第5節 義務付け訴訟(抗告訴訟)
第4章 行政事件訴訟法
義務付け訴訟は、行政庁に一定の処分をすべき旨を命ずる判決を求める抗告訴訟です。平成16年改正で法定され、従来の取消訴訟・不作為違法確認訴訟では救えなかった「行政に積極的な処分をさせたい」というニーズに応える制度となりました。申請型(3条6項2号)と非申請型(3条6項1号)の区別、それぞれの訴訟要件、取消訴訟規定の準用関係、そして仮の救済である仮の義務付け(37条の5)が試験の最重要論点です。
義務付け訴訟とは・種類
簡単にいうと
行政庁に「ちゃんと処分を出しなさい」と命じてもらうための訴訟です。取消訴訟や不作為の違法確認訴訟だけでは救えないケースをカバーするのがポイントです。
判決の拘束力の箇所で説明した具体的事例のように、取消訴訟や不作為の違法確認訴訟だけでは、納得のいく処分を出してもらえない可能性があります。そこで、国民が「納得のいく処分」を出してもらえるような訴訟として、義務付け訴訟が存在します(3条6項)。
義務付け訴訟には、申請を前提としない「非申請型義務付け訴訟」と、申請を前提とする「申請型義務付け訴訟」の2種類があります。
義務付け訴訟の種類
申請型義務付け訴訟には、次の2つがあります。 ・不作為型:申請後に相当期間が経過しても応答がない場合 ・拒否処分型:申請が拒否された場合
非申請型義務付け訴訟は、申請を前提とせずに行政に積極的な処分を求めるものです。
重要メモ
- ・申請型(37条の3)と非申請型(37条の2)の2種類があり、申請型は取消訴訟等との必須の併合提起が義務付けられている
- ・義務付け訴訟の根拠条文:行政事件訴訟法3条6項(義務付けの訴えの定義)
- ・2種類の分類:①非申請型義務付け訴訟(37条の2)。申請を前提としない処分の義務付け、②申請型義務付け訴訟(37条の3)。申請を前提とする処分の義務付け
- ・申請型はさらに「不作為型(申請後相当期間経過後も処分なし)」と「拒否処分型(申請が拒否された場合)」の2つに分かれる
- ・義務付け訴訟の認容判決:行政庁に一定の処分をすべき旨を命ずる内容(取消判決とは異なる)
- ・取消訴訟の準用規定(38条):被告適格・管轄裁判所・執行停止・判決の拘束力は準用○、出訴期間・事情判決は準用×
申請型義務付け訴訟
簡単にいうと
申請したのに応答がない、あるいは拒否された。そのどちらかに応じて、併せて提起する訴訟が変わります。
「申請をしたのに一向に処分が出ない」「申請をしたら拒否処分が出た」という事態を避けるために、申請型義務付け訴訟があります。
申請型には不作為型と拒否処分型の2つがあり、どちらも単独では提起できず、別の訴訟と併合提起しなければなりません。
不作為型
申請したのに相当期間内に応答がない場合です。
不作為の違法確認訴訟を提起すれば不作為の違法は確認されますが、そのあとに出される処分が拒否処分になる可能性があります。そこで、不作為の違法確認訴訟と義務付け訴訟を併合提起する必要があります(37条の3第3項1号)。
拒否処分型
申請したら拒否処分が出た場合です。
拒否処分の取消訴訟を提起して取消判決が出ても、理由が異なれば再び拒否処分が出される可能性があります。判決の拘束力の限界のところで学んだとおりです。そこで、取消訴訟と義務付け訴訟を併合提起する必要があります(37条の3第3項2号)。
併合提起は義務だが、単独提起も選べる
義務付け訴訟を併合提起するかどうかは国民の側が決めることです。不作為の違法確認訴訟や取消訴訟だけを提起することも認められます。
過去問では「申請拒否処分の取消訴訟には、申請された許認可等を命ずることを求める義務付け訴訟を併合提起できるが、当該申請拒否処分の取消訴訟のみを単独で提起することも許される」という記述が正しいものとして出題されています。
ここは「義務付け訴訟を提起するなら併合しなければならない」という意味であって、「必ず義務付け訴訟を提起しなければならない」という意味ではありません。
本案勝訴要件
義務付け訴訟には本案勝訴要件が置かれています(37条の3第5項)。
①併合された訴訟に理由があると認められ、かつ、②行政庁が処分をすべきことが根拠法令上明らかであると認められるか、しないことが裁量権の逸脱・濫用と認められる場合には、認容判決を出しなさい、という規定です。
訴訟要件を満たしただけでは足りず、この要件まで満たして初めて義務付けの判決が出ます。
具体例
Aが営業許可を申請して拒否されたとき、取消訴訟だけを提起することもできますが、確実に許可を得たければ義務付け訴訟を併合提起します。

義務付け訴訟の分類

申請型義務付け訴訟
重要メモ
- ・不作為型は不作為の違法確認訴訟と、拒否処分型は取消訴訟と併合提起する(37条の3第3項)
- ・義務付け訴訟を提起するなら併合が必要だが、取消訴訟だけを単独で提起することも許される(17-17-1 ○)
- ・本案勝訴要件(37条の3第5項):併合された訴訟に理由があり、かつ処分すべきことが根拠法令上明らかか、しないことが裁量権の逸脱・濫用と認められること
- ・申請型には「重大な損害」の要件がない。重大性が要求されるのは非申請型だけ
- ・拒否処分型は、判決の拘束力の限界とセットで押さえる
非申請型義務付け訴訟
簡単にいうと
自分が申請したわけではないのに、行政に処分を出させる訴訟です。申請型より要件が厳しくなっています。
違法建築物の除却命令など、行政処分を出すべきなのに出されていない場合に、処分を出すよう義務付けるための訴訟が非申請型義務付け訴訟です(37条の2第1項)。
隣に違法建築物が建っていて危険なのに行政が動かない、というような場面を想定しています。申請をした本人ではなく、周辺住民が原告になる点が申請型と違います。
原告適格(37条の2第3項)
行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき、法律上の利益を有する者に限り提起することができます。
要件(37条の2第1項)
一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるためほかに適当な方法がないときに限り、提起することができます。
「重大な損害」と「ほかに適当な方法がない」の2つを両方満たす必要があります。
申請型より要件が厳しい
申請型義務付け訴訟と比べて、要件が厳しくなっています。認められにくいということです。
申請型は、自分が申請したのに応答がない、あるいは拒否されたという場面なので、訴える必要性がはっきりしています。これに対し非申請型は、自分が何かを求めたわけでもないのに行政に処分を出させるものなので、より絞りをかけているわけです。
過去問では「申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分がされないことにより『重大な損害を生ずるおそれ』がある場合に限り提起できることとされている」という記述が出題され、誤りとされました。重大性が要求されるのは非申請型だけです。
本案勝訴要件
非申請型にも本案勝訴要件があります(37条の2第5項)。行政庁が処分をすべきことが根拠法令上明らかであると認められるか、しないことが裁量権の逸脱・濫用と認められる場合には、認容判決を出しなさいという規定です。
具体例
A所有の違法建築物について市が除却命令を出さない場合、倒壊の危険にさらされる周辺住民Bは、重大な損害のおそれとほかに方法がないことを示して非申請型義務付け訴訟を提起できます。

非申請型義務付け訴訟
重要メモ
- ・非申請型は、重大な損害を生ずるおそれがあり、かつほかに適当な方法がないときに限り提起できる(37条の2第1項)
- ・重大性が要求されるのは非申請型だけで、申請型には要件がない(13-16-1 ×)
- ・原告適格は法律上の利益を有する者(37条の2第3項)
- ・申請型と異なり、併合提起は不要で単独で提起できる
- ・本案勝訴要件(37条の2第5項):処分すべきことが根拠法令上明らかか、しないことが裁量権の逸脱・濫用と認められること
仮の義務付け
簡単にいうと
義務付け訴訟の審理中に「とりあえず今すぐ処分を出してほしい」と裁判所に求める暫定的な救済制度です。「償うことのできない損害+緊急の必要」がポイントです。
義務付け訴訟を提起しても、判決が出るまでには時間がかかります。そこで、義務付け訴訟の審理中に、とりあえず処分を出してもらうことを求めていくのが、仮の義務付け制度です(37条の5)。
仮の義務付けの要件(37条の5第1項)
原則(37条の5第1項):①処分がされないことにより生じる「償うことのできない損害」を避けるため「緊急の必要」があり、かつ、②本案について理由があるとみえること。
例外(37条の5第3項):公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、仮の義務付けをすることができません。
申請型・非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」ことが要件となっています。
過去問:申請型および非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」ことが要件で、裁判所は申立てにより仮の義務付けを命ずることができます(13-16-4 ○)。

仮の義務付け制度の概要
重要メモ
- ・仮の義務付け(37条の5)は申請型・非申請型ともに申立て可能で、要件は『償うことのできない損害を避けるための緊急の必要』と『本案に理由があるとみえること』の両方
- ・仮の義務付け(37条の5第1項):義務付け訴訟の判決確定前に、裁判所が仮に処分を命じる暫定的措置
- ・申請型・非申請型のいずれの義務付け訴訟においても申立て可能(37条の5)
- ・積極的要件①:処分がされないことにより生ずる「償うことのできない損害」を避けるための「緊急の必要」があること(37条の5第1項)
- ・積極的要件②:本案について「理由があるとみえる」こと(37条の5第1項)
- ・消極的要件:公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは仮の義務付けをすることができない(37条の5第3項)
- ・内閣総理大臣の異議制度(27条)が準用される。内閣総理大臣の異議が述べられると仮の義務付けはできない
- ・過去問ポイント:「申請型・非申請型いずれも償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があることが要件」は正しい(13-16-4 ○)
まとめ
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行政法の重要用語
不可争力
行政行為に対して不服申立てができる期間が過ぎると、私人の側からはもう争えなくなる効力のこと。
期限
行政行為の効力の発生または消滅を、将来確実に到来する事実にかからせる附款のこと。
公用制限
公共目的のために私人の財産権に制限を加えるが、所有権自体は残したままにする行政作用のこと。
行政不服審査法
行政庁の処分や不作為に対して、国民が簡易・迅速に不服を申し立てるための手続を定めた法律のこと。
行政罰
行政上の義務違反に対して制裁として科される罰のこと。刑事罰である行政刑罰と、金銭罰である秩序罰の2種類がある。
法律行為的行政行為
行政庁の意思表示によって法律効果を発生させる行政行為のこと。許可や認可など、意思の内容どおりに効果が生じる点が特徴。
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