第7節 当事者訴訟
第4章 行政事件訴訟法
当事者訴訟は、行政庁の処分を争う取消訴訟とは異なり、行政法上の法律関係を直接争う訴訟類型です。公法上の法律関係について当事者間で争う実質的当事者訴訟と、形式的当事者訴訟があります。取消訴訟では救済されない公法上の権利義務を確認するための重要な手段です。
当事者訴訟とは・形式的当事者訴訟
簡単にいうと
処分そのものを争うのではなく、対等な立場の当事者どうしで争う訴訟です。処分性の有無は問題になりません。
取消訴訟をはじめとする抗告訴訟は、公権力の行使(処分等)を争うものです。これに対し、そのような性質がなく、対等な当事者間の権利利益や法律関係を争う訴訟として当事者訴訟があります(4条)。
取消訴訟では処分性がない行政活動は対象になりませんでしたが、当事者訴訟では処分性の有無は問題になりません。
抗告訴訟と当事者訴訟
- ・抗告訴訟:行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟(3条)
- ・当事者訴訟:公権力の行使にあたらないものを争う訴訟(4条)
公権力の行使にあたるかどうかが分かれ目です。
当事者訴訟の2種類
形式的当事者訴訟の典型例
土地収用の場面で考えます。A県収用委員会が収用裁決を行い、土地所有者Xに「土地をYに引き渡せ」と命じ、起業者Yに「補償金をXに支払え」と命じたとします。
Xの不満の中身によって、提起すべき訴訟が変わります。
補償金額を定めたのは収用委員会(行政庁)なので、収用委員会を被告として訴えることも考えられます。しかし土地収用法が、補償金を支払う側の起業者を被告とすることを定めているため、形式的当事者訴訟という形になります。
逆に起業者Yが「補償金額が高すぎる」と考える場合は、Xを被告として形式的当事者訴訟を提起することになります。
過去問では「土地収用法に基づく都道府県収用委員会による収用裁決において示された補償額の増額を求める土地所有者の訴えは、抗告訴訟にあたる」という記述が出題され、誤りとされました。形式的当事者訴訟にあたります。
具体例
A県収用委員会の収用裁決でXの土地が収用された場合、裁決自体を争うならA県を被告に取消訴訟、補償金の増額を求めるなら起業者Yを被告に形式的当事者訴訟を提起します。

当事者訴訟とは・形式的当事者訴訟
重要メモ
- ・当事者訴訟は対等な当事者間の権利利益や法律関係を争う訴訟で、処分性の有無は問題にならない
- ・形式的当事者訴訟は4条前段、実質的当事者訴訟は4条後段
- ・収用裁決の補償額の増額を求める訴えは形式的当事者訴訟であって抗告訴訟ではない(10-16-イ ×)
- ・補償金を支払う側の起業者を被告とするのは、土地収用法がそう定めているため
- ・収用裁決そのものに不服があるなら、県を被告として取消訴訟を提起する
実質的当事者訴訟
簡単にいうと
「○○を確認してくれ!」という訴えが典型的な実質的当事者訴訟です。国籍確認や選挙権確認などが代表例です。
実質的当事者訴訟は、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟です(4条後段)。
ここでは、どのような訴えが実質的当事者訴訟となるのかを覚えてください。
【実質的当事者訴訟の例】 ・公法上の金銭債権の支払請求訴訟(公務員の給料) ・憲法29条3項に基づく損失補償請求訴訟 ・国に対して日本国籍を有することの確認訴訟 ・選挙権を行使できる地位にあることの確認訴訟 ・公務員の地位の確認訴訟
「○○を確認してくれ!」という訴えが典型的な実質的当事者訴訟。
過去問:国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えを提起する場合、この確認の訴えは実質的当事者訴訟に該当する(11-18-1 〇)。
重要メモ
- ・「実質的当事者訴訟(4条後段)=公法上の法律関係の確認訴訟が典型。近年の最高裁が積極活用」がポイント
- ・実質的当事者訴訟(4条後段):公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟
- ・代表的な具体例①:国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴え(11-18-1 ○)
- ・代表的な具体例②:選挙権を行使できる地位にあることの確認訴訟。在外国民の選挙権確認訴訟(最大判平17.9.14)
- ・代表的な具体例③:公務員の地位確認訴訟、公法上の金銭債権の支払請求訴訟(公務員の給料)、憲法29条3項に基づく損失補償請求訴訟
- ・民事訴訟との区別:私法上の法律関係は民事訴訟。「公法上の法律関係」かどうかが判断の分かれ目
- ・近年の判例傾向:取消訴訟が使えない局面で実質的当事者訴訟を活用する動きが拡大(在外選挙権・HIV訴訟等)
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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