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テキスト/行政法/第2節 取消訴訟(抗告訴訟)

第2節 取消訴訟(抗告訴訟)

第4章 行政事件訴訟法

取消訴訟は行政事件訴訟の中核であり、違法な行政処分を取り消すための訴訟です。前節で訴訟要件の基本(処分性・原告適格・出訴期間)を学びましたが、本節ではさらに訴えの利益・被告適格・原処分主義などの訴訟要件の全体像、本案審理における主張制限や訴えの変更、判決の種類と効力(既判力・形成力・第三者効・拘束力)、そして執行停止制度まで、取消訴訟の手続全体を体系的に学びます。試験では毎年複数問が出題される最重要分野です。

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行政事件訴訟法特有のルール

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟には民事訴訟と大きく異なる特有のルールが複数設けられています。特に①被告は「処分庁」ではなく「国・公共団体」であること(11条)、②出訴期間が処分を知った日から6か月・処分日から1年と短いこと(14条)、③裁判所が職権で証拠調べできること(24条)の3点を必ず押さえましょう。

行政事件訴訟法(行訴法)には、民事訴訟とは大きく異なる取消訴訟特有のルールがいくつか設けられています。

■ 被告適格(11条)

民事訴訟では不法行為をした当事者本人が被告となりますが、取消訴訟では、処分をした「行政庁」ではなく、その行政庁が所属する国または公共団体が被告となります(11条1項)。例えば、税務署長がした課税処分を争う取消訴訟では、税務署長ではなく「国」が被告です。

ただし例外として、国または公共団体に所属しない行政庁(独立した行政委員会など)がした処分については、その行政庁自身が被告となります(11条2項)。

■ 管轄裁判所(12条)

取消訴訟の第一審は地方裁判所です。管轄は原則として、①被告の普通裁判籍の所在地、または②処分・裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所となります。国を被告とする場合は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも訴えを提起できます(12条4項)。

■ 出訴期間(14条)

取消訴訟には厳格な出訴期間が定められています。①処分があったことを知った日から6か月以内(主観的起算点・14条1項)、かつ②処分の日から1年以内(客観的起算点・14条2項)に提起しなければなりません。正当な理由がある場合は延長が認められます。

行政不服審査法の審査請求期間(処分を知った日の翌日から3か月・処分があった日の翌日から1年)と比較すると、起算点(当日 vs 翌日)と期間(6か月 vs 3か月)が異なる点に注意が必要です。試験で頻繁に問われる混同ポイントです。

■ 職権証拠調べ(24条)

民事訴訟では当事者主義が原則であり、証拠の収集は基本的に当事者が行います。しかし行政訴訟では、裁判所が必要と認めるときは職権で証拠調べをすることができます(24条)。これは行政訴訟の公益性を反映した特則です。また、23条の2では、裁判所が被告行政庁に対して処分の理由となった事実を証する資料の提出を求めることができるとされています。

重要メモ

  • 「被告は処分庁でなく国・公共団体(11条)・管轄は処分庁所在地等(12条)・出訴期間は知った日から6か月・処分日から1年(14条)がポイント」
  • 被告適格(11条1項):処分・裁決をした行政庁ではなく、その行政庁が所属する国または公共団体が被告
  • 例外(11条2項):国または公共団体に所属しない行政庁がした処分→当該行政庁が被告
  • 管轄裁判所(12条):原則は被告の普通裁判籍または処分行政庁の所在地を管轄する裁判所——国を被告とする場合は原告の普通裁判籍所在地を管轄する高等裁判所所在地の地裁にも提起可
  • 出訴期間①(主観的起算点・14条1項):処分があったことを知った日から6か月以内
  • 出訴期間②(客観的起算点・14条2項):処分の日から1年以内——正当な理由があれば延長可(行審法は翌日起算の3か月と1年で違いに注意)
  • 職権証拠調べ(24条):裁判所は職権で証拠調べができる——民事訴訟と異なる行政訴訟の特則
  • 審理の特則(23条の2):裁判所は被告行政庁に処分の理由を示す資料の提出を求めることができる
  • 取消訴訟は処分・裁決の違法のみ主張可——不当は主張できない(行政不服審査との違い)
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取消事由の制限

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟で主張できる違法事由は「自己の法律上の利益に関係するもの」に限られます(10条1項)。無関係な違法を理由にした請求は「棄却」されます(「却下」ではない点が重要です)。また処分の取消訴訟では「裁決固有の違法」は主張できません(原処分主義・10条2項)。さらに取消訴訟は「違法」のみが争え、「不当」は審査請求で争うことになります。

取消訴訟において、原告が主張できる違法事由には制限が設けられています。

■ 主張制限(10条1項)

原告は「自己の法律上の利益に関係のない違法」を理由として取消しを求めることができません(10条1項)。例えば、飲食店の営業停止処分を受けた事業者が訴訟を提起する場合、食品衛生法上の手続違反など自分の権利利益に直接関連する違法であれば主張できますが、まったく無関係な法律の手続違反を理由にしても認められません。

この主張制限に反する訴えは、訴訟要件自体は満たしているため、「却下」ではなく「棄却判決」となります。「却下(訴訟要件の欠缺→本案審理なし)」と「棄却(本案に理由なし)」の区別は試験でよく問われます。

■ 原処分主義(10条2項)

処分の取消訴訟において、審査請求に対する裁決固有の違法(例:審査庁が審理手続を誤ったなど、裁決そのものに固有の問題)を主張することはできません(10条2項)。裁決固有の違法は、「裁決の取消訴訟」を別途提起して争うべきものとされています。これを原処分主義といいます。

なお逆の場合も整理しておきましょう。裁決取消訴訟では、処分の違法(原処分固有の違法)を主張することはできません。これも原処分主義の一側面です。

■ 違法のみを争える(不当は争えない)

取消訴訟で争えるのは処分の違法性のみです。処分が「不当」(違法ではないが不合理・不適切)であっても、それだけでは取消訴訟で請求は認められません。不当な処分を争いたい場合は、行政不服申立て(審査請求)を利用する必要があります。審査請求は違法・不当の両方について争うことができる点が、取消訴訟との根本的な違いです。

取消事由の制限

取消事由の制限(行政事件訴訟法10条1項)

重要メモ

  • 「取消訴訟は違法のみ争える・自己の法律上の利益に関係のない違法は主張不可(10条1項)→棄却判決」がポイント
  • 取消事由の制限(10条1項):自己の法律上の利益に関係のない違法事由は取消しの根拠として主張できない——請求は棄却
  • 原処分と裁決の関係(10条2項):処分の取消訴訟において裁決固有の違法は主張できない——裁決固有の違法は裁決取消訴訟で主張すべき
  • 取消訴訟(違法のみ)vs 審査請求(違法+不当):審査請求では不当な処分も争えるが取消訴訟では違法のみ
  • 原告適格(9条1項):「法律上の利益を有する者」——保護範囲の判断は根拠法令の趣旨・目的および関係法令も参酌(9条2項)
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訴えの併合・変更

簡単にいうと

簡単にいうと、関連する複数の訴訟を同じ裁判所に「まとめて提起(併合)」したり、訴訟途中で「訴えの内容を変更」したりすることができます。ただし複数の訴えを「1本の訴訟に合体させる」ことはできません。訴えの変更(21条)には裁判所の許可が必要で、口頭弁論終結前に行わなければなりません。

取消訴訟では、関連する複数の訴訟を一つの手続で効率的に処理するための制度として、訴えの併合・変更の規定が設けられています。

■ 関連請求の訴えの併合(16条・17条)

取消訴訟を提起する際に、関連する他の訴訟(別の取消訴訟や国家賠償請求訴訟など)を同じ裁判所に追加的に提起することができます(16条)。これにより、例えば「違法な処分の取消し」と「その違法処分による損害の賠償請求」を同じ裁判所で同時に審理してもらうことができます。

ただし、複数の訴訟を「1本にまとめて一つの訴訟にする」ことはできません。あくまで「複数の訴訟を同じ裁判所で並行して審理する」形です。

なお、国家賠償請求訴訟は取消訴訟とは独立して単独で提起することもできます。取消訴訟と同時提起でなければならないわけではありません(過去問で誤りとされる選択肢に注意)。

■ 被告の変更(15条)

被告を誤って訴えを提起した場合(例:国を被告にすべきところを公共団体を被告にした場合)、裁判所の許可を得て被告の変更申立てをすることができます(15条)。この場合、被告変更後は出訴期間を徒過していても救済される点が重要です。

■ 訴えの変更(21条)

取消訴訟を提起した後でも、口頭弁論の終結前であれば、裁判所の許可を得て訴えを当事者訴訟等に変更することができます(21条)。例えば、当初「処分の取消し」を求めていた訴えを「国家賠償請求」に切り替えることが認められます。裁判所は、相当と認めるときに変更を許可します。

■ 関連請求の移送(13条)

他の裁判所に係属している関連する訴訟がある場合、申立てにより同一の裁判所に移送することができます(13条)。これにより、関連する事件をまとめて審理し、矛盾した判断が出ることを防ぎます。

訴えの併合・変更

訴えの併合・変更

重要メモ

  • 「関連処分の取消訴訟は同一裁判所に併合提起可(13条・16条)・訴えの変更は裁判所の許可が必要(21条)」がポイント
  • 関連請求の訴えの併合(16条):取消訴訟に他の取消訴訟または国家賠償請求訴訟を追加的に提起できる
  • 客観的併合(17条):最初から複数の訴訟を併合して提起可——ただし1本の訴訟にまとめることは不可
  • 訴えの変更(21条):取消訴訟提起後に当事者訴訟等への変更可——裁判所の許可が必要(口頭弁論終結まで)
  • 被告の変更(15条):被告を誤った場合、裁判所の許可を得て被告の変更申立てが可能——出訴期間徒過の救済あり
  • 関連請求の移送(13条):他の裁判所に係属する関連請求は申立てにより同一裁判所に移送可
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訴訟参加

簡単にいうと

簡単にいうと、取消判決は第三者にも効力が及ぶ(対世効・32条)ため、利害関係を持つ者が事前に手続に関与できるよう設けられているのが訴訟参加制度です。「第三者の参加(22条)」と「行政庁の参加(23条)」の2種類があり、申立てまたは裁判所の決定・命令によって参加できます。

取消判決が下された場合、その効力は訴訟の当事者(原告・被告)だけでなく第三者にも及びます(第三者効・32条)。そのため、自分が当事者でないにもかかわらず、判決によって法律上の地位が変動してしまうという問題が生じます。この問題に対処するために設けられているのが訴訟参加の制度です。

■ 第三者の訴訟参加(22条)

訴訟の結果に法律上の利害関係を有する第三者は、裁判所の決定または当事者・第三者の申立てによって訴訟に参加することができます(22条1項)。

具体例として、土地収用処分の取消訴訟を考えてみましょう。被収用者(土地の元の所有者)が収用処分の取消訴訟を提起し、認容判決が出た場合、その土地を行政庁から買い受けた者は土地を返還しなければならない立場になります。このような利害関係者は、訴訟に参加して自分の主張・立証を行う機会が保障されます。

■ 行政庁の訴訟参加(23条)

裁判所は、処分・裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要と認めるときは、その行政庁に参加を命ずることができます(23条1項)。申立てによって行政庁自身が参加することもできます。複数の行政機関が関係する複雑な処分が争われる場合などに活用されます。

■ 訴訟参加制度の趣旨

民事訴訟の判決効は原則として当事者間にしか及びません。しかし取消判決は対世効を持つため、訴訟外の第三者も判決に拘束されます。そこで、判決に拘束される可能性のある者が手続に関与し、自分の利益を主張・防御する機会を保障することが訴訟参加制度の目的です。訴訟参加した第三者は、職権証拠調べ(24条)の恩恵も受けることができます。

訴訟参加

訴訟参加制度(行政事件訴訟法22条・23条)

重要メモ

  • 「第三者参加(22条)と行政庁参加(23条)の2種類・裁判所の決定または申立てによる」がポイント
  • 第三者の参加(22条):訴訟結果に利害関係を有する第三者——裁判所の決定または当事者・第三者の申立てで参加
  • 行政庁の参加(23条):関係行政庁は裁判所の命令または決定により訴訟参加——職権での参加命令も可
  • 職権証拠調べ(24条):裁判所は必要があれば職権で証拠調べができる——民事訴訟の当事者主義と異なる行政訴訟特則
  • 訴訟参加の趣旨:取消判決は第三者にも効力が及ぶ(第三者効・32条)ため、事前に利害関係者を手続に関与させる制度
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判決の種類

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟の判決は「却下(訴訟要件の欠缺→本案審理なし・門前払い)」「棄却(違法性なし→原告負け)」「認容(違法性あり→処分取消・原告勝ち)」の3種類です。認容判決には形成力があり、処分の効力が遡及的に消滅します(最初から処分がなかった状態に戻ります)。

裁判所が下す最終的な判断を判決といい、大きく3種類に分かれます。行政不服審査法の裁決(却下・棄却・認容)と同様の構造ですが、それぞれの内容と効果を正確に理解することが重要です。

■ ①却下判決

訴訟要件(処分性・原告適格・被告適格・出訴期間など)のいずれかが欠けている場合、裁判所は本案(処分が違法かどうかという実体的な審理)に入らずに訴えを却下します。いわゆる「門前払い」です。

例えば、出訴期間(処分を知った日から6か月・処分日から1年)を過ぎて提起した訴え、そもそも「処分」にあたらない行政指導を対象とした訴えなどは却下となります。

■ ②棄却判決

訴訟要件は満たしているものの、本案審理(口頭弁論での審理)において処分に違法性がないと判断された場合の判決です。原告の請求を退け、処分の効力はそのまま維持されます。「自己の法律上の利益に関係しない違法」を主張した場合(10条1項違反)も棄却となります(却下ではないことに注意)。

■ ③認容判決

本案審理において処分・裁決に違法性があると判断された場合の判決です。処分・裁決を取り消す「形成判決」としての性質を持ちます。認容判決が確定すると、処分の効力が遡及的に消滅します(最初から処分がなかった状態に戻ります)。この遡及的消滅の効力を「形成力」といいます。

■ 訴えの利益(狭義)との関係

取消訴訟は、訴訟を提起した後でも「訴えの利益」が失われた場合、それ以降は却下されることがあります。例えば、営業停止処分の停止期間が訴訟係属中に経過してしまった場合、もはや処分を取り消す意義がなくなるため訴えの利益が消滅することがあります。ただし、処分を取り消さなければ解消されない法律上の不利益(懲戒処分の記録が残る場合など)があれば、訴えの利益は維持されます(判例)。

判決の種類

判決の種類

重要メモ

  • 「却下(訴訟要件不備→本案審理なし)・棄却(違法なし)・認容(違法あり→取消)の3種類」がポイント
  • 却下判決:処分性なし・原告適格なし・出訴期間徒過など訴訟要件を欠く場合——門前払いで本案審理に入らない
  • 棄却判決:訴訟要件は満たすが処分に違法性がないと判断された場合——原告の請求理由なし
  • 認容判決:処分・裁決に違法性が認められる場合→処分・裁決を取り消す形成判決
  • 取消判決の形成力:判決確定により処分効力が遡及的に消滅(最初から処分がなかった状態に)
  • 訴えの利益(狭義):判決確定前に状況が変化した場合は訴えの利益が消滅することがある——出訴期間後の処分消滅・期日経過等
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事情判決

簡単にいうと

簡単にいうと、事情判決(31条)とは、処分が「違法」であるにもかかわらず、取り消すと公の利益に著しい障害が生ずる場合に、例外的に請求を棄却しつつ、判決の「主文」において違法を宣言する特別な棄却判決です。「違法宣言は判決の理由中ではなく主文に記載される」点が最重要ポイントで、試験頻出です。

通常、処分が違法と判断されれば認容判決が出て処分が取り消されます。しかし、処分を取り消すことによって社会的・経済的に大きな混乱が生じる場合もあります。そのような場合に認められる特例が事情判決です(31条)。

■ 事情判決の要件(31条1項)

以下の要件をすべて満たした場合に事情判決が出されます。 ①処分・裁決が違法であること ②これを取り消すことにより公の利益に著しい障害が生ずること ③原告の受ける損害の程度、その賠償・防止の方法その他一切の事情を考慮した上で、取消しが公共の福祉に適合しないと認められること

典型例として、ダムの建設許可処分が違法であることが判明した時点で、既にダムが完成していた場合が挙げられます。完成したダムを撤去すれば周辺都市への水供給が止まるなど公益への著しい障害が生じるため、このような場合に事情判決が用いられます。

■ 事情判決の主文(最重要)

事情判決は「請求を棄却する」という形をとりますが、通常の棄却判決とは異なり、判決の「主文」において処分・裁決が違法であることを宣言しなければなりません(31条1項後段)。

「判決の理由中において宣言される」という記述は誤りです。「主文において宣言しなければならない」という点は試験頻出事項であり、正確に覚えてください。

■ 原告への救済(31条2項)

事情判決によって請求が棄却されても、違法な処分によって生じた損害についての国家賠償請求は妨げられません(31条2項)。つまり、処分は取り消されないが、損害賠償を別途求めることは可能です。

■ 事情判決 vs 行審法の事情裁決

行政不服審査法にも同様の「事情裁決」制度があります。大きな違いは、取消訴訟の事情判決は「違法」な処分のみが対象ですが、行審法の事情裁決は「違法・不当」の両方が対象となる点です。また、事情判決の規定は無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟には準用されません(取消訴訟固有のルール)。

事情判決

事情判決の仕組み

重要メモ

  • 「処分は違法でも取消が公益に著しく反する場合→棄却判決(事情判決)・ただし主文で違法を宣言しなければならない(31条)」がポイント
  • 事情判決(31条1項):処分・裁決が違法であるが、取消しにより公の利益に著しい障害を生ずる場合の例外的棄却判決
  • 事情判決の要件:①処分・裁決が違法、②取消しにより公益に著しい障害、③原告の損害の程度等を考慮して取消しが公共の福祉に適合しない
  • 事情判決の主文:違法宣言(処分が違法であることの確認)が主文に明示される——重要(理由中ではなく主文に記載)
  • 事情判決 vs 事情裁決:事情判決は「違法」のみ対象、行審法の事情裁決は「違法・不当」両方対象
  • 原告への救済(31条2項):事情判決で棄却されても損害賠償請求は妨げられない
  • 準用:無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟には事情判決の規定は準用されない(取消訴訟固有のルール)
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判決の効力

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟の認容判決には①形成力(処分効力の遡及的消滅)②拘束力(同一理由での再処分禁止・再処分義務・33条)③第三者効(対世効・32条)④既判力の4つの効力が認められます。特に「拘束力」と「第三者効」は民事訴訟にはない行政訴訟固有の効力として重要です。

取消訴訟の認容判決(請求を認める判決)が確定すると、以下の4つの効力が生じます。これらは相互に連動しており、違法な行政処分の是正という観点から重要な機能を果たしています。

■ ①形成力

取消判決が確定すると、処分・裁決の効力が遡及的に(最初に遡って)消滅します。つまり、最初から処分がなかった状態に戻ります。例えば、営業停止処分の取消判決が確定した場合、その処分は当初からなかったものとして扱われます。

これは取消訴訟が「形成訴訟」としての性質を持つことを示しています。

■ ②第三者効(対世効)(32条)

取消判決の効力は、訴訟当事者(原告・被告)だけでなく、第三者に対しても及びます(32条1項)。これを「第三者効」または「対世効」といいます。民事訴訟の判決効(既判力)が原則として当事者間にしか及ばないのとは大きく異なります。第三者効があるからこそ、訴訟参加(22条・23条)の制度が設けられています。

■ ③拘束力(33条)

取消判決が確定すると、関係行政庁は判決の趣旨に従って行動しなければならない義務を負います(33条1項)。拘束力には以下の2つの側面があります。

・反復禁止効:同一の事実関係・同一の理由に基づく同一内容の処分を繰り返すことが禁止されます。 ・再処分義務(33条2項):申請に対する拒否処分が取り消された場合、行政庁は改めて申請を審査し、処分をしなければなりません。

ただし、拘束力には限界があります。取消判決後に行政庁が申請を改めて審査し、判決で否定された理由とは「異なる理由」で再度拒否処分を出すことは認められています(判例)。同一の理由での再処分のみが禁止されているのです。

■ ④既判力

判決確定後は、当事者・裁判所とも、同一事項について判決内容と異なる主張・判断ができなくなります。同じ処分の取消しを再度求める訴えは提起できなくなります。

判決の効力

判決の効力

重要メモ

  • 「取消判決の4つの効力=形成力(遡及的消滅)・拘束力(同一理由の再処分禁止・33条)・第三者効(対世効・32条)・既判力」がポイント
  • 形成力:取消判決確定により処分・裁決の効力が遡及的に消滅——形成判決としての効力
  • 拘束力(33条1項):関係行政庁を拘束——同一の事実関係・同一の理由による同一処分の再発出は禁止
  • 再処分義務(33条2項):申請拒否処分が取り消された場合、行政庁は改めて申請を審査して処分しなければならない
  • 第三者効(32条1項):取消判決は訴訟当事者以外の第三者にも効力を及ぼす(対世効)——民事判決との大きな違い
  • 既判力:判決確定後、当事者・裁判所は同一事項について判決内容と異なる主張・判断ができなくなる
  • 拘束力の限界:異なる理由であれば再度の拒否処分は可能——同じ理由での再処分のみ禁止
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執行停止制度とは

簡単にいうと

簡単にいうと、取消訴訟を提起しただけでは処分の効力は止まりません(執行不停止の原則・25条1項)。判決が出るまでの間、処分の効力を暫定的に止める申立て制度が「執行停止」(25条2項)です。①処分の効力の停止②処分の執行の停止③手続の続行の停止の3種類があり、行審法と違い「その他の措置」という4つ目の類型はありません。

取消訴訟と執行停止の関係は、行政救済法の実務上も重要なテーマです。

■ 執行不停止の原則(25条1項)

取消訴訟を提起しただけでは、処分の効力・執行・手続の続行は自動的に停止しません。これを「執行不停止の原則」といいます(25条1項)。

例えば、営業許可の取消処分を受けた事業者が取消訴訟を提起しても、判決が確定するまで(場合によっては数年かかることもあります)は処分の効力が維持されているため、営業を再開することができません。これは当事者にとって大きな不利益となる場合があります。

行政不服審査法(行審法)でも同様に執行不停止の原則が採られています(行審法25条1項)。

■ 執行停止制度(25条2項)

そこで、取消訴訟の審理中に処分の効力を停止するよう申し立てることができる制度が設けられています。裁判所に申立てを行い、裁判所の決定によって停止が認められます。

執行停止の種類は以下の3つです。 ①処分の効力の停止:処分そのものの効力を止める(最も効果が広い停止) ②処分の執行の停止:処分の実現行為(強制執行など)のみを止める ③手続の続行の停止:処分に続く行政手続の進行を止める

重要なのは、①処分の効力の停止は、②または③の方法によって目的を達することができる場合は選択できないという「補充性の要件」があることです(25条2項ただし書)。

■ 行審法との比較(重要)

行審法の執行停止には「その他の措置」という第4の類型が存在しますが(行審法25条2項)、行訴法にはこれがありません。行審法と行訴法の比較問題で頻出の相違点です。

執行停止制度とは

執行停止制度とは

重要メモ

  • 「取消訴訟提起だけでは処分の効力は停止しない(執行不停止原則・25条1項)・執行停止は裁判所の決定が必要」がポイント
  • 執行不停止の原則(25条1項):取消訴訟の提起により処分の効力・執行・手続の続行は自動停止しない
  • 執行停止の申立て(25条2項):申立て→裁判所の決定——内閣総理大臣の異議があれば決定できない(27条)
  • 執行停止の種類(25条2項):①処分の効力の停止②処分の執行の停止③手続の続行の停止——「その他の措置」は行訴法にはない(行審法との違い)
  • 行審法では「審査庁が職権で」執行停止可——行訴法は「申立てを受けた裁判所の決定」が必要(職権発動も可だが申立てが原則)
  • 行審法の必要的執行停止(25条4項):重大な損害の発生防止のため審査庁は職権で執行停止しなければならない——行訴法には必要的執行停止の規定なし
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裁量的執行停止

簡単にいうと

簡単にいうと、執行停止が認められるには「積極的要件(重大な損害を避けるための緊急の必要・25条2項)」を満たし、かつ「消極的要件(公益に重大な影響、または本案に理由なし・25条3項)」のいずれにも該当しないことが必要です。消極的要件は「かつ」ではなく「または」の関係であり、どちらか一方でも該当すると執行停止はできません。

執行停止が認められるかどうかは、裁判所が以下の要件を判断した上で決定します。申立てをすれば必ず認められるわけではありません。

■ 積極的要件(25条2項)

執行停止が認められるためには、処分・裁決の執行または手続の続行により生ずる「重大な損害」を避けるため「緊急の必要」があることが必要です。「重大な損害」かどうかは、損害の回復困難性や損害の程度などを考慮して判断されます。

■ 消極的要件(25条3項)

以下のいずれかに該当する場合は、執行停止をすることができません(25条3項)。 ①公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき ②本案について理由がないとみえるとき

この消極的要件は「または」の関係です。①・②のどちらか一方でも該当すれば執行停止は認められません。「かつ(両方揃って初めて)」ではないことに注意してください。

■ 執行停止の種類と補充性

執行停止には3つの種類(処分の効力停止・処分の執行停止・手続の続行停止)があり、処分の効力の停止は、他の方法(処分の執行停止・手続の続行停止)によって目的を達することができる場合には選択できません(補充性の原則)。

■ 職権による執行停止

裁判所は、申立てだけでなく職権によっても執行停止をすることができます。ただし、要件を満たしても執行停止するかどうかは裁判所の裁量に委ねられており、必ず停止されるわけではありません。

■ 過去問のポイント

「裁判所は、処分の執行停止の必要があると認めるときは、職権で、処分の効力、処分の執行もしくは手続きの全部または一部の停止をすることができる」→ 正しい(〇)。

重要メモ

  • 「執行停止の積極的要件=重大な損害を避けるため緊急の必要(25条2項)・消極的要件=本案に理由なしまたは公益に重大な影響(25条3項)」がポイント
  • 積極的要件(25条2項):処分・裁決の執行・続行により生ずる重大な損害を避けるための緊急の必要があること
  • 消極的要件①(25条3項):本案について理由がないとみえるときは執行停止不可
  • 消極的要件②(25条3項):公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは執行停止不可
  • 消極的要件の関係:「本案理由なし」または「公益重大影響」のどちらか一方でも該当すれば執行停止不可(「または」の関係)
  • 執行停止の種類:①処分の効力の停止②処分の執行の停止③手続の続行の停止——効力停止は他の方法で目的が達せられる場合は選択不可(補充性)
  • 裁判所の裁量:要件を満たしても執行停止するかどうかは裁判所の裁量——必ず停止するわけではない
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内閣総理大臣の異議

簡単にいうと

簡単にいうと、内閣総理大臣の異議(27条)は行政事件訴訟法にのみある特殊制度です。執行停止の申立てがあった場合、内閣総理大臣が裁判所に異議を述べることができ、異議が述べられると①裁判所は執行停止決定できない、②既に停止決定済みなら取り消さなければなりません。異議には理由付与が必要で、次の常会での国会報告も義務付けられています。

内閣総理大臣の異議は、行政事件訴訟法27条に規定される特殊な制度です。行政不服審査法には対応する規定がなく、行訴法固有のルールです。

■ 内閣総理大臣の異議(27条1項)

執行停止の申立てがあった場合(または執行停止の決定がある場合)に、内閣総理大臣は裁判所に対して異議を述べることができます(27条1項)。この異議は、行政への司法の過度な介入を防ぎ、行政の円滑な執行を確保するための制度です。

■ 異議の効果(27条4項)

内閣総理大臣が異議を述べた場合、以下の効果が生じます。 ・裁判所は執行停止の決定をすることができなくなります。 ・既に執行停止の決定がなされている場合は、裁判所はその決定を取り消さなければなりません(必ず取り消す義務あり)。

■ 異議の手続き(27条3項・5項)

内閣総理大臣が異議を述べる際には、必ずその理由を付さなければなりません(27条3項)。さらに、次の常会(通常国会)において国会に報告しなければなりません(27条5項)。これは異議権が濫用されることを防ぐための手続的保障です。

■ 異議の限界

判例・通説によれば、内閣総理大臣の異議は、執行停止の決定を妨げることを目的として濫用的に用いることは許されないとされています。あくまで公益上の真の必要がある場合にのみ認められる制度として解釈されています。

■ 行審法との比較

行政不服審査法には、内閣総理大臣の異議に対応する規定は存在しません。この点は行訴法と行審法の重要な相違点として試験頻出です。

重要メモ

  • 「内閣総理大臣の異議(27条)→裁判所は執行停止できない・既に停止済みなら取り消さなければならない・次の常会で国会報告必須」がポイント
  • 内閣総理大臣の異議(27条1項):執行停止の申立てがあった場合、内閣総理大臣は裁判所に異議を述べることができる
  • 異議の効果①:内閣総理大臣が異議を述べた場合、裁判所は執行停止の決定をすることができない(27条4項)
  • 異議の効果②:既に執行停止決定がある場合に異議が述べられたとき、裁判所は執行停止の決定を取り消さなければならない(27条4項)
  • 異議の手続:理由を付さなければならず(27条3項)、次の常会において国会に報告しなければならない(27条5項)
  • 趣旨と限界:行政への司法の過度な介入を防ぐための仕組みだが、決定を妨げるために濫用することは許されない
  • 行審法との比較:内閣総理大臣の異議は行訴法のみ——行審法には対応規定なし
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行政不服審査法上の執行停止との比較

簡単にいうと

簡単にいうと、行訴法と行審法の執行停止制度の主な違いは次の3点です。①必要的執行停止:行審法のみにあり(25条4項)、行訴法にはない。②取消しの方法:行訴法は「申立てによる」(26条)、行審法は「職権による」(26条)で逆。③内閣総理大臣の異議:行訴法のみにあり(27条)、行審法にはない。「その他の措置」も行審法のみの類型です。

行政不服審査法(行審法)と行政事件訴訟法(行訴法)はともに執行不停止の原則を採用していますが、執行停止制度の詳細には重要な違いがあります。試験では両者の比較が頻繁に問われます。

■ 共通点

・執行不停止の原則:行訴法25条1項・行審法25条1項のいずれも、訴訟提起・審査請求のみでは処分の効力は停止しないとしています。 ・重大な損害基準:執行停止の積極的要件として、いずれも「重大な損害を避けるための緊急の必要」という同じ文言を用いています。

■ 重要な相違点

①必要的執行停止(職権による強制的停止) ・行審法:審査庁は、処分の効力の停止または執行の停止その他の措置をしなければならない場合があります(行審法25条4項)。重大な損害発生防止のため審査庁に職権による執行停止義務を課す「必要的執行停止」の規定があります。 ・行訴法:必要的執行停止の規定はなく、すべて裁量的執行停止です。

②執行停止の種類 ・行審法:①処分の効力の停止②処分の執行の停止③手続の続行の停止④その他の措置(行審法25条2項) ・行訴法:①処分の効力の停止②処分の執行の停止③手続の続行の停止のみ(「その他の措置」はなし)

③執行停止の取消し ・行訴法:申立てによって取り消す(26条) ・行審法:職権によって取り消す(26条) →取消しの主体・方法が逆になっています。

④内閣総理大臣の異議 ・行訴法:規定あり(27条) ・行審法:規定なし

⑤執行停止の主体 ・行訴法:裁判所が決定する ・行審法:審査庁が決定する(申立てまたは職権)

これらの違いを整理した比較表を頭に入れておくと、試験問題に対応しやすくなります。

重要メモ

  • 「行訴法=裁判所が決定・必要的執行停止なし・内閣総理大臣の異議あり、行審法=審査庁が職権・必要的執行停止あり(25条4項)・内閣総理大臣の異議なし」がポイント
  • 執行不停止の原則:行訴法(25条1項)・行審法(25条1項)ともに同じ——取消訴訟提起・審査請求だけでは処分効力は停止しない
  • 必要的執行停止:行審法のみ存在(25条4項)——審査庁は重大な損害発生防止のため職権で執行停止しなければならない場合がある(行訴法にはなし)
  • 裁量的執行停止の主体:行訴法は「裁判所(職権または申立て)」、行審法は「審査庁(職権または審査請求人の申立て)」
  • 執行停止の取消し:行訴法は「申立てによる」(26条)、行審法は「職権による」(26条)——主体が逆
  • 内閣総理大臣の異議:行訴法のみ規定あり(27条)——行審法には対応規定なし
  • 損害の基準:行訴法「重大な損害を避けるために緊急の必要」、行審法「重大な損害を避けるために緊急の必要」——同じ文言

まとめ

テーマ
ポイント
注意点
取消訴訟の意義と原処分主義
自由選択主義(8条1項)が原則。原処分主義(10条2項)で裁決取消訴訟では処分の違法主張不可
10条違反は棄却、訴訟要件不備は却下という違いに注意
訴訟要件(訴えの利益・被告適格)
6要件のうち、狭義の訴えの利益(9条1項かっこ書)と被告適格(11条)がポイント
被告は原則として行政主体(国・公共団体)。訴えの利益の判例事例を暗記
本案審理・判決の種類と効力
却下・棄却・認容の3種+事情判決。取消判決には形成力・第三者効・拘束力
事情判決は違法を宣言しつつ棄却。拘束力は同一理由・同一事情の反復を禁止
執行停止制度
執行不停止原則。申立てで重大な損害・緊急の必要があれば執行停止可能
行政不服審査法との違い(職権・義務的/裁量的)と内閣総理大臣の異議

関連判例

運転免許停止処分取消請求事件

運転免許の効力停止処分を受けた者が、停止期間経過後も取消訴訟を継続し、なお訴えの利益があるかが争われた事件。最高裁は、停止処分後1年間無違反で経過すれば処分の効果は消滅し、前歴として残ることによる事実上の不利益は名誉・感情等の問題にすぎず、回復すべき法律上の利益には当たらないとして訴えの利益を否定した。9条1項かっこ書の狭い解釈を示した頻出判例。

建築確認取消請求事件

最判昭59.10.26

建築主事の建築確認を受けて建築工事が完了した後、周辺住民らが建築確認の取消訴訟を継続した事件。最高裁は、建築確認は工事を適法に行うための手続的効果にとどまり、工事完了後は取消しによっても原状回復されないから、訴えの利益は失われると判示した。処分の効果消滅と訴えの利益の関係を示す典型判例として頻出。

先行処分の加重事由がある場合の訴えの利益(平成27年)

最判平27.3.3

風俗営業の営業停止処分について、停止期間経過後も取消訴訟の訴えの利益が存続するかが争われた事件。最高裁は、先行処分の存在が後行処分の加重要件として法令に定められている場合、当該先行処分の取消しを求める法律上の利益が認められると判示した。運転免許停止事件と対比して、加重規定の有無で結論が分かれる点

原告の死亡と免職処分の取消訴訟

最判昭49.12.10

生活保護の変更決定を争う訴訟(朝日訴訟)の上告審係属中に原告が死亡した事件。最高裁は、生活保護受給権は一身専属的権利であり相続の対象とならず、訴訟は承継されないとして訴えを終了させた。権利の性質によって訴えの利益の承継の可否が分かれることを示す典型判例。

選挙の立候補と免職処分の取消訴訟

最判昭40.4.28

地方公務員が懲戒免職処分を受けた後、公職選挙に立候補して公務員の地位を失った場合、免職処分取消訴訟の訴えの利益があるかが争われた事件。最高裁は、立候補により公務員としての地位は回復できないが、免職期間中の給与請求権の回復という法律上の利益が残るから訴えの利益は消滅しないと判示した。9条1項かっこ書の典型適用例。

伊方原発訴訟

伊方原発の原子炉設置許可処分について、周辺住民が取消しを求めた事件。最高裁は、原子炉設置許可には高度な専門技術的判断を要するため行政庁の合理的裁量に委ねられるとしつつ、①具体的審査基準に不合理な点がないか、②調査審議及び判断過程に看過し難い過誤・欠落がないかを審査する判断過程審査の枠組みを示した。専門技術的裁量の司法審査基準として頻出。

違法判断の基準時

取消訴訟において処分の違法性を判断する基準時が争われた事件。最高裁は、取消訴訟は処分時の違法を争うものであるから、違法判断の基準時は処分時であると判示した。処分後の事情変更は違法判断に影響を与えない点が重要で、事情変更がある場合は別途執行停止等で対応することになる。

違法性の承継が認められた例(農地買収計画・買収処分)

最判昭25.9.15

農地買収計画とその実施としての買収処分について、後行処分(買収処分)の取消訴訟で先行処分(買収計画)の違法を主張できるかが争われた事件。最高裁は、両処分が同一目的で一連の手続を構成する場合には、例外的に違法性の承継が認められると判示した。違法性の承継の原則否定・例外肯定の典型判例。

違法行為の転換が認められた例

最判昭29.7.19

ある行政行為が違法であっても、他の行政行為として適法に行われたものと解することができる場合に、違法行為の転換を認めた事件。最高裁は、当初の処分と転換後の処分の目的・要件・効果が実質的に同一である等、一定の要件の下で違法行為の転換を認めた。取消判決の回避手法として重要。

宗教法人解散命令事件

最決平8.1.30

オウム真理教に対して裁判所が宗教法人法に基づき解散命令を発した事件(本件は非訟手続で裁判所が命令を発するもの)。最高裁は、解散命令は法人格を失わせる重大な効果を有するが、宗教団体としての活動は引き続き可能であるから、信教の自由への制約は間接的・事実上のものであり合憲と判断した。宗教法人法81条に基づく解散命令の法的性質と憲法適合性を示す判例。

病院開設中止勧告の処分性

最判平17.7.15

県知事が医療法に基づき病院開設中止勧告を行った事件。最高裁は、勧告は形式的には行政指導だが、従わないと相当程度の確実さで保険医療機関の指定を受けられなくなり、実際上病院開設が困難になるため、処分性が認められると判示した。実質的効果から処分性を認めた重要判例で、処分性論の応用問題として頻出。

通達に対する取消訴訟

墓地埋葬法の解釈に関する厚生省通達について宗教法人が取消訴訟を提起した事件。最高裁は、通達は行政組織内部の指示にすぎず、国民の権利義務を直接形成するものではないため、抗告訴訟の対象となる処分には当たらないと判示した。通達の処分性を原則否定した頻出判例。

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