
過去問:住民訴訟は、行政事件訴訟法の定める機関訴訟であり、それに関する行政事件訴訟法の規定が適用される(15-21-エ ×→民衆訴訟)
具体例
ある選挙に不正があったとして、選挙人Aが選挙無効訴訟を起こすのは民衆訴訟です。Aは自分の権利が侵害されたから訴えるのではなく、選挙人という資格で訴えます。 住民Bが市の支出を正すために起こす住民訴訟も民衆訴訟です。 これに対して、国の関与に不服がある県が起こす訴訟は機関訴訟です。

民衆訴訟と機関訴訟(客観訴訟)
重要メモ
- ・どちらも法律に定めがある場合に、法律で定める者に限って提起できる(42条)
- ・民衆訴訟は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する(5条)
- ・民衆訴訟の例は選挙無効訴訟・当選訴訟・住民訴訟
- ・住民訴訟は民衆訴訟であって機関訴訟ではない(15-21-エ ×)
- ・機関訴訟は、国や公共団体の機関どうしの権限をめぐる争い(6条)
まとめ
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行政法の重要用語
条例
地方公共団体が自主的に制定する法規のことで、その地域内においてのみ効力を持つ自治立法のこと。
100条調査権
地方議会が、地方公共団体の事務について調査を行い、関係人の出頭・証言や記録の提出を求めることができる権限のこと。
秩序罰
届出義務違反など、行政上の秩序を乱す軽微な義務違反に対して科される過料のこと。
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
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