第4節 不作為の違法確認訴訟(抗告訴訟)
第4章 行政事件訴訟法
行政庁が申請に対して応答しない場合、申請者はどう救済されるのでしょうか。この節では、不作為の違法確認訴訟という特別な抗告訴訟を学びます。処分がないからこそ必要な独自の訴訟類型であり、義務付け訴訟との使い分けが試験の最重要ポイントです。
不作為の違法確認訴訟の意義
第3条5項条不作為の違法確認訴訟とは、行政庁が法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分又は裁決をしないことについて、その違法の確認を求める訴訟です。申請者の権利救済と行政庁への応答義務の履行確保を目的とします。
具体例
Aさんは建築確認の申請を市に提出したが、3か月経っても市は許可も不許可もせず放置している。Aさんは着工できず困っているため、市の不作為が違法であることの確認を裁判所に求めた。
要件
- ・法令に基づく申請がなされていること
- ・申請に対して相当の期間内に何らの処分又は裁決がされていないこと(不作為)
- ・申請権が法令上認められていること
効果・結論
- ・裁判所が不作為の違法を確認する判決を出す
- ・判決には行政庁に処分をさせる拘束力はないが、事実上の応答促進効果がある
- ・申請型義務付け訴訟と併合提起することで処分を義務付ける判決を得られる
条文(第3条5項条)
行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らの処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされないとき(以下「不作為」という。)は、当該処分又は裁決に係る行政庁の不作為の違法の確認を求める訴訟を提起することができる。
試験のポイント
- ・申請に対する不作為に限られる(申請のない場合は対象外)
- ・単独提起では違法確認のみで処分を義務付けられない点に注意
- ・申請型義務付け訴訟との併合提起が実務上は重要
相当の期間の判断
相当の期間とは、申請の性質、審査の難易度、行政庁の事務量等を考慮して、社会通念上応答に必要とされる合理的期間を指します。法令に審査期間の定めがある場合はそれが基準となります。
具体例
Bさんは旅券の発給申請をしたが1年経っても音沙汰なし。通常は2週間程度で発給される旅券について、1年の放置は相当の期間を超えると判断される。
要件
- ・申請から提訴時までの期間の長さ
- ・申請の性質・内容の複雑性
- ・行政庁の審査に要する通常の期間
効果・結論
- ・相当の期間を経過していれば不作為が認められる
- ・期間経過前は訴えの利益なしとして却下される
- ・法令の期間定めがある場合はそれが重要な判断基準となる
試験のポイント
- ・法令に明示された期間があればそれが基準だが、必ずしも絶対ではない
- ・複雑な申請ほど相当期間は長くなる
- ・単なる遅延では足りず、社会通念上不合理な期間の経過が必要
申請型義務付け訴訟との関係
第3条6項1号、37条の3条申請型義務付け訴訟とは、行政庁が申請を認容すべきであるのに処分をしない場合に、その処分を義務付ける訴訟です。不作為の違法確認訴訟と併合提起することが訴訟要件となっており、両者は密接に関連します。
具体例
Cさんは飲食店営業許可の申請をしたが市が放置。Cさんは不作為の違法確認訴訟と、許可処分を義務付ける申請型義務付け訴訟を同時に提起した。
要件
- ・申請型義務付け訴訟は不作為の違法確認訴訟との併合提起が必要
- ・申請を認容すべき場合に限られる(一定の処分を求める場合を含む)
- ・他に適当な方法がないこと(補充性)
効果・結論
- ・不作為の違法が確認され、かつ要件を満たせば処分の義務付け判決
- ・行政庁は判決に拘束され処分をしなければならない
- ・義務付け判決により申請者の権利が実効的に救済される
条文(第3条6項1号、37条の3条)
義務付けの訴えのうち、行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(第三条第五項に規定する場合を含む。)に、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求めるものは、当該処分に係る行政庁の不作為の違法確認の訴えを併合して提起しなければならない。
試験のポイント
- ・不作為の違法確認訴訟単独では処分義務付けはできない点が最重要
- ・併合提起は訴訟要件であり、併合しないと却下される
- ・実務上は最初から両訴訟を併合提起するのが通常
訴訟要件と被告
第11条1項、38条1項条不作為の違法確認訴訟では、不作為庁(処分権限を有する行政庁)を被告とし、出訴期間の制限はありません。ただし申請権の存在と相当期間の経過が訴訟要件となります。
具体例
Dさんは県知事に開発許可を申請したが放置されている。訴訟では県知事が所属する県を被告とする。出訴期間の制限はないため、いつでも提訴できる。
要件
- ・不作為庁の所属する国又は公共団体を被告とする
- ・法令上の申請権が存在すること
- ・相当の期間を経過していること
- ・出訴期間の制限なし
効果・結論
- ・要件を満たせば本案審理に入る
- ・違法確認判決により行政庁は応答義務を認識する
- ・併合された義務付け訴訟で処分の義務付けが可能
条文(第11条1項、38条1項条)
取消訴訟は、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として提起することができない。(11条1項)不作為の違法確認の訴えの被告は、第三条第五項に規定する不作為に係る行政庁の所属する国又は公共団体とする。(38条1項)
試験のポイント
- ・取消訴訟と異なり出訴期間の制限がない点が最重要
- ・被告は不作為庁の所属する国又は公共団体
- ・原告適格は申請者本人であり、取消訴訟より限定的
まとめ
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